『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本⑧

プロメテウスタワー地下エリアに警報が鳴り響く
通路の警備装置を次々に破壊していくスカーレット。
振り返るスカーレット「遅いわよ傭兵!」
遅れて通路を走るミグ。背中に大きな銃を背負っている。
ミグ「はあはあ・・・無茶言うな、こっちは30過ぎてんだぞ・・・」
通路を走りながら尋ねるスカーレット「ねえ・・・あなたはなんで彼を許せたの・・・?」
ミグ「彼?」
スカーレット「ライトよ。」
ミグ「大した理由じゃないさ・・・」
「教えてくれたっていいじゃない」
「なんか・・・もう疲れちゃったんだよ・・・いちいち怒っててもしょうがないだろ?」
「え・・・?それだけ??」
微笑むミグ「だってめちゃくちゃだもんあいつ・・・」
釣られて微笑むスカーレット。

その直後いきなりミグがなにか巨大な腕にふっとばされる
スカーレット「ミグ!」

エド「なにを企んでいる?もしかして発電所をとめるのかな?」
スカーレット「それは・・・」
コントロールセンターに続く広大な資材搬入通路で、パワーローダーのようなマシンに乗ったエドが行く手を塞いでいる。
エド「あのバカ社長の置き土産だ。パワーアシスト型介護スーツ「SUNFOWER」お値段据え置き13000ドルだよ」
血を流すミグ「本来の用途と違うんじゃないか・・・」
倒れたミグに手を伸ばすスカーレット「ミグ立てる・・・?」
ミグ「はあはあ・・・胸を引き裂かれた・・・シスターはコントロールセンターへ。手負いの私はここであれを食い止める・・・」
スカーレット「いいえ・・・一緒に戦ってちょうだい。冥王星の軍人ってそんなヤワなの?」
ふらふらになりながら立ち上がるミグ「あいつを倒すのに殺し屋の助けなんていらないって言ってるんだよ・・・」
エド「なあにまとめて面倒見てやるさ・・・」
背中に背負っていた巨大な銃を構えるミグ。
エド「え・・・何それ?」
ミグ「離れてろ。聖職者は見ちゃダメ」
EM銃を発射するミグ。

エド「!!」
とっさにプラズマ化した弾道を避けるパワーローダー
エド「はははは外した!」
ミグ「・・・・・・。」
アームを振り上げるエド「ならばこっちの番」
頭上の天井が抜けて上の階の車庫に置いてあったゴルディオンハンマー12がパワーローダの上に落ちてくる。
建設重機の下敷きになるエド「ぎゃああああああ!」
ミグ「これは不幸な事故だ。」
ゾッとするスカーレット「あなたって・・・」



プロメテウスタワーの最上階を目指して飛ぶリンドバーグ号
ヘッドセットをつけたライト「・・・ミグたちが地下のコントロールセンターを制圧した、あとはお前の承認だけや!」
何かに気づくヴィン「あ、ライト!」
ヴィンが正面を指さす。
リンドバーグ号の進む先にミラージュが不気味に浮いて待ち構えている。

ミラージュと対峙するリンドバーグ号。
ライト「よう、久しぶりやな・・・レオナ・・・飛び方までそっくりや」
ヴィン「殺される・・・!」
ライト「滑走路でお前を下ろす余裕はなくなった。社長室の窓を機銃で割るから直接飛び移ってくれ。」
ヴィン「そんな曲芸できるわけないだろ!地上1000mだぞ!」
ライト「ヒーローにぴったりの高さやな。じゃ頼むで!」

プロメテウスタワーの最上階に接近するリンドバーグ号。
機銃で窓ガラスを割りヴィンに飛び移れと促すライト
「さあ飛べ!」
ハッチを開けるヴィン「無理だ!もうちょい寄ってよ!」
ライト「バカか!はよせい!ミラージュがこっち来てんねん!」
リンドバーグ号に機銃を発射するミラージュ。
衝撃で大きく揺れるリンドバーグ号。
リンドバーグ号から落ちるヴィン
ライト「ヴィン!!」

割れた窓のへりにつかまっているヴィン「ライトかなりやばいよ~~~!」
ライト「待ってろ今助ける!」
リンドバーグ号に体当たりをしかけるミラージュ。
急上昇してミラージュをかわすリンドバーグ号。
社長室のワンフロア下に突っ込むミラージュ。
力尽きヘリから手を離したヴィンがミラージュの上に落ちる。
ビルから機体を引き抜き上昇するミラージュ。

ライト「今や!」
タイミングを合わせてミラージュから社長室に飛び移るヴィン。
ヴィン「フィ~こんなワイルドな出社は初めてだぜ・・・」
ライト「うるさいボケ!とっとと発電所を止めろ!」

急旋回しリンドバーグ号に向き直るミラージュ。
リンドバーグ号に狂ったように突っ込んでいくミラージュ。
ミラージュと戦うリンドバーグ号。
ライト「なにをそんな怒っとる・・・!もうお前には会えへんのや!」
ミラージュの後ろを取ろうとするリンドバーグ号。
リンドバーグ号の機銃がミラージュをかすめる。
しかしなかなかミラージュの後ろが取れない。
リンドバーグ号とミラージュの一進一退の攻防が繰り広げられる。

