去年は『キャピタリズム~マネーは踊る~』にめちゃくちゃハマって何十回も観て、経済学ブームがあったんですが、時は流れその時得た知識がけっこう抜けちゃったので、専門書引っ張り出して基本事項を再確認。
マクロ経済学における三つの経済主体
①家計
家計は消費や貯蓄の主体で、企業や政府に労働や資本・土地などの生産要素を提供することから生産要素の供給主体とも言われる。家計はその対価として賃金や利子・配当、地代などの得た収入を元に、企業から商品(材やサービス)を購入したり、政府に税金を収めたりすることで消費されている。
②企業
企業は生産の主体であり、資本を元手に設備投資を行い(工場や機械を購入したりソフトウェアを開発すること)、労働者を雇って商品を生産し、それを家計や政府に販売している。このため企業は生産要素の需要主体と呼ばれる。企業には生産財生産部門と消費財生産部門があり、生産財生産部門は消費財生産部門に原材料や部品、工作機械などの設備を提供し、その代金を得ている。
③政府
政府は家計や企業から税金を徴収し、道路や橋、公園などの公共財(社会資本)や、教育や警察、消防、国防などの公共サービスを家計と企業に提供している。また政府は企業に補助金を支払うこともある。国が行う公共事業にかかる金額と公共サービスの提供にかかる金額(公務員の給料など)を合わせたものを政府支出という。例えば財政政策は政府支出を上げて、企業の生産水準を上げることをいう。ケインズ経済学はこれを重視する。
有効需要理論と乗数プロセス
有効需要理論とは、消費や設備投資などの有効需要が低下すると、商品が売れないので企業が生産量を縮小させ、求人を減らし、失業率が上がるというものである。すると人々の所得は減少し、さらに需要は落ち込み、ますます景気は悪化する。この一連の流れをデフレスパイラルという。逆を言えば需要を刺激すれば、企業の商品は売れて、企業の生産量は拡大、雇用も増えて失業率は低下すると言える。
また需要の増加が、生産料の増加と所得の増加を生み出し、それが連鎖反応的に他の需要に波及していく過程を乗数プロセスという。
景気循環
インフレーション
・メリット
お金を持ってても仕方がないので、消費が活発化(有効需要が上がる)
通貨価値が相対的に下がるので輸出産業が儲かる
・デメリット
お金の価値が下がりすぎると物価が高くて、買いたくても買えなくなる
通貨価値が相対的に下がるので輸入が困難(国際市場における通貨の信用が下がる)
デフレーション
・メリット
お金をたくさん持っている人はさらに金持ちに
通貨価値が相対的に高いので、外貨や輸入品を安く購入できる
・デメリット
お金を貯蓄するようになるので、消費が滞る(有効需要が下がる)
消費者の給料も減り、さらにそれが消費を鈍らせるというデフレスパイラルが発生
円高と円安
一般的に
円高
・国際的に信用が高い通貨は買われる→好景気の場合に発生
円安
・国際的に信用が低い通貨は売られる→不景気の場合に発生
しかし日本の財政赤字は危機的状況の割に、ほかの通貨の信用がそれよりも低いからか円が安定して買われることもある。
また、不景気だと円安が発生するが、これは国際貿易においては輸出に有利となるので、貿易黒字が増え、景気が改善し、結果的に円高になる場合がある。
さらに、円高だと外貨で稼いだ利益が両替時に目減りすることになるので、輸出産業にとっては不利となる。逆に材料を海外から輸入するような産業や、海外旅行が好きな人は嬉しい。
フィリップス曲線
日本の労働者の賃金はこれまで高いと言われていた。
企業が失業者を出さないように労働者に高い給料を払い続けるには、商品の値上げを行うことになるので、物価は上がりコストプッシュインフレーションが発生する。
このことを示したのがフィリップス曲線で、失業率が高いときはインフレ率が低く、失業率が低い時はインフレ率が高くなる。
このようなトレードオフの関係は19世紀後半から20世紀初頭の景気データに基づいて考えられており、ケインジアンが猛威を振るっていた当時の経済学界では、極端なインフレや高い失業率を回避するために政府が適切なファインチューニングを行うべきであると考えられていた。
フィリップス曲線フリードマンver.
