ヘルボーイ

 「面白い度☆☆☆ 好き度☆☆☆☆ いてえよ~☆☆☆☆☆」

 すべては茶番だってことだよ。なぜなら最後キミがすべてのありとあらゆる怪物を殺したところで一匹は残るわけだ。

 現在中ヒット上映中!の『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ監督の実写版アメコミ映画。
 デルトロ監督作品ってまだ二つしか見てないけど、なんとなく「ダークメルヘンなヴィジュアル(あくまでも映像面の話であって内容は別にそこまで暗くない)」「登場人物はテンプレートだが一部に何故か個性が強いものがいる」みたいな傾向がある気がする。
 今回はあのデルトロの名を世界に轟かせた『パンズ・ラビリンス』も満をじしてレンタルして来たので、その直感がどこまであっているのか確かめてみよ。デルトロ祭りじゃ~!

 んで、『ヘルボーイ』なんだけど・・・キャラが起っててなんかすごい面白かったwナチスの過激派に地獄から召喚されちゃった悪魔なんだけど、赤ちゃんの頃にもうこっちの世界に来ちゃってるから、育ちはアメリカってことになる。レッドブル飲んでるしな。
 ハリウッド映画って大抵キリスト教に似た寓話構造になっていることが多いって前に『アイスエイジ4』あたりで書いた気がするけど、このヘルボさんも異世界から人類を救済するために降臨した神の子イエス・キリストのメタファー・・・とは恐ろしくて言えない!ま・さ・か!

 人格を決定するものは?ブルーム教授は考えた。それは生来のもの?生まれた時から決まっているもの?ぼくはそうは思わない。それは本人の選択による。背負っている運命ではなく、どうやってそれと向き合うかだ。

 見た目があまりに人とかけ離れているから、仕事(FBI悪魔駆除担当)の時以外は秘密基地から出られなくて退屈しているところとか、でもたまに我慢できなくなっちゃって脱走してみんなを困らせたりとか(♪そして~おこ~られる~)、がさつなように見えて実は結構繊細の神経の持ち主とか・・・は、意外と『アルフ』なんかにも似ている。
 つまりスーパーヒーローものなのにコメディドラマのガジェットもふんだんに取り入れられているから、描ける物語に幅が効く。これはけっこううまいなあって思った。どっちも猫が好きだしね(意味は違うけど)

 ただゴツイ見た目とは違って、実はコミカルってところは、あれなのかな?まさかの最強伝説黒沢なのか・・・!?あの人の器はずっとでかいのか・・・?ドームなのか・・・!?どっちもモテないし(´;ω;`)若者に大人気なく嫉妬するところも共通点が・・・
 というわけで、とにかくヘルボーイのキャラがいいのです。『ヘルボーイ』はヘルボーイでもっているようなものなのです(よくよく考えりゃ当たり前かw)。
 異世界から来たファンタジー出身のヒーローって点は『マイティ・ソー』なんかと似てるんだろうけど、決定的に違うのは、そのギャグにもなりうるヘルボーイの人間的なネガティブな側面――貴族や特権階級特有の葛藤や悩み・・・!とかじゃなくて、一般人が一般的に抱く弱さだよね。彼女がほしいとか。彼女がほしいとか。

 あいつは変わらん。子どもだ。全く子どもだよ。

 さらに付け加えて言うならば、ヘルボーイってとんでもなく体が頑丈でどんな攻撃も「いてえよ~」で済んじゃう感があるんだけど、これは『ダイ・ハード』のむきたまご刑事を彷彿とさせずにはいられなくて・・・サマエルとの最初の戦闘シーンから、あれ?ヘルボーイって何かに似ているなって思っていたんですがw
 ここまで「痛い痛い」ってぼやくヒーローってなにげに初めてかもしれないw「痛い痛い」っていう悪魔も初めてかw
 ちなみに声は谷口節さん!谷口さんが珍しく野沢那智的な演技をやっているのも見どころ!

