美術教育史覚え書き

日本の美術教育の歴史的な流れはおおまかにとらえると

明治時代:臨画中心

大正時代:自由画教育運動

昭和:軍事的な技術訓練的内容。科学的かつ合理的。

戦後:児童生徒中心主義


1871年(明治4年)
日本発の美術教育の教科書『西画指南』
川上冬崖(南画=中国の絵画の画家)がイギリスのロベルト・スコットボルンの著書を翻訳したもの。点、線、形、明暗とかなりメソッドに沿って描き方を教える。

1872年(明治5年)
学制発布=日本の美術教育の誕生。
『図法階梯』
実用主義で、教科書の絵を模写する臨画がメイン。

1885年
文部省に図画取調掛が設置される。
フェノロサ(伝統的な日本画の再興を論じた)岡倉天心(美術評論家)が委員に。

1887年
図画取調掛を改めて、東京美術学校(今の東京芸大)が設立される。

1891年(明治24年)
図画教員の検定試験。鉛筆画だけでなく、毛筆画でも受験ができるようになった。

1897年(明治30年)
フランツ・チゼックがウィーンで児童美術教室を創設。
児童画を美術作品として見なし、子供中心の創造主義美術運動を開始。美術と教育の統合を主張。
子供は視覚よりもイメージを表現。
教師の役割は創造的な雰囲気を作ること。子どもが生まれながらに持つ法則に従って育てる。

1904年(明治37年)
『尋常小学毛筆画手本』『高等小学鉛筆画手本』アメリカのテキストを参考に編集。
子供の心理的発達を踏まえた画期的な教科書。

1905年
ケルシェンシュタイナー『描画能力の発達』
ドイツの教育学者。公民教育、労働教育を提唱。

1910年(明治43年)
『尋常小学新定画帖』(日本発の美術の国定教科書)が刊行。
鉛筆画、毛筆画の区別を撤廃。
小山正太郎が編集。
欧米の図工教育の動向を踏まえて、年齢によって記憶画、臨画、写生、考案画などが教えられる。
山本鼎による自由画教育運動で衰退。

1919年
バウハウス設立
ヴァルター・グロビウスが設置。世界初の本格的なデザイン教育機関。
「すべての造形活動の最終目的は建築である」
芸術(アーティスト)と手工芸(職人)の統合。
教授陣はカンディンスキー、クレーなどの抽象主義の画家

ヨハネス・イッテン
予備課程――材料、テクスチャ、形態、色彩、リズム(ようは造形活動における基礎的訓練)を担当。知識よりも経験を重視。
後にベルリンで私設の芸術学校を作る。

モホリ・ナギ
構成主義の作家。木、金属、ガラスなどの材料を使った立体構成を担当。
シカゴにニューバウハウスを作る)

バウハウスの取り組みを武井勝雄が日本に紹介。
昭和33年にバウハウスの予備課程が「色や形の基礎演習」として中学校指導要領に取り上げられたが、すぐに改訂されてしまい定着しなかった。

1918年(大正7年)
長野県の小学校で山本鼎が講演「自由画教育の奨励」をおこなう。
1919年に「第一回児童自由画展覧会」が開催。
臨画を廃止し児童中心主義を唱える。
技能を軽視、模倣と創造は関連するなどの批判もあり。

1921年
山本鼎『自由画教育』刊行

1925年(大正14年)
岸田劉生『図画教育論』
「真の写実は創造を生む」と、アンチ臨画を批判。
図工の目的は心を育てる徳育にあると論じた。

1941年
国民学校の教科書『エノホン』が出版。(1941~1944年まで)本当に絵しか書かれてない本。
国家主義を強調した教材や軍国主義的教材。愛国心教育。

1943年
ハーバート・リード『芸術による教育』
ユングの心理的類型を用いて子どもの絵を表現ごとに分類。
思考型・・・写実主義、印象派(自然の模倣)
感情型・・・シュールレアリスム(精神性を重視)
感覚型・・・表現主義(個人の感動重視)
直感型・・・構成主義、キュビスム(抽象形態を重視)

1947年(昭和22年)
ヴィクター・ローウェンフェルド『美術による人間形成』
アメリカの美術教育学者。描画の発達段階理論。
子供の描画表現には「視覚型」と「触覚型」があり、その傾向は前写実期から現れる。
視覚型は見たままそのままを正確に再現しようとするタイプ。全体の47%
触覚型は主観的解釈に基づき、情緒的な反応を絵に表現する。全体の23%

1952年
北川民次『絵を描く子供たち』
戦後、久保貞次郎とともに、子どもの想像力と個性の発達を目指す創造主義美術教育運動を全国的に広めた。

1958年(昭和33年)
中学校学習指導要領が告示。
「図画工作」が「美術」と「技術」に分かれる。
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