「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆」
いきなりこんな事になって、わけがわかんないですよ!
いやごめん、オレも初めて見たwということで最初で最後のエヴァンゲリオン。ついに!見たよ!学生時代、斜に構えたエヴァファンにウルトラマンを「子供だまし」と侮辱されずっと敬遠していた、宿敵エヴァンゲリオンを!
これが巷でカルト的人気を誇るエヴァンゲリオンか~。すっごい難解な映画だって聞いてたから、解説役としてエヴァシリーズをテレビ版から全て鑑賞しているパキPさんを引きずり込んだんだけど、良くも悪くも結構分かっちゃった。
これすっごいシンプルな映画ですよ。アニメにしろ映画にしろ結局は「映像のメディア」じゃないですか。だからまずもって凄い映像を見せることだけに徹しているんだ。
かつてコラムで現代人は論理の整合性よりも映像の印象を信じちゃうって書いたことがあるんだけど、確かに映像文化に親しんでしまった私たちにはこの割り切り方は潔い。
なんかね、この映画のカットの構成の仕方ってたけし映画に似てるって思った。特に『ソナチネ』あたり(「やることねえしよ」って時間つぶしするところとか似てる)。
たけし映画も映画の要素の抽象化を徹底させていて、必要最低限のカットでしかフィルムをつないでかないじゃん。キャラが全然喋んないしw
それを説明不足で見てる人に対して不親切と取るか、受け手側の解釈の幅を持たせるための表現手段と取るかは意見が分かれるかもしれないけど、こういった自分たちの描く「画」に絶対的な信頼を置いたドラスティックなドラマ要素の引き算は、けっこう現代アートとしてかっこよかった(あと作中で起きる出来事の時系列がほとんど順番通りだから、因果関係を想像すれば結構補完できる)。
それに絵画の世界において特に表現するのが難しいものが、いわゆる形のないもの――重さ、硬さ、巨大さ(質感と量感)なんだけど、そのすべてがおそらく日本トップクラスに上手い。
特に冒頭の無重力状態からどんどん重力加速度がついていく表現。鳥肌が立つくらい凄い。いや~とんでもねえよ。
あと声。すごい豪華だよね。
で、お話。押井監督はエヴァンゲリオンには物語はないとか言ってて、見た人もファンでさえどんな物語か説明できないんだけど、実はこれ物語ちゃんとある。
ただそれを言語化するとあまりに陳腐になっちゃうから、エヴァのかっこいい世界観を損ないたくないためにあえて説明しないんだなってわかったw説明できなくはない。というか、すごい簡単にできる。
ただ言葉にすると印象が変わっちゃうものってあるじゃんwそのギャップを突っ込んで笑いにするのがギャグ作家なんだけど、こういう純文学でそれをやっちゃうとムード台無しってなっちゃうもんね。
言い方悪いけど、だいたい難解な構成の映画だったらここまで人気になるはずないんだよ。難解がいいならゴダールの映画とかみんな見てるはずじゃん。現代美術館がいっぱいになるはずじゃん。
こんなに人気があるのは、断片的な物語の中にも誰にでも共感できるポイントをちゃんと押さえているから。ベタベタなんだよ。
エヴァンゲリオンよくわからないって人のために野暮だけど言っちゃおう。これ中学生日記やってるだけなんだよ。
巨大ロボット、世界の危機、意味ありげな伏線、膨大な専門用語・・・これらは全てマクガフィンに過ぎない。それを全部とっぱらっちゃって骨組みだけにしちゃうと、そこで描かれる内容は誰もが中学生時代に経験する、甘酸っぱい葛藤。
恋人に振られて「こんな世界なくなっちゃえばいいんだ~!」とか「この世にわたしとあの人のふたりっきりだったらな…でもふたりっきりっていうのもつまんないからあの人のお友達は存在してもよいことにしよう。うーん女の子でもサチエならいてもよいことにしよう。えーとノリヨもいてもいいか…(c)さくらももこ」とか誰でも一度は思うじゃないですか。
