「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆ なにげに深い☆☆☆☆☆」
地獄を知らぬ者に言葉だけで何が必要なのか、説いて分からせようとしても、それは不可能だ。
あぎゃ~これ今まで見た戦争映画で一番面白いかもしんない。メル・ギブソンさんの『ワンス・アンド・フォーエバー』抜いたわ。
これって有名な映画の割にちゃんと見たの初めてで、ワーグナー鳴らしながら陽気に戦闘ヘリで奇襲するヒャッハーな男たちの話だと思ったら、とんだまどかマギカだぜって。
ヒャッハー(=キルゴア)の占める割合はそんなに多くなく、物語の構成は情報部から密命を受けたウィラード中尉のロードムービー・・・ベトナム~カンボジア珍道中って感じ。
というか、物語の舞台がいつ死んでもおかしくないような激しい戦場の最前線なので、出てくる登場人物はキルゴア中佐を始め、みんなどこかイカれていて、なんだろ、この映画よくわからないけど、すっごい好き・・・と思って、なんでかな?って考えてみたら、ああそうか、これは『不思議の国のアリス』なんだ・・・!ってすっごい自分の中でガテンがいったというか。
思い返せば『魔法少女まどか☆マギカ』も『不思議の国のアリス』が元ネタという風の噂でチェックしだしたわけだから、やっぱり自分の中でアリス分は重要なんだなあって(^_^;)
例えば「朝のナパームは格別だ」という、もう何がなんだかよくわからないけど、映画史には確実に残るであろう迷セリフを発したキルゴア中佐はもちろん、中盤カンボジアで出会うフランス人の軍人一族の小難しい政治的な討論会は、マッドティーパーティを彷彿とさせるし、前線の兵士たちなんて自分たちの指揮官も誰だか分からずに(つーかいるかどうかも分かってない)とりあえず機関銃撃ってるわけで、もう正気の沙汰じゃないんだよね。
旅の終着地で原住民に崇め奉られていた暴君カーツ大佐はハートの女王ってところか。違う点といえば、ハートの女王の「首を切れ!」はブラフだけど、こっちの大佐は実際に切っちゃうってところね。
ナンセンス文学ってのは、その言葉通り、作中のキャラクターに意味のないことを延々繰り返させることで、人間の人生をある種、客観視するような、不思議な感覚を読者に与えるところが魅力なのかなって思うんだけど、そう考えるとわりと哲学的なジャンルなんだよね。人間の本質ってなんなんだろう?というか。そういった哲学すらナンセンスだよっていうか。
よく「争いなんて無意味だ」みたいなテーマの戦争映画はあるけど、こういう手法でイカれたキャラをバシバシ出して行って、本当に戦争ってなんなんだろう・・・って理屈じゃなくて、感覚的に訴えるやり方って、自分にとってはすごい新鮮で面白かった。
はらわたがとび出すまで戦う勇敢な兵士には喜んで水を分けてやる。
あなたは二人いる。分からない?人を殺すあなたと、人を愛するあなた。
しかし勧善懲悪物のアンチテーゼや相対化を自分の作品ではやってきたけど、こういう映画を見ると一周回って、勧善懲悪ものをやるのも面白そうだなあって思ってきた。
本当の正義や悪なんかこの世にはいない!なんて言ってるのが、もう恥ずかしくなってきたというかね。現場の大人はそんなことわかりきった上で、割り切って人の幸福を奪ってるんだいっていう(^_^;)
今書いている小説は軍人が出てくるんだけど、自分なんかは軍隊とかもちろん入ったことないので、どういう心境でイラクの人とかバカスカ撃ち殺しているのかわからないんだよ。
で、自分なりに想像して、多分『ファインディング・ニモ』のペリカン、ナイジェルみたいな感じなのかな?って結論に達して、『80日間宇宙一周』のナッシュ・ストライカーっていうキャラを作ったんだ。
ニモを見ていない人はさっぱりだろうけど(見てる人もそうか)、ペリカンのナイジェルは水槽に入れられたニモが海から来た魚だって知って、こう言うんだ。「海から来たのか、じゃあこ近所さんだな。オレに襲われたことある?勘弁してくれ、これも生きるためだ」
私、このセリフのなんというか割り切り加減がすごい好きで、結局この世って弱肉強食の世界だからお互い恨みっこなしでやろうぜ、みたいなセリフを、ディズニーアニメで言わせちゃうピクサー本当すごいなって感心しちゃったんだw
つまり軍人も、やっていることは殺人マシンかもしれないけど、そういう職業を生活のためにやっているわけで、そこを責めても仕方がないんだよね。だから時には神経の細い人もいて、PTSDとかになっちゃうんだろうけど、ほとんどの軍人はよほどのことがない限り「戦争ってそういうもんでしょ」って深く考えずに任務を遂行していると思うんだよ。じゃなきゃやってられない仕事なわけで。ライフル撃つたびにいちいち凹んでたら、そいつ絶対死ぬもんw
でも、これって、軍隊にかかわらず、ほとんど全ての人が意識的無意識的にやっていることで、とどのつまり、ヒトって「考えるヒト」っていう意味の学名だけど、おそらく考えるの嫌いな動物だと思うんだ。
もともと考えるのに向いてない動物が無理して考えるから、答えがでないようなものに答えだそうとしてorzってなるわけで、カーツ大佐のあの難解な哲学的セリフってそう言う意味だったんじゃないかなって。
優秀な兵士というのは、理性的な判断とか倫理とかそういうのじゃなく、動物的に残酷なことを躊躇いもなくできる奴だっていう。カーネマンのシステム2なんていらねえよ、というw動物化万歳というかw
マイクル・クライトン先生の『ロストワールド』じゃないけど、このラプトルの世界で生き残るのはもっとも残酷でズル賢く無慈悲なものなのだっていうね。
仕事の時は残酷な悪魔。オフの日は慈悲ある人格者。ストライカーはそんなキャラにしたんだけど、この映画を観てから、そんなすごい切り替えができるやつもそれはそれでこええよって思いましたwダメだ。自分には理解できないや。仕事で人を殺すっていうのは。でもそうやって働いている人がたくさんいるわけで。
人間って本当中途半端だよなあ。そしてその中途半端さが戦場では敗北を生むと、カーツ大佐は結論を出したのだろう。
真の精鋭とは道義に聡く、それでいて一方で感情もなく、なんの興奮もなく、極めて原始的な殺戮本能を発揮することができる人間。
軍人ほどじゃないけれど、学校の先生なんかもこういったディレンマってあると思う。だからストレスで倒れちゃう人がたくさんいるわけで。それで、前の学校の校長先生がこういうことを言っていたのを思い出した。
「教員っていうのはストレスが多い仕事ですから、なにか趣味をたくさん持ってください。趣味は精神的な支えになります。」この校長先生は、飛行機も操縦できるし、いろんな資格を持っていて、とんでもない博覧強記な人だったんだけど、確かに趣味がある人って所さんもそうだけど、精神的に強いよなあって。
思えば、あの映画でも悲惨な戦場でまったく精神的に動じてなかったのは、サーフィンという趣味があるキルゴア中佐だったし。そう考えるとカーツ大佐とキルゴアって出す順番間違ったんじゃないかって思う(^_^;)
カーツ大佐の悩みもキルゴアの生き様見れば解決されたんじゃないのってwあ、そうか。オレにはサーフィンがなかったんだ、って。
この映画の教訓:趣味を持とう。
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