『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑫

ライトのピット。
TIAのフレミングもいる。
ミグに挨拶しようとするフレミング「私はTIAの・・・」
ゲオルグ「挨拶はいい。説明してやれ」
会場の見取り図を広げるフレミング「脱出ポッドの微弱な信号をこの会場でキャッチした。
つまりこの会場のどこかにウェイドとヴェルヌはいる・・・」
ミグ「なぜレース会場に・・・」
フレミング「ライトへの復讐だ・・・!
彼女は自分を刑務所に入れたライトに残酷な死を与えようとしている!」
ミグ「でもテロ計画の情報をライトにリークしたのは彼女自身じゃ・・・」
フレミング「彼女は彼に一緒に逃げて欲しかったとしたら・・・?」
ミグ「え・・・?」
フレミング「ヴェルヌは幼い頃からライトに好意を抱いていたらしい。
しかしライトは彼女を相手にすることもなく、警察に突き出してしまった・・・」
ゲオルグ「女の恨みは恐ろしいからな・・・」
フレミング「それに彼女は宇宙一知恵が回る・・・」
ミグ「しかし彼女はライトにどんな復讐を・・・」
ゲオルグ「それはこの公爵閣下が説明してくれる。」
テーブルに自然科学の雑誌や図鑑、論文を置くルヴェリエ。
ルヴェリエ「イルミナ・ヴェルヌ博士の論文を読んだことがあるんです。」
ページをめくるルヴェリエ
「これです・・・」
論文にはとある微生物の顕微鏡写真が載っている。



観客席
イルミナ「私は知らなかった・・・この小さな世界は私だけのものだと思っていたから・・・
でも・・・そうじゃなかった・・・」
イワン「キミはその顕微鏡で・・・一体どんな世界を覗いてしまったんだ?」
イルミナ「ジオメトリカルホウサンチュウ・・・」
イワン「ジオメトリカルホウサンチュウ・・・?」
イルミナ「私が見つけた、宇宙でもっとも神に近い生き物・・・
オリハルコンの結晶で出来ていて、熱エネルギーを瞬時に代謝と自己増殖に用いてしまうんです。
一切の老廃物もなし。エネルギー変換効率は100%。」
イワン「だからあの時、ピストルを撃ったスタッフが結晶化して殺されたんだ・・・
・・・つまりそれは超小型の反応炉みたいなものじゃないか、バイオテロにはもってこいだ」
イルミナ「どれくらいの熱で反応するかは種類によって決まっているんですが、遺伝子操作を施せば太陽の中心温度にも、人間の体温を好むようにも作り替えられる・・・」
イワン「なんて恐ろしいものをキミは作り出してくれたんだ・・・」
イルミナ「作ったのは私じゃありません。もともと太陽系にいた生物です。
私はただそれを研究しただけ・・・」
イワン「だが、結果的にキミはそれをテロリストに流してしまったことになるんだぞ。
人類を滅ぼしかねない神の力を・・・」
イルミナ「知らなかったんです・・・この技術は平和利用されると思っていたから・・・」
イワン「・・・ライトにもそう言えるのか?」
イルミナ「・・・・・・」



ピット
ミグ「熱エネルギーをオリハルコンの結晶に変える生物・・・」
ゲオルグ「知ってるのか?」
ミグ「い、いえ・・・」
ルヴェリエ「つまりこの生物は熱を与えれば、与えた分だけ増殖してしまうんです。
強力な熱を与えたら、その暴走はもう止められない・・・」
ミグ「でもこの生物兵器は地球連邦がすべて差し押さえたんじゃ・・・」
フレミング「盗まれたんだ・・・」
ゲオルグ「なんだって!?」
フレミング「サーペンタリウスに・・・
それで我々TIAはサーペンタリウスを急遽リストのトップにおいて、マークしていたんだ」
フレミングに殴りかかるゲオルグ「揃いも揃って貴様ら地球連邦はバカばかりかー!!
ゲオルグを取り押さえるミグ「け・・・警部落ち着いてください・・・!
ルヴェリエ「今この人を責めてもどうにもならないですよ・・・!」
息を整えるフレミング「ヴェルヌは刑務所でピカールにライトへの復讐を持ちかけられたに違いない・・・ヴェルヌはライトの最大の晴れ舞台で復讐を完遂させる気だ・・・」
ミグ「最大の晴れ舞台・・・」

ハッとするミグ「もしかして・・・いや馬鹿な・・・」
ゲオルグ「なんだ?」
ミグ「太陽・・・
このレースの折り返し点は太陽だった・・・!」
ゲオルグ「太陽なんかにあの生物兵器を撒かれたら・・・!」
ルヴェリエ「太陽の熱エネルギーはすべて物質に置き換わって・・・」
ミグ「太陽系は滅びてしまう・・・!!
つまり生物兵器が仕掛けられた場所は・・・
ライトアロー号・・・リニアエクシードエンジン・・・!?」
フレミング「ヴェルヌはライト自身をテロの実行犯にするつもりなのか・・・!」
ゲオルグ「すぐにレースを中止させろ!」
ミグ「で・・・でもあのエンジンに生物兵器があると決まったわけじゃ・・・」
ゲオルグ「ああ!?お前何言ってる!これは太陽系の危機なんだぞ!!
とっととライトのバカに運動会は終わりだって言っとけ!!」
ミグ「・・・・・・。」
ゲオルグ「フレミング、あんたらはすぐに会場の二人を見つけ出せ!
生物兵器の弱点を聞き出すんだ!!」
TIAのエージェントたちと共にかけていくフレミング。
無線を持って立ち尽くすミグ。
ゲオルグ「なにをぼさっとしてるチオルコフスキー!お前がやらないならオレから言う!
貸せ!!」
ミグ「いえ・・・私から言います・・・」
ルヴェリエ「ミグさん・・・」



