「セックス・レス」という考え方があるそうです。これは、夫婦仲が冷え込んでいるという意味ではなくて、男女の性別(セックス)による個人の自由意思への抑圧を否定し、性別から自由になろうという考え方なのですが、セックスを「生物学的性差」と定義するならば、セックスレスなんてあり得るはずはありません。
おそらく『進化論の挑戦』の著者佐倉統さんにしてみれば、鼻で笑ってしまうトンデモな理論でしょう。
『進化論の挑戦』の文庫版129ページで佐倉さんは「性差は、ある」と断言(あたりまえですが)。オスとメスの境界はグラデーションのようにつながっていても、それが性差の区別がつけられない理由にはならない、それは本州と北海道だって海底では地続きだけれども区別は出来ることと同じだ、と論じています。
また生物学的な実験によって男女の脳の構造に差が発見されたとしても、それがすぐさま差別につながるわけではない、とも付け加えています。
よって「セックスレス」などは不可能な空論であって、考えなければならないのは「ジェンダーレス」なのではないでしょうか?
ジェンダーレスならば納得できます。この考え方はかつて与謝野晶子さんらが唱えた「女権主義」とほとんど同じだと思います。
つまり社会進出において、男女の概念を積極的に取っ払ってしまおう、という考え方です(個人的には全肯定はできませんが)。この考え方に基づけば、キャビンアテンダントや看護婦を男性がやってもいいし、最前線で戦う軍人や相撲取りを女性がやってもいいわけです。
ここで問題なのは、「生物学的性差=セックスが、どこまで男女の社会的振る舞いに影響を与えているか」です。
豊泉周治先生によれば「ジェンダーフリーはセックスを否定するものではない。むしろジェンダーの過剰こそがセックスに基づいた関係のゆがみを大きくし、セックスレス化の傾向を生んでいる」とのことです。
ここでいう「ジェンダーフリー」とはでは一体どういうことなのでしょうか?
それは「それぞれの個人的な関係の中で、自分の性(セックス)を肯定し、別の性を持つ他者(目の前の誰か)との間で支配関係を伴わない非権力的な関係作りを追求すること」だと豊泉先生は言います。
つまり男女問題でややこしい用語を整理するならば・・・
「セックス」・・・生物学的性差
「ジェンダー(生物学用語)」・・・性的意味を伴わない、先天的な雄、雌のこと。エッチな意味のセックスと区別。つまり生物学的性差という意味の「セックス」と同じ。
「ジェンダー(社会学用語)」・・・社会や文化における性別の意識、通念の在り方。あくまでも性別における考え方の“枠組み”であって、性差ではない。
「セックスレス」・・・生物学的性差を否定しようとするラディカルな思想。不可能。
「ジェンダーレス」・・・社会におけるジェンダーを否定する思想。
女権主義とほぼ同じと思われる。「社会の上では男も女もない!」という、考えようによっては個人主義に基づいた考え方。
ラディカルな例で言えばレディースデーや少年、少女漫画、女性専用車両、トイレや温泉における男女のセパレートを批判する。
「ジェンダーフリ-」・・・ジェンダーによって形成される非対称的な支配構造(男が偉くて、女はサポート)を是正する動きである点は、ジェンダーレスと似るが、ジェンダーレスと大きく異なる点は、「ジェンダーフリーは、ジェンダーを全否定はしていない」ということである。
女権主義も、「女性の女らしい生き方も社会は平等に認めてよ」という女性主義も内包するがイコールでは決してない。
ジェンダーフリーはより大きな概念であり、ジェンダーに基づく前提を疑い続け、男女の在り方を個人が自由に選択できるような、柔軟な社会を目指す動きのようである。
つまりジェンダーフリーとは男女の性別だけに基づく、大した根拠もない支配構造や不自由(ただ性別のみによって選べる職業が制限されるようなことなど)さえなくなれば、あとは個人が自由に考えていい、という考え方のようです。
よってジェンダーフリーの社会では、昔の家長制度やりたい夫婦はやってもいいし、夫婦別姓やりたきゃやってもいいし、自分は男だから男らしく生きようと思えば、それもそれで別にいいんじゃない、ということなんだと思います。
メイド喫茶なんて私から見れば「なんて男尊女卑な思想に基づく文化なんだ」と思うのですけど、あそこで働いているメイドさんは、自分がああいうサブカルチャーが好きで、自分でメイドという職業を選択して働いているので、ジェンダーフリー的には「OK」ってことなのでしょうね。
ヴィクトリア朝では、男女差別どころか身分の低い人を、どれだけ召使として雇っているかで金持ちとしてのステータスが決まったと言いますからね。
だから特に意味なくメイドに階段を掃除させて、お客さんに自分のセレブ度をアピールしたりしてたらしいです。
またメイドを雇うのが流行ったのは、オタク的な発想ではなくて、単純に政府が召使いを雇った場合にかかる税金を女性にはかけなかったので、本当は力仕事のできる男を雇いたかったんだけど、安いし女でいいかってことらしいですね。
あ、なんか話それてますね。
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