だが、フィリップス曲線が示すインフレ率と失業率のトレードオフの関係は1970年代以降次第に確認されなくなってきたことから、フリードマンはインフレが起こると失業率は一時的には下がるものの、長期的には失業率は元の水準に戻ってしまうとフィリップス曲線を批判。
つまりインフレ率と失業率には相関関係はなく、どんなインフレ率であろうと失業率はだいたい一定の値(自然失業率)をとるというのだ。
例えば、こういうことが考えられる。高い賃金によるコストプッシュインフレによって、メーカーの商品価格は上昇。高い商品では消費者の購入意欲は上がらないので、企業は生産量を縮小、雇用は減り、結局失業者は増加してしまう。
従って、政府が裁量的に市場に介入し、インフレ率を高めても、結局同じ失業率に戻るなら、物価が高くなるだけ逆効果、経済状態は不安定になるとフリードマンは考えた。
ちなみにフリードマンが引いた“長期的なフィリップス曲線”はインフレ率と全く関係がないので垂直線となる。
フィリップス曲線クルーグマンver.
だがだがクルーグマンによると、低インフレやデフレの状態においてはフィリップス曲線は長期でも右肩下がり(=失業率とインフレ率は相関)になるという。
デフレの状態では市場に出回っている貨幣の量が少ないので、賃金を調達することが難しく、失業率が改善できない。安倍さんがアベノミクスで世界で初めてインフレターゲットをデフレ対策で実行したのはそのため(イギリスなど他の国ではインフレ抑制対策としてインフレターゲットを行っている)。
ローレンツ曲線
所得格差を調べる際に最もよく使われる指標。
人口の百分比と、所得の百分比の表を作り、その表において原点を通る45度の直線が均衡分布線。すなわち、全ての人の所得が等しい(=所得格差が全く無い)状態を表す。
まあ、理想的な共産主義でもない限りそういうことはあまりないので、実際の所得分配状況を示したローレンツ曲線は、所得格差がひどいほど均衡分布線から遠ざかり、下方にたるむ感じになる。一般的にローレンツ曲線は、原点から所得が低い世帯順に並べていくので、アメリカのようにものすごい格差社会の場合は、グラフの後半で傾きが急に大きくなる(ラストの少数で一気に累計所得が上がってしまう)ってわけ。
この場合、均衡分布線とローレンツ曲線で囲まれた面積で算出するジニ係数は1に近づく(逆にローレンツ曲線が均衡分布線と重なる場合はジニ係数は0で所得格差はない)。
日本政府の財政政策
平成26年度一般会計予算の内訳①歳出
第一位:社会保障関係費(31.8%)
高齢化率21%を超える超高齢化社会だけあって、文句なしの第一位。
その上、合計特殊出生率は人口の維持に必要な2.1を1970年代に下回り、近年では1.3→1.4の低水準を続けている。
つまり高齢者が増加する一方で、その保険料を支える現役世代が減っているということなので、高齢者給付の削減と、現役世代の負担軽減という困難な課題を同時に相手にしなければならない。
第二位:国債費(24.3%)
赤字国債は73年の第一次オイルショックの時に初めて発行され、その後、経済は持ち直したが、バブル経済崩壊後はコンスタントかつ幾何級数的に発行され、来年度には合計900兆円に達する見通し。これはもちろん対GDP比100%を超えている(一年間のGDPを超える借金があるということ)。
ちなみに平成27年度の国債発行額は170兆円で、なんとか減らそうとはしているんだけれど、古い国債の借金を返すための国債(借換債)も赤字国債などと共に発行しているという、なんだかよくわからないけれど大変なことになっている。
第三位:地方交付税交付金(16.8%)
小泉さんはトリニティ的に地方分権を推進したが、まだまだ地方財政は中央からの依存財源でやりくりしているということだろうか。ちなみにこの三位一体の改革で、地方債の許可制は廃止され、国の許可なしに自由に発行ができる事前協議制になっている。また地方に寄付すると特産物がもらえる上に、寄付した金額のほぼ全額が確定申告時に控除されるふるさと納税なども話題になっている(寄付できる上限は所得額に応じて決められている)。
ちなみにこの上位3つで歳出の七割以上を占めている。
