『80日間宇宙一周 The Stargazer』脚本①

電報「チチ危篤。スグモドレ」

メインベルトの未知の宙域に存在する、地図にも載っていない小惑星「1903 XQ」

直径500キロに及ぶ小惑星の地表には大規模なレアメタルの鉱山が広がっている。
地下資源を回収し、製錬するためのトラス構造のプラントには、怪獣のように馬鹿でかいプロメテウス社製の重機がところせましと並んでいるが、採掘場は現在、操業停止しており動いていない。
小惑星表面を切り裂くように掘られた数キロにも及ぶトレンチ。
地下1000mまで垂直に掘られた、まるで不思議の国のアリスに出てくるような、巨大なトンネルの中にはロープやバケツ、エレベーター、作業用ステップが組まれている。

坑道の最深部
ダンゴムシのような生物をあしらった黄色と黒の警告標識が取り付けられている。
400nm以下の波長の光は使用禁止!

地下採石場の傍らには、古代文明のものと思われる寺院の遺跡が見えるが、物騒なドリルのついた採掘機によって半分以上破壊されている。
そこでは、EVA服(小惑星には大気がない)を着た20人ほどの発掘調査隊が作業をしており、その中央では大柄の中年男性が壁に向かって、エアスクライバーを使って壁面を掘り出していく。
「マーシャル大学考古学研究チーム」のロゴが入ったコンテナが発掘現場に転がる。
コンテナのいくつかは横倒しになっており、彼らが突貫工事で作業をしていることがわかる。
現地人のポーターは掘り出された出土品をリレーのように後ろへ運び出し、ビニール袋に入れていく。

ライト「あれ?」
ミグ「どうした?」
ライト「親父が危篤やって」


大柄な男に話しかける現地人のコーディネーター。
コーディネーター「ミスタータイムオーバー。チームヒキアゲル!」
男「・・・アミーゴあと五分。」
コーディネーター「アンタソレバカリ!マルドゥククル・・・!ココギャングノナワバリ・・・!」
男「ダイジ、ダイジ!発掘許可申請は何度も送ったんだから。
まああの馬鹿どもが英語読めるかわかんねーけどさ。ニャハハハハ!」

調査隊の背後にいかにもガラのわるそうな黒人ギャングたちが武装して立っている。
マルドゥク「二千通にも及ぶラブレターありがとよ教授、今度うちの若いのに英語ってのを教えてくれねえか?」
コーディネーター「ヒイイイイイ」
一目散に逃げ出すコーディネーター
男「あ、お先やってま~す」
「お先やってますじゃねえよ、てめえうちのシマで勝手に何やってんだ」

男(すべて掘り出す時間はなさそうだな・・・)
背中越しに小型カメラのシャッターを切る。
壁面から断片的に掘り出された石碑がフィルムに収められる。
ギャング「おい!なにしてる!!」
ギャング「ボス、あいつ記念撮影してますぜ」
ギャング「そのフィルムをよこせ!」
マルドゥク「殺されてえようだな教授、てめえももう終わりだ」

ミグ「それは大変じゃないか、すぐ行ってやろうよ」
ライト「大丈夫やって、殺しても死なんような男やから」


男「あんたらの商売の邪魔はしてない。ここは見逃してくれないかね」
マルドゥク「い~や、お前はここで大好きな遺跡ちゃんと死ぬんだ。」
男「ダメ?交渉決裂?ボーリングするとき地質図とか書いてやったじゃん。」
マルドゥク「残念だったな。」
男「ふ~・・・西部開拓時代・・・大切な井戸や金鉱が奪われそうになったとき何をしたと思うね?」
ギャング「ボス、まだ喋ってます」
マルドゥク「時間稼ぎだ。殺せ。」
銃を構えるギャング
とっさにギャングの方へ手榴弾を投げつける男
ギャング「爆弾だ!」
ギャング「よけろ!!」

