平安時代後期
大河ドラマ「たいらの~きよもり~!」の時代だと言っていい。なんといっても白河上皇の院政と平氏の台頭、これに尽きる。どちらも専制的なのも印象的。
地方の勢力に過ぎなかった武士は、もはや中央の皇族や貴族の権力争いに必要不可欠な存在となってしまった。
後三条天皇
1068年即位。藤原頼通の娘に子どもができなかったため、摂政や関白を外戚とせず、大江匡房(おおえまさふさ)などの学者をブレーンにし天皇親政を行った。
ちなみに息子の白河上皇が行ったことで有名な院政を考案したのも後三条天皇である。
1069年には延久の荘園整理令を出し、公領を圧迫するほどまでに増えすぎた荘園の整理に乗り出した。
荘園整理令はかつて醍醐天皇も行っているが、今回は前回の失敗を踏まえて、国司に丸投げするのではなく、中央政府が直接荘園整理に乗り出した。
中央政府は記録荘園券契所(記録所)を設置して荘園所有者と国司が提出した書類を比較し、荘園を摂関家のものも含めて一つ一つ厳重にチェックした。そして新しい荘園や書類に不備がある荘園に対しては運営停止を命じた。
荘園公領制
後三条天皇の取り組みはかなりの成果を上げ、不明瞭だった公領と荘園の区別も明確化され、公領は郡、郷、保という単位に再構成、豪族や開発領主にその徴税を請け負わせた。
公領の実務の方は目代の指揮のもと、庁官人に行なわせた。
公領や荘園の耕地の大部分は名(みょう)となり、領主はその耕作を田堵に行わせ、年貢(米や絹)、公事(工芸品や特産物)、夫役(勤労奉仕)などを課した。
しかし、区別が明確になったとは言え、公領と荘園の運営システムは割とかぶっていて(中央政府が直接監督すべき公領も現地の豪族や開発領主に一任していたなど)、大宝律令以来の国>郡>里という行政区画と、新設された郡、郷、保という公領の土地単位、さらにそのどちらにも組み込まれない私有地である荘園が同時に共存するような状況になっていた。この体制を荘園公領制と言い、院政期にはさらに広がっていった。
全国の受験生泣かせの、こういったごちゃごちゃした状況は、豊臣秀吉が太閤検地をして一元化してくれるまで続くことになる。Ohボーイ。
実際この土地の本当の所有者は誰だかわからないこともあったんだってさ。
白河上皇の院政
白河天皇は1086年に当時8歳の堀河天皇に皇位を譲ると、院庁を作り、そこから出される院庁下文(いんちょうくだしぶみ)や上皇の命令である院宣(いんぜん)などを用いて、天皇の影で政治の実権を握りだした。
白河上皇は、院の御所を北面の武士に警備をさせ、源平の武士を側近に取り立てるなど、その権力を強化させていった。
その力は天皇の代理に過ぎない摂政や関白を大きく凌ぎ(つまり事実上の天皇)、しかも天皇のように法や先例に拘束されなかったため、やりたい放題ができた。
院政期の上皇
白河上皇が始めた院政はその後、鳥羽上皇、後白河上皇と継承され100年あまり続いた。彼らは、自分の側近、院近臣(いんのきんしん)をガッツリ稼げる国の国司に任命し、上級貴族には一国の支配権を与える知行国制度を実施、さらに上皇自身が自分の国の収益を握る院分国の制度も作り出した。
これにより公領は、上皇や知行国主、国司などの私有地と変わらなくなってしまった。
また鳥羽上皇の時代には、上皇への荘園の寄進が増加、その見返りとして不輸や不入の特権が当たり前のように与えられたので、荘園の独立性はかなり強まった。
こうして私有地化された公領と寄進地は院政の財政基盤となった。
院政期の上皇は、強欲な割に仏教を厚く信仰していたため、出家して法皇になった。そして京都東山の法勝寺(ほっしょうじ)といった大寺院建設の費用を捻出するために、位やポストの売買(成功)に手を染め、政治はすごい乱れた。国司のポストは金さえあれば購入できたのである。