太陽へ一直線に進んでいくレーサーたち。
ライトアロー号のコックピット
ミグ「・・・ライト、聞こえるか?」
ライト「ああ、ミグ。どうした?」
ミグ「今から私が言うことを信じて聞いて欲しい・・・」
ライト「ええよ。何?」
ミグ「レースを中止してくれ」
ライト「またかい!!!
あんな・・・今度はどこに爆弾があんねん!」
ミグ「キミの機体だ・・・!それも今度は太陽系を滅ぼしかねない生物兵器だ!」
ライト「生物兵器ってなんやねん・・・」
ミグ「それは・・・その・・・キミの・・・」
ライト「イルミナか」
ミグ「え・・・?」
ライト「天王星のこと誰かに聞いたんやな・・・
言っとくけどイルミナはテロリストなんかちゃうぞ。
生き物を愛する優しい女の子や!」
ミグ「しかしキミを恨んでた・・・!キミは・・・
キミは・・・彼女の遠くへ行ってしまったから・・・」
ライト「・・・・・・。」
ミグ「その生物兵器が太陽の周りでばらまかれたら、太陽の熱は全てクリスタルになってしまうんだ。頼むライト・・・もう一度私を信じてくれ・・・!」
ライト「・・・それは直接イルミナに確認したんか・・・?」
ミグ「え・・・?」
ライト「オレは信じへんぞ!
イルミナはそんなことするような子じゃ絶対にない!!」
ミグ「だが・・・!!」
ライト「今度はオレを信じろミグ!!」
ミグ「ライト・・・」
無線が切れる。
「電波射程圏外」の表示
ミグ「ダメだ・・・」
ルヴェリエ「そんな・・・!」



火星の宇宙サミットの会場――ウェルズ議事堂。
会場の前に高級車が止まる。
車から降りるアタッシュケースを持ったスーツの男。
銃を持った警備員「失礼ですが・・・」
ピカール「太陽系科学学会のトリエステ・ピカールと申します。
惑星連合の皆さんに至急お伝えしたいことがありまして参りました。」
警備員「しかし名簿にない方を通すわけには・・・」
ピカール「宇宙温暖化問題ですか・・・けっこう。
しかし、そんなくだらない政治的駆け引きよりも、もっと深刻な危機について彼らには考えてもらわねばなりません。」
警備員「え?」
警備員に銃を突きつけるナッシュ・ストライカー軍曹「オレたちの宇宙は本当に滅びるんだよ」
異変に気づき集まってくる会場警備の警察や軍隊。
銃を突きつける特殊部隊「そこの二人!おとなしく手を上げろ!!」
ピカール「軍曹、ここは頼みます。」
ナッシュ「わかった。」
会場に入っていこうとするピカール
特殊部隊「動くな!!」
ナッシュ「撃つのか・・・悪いことは言わん。やめといたほうがいいぜ?」
特殊部隊「勝てないぞ!こっちは大勢だ!!」
ナッシュ「じゃあやってみろ」
特殊部隊が発砲する。
その瞬間彼らの武器が結晶化していく
「なんだ・・・!!?」
「撃て!!撃ちまくれ!!!」
集中砲火を浴びるが、すべての銃弾がナッシュに届く前にオリハルコンになってしまう。

くるりと向きを変え扉の方へ歩いていくナッシュ。
ナッシュの背後には結晶と化した警察、特殊部隊・・・そして戦車や装甲車が、まるで時間が凍ったかのように並んでいる。



宇宙サミットの会場に入ってくるピカール
円卓には各惑星の首脳が席についている。
スタッフ「なんなんだ君たちは!!」
アタッシュケースを持ち上げるピカール「宇宙の未来について話に来ました」
秘書官たち「ふざけるな!!」
ナッシュ「ふざけてるのはてめえらの方だろ。誰ひとり宇宙の未来なんか考えちゃいねえ。
ただの利権じゃねえか」
秘書官「なんだと・・・キミ達、口の利き方に気をつけたまえ・・・!」
ナッシュ「お前と話したいわけじゃねえよ。オレたちが用があるのはそっちの・・・」
ンゴロ・アルベド議長(木星のトップ)「わかった・・・聞こう・・・」
ナッシュ「話がわかる政治家もいるな。」
席を持ってきて勝手に座るピカール「では失礼して、会議に参加させてもらいますよ・・・」
アラゴ国王(海王星のトップ)「またあんたらかよ・・・俺たちを人質にして今度は何をしたいんだ?」
ピカール「いえ・・・我々の人質はあなたがたではありません・・・」
アタッシュケースを開けるピカール。
ケースの中には何かの起動スイッチが入っている。
ピカール「我々の人質は太陽系全土です。あなたはお分かりですよね?
・・・地球連邦大統領、ハワード・センチネル閣下・・・」
ハワード・センチネル大統領「・・・・・・。」
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