以下、第四位が公共事業、第五位が文教及び科学振興、第六位が防衛費となっている(どれも6~5%ほど。民主党政権時は文教及び科学振興が12%で第四位をマークしていたが、現在では削られて第五位に転落した)。
平成26年度一般会計予算の内訳②歳入
半分弱が公債金でまかなわれている、極めて不健全な状態。
租税収入で最も割合が高いのは消費税(16%)で、以下所得税(10%)、法人税(10%)。
プライマリーバランス(基礎的財政収支)
公債金収入(借金で得た収入)を除いた歳入から、公債の利払い費と債務償還費を除いた歳出(一般歳出)を引いた額。この差が均衡している場合は、経済成長率が金利よりも高い限り、政府の借金の対GDP比、すなわち借金の依存度は次第に縮小する(『入門経済学』)。
プライマリーバランスを黒字化に・・・とかちょっと前の民主党政権は掲げていたけど、プライマリーバランスとは国の借金を毎年どれだけ返しているかの指標じゃなくて、借金なしでどれだけ行政サービスを行っているかという、公債依存度を示す指標なのである。
国債発行の問題点
①財政の硬直化
借金の返済に追われて自由に使える予算が減る。
②世代間の不公平
将来世代にツケを残すため。
③クラウディングアウト(押しのけ効果)
国債の発行によって政府が資金を吸い取ってしまい、民間企業の分がなくなってしまう。
日本銀行の金融政策
①基準貸付利率及び基準割引率操作(ロンバート型貸出制度)
金融機関は日銀から担保の範囲内でお金を借りられる。その時の利率が基準貸付利率。
これが市中銀行間の短期金利であるコールレートよりも高いと金融機関は民間の市中銀行からお金を借り、これがコールレートよりも低いと金融機関は日銀からお金を借りる。
つまり金融機関は基準貸付利率とコールレートを比較してお金を借りる先を決定する。
かつて日銀は政策金利である公定歩合を定め、市中銀行の金利を拘束していたが、94年の金利自由化により各金融機関は自由に金利を決められるようになった。
しかし銀行金利をすべて市場の原理に任せてしまうと急激な金利上昇(盧武鉉大統領時代の韓国みたいな)を起こすことがあるので、基準貸付利率は“コールレートの上限”として市場金利の安定化を果たしている。
②公開市場操作
有価証券の売買によって市場に出回る通貨供給量(マネーサプライ)を調節する。
金融緩和をしたい場合は買いオペレーション。
金融引き締めをしたい場合は売りオペレーション。
③預金準備率操作
市中銀行の法定準備率を上下させて市場に出回る通貨供給量を調節する。
法定準備率↑・・・市中銀行が貸し出せる資金が減る
法定準備率↓・・・市中銀行が貸し出せる資金が増える
④無担保コールレートオーバーナイト物
公定歩合に変わる日銀の政策金利。
野村證券のサイトによれば「担保なしで、短期資金を借り、翌日には返済する取引」
すごい。一日しか借りれない!w
これは住宅ローンなどにも影響を与えるので、日銀はこの無担保コールレートオーバー~(長い)を使って市中の金利水準を調整している。
フィッシャー効果
一般的に
インフレ・・・銀行金利は高い
デフレ・・・銀行金利は低い
インフレとはどんどん物価が高くなるということであり、裏を返せば貨幣の価値がどんどん低下することでもある。
例えば、現在100万円を持っていて10年後に物価が2倍に上がるとする。すると現在の100万円は10年後では50万円の価値しかないということになる。
このようにインフレが進む状況においては、銀行にお金を預金するのは損である。むしろ逆に銀行から資金を借りるほうが得になる。現在100万円借りても、10年後には実質50万円分の返済で済むことになるからである。こうなると市場に貨幣が出回り、さらにインフレが進んでしまう。
そこで銀行は、みんながお金を預金してくれるように、金利を引き上げ(出来ることならインフレ率と同じだけ)、金融引き締めを行う。
ちなみに物価の変動を考慮した金利を、名目金利に対して実質金利という。
仮に、物価上昇に合わせて名目金利を引き上げると、実質金利は理論上インフレ率とは独立に決まるということになる。このように名目金利が物価変動と同じように変化する現象をフィッシャー効果という。
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