大人になると結構恥ずかしいんだけれど、世界(客体)と自分(主体)の距離感がまだ取れてない時代。恋愛感情が目覚めて自分と違う世界の人と心を通わす難しさ(衝撃的事実:できない)に心折れる時期。
そういった普遍的な思春期の少年の心象風景がアレだと思えば、これは少年版『不思議の国のアリス』なんだって合点がいく。
そもそも巨大ロボットアニメの文脈で読解してもどう考えても無理が来るんだ。壊すものもうないからwあれ以上地球のもの破壊し尽くしたら、もう主人公の内面世界を壊すしかないじゃないですか。私はそう言う意味でエヴァンゲリオンをドラゴンボールと対比して破壊のインフレアニメと定義しますw
だから単純な三角関係なんだよね。ちなみに主人公たち中学生と、大人でそれぞれ三角関係がふた組ある感じ。よくわからないぼ~っとした奴が二人いて、その二人を面倒見のいいやつが「まったくもう」って引っ張ってる感じ(本当ご苦労様です)。
・・・でこっから私の個人的な感想言っていいよね?あのさ、主人公のシンジくんの描き方面白いね。最後の最後で憔悴しきっちゃって「ドラえもんか~」って言ってるジャイアンみたいにホゲ~って顔するんだけど、あれがすっごいツボに入っちゃって一人で笑ってたんだけど、まじでエヴァンゲリオンってシンジくんの動かし方がすっごい上手いよ。
宇野常寛さんはエヴァンゲリオンを「社会からの逃避の物語」と定義し、そのスタンスはゼロ年代では時代遅れだとバッサリ切り捨てた。
確かに放送当時はニューアカブームとかで浅田彰さんの『逃走論』とか流行ってたから(ちょい前か??)時代性に合致してたんだけど、それから時は流れて2012年。
作中では14年後ってことにして、もう一人分中学二年生作れる年月で、シンジくんの思考ルーチンをもうちょい現代風にアレンジし直している。
それはゼロ年代以降、引きこもってたら生き残れないという社会構造から派生した「サヴァイブ系」主人公として描き直されているということ。
サヴァイブ系って言うとターザンとか「獲ったど~!」の人みたいな感じがするけど、宇野さんの定義では「誰もが避けられない強制参加のゲームを無根拠な決断主義で乗り切る主人公像」だという。
確かに今回のシンジくんは、やたらアグレッシブで全然悩まない即決型。
私は初めてエヴァンゲリオン見たから、全然キャラが聞いてたのと違うじゃねえか!って思ってたんだけど、これって昔と同じことやっても、もはや社会構造が90年代と大きく変わった現代ではシンジくんのスタンス(とりあえず逃げる)に共感できないだろうってことで、ある種確信犯的に変更しているわけだ(実際14年どころか17年経ってる!)。
さらにサヴァイブ系の無根拠な決断主義すらメタ的に皮肉ってるから、最終的にいろんな立場の人たち(しかしこの作品出てくる登場人物がみんなIQ30くらいw)の意見に振り回されて、シンジくんなりに一生懸命頑張ったんだけど、「いやそんな勝手なことされても」って怒られて(え~~?お前がそうしろって言ったんじゃん・・・!)ってなって、とうとうリミッターが外れていつものシンジくんに戻ってきてしまうというw
おかえり碇シンジくん。
あの脱出用ポッドみたいなので引きこもってる画がもう最高wへそを曲げる中学生。でも気持ち分かるぞ!
だってこれって今の学校や職場の状況そのものじゃん。冷戦崩壊後ぼくらには大きな物語がないから、みんな場当たり的な判断や指示しかできない。それに従う部下は多重人格者じゃない限りストレスでバーストしちゃう。
また、作中のキャラクターがつぶやく(主にオヤジ)余りにも断片的なセリフはまるでツイッターのようだ。でもそんなものに真理があるわけない。
そう考えるとエヴァンゲリオンってのはすっごい時代性を見据えている。それが人気の秘密なんだろうな。
最後に一言。眼帯少女はなんで胸にガムテープを・・・
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