 さてこっからはアメコミのコンテキストのおはなし。アメコミって、日本では萌えアニメが星の数ほど塑像乱造されているように、アメリカではスーパーヒーローが星の数ほどいて、アメコミオタクでなくとも、ある程度の数を見ると、アメコミのお決まりの設定や展開がいやでもデータベース化されてしまう。
 だからグラント・モリソン著『スーパーゴッズ』でも書かれているように、パッと見どれも同じように見えるんだけど、すべてのアメコミが面白いわけじゃなくて、読んでみると出来不出来の差が歴然とあるよっていう。まあアメコミヒーロー自体にノれないっていう人もいるのかもしれないけど。萌えアニメってだけで拒絶反応(や偏見)がある人がいるように。

 一つの方程式が見出せる――つまり、〈思い悩むリーダー+大男+長い爪の男+氷の女王+情熱的でセクシーな娘+身体に障害のある指導者=大成功〉。もしかしたら、どこかの誰かが“スーパーヒーロー・チーム組み立てキット”を何人かの男たちに与えて、各々がフランケンシュタインの怪物を生み出すように競わせたのかもしれない。(『スーパーゴッズ』376ページ)

 とりあえずナチス。もそのアメコミテンプレートのひとつなんだけど、やっぱりドイツや日本は戦争に負けたし、ユダヤ人虐殺や従軍慰安婦、真珠湾攻撃と、けっこう陰湿で卑怯なことやっているから、悪役にはうってつけなんだよね。勿論当時のドイツや日本にも言い分はあるんだろうけど、現代の国際社会ではどうやってもそれを肯定できない状況になっている(ドイツや日本自身も)、っていうのがアメコミの悪役の条件にうってつけなのかもしれない。
 つまり耳尖らせて牙を生やした野蛮人にしても、まぶたとって歯ぐきむき出しのグロテスクマンにしても、旧日本軍やナチスって言っておけば波風は立たないよって。ナチスを肯定する人はほとんどいないから。ネトウヨやネオナチの人とかは怒るんだろうけど・・・

 あ、そう考えるとどんな悪役を作るにしろやっぱりそれなりのリスクを作家は背負うのかもしれない(^_^;)でもネオナチに絡まれるより大衆の反感買うほうが作家は怖いよね。大衆に売ってなんぼのもんだから・・・
 だから作家の方もなかなか巧妙にやってて、例えば『キャプテン・アメリカ』ではヒトラー総統に反逆したナチスの一部の過激派が・・・とか、うまいことエクスキューズをつけてる。
 んで、じゃあ敵が恐竜ならいいだろ、あ、動物保護団体からクレームが・・・なら宇宙の侵略者ならぶっ殺してもいいだろ・・・ってことになってってるんだろうけど、アベンジャーズの異星人チタウリなんかめっちゃ動きがテロ組織のそれで、笑っちゃったよなwお前ら絶対地球で訓練受けただろってw

 リアリズムなど知ったことか。おれたちが見たいのは、いかしたスーパーヒーローが、ありとあらゆる悪党をぶっとばすところだけだ!(『スーパーゴッズ』373ページ)

 読者の本音はそれなんだろうけど、作る側にも立場ってもんがある。この虚構とリアルのいたちごっこっていうのは現象学的には面白いよね。当事者としてみればたまったもんじゃないが。
 最近深夜の作業用映画が『ラヂオの時間』になっているから、大人の事情とやらに翻弄される作家っていうのがちょっと滑稽に見えちゃって・・・何をやってるんだ俺は!(C)牛島プロデューサー
 表現の自由を謳っているラディカルな編集者だって、スポンサーを怒らせるようなことは絶対やらないし、読者に反感買うようなものはいくら正論だろうが掲載しない(啓蒙<売上)。そう考えると掲載ペースも調整できて、表現も何をやってもほとんどOKな『ソニックブレイド』の環境はすっごい恵まれているのかもしれないな・・・よし漫画描くぞ!
 デルトロさんの『パシフィック・リム』に乗じてロボットVS怪獣を描く!前例ができた!(いい前例かはまだわからないが)
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