『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑤

火星――イーグルモーターウェイ。
太陽系最大のモータースポーツの聖地は宇宙一速いレーサーを決める「コズミックグランプリ」の予選コースになっている。
赤い荒野に切り開かれた宇宙ロケットのコースはバンクアプローチから空を裂き、緩やかなカーブを描きながらねじくれている。
観客席の大歓声。

実況「ついに始まりました!宇宙最速のレーサーを決めるコズミックグランプリ第一戦!
今シーズンのコズミックグランプリはとんでもないサプライズがありました。
太陽系を冒険中に冥王星付近で消息を絶っていた人気レーサー、ライト・ケレリトゥスが新たに開発した新型機リンドバーグ号で緊急参戦したのです!」
解説「これはファンにはたまらないでしょうね。なにしろライトは地球と火星では有名レーサーにして発明家。あのアイザック・イエガーの宇宙最速記録を超える唯一の男と言われていますからね。」
実況「オッズもマイヤースを抜いて一気に一番人気です!」
解説「いや~当然でしょう」




特別に用意されたVIP席
ガラス張りでピットの全景が見えるVIP席は豪華なペントハウスになっている。
頭上の巨大なモニターにはコース上の各機の現在位置や賭けのオッズなど、レースの詳細なデータが表示されている。「賭けはまだまだ受付中!」の電光表示。
高級ドレスを着てVIP席に一人座っているミグ。
テーブルに肘をつき、ぼんやりとピットを眺める「・・・・・・」

スピーカーから流れる惑星連合放送の実況
実況「さて、現在各チームのレースクイーンによるギャルオンが行われていますが・・・
見てくださいライトチームのレースクイーンを!
なんと天王星で人気急上昇中のアイドルの新星、アリエル・スカイです!超人気アイドルにレースクイーンをやらせてしまうとはなんとも贅沢!」
解説「それだけじゃありません、ピットでクルーチーフと話をしている少年は海王星のルヴェリエ・ネプトゥヌス公爵です!」
実況「さすが宇宙の人気者ですね~彼の周りにはセレブが集まるのでしょう!」


ミグ「宇宙の人気者、か・・・
私なに勘違いしてたんだろう・・・」



コズミックグランプリのピットでは燃料タンクが並び、それぞれの出場レーサーのロケットをクルーがせわしなく動き回り最終点検している。

ライトのチームのピット
クルーたちと一緒にルヴェリエとアリエルがライトに声援を送っている。
アリエル「ライトさ~ん!こっちこっち!」
ピットに入ってくるライトが二人に気づく。
ライト「アリエル、ルヴェリエ!いや~久しぶりやな~!」
ルヴェリエ「お久しぶりです。」
ライト「なんでまた火星に?」
ルヴェリエ「宇宙サミットがこっちであるんで、兄と一緒に来ているんですよ」
ライト「兄さんはもう海王星の王様やもんな。相変わらずひねくれてんのか」
ルヴェリエ「ははは・・・海王星を救った英雄によろしく言っておいてくれって言ってました。」
ライト「そうか・・・」
アリエル「ライトさん頑張ってください!」
ライト「アリエルもわざわざ見に来てくれてありがとな。キミも最近忙しいんちゃうんか?」
アリエル「大ジョブです!来たるこの日のために仕事前倒ししてきました!」
ライトの前で一回転するアリエル
「見てください、ほら、今日は私、ライトさんのレースクイーンやりますから・・・!」
ライト「お~カワイイで」
アリエル「ピットは日差しが強いんで・・・この・・・傘を・・・」
パラソルがなかなか開かない。
ルヴェリエ「ここ押せばいいんじゃないですか?」
アリエル「そっか、ありがとうござ・・・」
勢いよくパラソルが開いて骨組みが逆さになったパラソルがミサイルのように飛んで行き、となりのピットクルーに当たる。
ライト「・・・じゃ、いってくるわ」

グリッドには各レーサーの宇宙船が入ってくる。
グリッドのリンドバーグ号に乗り込むライト。
となりのグリッドで機体に乗り込むルナ・マイヤース
ルナ「おかえりライト、でも優勝カップはこの私がもらうから」
ライト「望むところや」
ルナ「レオナに負けた借りはあなたで返すわ・・・じゃあフィニッシュラインで」

実況「各機グリッドにつきました!いよいよ宇宙最速のレーサーが決まります!
シグナルが点灯し・・・マーズ・コズミックグランプリ、スタートです!!」


シグナルが変わり宇宙ロケットが一斉に発進する。
エンジンが火を吹きどんどん加速していく機体。
リンドバーグ号が先頭に躍り出る

ピットのモニターにリンドバーグ号がトップの様子が映される。
ルヴェリエの手を取って飛び跳ねるアリエル「うわあ見てください一番ですよ!」
ファンの大歓声「ライト~~!」