手榴弾が破裂し強烈な閃光がはしる。
マルドゥク「あのやろう!はったりだ!!」
「撃ち殺せ!!!」
一斉に引き金を引くギャング
発掘隊とギャングとのあいだで激しい乱闘が始まる。
現地人の調査隊をビームガンで銃撃するギャング。
つるはしでギャングをぶっとばす調査隊。
銃撃をかわしてトンネルの奥へ走る男。
寺院の遺跡全体が大きく振動する。
マルドゥク「逃がすんじゃねえ!」

その刹那、閃光に向かって巨大なダンゴムシのような生き物がブルドーザーのように突っ込んでくる。重機やステップを破壊しながら暴走してくるギガントマキアーグソクムシ。
あるものは踏み潰され、あるものは消化液で溶かされる。
ギャング「ぎゃああああ」
マルドゥク「明かりを消せ!明かりを消せえええ!」
ギャングたちはグソクムシに銃撃するが、体の殻が厚くて通用しない。

マルドゥク「そんな化けもん相手にするな!やつを追え!」
遺跡の回廊を宇宙用のジェット推進ジープ「マーキュリー」に乗って進む考古学者。
道は上り坂になっていく。ギアを四輪駆動に切り替えてアクセルを踏み込む。
ギャングたちもトラックに乗って追いかける。
「行け!殺せええ!!」
前のジープに向かって銃撃するギャング。
車両は寺院中心部の祭壇に向かう。
祭壇には蔦やグロテスクな昆虫がびっしりとくっついていて、そこらじゅうに王の怒りに触れた墓荒らしの白骨化した亡骸が転がっている。
トラックの荷台に乗ったギャングがロケットランチャーを担ぎ、ジープに向かって発射する。
ジープの男はバックミラーを見ながら急ハンドルを切ってロケット弾をかわす。
ロケット弾は人面の形に掘られた祭壇の彫刻にぶち当たり、祭壇の中から黄金色に輝く古代文明の財宝が溢れ出る。
賢者の石やエリクサー、サウロンの指輪、ロンギヌスの槍なども見える。
男「へ~あんなところにあったんだ」
古びた吊り橋に差し掛かるジープ。
のっそりと動く背の高い巨大なザトウムシの下をくぐり抜ける。
付近には不思議な鉱物や、不気味に光る生物たちがそこらじゅうにいる。

釣り橋を渡り終えるやいなや、後続の追っ手の車両に向かってダイナマイトを放り投げる男。
男「掘れぬなら 埋めてしまおう 小惑星」
ギャング「あぶねえぞよけろ!!」
大爆発。吊り橋が焼ききれて後続車は奈落の底へ落ちていく。
ギャング「ぐわ~~~!」

遺跡から採掘所の坑道に入るジープ。
遠くにトンネルの出口が見えてくる。
男「にゃ~っはっは!さらばだ諸君!」
アクセルを踏み込みどんどん加速していくジープ。
その直後、考古学者のジープとヘッドライトに引き寄せられたグソクムシが正面衝突する。
ジープから吹っ飛ぶ男「ぎゃあああああ!」

ミグ「お父さんはいくつ?」
ライト「・・・もうじき50かな・・・?いや60だったかも・・・」
ミグ「すぐ戻ってやれって。もう昔のお父さんじゃないんだから」


燃えるジープ。
地面に倒れている男「あたたた・・・腰が・・・」
銃を突きつけるマルドゥク「歳を考えろ教授。てめえはもう若かねえんだ」
男「いやまったく・・・だからタクシー呼んどいた」
ギャングたち「?」
坑道にミサイルが発射され、岩石が崩れ大きな穴が開く。
マルドゥク「!!」
ライト「何が危篤や。どうせこんなこったろうと思った・・・」

穴の向こうにはプロペラ機のような宇宙船が浮いている。
ライト「迎えに来たで教授!」
男「お~!ライトくん!じゃ、私そろそろ帰るから。」
マルドゥク「てめえ・・・」
リンドバーグ号が機銃を連射し、男を取り囲むギャングたちを圧倒する。
男から離れるギャングたち。
旋回したリンドバーグ号は坑道に急降下し、カーゴハッチを開ける。
低空飛行するリンドバーグ号に向かって走りだし、タイミングよく飛び移る男。
急上昇するリンドバーグ号に向かって銃撃するギャング。
エンジンを点火させ吹っ飛んでいくリンドバーグ号
坑道に衝撃波が走る。吹き飛ばされるギャングたち。
無線を持つマルドゥク「船を出せ」