社長室
認証装置を開け緊急停止コードを打つヴィン。最後のスイッチ。
ヴィン「これを押せばオレがこの星で積み上げてきたものが全て終わる・・・」

目で追えないスピードで飛ぶリンドバーグ号だが、ミラージュのコンピューターはそのリンドバーグ号の動きすら正確にトレースしていく。
徐々にライトの飛び方のパターンを学習していくミラージュ。
ミラージュの機銃がリンドバーグ号に当たり出す。
ライト「くっ強い・・・!」
ライトの動きを完全に読んだミラージュがリンドバーグ号にぶつかってくる。
「!」
その刹那ミラージュの動きが不安定になる。

ミラージュのコンピューター
「残弾ゼロ」の表示。
まるで苦しみもがいているかのようにガタガタ震えるミラージュに照準を合わせるライト

ライト「・・・これ以上オレの思い出を汚すのはやめてくれへんかな・・・」
ミラージュにミサイルを発射するリンドバーグ号。
爆発するミラージュ
ライト「あばよ、レオナ・・・」



万里の長城発電所が機能を停止していく。
首都カッシーニの美しい夜景が次々に消えて行く・・・
真っ暗な社長室
ヴィン「・・・階段で降りるのか・・・」



プロメテウス社の記者会見
包帯だらけのエド「つまり万里の長城発電所の復旧のめどは立っておらず、今後の電力供給は大幅に減り・・・その、輪番停電をすることに・・・」
マスコミ「なんで電気が来ねえんだよ!」
「ラ・メトリーが止まっていったい何人の患者が死んだと思ってるんだ!」
「責任取れ!」
大ブーイング。
エド(さんざうちの会社がエコに反するとか書いておいてこいつら・・・!!)



ハイペリオン教会
ろうそくの火が教会を灯す。
戦争で身寄りのない孤児が教会に集まりクリスマスパーティをしている。

所ジョージ「♪わたくしは23にな~るまで奈良の公園にいるのがトナカイだと思ってた~」

ミグ「はい、ではサンタさんの登場です!」
サンタの格好をしたヴィン「や~チルドレン、プレゼントだよ!」
トナカイの着ぐるみを着たライト「なんでオレが・・・」
子供が元気に集まってくる。
ヴィンが修理したおもちゃを喜んでもらう子供たち。

ヴィン「オレたちこれがやりたかっただけなのかもな・・・」
珍しくお酒を飲むライト「そうかもな・・・」

子供たちに取り囲まれるミグ
子供「ね~おばちゃん、お腹減った」
ミグ「あ、ちょっと待っててね、七面鳥が焼けるから・・・お、おい二人共仕事は終わったような感じで座ってないで手伝ってくれよ・・・!こっちは火から起こしてるんだぞ」
ソファから立ち上がるヴィン「料理のことなら任せろ!本場のオレンジソースを作ってやる」
ミグの方に歩み寄るヴィンを見てそっと教会を出て行くライト。

教会の外は静かに雪が降っている。
スカーレットが教会の外に立っている。
ライト「キミも入りなよ。あんたがずっと守った教会やろ?」
スカーレット「私には神に尽くす資格がないから・・・」
ライト「まだヴィンセントを許せへんのか・・・?」
スカーレット「・・・・・・。」
ライト「もうええんちゃうかな・・・
そりゃあいつの会社がしでかした罪は決して消えるものやないけれど・・・」
スカーレット「私・・・幼い頃教会で革命軍にリンチされたことがあるの。」
ライト「え・・・」
スカーレット「こいつらは強くない・・・武器があるからだ・・・
こんな残酷な人間には決してならないって神に誓ったのに・・・私たちは手を血に染めてしまった・・・
なんでこうなっちゃったんだろうな・・・」
教会を離れていくスカーレット
「いくのか?」
「ええ・・・いろいろありがとう。天国の首領もきっと喜んでいるわ。」
「なら・・・最後にあんたの名前を教えてくれへん?」
「・・・サーシャ」
「サーシャか・・・いい名前やね」
「ありがとう」

教会に戻ってくるライト。
ほろ酔いのミグ「おい、ライト何してるんだよ。お前もこっち来いよ!」
ライト「よ~し!じゃ、おっちゃんの飛行機乗る人~!」
子供たちが手を上げる「はいはいは~い!」
ヴィン「おいおいお前けっこう酒飲んでたけどちゃんと操縦できんのか?」
ライト「それはそうやな・・・じゃあお前が迎えに行ってやれや」
ヴィン「誰を?」

雪道をひとりで歩く殺し屋スカーレット。
彼女の前にイエーガーが着陸する。
戦闘機から降りて彼女に歩み寄るヴィン
ヴィン「サーシャ・・・?」
ヴィンセントの方へ駆け寄るサーシャ



暖炉にあたりながら窓の外を眺めるライト。
隣にはミグが座っている。
ライト「そういえば、また傷ができちゃったな。
スタンプラリーは全部押したから、またあのマシンで消してもらうか?」
首を振るミグ「ううん、もういいんだ。私はこの傷を受け入れるよ。」
ライト「そうか」
ミグ「私さ・・・昔好きな男の人がいてさ。まあ若いころちょっとだけ付き合っていたんだよ。
で、その人に胸の傷が気持ち悪いって言われちゃってさ・・・
それ以来その傷がコンプレックスだったんだ。
もしかしたらあんな危険な仕事を繰り返していたのも、ほかの傷をつけて胸の傷を目立たせないようにしていたのかもしれない・・・」
「そんなことせんでも・・・」
「馬鹿だってことはわかるんだ。でも・・・私は女なんだよ。
・・・なあ、ライト・・・私のこと・・・冷たいとか面倒くさいやつだって思ったことはないか?」
首を振るライト「一度も・・・」

電気のないクリスマスの夜。

おしまい
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