三権分立、第2弾は行政やります。
行政府(内閣)
行政権は、内閣に属する(憲法65条)。
行政国家
行政府が中心的な位置を占めている国家。20世紀から福祉国家が主流となり、国家機能が拡大(および複雑化)して政治化の時代となり、行政国家化が進んだ(行政権の優越)。これにより、立法部の役割は相対的に低下した。
ちなみに国会に提出されている法案の8割が内閣提出法案(閣法)で、成立した法律では、なんと9割になる。
内閣の主な仕事
・予算の作成
・条約の締結(承認は国会!)
・法律の執行
・国務の総理
・法令の制定
・天皇の国事行為に助言と承認
・臨時国会の召集の決定
・参議院の緊急集会の要求
立法に対して
・連帯責任
・国会の召集
・衆議院解散
司法に対して
・最高裁判所長官の指名(天皇が任命)
・下級裁判所の裁判官の任命(指名は最高裁判所!)
シビリアンコントロール
いわゆる文民統制。自衛隊(軍隊)を文民が指揮する。
内閣総理大臣と国務大臣は自衛隊制服組はなれない(現職はもちろん過去やってた人もダメ)。
逆に言えば、防衛省の官僚といった背広組は大丈夫。
でもヒゲの隊長とかがいるので、国会議員にはなれるらしい(自衛官をやめれば被選挙権はある)。
ちなみに2013年から自衛隊は官僚(背広組)ではなく、すべて制服組(統合幕僚監部)の管轄になった。
憲政の常道
大正時代の原敬内閣(1918~1921)で、立憲政友会中心の本格的な政党内閣ができ、以降、立憲政友会と立憲民政党の二大政党の党首が総理大臣になって組閣をするようになる。
この有力政党間の政権交代を憲政の常道と言う。
閣議
全大臣と、内閣官房副長官×3、内閣法制局長官だけが参加できる全会一致の会議。
毎週火曜と金曜に開かれる。
ニュースで映るのは閣議室の様子ではなくて、閣僚応接室。閣議は非公開なのだ。
ちなみに硯と筆を使ってトラディショナルに署名している(花押)。
全会一致なので、閣内不一致が起きそうな場合、総理大臣は閣僚を罷免できる。
まさに『総理と呼ばないで』。「あなたには尊敬できるところが何もない。」
内閣総辞職
内閣は任意に総辞職ができるが、必ず総辞職しなければならないのは以下の3つの場合。
①内閣総理大臣が欠けた時(大平正芳さんや小渕さんなど)。
②衆議院で不信任決議が通り、10日以内に衆議院が解散されない時。
③総選挙後初めて国会の召集があった時(それまでは前の内閣が残りの職務を続ける)。
行政委員会
政治的中立性が要求される行政において、内閣から独立して設けられる組織。
人事院、公正取引員会、国家公安委員会など。
行政指導
行政目標を達成するために個人、法人、団体に協力を求めること。
法的根拠はなく、相手の自発的な同意が必要だが、すごい圧力だと思う。
行政機関は、広範な許認可権を持つため、行政運営の公平性、透明性を確保する目的で、行政手続法(1993~)や情報公開法(1999~)などが制定された。
オンブズマン制度
行政の違法、不当な活動を中立な立場で調査し、是正措置を勧告する行政監察官のこと。日本では地方自治体には認められているが、国政にはない。
オンブズマンに当たるのが総務省行政評価局になるけど、行政機関の一部であり独立性に欠ける。ちなみにEUにはある(もともとスウェーデンの言葉で「代理人」という意味)。
行政改革
機能的で合理的な組織にするために、行政機構の整理と中央省庁の行政権限が縮小された。
省庁再編(2001)では、1府12省庁体制になった。
各省庁と深いパイプを持っている特殊法人のあり方についても改革が求められ、国立大学の独立行政法人化や、道路公団、郵政民営化などがそれ。官から民へ。中央集権方地方分権へ。
ちなみに首相を補佐するスタッフの数は増強され、国会議員から選ばれる副大臣や大臣政務官のポストが増えた。
これにより政務次官と政府委員制度(国務大臣に代わり官僚が国会で答弁できた)が廃止された(官僚政治からの脱却=政治主導)。
ニューパブリックマネジメント(NPM)
民間の効率的な経営手法を、行政組織の運営に積極的に活かそうとする考え方。
早い話、民間に学べ!という実践の理論。以下三つある。
①強制競争入札&市場化テスト
行政組織にも民間の競争原理を持ち込む。イギリスの地方自治体が実施。
つまり地方公共団体が入札を行い、民間企業だけではなく、自治体の担当部局も入札に参加する。落札できなければ、その仕事は民間に奪われる。入札対象は、道路、下水道、ゴミ収集、学校給食、公園の維持管理、さらには法律関係事務、建設設計、情報処理、人事、財政!にまで拡大された。
地方自治体だけでなく中央省庁も、市場化テストということで92年に導入。半分以上の業務が民間に落札されている。
これにより経費節減屋、目標やサービス範囲が明確化された。
②エージェンシーの設置
政府の行政執行機能を独立した機関(エージェンシー)に移譲すること。
政策の企画立案は政府がやり、具体的な実施の方はエージェンシーに担当させることで、
企画立案部門が実施部門の仕事を客観的に評価することが目的。
エージェンシーは「刑務所庁は重罪犯の脱獄をゼロにします!」みたいに、努力目標を数値化し、業績を所管の大臣だけでなく議会に報告する。
日本では独立行政法人がこれに近いが、実施機能の分断という面では疑問が残る。
③プライベート・ファイナンス・イニシアティブ(PFI)
民間企業のノウハウを社会資本整備に活用させるため、公共資本を民間所有にする。
つまり民間委託ではなく、さらに進んで公共施設の所有まで民間に任せてしまう。
