スター・トレック イントゥ・ダークネス

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 お前がオレなら同じことしただろ?論理的に。

 ここのところ劇場で観た映画がそこまでシンクロしなくて、感想記事が体たらくで申し訳ないのですが(^_^;)ついに来た!これは面白い!すごい完成度!つまり書く事がない!見てくれ!
 2009年公開のJ・J・エイブラムス版『スター・トレック』の評価が高かったのは聞いていたのですが、こういう『スター・ウォーズ』のようなサーガ系宇宙SFは新参者お断り!みたいな敷居がなんかあって、敬遠していたんですよね(サーガ嫌いの私)。
 でも本家の「転送してくれスコッティ」(マイクル・クライトンのSFで引用)が知りたくて、ついにこの前DVDを借りてきてみたら、もうキャラがすごい起ってて、続きも見たくなっちゃったw
 んで、くだんのスコッティが今回『トイ・ストーリー3』のリトルグリーンメンのようなすごい美味しいところを持っていくのでお見逃しなく。

 なんかこういう完全無欠な映画みちゃうと、日本のサブカルチャーはもう萌えにしか逃げ場がないんじゃなかってがっかりしちゃう。
 思い出すのは、忘れもしない日比谷(だっけ?※忘れてる)で、あの『アベンジャーズ』を見た時。うわ!ついにハリウッド映画も日本の漫画のようにキャラ起ちさせるようになったのか!って衝撃だったんですが(のけぞった)、この映画もすっごいキャラがいい。
 まあこれは、JJ監督の手腕だけじゃなくて、もともと『スター・トレック』シリーズが積み重ねた遺産が良かったわけで、そうなるとずっと前からアメリカのほうがキャラクターを起たせるのはお手の物だった可能性もあるのですが・・・
 でもいくら素材が良くても、脚本や演出の仕方によってはレッツ三角コーナーなので、やっぱりJJさんとその一座が上手なんだろうな。キャラの動かし方がうまいよ。

 ドラマ作りの王道は①ライバルと②恋人と③強大な敵。つまりどれもが物語にゆらぎを与え不均衡をもたらす要素。そしてそれらは主人公の輪郭を際立たせ、補完させる、ある種の鏡像であるのが望ましい。
 主人公と正反対の要素を持つライバルキャラは少年漫画では王道だし(相変わらずあの二人は仲が悪くて大好き)、『戦火の馬』のベネディクト・カンバーバッチ演じる、超人類カーンは、前作のネオナチっぽい船長よりもずっと魅力的で強大な敵だ(無骨で繊細なハゲ船長もキャラ設定としては悪かなかったんだけど、前作はまずもってメインキャラクターを登場&説明しなきゃいけなかったから、あんまハゲの心情を描く尺が残らなかったように思われる)。

 おいおい②のヒロインはどうなったんだって言うけど、そんなんスポックに決まってるじゃんね。もうこれ、ホモ映画の最高傑作だよね。ちょっと泣いちゃったもん。私高校が男子校だったし、なんかホモ映画が好きなのかもしれない。
 『80日間宇宙一周』も最初『スター・トレック』みたいに熱い男と冷静な男の話で作ったんだけど、あまりにホモホモしちゃったからミグを女性に変えちゃったのはUstreamでも話したけど(ロシア系なのに苗字が男性なのはその名残)、やっぱオレそういう傾向があったのか。まあいいや。今度もし新しいタイトルの漫画を描くときは自分を受け入れて堂々とホモの漫画描きます!(なんの宣言だ)
 
 おいトンガリ耳。立派だがオレはどうなる?
 キミの彼氏は文句ばっかりだ。キミには悪いが、あいつの前髪をむしりたくなる。


 う~んごちそうさまです。
 
 て、ことでホモ漫画家を宣言したところで筆を置いてもいいんだけれど、これは批評とか不満とかそんなんじゃないんだけど、ちょっと気になったところだけ喋らせて欲しい。
 それは先ほど魅力的といった敵キャラ、カーンについて。遺伝子操作を受けて長い間冷凍保存されていた種族のカーンは、超人的な戦闘能力を持つ武闘派な上に、とんでもなく頭が切れる頭脳派だ。ひょろっとスマートで狡猾・・・Tレックスではなくてヴェロキラプトル的ないやらしさがある。
 まあ言ってみれば、ガンダムのニュータイプとかそう言った人類よりも半歩優れた新人類。私は武闘派な敵よりも、こういう知恵の回るずるくて卑怯な策士的な悪役にしびれるので、カーンの悪知恵には大いに楽しませてもらいました。

 これが下手なアニメとかだと、こういう知能指数が高い種族出しても、普通の人類との差別化ができなくて、結局ロボット動かせるのが人よりもちょっと上手いとか、とりあえずIQの桁を大きくしとけばいいやとか、そんなところにしか差異を出せなくなっちゃうんだけど、このカーンは本当に知能指数高いんだろうなあって雰囲気がある。
 まあ悪役の常ってことで最後は、同じく理屈型人間エポックにいっぱい食わされちゃうんだけれど、ここはハリウッドの大作映画だから仕方がない。
 強大な敵を倒せないまま、主人公たちが無力感を知ってそのまま終わっちゃう話とか、私は個人的にはすごい好きなんだけど(スピ監督の『宇宙戦争』とか。私の漫画でも本当に悪いやつはそのまま正義を出し抜いたまま勝ち逃げしちゃうことが多い)、まあそういうオチじゃ一般大衆のカタルシスが得られないのもわかってる。