惑星連合放送の調整室
スタッフ「カメラ切り替えろ。よし」
二位以下をぐんぐん引き離していくライト



ライト・ケレリトゥスのピット
クルーチーフ「いいぞライト。順調だ」
ミュウがヘッドセットでライトと通信する
ミュウ「冥王星では女性とイチャイチャしていただけじゃなさそうね」

コース
リンドバーグ号をドリフトさせるライト「機体を改良してたんやって・・・!」

ルヴェリエの方を向くアリエル「そういえばミグさんは・・・?」
ルヴェリエ「VIP席が用意されてるみたいですよ」
アリエル「さすがライトさん、やることが素敵ですね~」



VIP席
ウエイターが高級ワインを注ぐ
「失礼します」
ミグ「あ、どうも・・・」
退室するウエイター。
一人になるミグ。
豪華な食事が乗ったテーブル。
実況「ライトが後続との差をどんどん広げていきます!やはり当初の予想通りぶっちぎりですね!」
解説「ライトはイエガーですら15年かかったアルファケンタウルスまでたった80日で往復するとビッグマウスを叩きましたからね。つまり光の速さを超えるということですが、彼ならやれる気がするのが恐ろしいんですよ。」
実況「実際イエガーの時代とは比べ物にならないほど、宇宙ロケットのスペックは大きく向上しました。宇宙世紀は新たな時代に突入しているのかもしれません!」

ミグ「・・・・・・。」

VIP席に入ってくるミュウ「ごめんなさいね・・・ピットではマスコミがうろついているから・・・」
ミグ「いえ・・・私はここで十分です。ありがとうございます・・・」
ミュウ「好きなものを注文してください。ライトのおごりなんで・・・」
ミグ「はい・・・」
ミュウ「あなたのために優勝カップ持ってくるって言ってましたよ・・・
もしチオルコフスキーさんが本気でライトと一緒になりたいなら、わたくし共も・・・」
首を振るミグ「私はもう・・・」
ミュウ「そう・・・
それで本当に後悔はないの?」
ミグ「ライトによろしく言っておいてください。一緒にいろんな冒険ができて楽しかったって。
この恩は一生忘れないって・・・」
ミュウ「必ず伝えるわ・・・」
テーブルに地球行きのチケットを置くミュウ
チケットには地球の写真が印刷されている。
ミュウ「地球は美しい星よ・・・」
ミグ「ありがとうございます・・・」



火星の地平線を飛行するリンドバーグ号。
実況「メリディアニ平原を抜けて、レースは中盤を迎えました!
トップはなおもライト・ケレリトゥスのリンドバーグ号です!!」

VIP席のモニターを見るミグ「宇宙最速の男・・・か・・・」
席を立ち、荷物をまとめるミグ「夢を叶えてね、ライト・・・」
VIP席から退室しようとすると、ドアがノックされる
ボーイ「チオルコフスキー様、お手紙が届いております。」
ミグ「・・・ライト・・・?」



レース場にあるバー。
店内は薄暗く大人の雰囲気になっている。
ホールでは男女が踊っている。
カウンター席に座るミグ
バーテンダー「何にしましょう?」
ミグ「生中・・・じゃなくて・・・」
男性「リトルプリンセス」
バーテンダー「かしこまりました。」
ミグの隣に座る男性「私はマティーニ、シェイクして、ステアせず」
となりの男性に振り向くミグ「え・・・?」
シックなパーティスーツを着たイワン「こんばんは・・・」

バーのカウンターで二人で酒を飲む
イワン「おとなしかった君が軍に入隊とはね・・・ご両親の跡を継いだわけだ」
ミグ「ウェイドさんはまだ貿易商をやっているんですか?」
イワン「・・・相変わらず世界を飛び回っているよ」
ミグ「そうですか・・・十年前と変わってないんですね・・・」
イワン「あの時はキミを悲しませた・・・すまない・・・」
ミグ「いえ、いいんです・・・
あの時のあなたの気持ち・・・よくわかるから」
イワン「・・・なにか悲しそうだね・・・」
ミグ「・・・え?」
イワン「君の瞳を見ればわかるさ・・・
なあ、踊らないか?」
ミグ「・・・・・・。」
イワン「・・・今のキミには愛する人がいるのかな・・・?」
ミグ「いえ・・・私でよかったら・・・」
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