効率化という点では合理的だが、これのNG例として『キャピタリズム~マネーは踊る~』ではPAチャイルドケア社の事件を取り上げていた。
NPMには問題がある。それは、行政の活動は一元的な尺度で測れないからだ。
例えば警察が数値目標に固執しすぎて、法の執行を厳格にしすぎると、かえって秩序が悪くなるというディレンマが発生する。
学校だって、校内の平均点を上げるために、勉強が苦手な子は全国テストを受けさせないようにするかもしれない。行政全てに、このような成果指標も持ち込むのは、ムーア監督が言うように危険なことでもあるのだ。
内閣総理大臣
日本の総理は、強力なリーダーシップを発揮するトップダウン型ではなく、調整型の政治指導を行なう受動的リーダーシップが特徴であるとされている。
受動的リーダーシップとは、自分自身の明確なビジョンを実現させようとするのではなく、その時々に起こる問題に対処するために行動を起こすタイプのリーダーを指す。
もちろん中には、強力なリーダー(政治的リーダーシップ)もいて、ワンマン宰相吉田茂、昭和の妖怪岸信介、永田町の変人小泉純一郎あたりは、これに当てはまらないが、気配り一番と言われた竹下登首相(汗は自分でかきましょう、手柄は人にあげましょう)などはまさにこのタイプ。でも10年かかっても誰も導入できなかった消費税を実現したんだけどね。
また、受動的リーダーシップは必ずしも悪いものではなく、ドイツやイタリアにも見られるし、実際、日本の政治に一番似ていると言われるのはイタリアの政界らしい。
PM理論
リーダーシップのスタイルを分類する理論の一つで、社会心理学者の三隅二不二が提唱。
目的志向型の総理をP(パフォーマンスファンクション目標達成能力)型、組織配慮型の総理をM(メンテナンスファンクション集団維持能力)型としている。
エリス・クラウス
日本の戦後政治が専門の政治学者エリス・クラウス博士は、総理大臣の指導力を決める要因を次の三つにまとめた。
①制度的コンテクスト
②マスコミに対するイメージ管理
③国際関係と外交舞台
欧米よりも一歩遅れて近代化をしてきた日本では、官僚の影響力が大きくなりがちで、各大臣は首相の代理人ではなく官僚の代理人になる「官僚内閣制」であった。
また族議員の影響力が大きかった自民党では、彼らの論理が広範な利益を考える首相の障害になることもあった。
二つ目に、ぶっちゃけ日本のマスコミはこれまであまり首相に注目してこなかった。記者クラブでは、首相がテレビで直接国民に語りかけることに抵抗を示したのだ。
最後に、外交は首相のリーダーシップを示す絶好の機会であるものの、反面ここで失敗をすると政権にとっては致命的な打撃になってしまう。
この3つが複雑に作用しあって、総理大臣の指導力は決定されているらしい。
とはいえ、21世紀に入ってから、総理を取り巻く状況は変化している。
まず衆議院選挙が中選挙区制から小選挙区制になったことで、族議員とそれに伴う派閥の影響力が衰退した。また、2001年の省庁再編によって少数だった首相スタッフは飛躍的に増加し強化された。
さらにマスメディアの報道姿勢に変化が起き、テレビに政治家が出演し公的な問題を討論するようになった(ニュースステーションとか)。
小泉首相時代には、「首相の大統領化」なども言われたが(首相公選制)、反面ポピュリズム政治に陥る懸念もある。
官僚制(ビューロクラシー)
まあいろいろ叩かれている官僚制。
マックス・ヴェーバーは「最も合理的な組織形態である」と評し、もちろん良い面だってたくさんあるけれど、システム上どうしてもつきまとう問題がある。
①繁文縟礼
規則を強調しすぎて、官僚の行動が硬直化すること。ミスタースポック化。
つまり規則に従うことが自己目的化されてしまう。
この柔軟性のなさが国民に不満を抱かせ、これに対処するためにまた規則ができて・・・の悪循環。
②セクショナリズム
専門性を高める分業方式によって(テクノクラート)官僚制全体の利益よりも、自分が所属する組織の利益を優先させるようになってしまう。
さらに分業による能力向上を維持すると、人事異動が減るので、さらに下部組織独自のイデオロギーができてしまう。なんか封建制度みたいだなw
その結果、下部組織同士に利害の対立が生まれてしまう(派閥争い)。
③管理化
上司が規則を強化しすぎると、部下の反発を招く。
そして部下は規則に抵触しない範囲で職務をサボる。その結果さらに規則が強化され・・・の悪循環。
官僚の類型
これが学校の先生にも置き換えられて楽しいw
①国士型官僚
政治の上に立ち、社会(利益集団)とは距離を置くタイプ。
オレ達官僚だけが国益を考えているんだ!という熱いオラオラ系。
1960年代まではほとんどがこれ。責任感が強いが独善的になりやすい。
②調整型官僚
政治も社会も見下さず、どちらの意見も取り入れ、利害の調整を行うタイプ。官民協調。
1970年以降現れ、90年代では最も主流。
柔軟でバランスが取れているが、妥協案(落としどころ)を見つけるために、当事者の(とても公表できないような)、かなりプライベートな情報を知る必要があり、人との交際において公私の区別がつかなくなってしまう。90年代に相次いだ官僚の不祥事は、このタイプが引き起こした。
③吏員型官僚
政治の下につき、社会とは距離を置くタイプ。
自分の与えられた仕事だけを機械的にこなす。公務員のイメージ。
利害調整は政治家の仕事だろって。
命令には忠実だが杓子定規になりやすい。
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