 ただ欲を言えば、ここまで知恵が回る新人類描けたんだったら、艦隊攻撃の動機が、もっと、なんか、頭良いものにならなかったのかなって気はした。結局悪の秘密結社お馴染みの「劣等な人類を滅ぼし我々の世界を創るのだ!」っていう、もうアニメや映画で何百回繰り返したんだっていう優生思想で、これはちょっと時代遅れだよなあって(^_^;)前作のハゲ船長の動機の方がまだいいよなって(ガリ勉へのバカの復讐)。
 高い知能指数を持つキャラといえば、私の『80日間宇宙一周』でも、最終章で宇宙で一番頭のいい人間を出したんだけど、バカなりに知能指数が高い人ってどういう思考をするのかな?って想像した時、どうやっても優生思想にかぶれないよなあ・・・ってことになったんだ。
 だって、分子進化の中立説とかネオダーウィニズムとか考えれば、遺伝子の多様性を残しておくほうが長期的にはメリットがあるわけで、別に下等な民族を滅ぼすなんて面倒くさいことやったって意味ないじゃん。ラディカルな自滅思考があるならまだしも(ただそれって頭いいか?ってなるね・・・w)。
 多分カーンさんって長いこと冷凍睡眠していたから、思想が1940年代から進歩しなかったと思われる。デリダとかドゥルーズ=ガタリとか、ポストモダン思想の本とか読ませれば、もうちょいどうにかなったのかもしれないよね。「パレートの法則だと!?馬鹿な~~~!!」とか言って、『働かないアリに意義がある』を持ったままガクリと膝をつくカーンさんとか見てみたかった。

 私の漫画のイルミナは、もうちょい現代的な学者ってことで、もう全部宇宙の運命を受け入れちゃってる人にしたんだ。いくら頭が良くても人間である以上、神ではない。だから自分ひとりでは宇宙の運命は何も変えられない。
 仮に頑張って世界を平和にしたところで、2億年後には海は沸騰しちゃうし、そうなれば地球から生命は滅ぶし、太陽も宇宙もそのうち消滅しちゃう。頭のいい人っていうのは、そんな感じで自分がちっぽけな存在に気づいちゃうと思うんだ。
 まあパッと見、ただのネガティブな人になっちゃったんだけど、キャラのコンセプトはそんな感じで、世界に希望も絶望も持っていない、顕微鏡の世界だけに生きる人畜無害な人にしたかったんだ。テロをしたってどうなるの?っていう。ああいう破壊行為って実は理屈にかなってないんだよ。感情なんだよ。
 でもそこまで悟っちゃった人でも、小さい頃一緒に遊んだ男の子にもう一度だけ会いたくて・・・みたいな感じで最後に人間らしさを見せるという。でもやっぱりただの気弱なオタク少女に見えるねw

 あ、でも、カウンセラーの先生とかの話では、うつの人って意外と頭がいい人がなりやすいんだって。多分ロジックで考えすぎて、いろんな選択肢がたくさん見えるんじゃないのかな。
 で、どれを選んでもうまくいく可能性が低いっていうことになって(世の中運だからこれは事実なんだけど)、どれも選べずにフリーズしてしまうというか。「ええ~い考えるのめんどくせーや、どうにでもな~れ」っていうおバカな行動ができない。
 とはいえ、バカを擁護するわけじゃないけど、この世界ってすっごい複雑かつファジーで、究極的にはロジックや計算でどうにかなるもんじゃないんだよね。
 そこを割り切ってもうちょっとバカになれば、一歩は踏み出せるのに。まあ踏み出した先に画鋲があるかもしれないけど・・・
 オレ達って寿命が決まっているからね。天災を必要以上に恐れちゃった『アルフ』のエピソードじゃないけど、取り越し苦労で人生終わっちゃったら笑えないよ。

 話がそれたけど、そんな感じでカーンの動機だけはちょっと古くてベタかなって思ったけれど、映画全体で言えば、かなり世相を反映していて、この前の『フェアゲーム』で、CIA職員の情報リーク事件って近いうちに映画になるよな、とか言ってたじゃん。
 この映画がまさにそれで、情報化とグローバル化ががもたらした、俺たちは一体誰を信じればいいのかという閉塞感と、マイケル・サンデル的な究極の選択がテンポよく作中で展開され、2時間以上の長尺を全く飽きさせない(思い返せばカーンの引渡しとかスノーデンさんっぽいしねw)。
 私、見る前は「うわ~2時間半!?上映時間なげえよ~見るのやめようかな」とか、案の定弱音吐いてたんですが、生まれて初めて二時間以上の映画で一度も集中力が落ちず、疲れなかった!というか、ちょっと体力が回復した!
 私が、この映画で一番驚いたのそれだよ。超ヒットした『ダークナイト』でも『アバター』でも、私だんだん疲れちゃって結末どうでも良くなってたからねwなんか広大な宇宙の映像ってアルファー波的なのが出て癒されるのかな。
 冒頭で原住民(たくさんいるジョニー・デップ)もエンタープライズ号を拝んでたしね。あのツカミでこの映画の面白さは約束されたよねw

 ボーイズラブ。それは最後のフロンティア。
Calendar
<< December 2024 >>
SunMonTueWedThuFriSat
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031
search this site.
tags
archives
recent comment
recent trackback
others
にほんブログ村 科学ブログへ にほんブログ村 科学ブログ 恐竜へ カウンター
admin
  • 管理者ページ
  • 記事を書く
  • ログアウト