クレーンやパイプラインを避けながら、ギャングの採掘施設を猛スピードで飛ぶリンドバーグ号
ギャングたちの武装宇宙船がしつこく追ってくる。
ハッチを開けて船内に乗り込んでくる男「写真撮ったくらいで随分としつこいなあ」
ライト「今度はどの勢力を怒らせたんや」
男「ああ・・・アルンジャナイジェリアギャングだよ」
ライト「なんやて!!スマイル・マルドゥクを敵に回したのか!あんた行くとこまでおうたな!」
男「うん。宇宙で敵じゃない人間を探すほうが難しいよ!ニャハハハハ!今は最高のスリルと冒険を楽しもうじゃないか!」
機銃手の席に座るやいなや適当にボタンを押しまくる「あ、それポチッとな」
ライト「コラ勝手に押すな!!」

リンドバーグ号からクラスターミサイルが連射される。
追っ手の宇宙船が直撃を受けて爆発し、小惑星に落下し建設重機が吹き飛ぶ。
小惑星の採掘施設は連鎖反応的に次々と崩壊していき、最後に基礎が破壊されてゴロゴロ転がるヘリウム3の巨大な球体タンクに、衝撃波を受けて回転したクレーンがぶち当たって核爆発のようなキノコ雲ができる。

小惑星から離れるリンドバーグ号
窓を覗き込み首を振る男「なんてエグいことを・・・」
ライト「お前がやったんやろ!」
男「まあ、これでみんな土に帰ったべ。また調査隊のメンバー集め直さなきゃ。」
燃える小惑星を指さすライト「おい、それであれは終わりか。」
男「だって、あの破壊工作は最終的にキミの船がやったわけだし・・・ギャングの報復もこの船を狙うだろ。とりあえず木星入って適当なとこに降ろしてくれ。わたしは別の宇宙船に乗るから」
ライト「こらクソオヤジ、ギャングのアジトに落としたろうか」
男「10年ぶりに会った父親に向かって何だね、その口の利き方は・・・
あ、そうそう大事な話を忘れていたな。
私はあの小惑星で超古代文明の存在を示す、とんでもないお宝を手に入れた。」
ライト「超古代文明???」
「まあ、中心部の祭壇は2~3世紀のものだったがね。メインベルトは113年にゼウス一世の支配下に置かれたから考古学的に合理的な説明はつく。木星王の支配域は定説よりも広かったわけだ。
ええと・・・あった。これだ。」
懐から土にまみれた小さなかけらを取り出す。
男「見てくれ、紀元前の木星圏にはすでにこのような高度な結晶加工技術があったのだ。」
ライト「どーせまたいつものガラクタやろ。いい加減宝探しとかやめろや。小学生かお前は。
だいたい今いくつやねん、もっと大人になれ・・・」
男「59歳です」
ライト「・・・・・・。と、とにかくな、あんま社会に迷惑かけんなや。」
男「キミはいつからそんなお行儀のいい子になったんだ。私はそんな子に育てた覚えないぞ」
ライト「あんま育てられた覚えがないんやけど・・・」
男「昔の格言にもあるだろ。この世はでっかい宝島って。
いや~しかし汗かいちゃったなあ、なんか冷たいもんでもある?あと金貸してよ。」
ライト(助けてやったのに礼の一つもなしとは、なんてふてぶてしい野郎なんや・・・!)

瓦礫となった小惑星の採掘施設
炎の前に立ち宇宙を見上げるマルドゥク「どこにでも逃げるがいい。必ず探し出してやるからな・・・」
マルドゥク「また会おうぜクリストファー・ケレリトゥス教授・・・」
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