それでも金が足りないと、上皇は大寺院の荘園の一部を武士を動員して取り上げようとし、大寺院が結成した武装組織である僧兵の激しい抵抗を受けた。
これにはさすがの白河上皇も「いくらオレでも鴨川の洪水と賽の目と延暦寺の僧兵だけはどうにもならねえや」と語ったという。
闘いが大好きな下級僧侶で組織された僧兵は、国司と争い、朝廷に要求を突きつける強訴まで行う大勢力と化していた。その中でも特に興福寺と延暦寺の僧兵は、奈良法師、山法師と呼ばれ恐れられた。殺生アリなんかい。
伊勢平氏の台頭
伊勢平氏とは伊勢と伊賀を地盤とする平氏。
源義家ブームで爆発的な人気を博したものの、彼が亡くなると落ち目になった清和源氏とは対照的に、院政期において地道にその勢力を拡大させていった。
平正盛
伊勢平氏の四代目にあたる。
検非違使や追捕使を勤めていた彼は、出雲で源義家の残酷なバカ息子が反乱を起こした源義親追討事件で一躍時の人となり、中央政界に進出するきっかけを作った。
平忠盛
平正盛の子で平清盛の父の平忠盛は瀬戸内海の海賊を鎮圧、鳥羽上皇の院近臣となった。
保元の乱
1156年。「たいらの~きよもり~!」が大活躍した二つの戦争の一つめ。
鳥羽法皇が死んだあとの跡目争いで勃発。
時の院、鳥羽上皇は、祖父の白河上皇の子だとされる崇徳天皇(すとくてんのう)を嫌い、彼を譲位させ、自分の弟の後白河を天皇に即位させた。
勿論崇徳上皇は納得がいかず、後白河天皇を退位させようと武士を動員、朝廷を二分する戦争が起きた。
後白河天皇は側近、藤原通憲(ふじわらのみちのり)のアドバイスを受け、平清盛や源義朝(みなもとのよしとも)などの武士に夜討ちや奇襲攻撃など、かなりずるい事をさせて戦乱に勝利。
敗れた崇徳上皇は讃岐に島流し、後白河天皇は晴れて上皇になり院政を始めた。
平治の乱
保元の乱の三年後、1159年に起きた戦争。
保元の乱において崇徳上皇側についた自分の父親まで斬った源義朝は、平清盛ばっかり後白河上皇に気に入られているとジェラシーを募らせ、藤原信頼(ふじわらののぶより)と共に兵を挙げた。
彼らは、後白河上皇を幽閉し、上皇の側近の藤原通憲を自殺に追い込んだが、平清盛がこれを鎮圧、義朝軍はまだ子どもだった源頼朝を残して、ほとんど処刑されてしまった(当時13歳だった頼朝は伊豆に島流し、赤ちゃんだった弟の義経は寺に預けられた)。
平治政権
平清盛は後白河上皇を武力で支え、上皇のために蓮華王院を建設、1167年には武士として初めて行政機関のトップである太政大臣に任命された。
平清盛はかつての藤原家のように、娘の徳子を高倉天皇に嫁がせ、そこで生まれた子、安徳天皇の外戚となった。
伊勢平氏の一族は、それぞれに最高のポストが与えられ、彼らは、各地の武士を荘園や公領の現地支配者である地頭に任命し、さらに西国一帯の武士を家人として従えた。
伊勢平氏は全盛期には、日本の半分の知行国や500あまりの荘園を所有するまでになっており、武士でありながら芸術文化にも造詣がある貴族的な性格を持ち合わせていた。
また、平清盛は神戸に港を作り、父が始めた日宋貿易をさらに推進させた。とはいえ、宋と正式に国交を開いていたわけではなかったが、日宋貿易は平時政権の基盤となる、珍宝や宋銭、書籍などをもたらした。
あともともと神聖な場所とされた厳島に神社作ったのも清盛。
鹿ケ谷の陰謀(ししがだにのいんぼう)
とはいえ平治政権はかなり専制的だったため、旧来の貴族を中心に不満を持つ者も多く、1177年には後白河法皇の側近、藤原成親(ふじわらのなりちか)や俊寛(しゅんかん)たちが平氏打倒を企てた。
平清盛はこの陰謀の関係者を一網打尽にしたが、平時政権に対する不満は収まらなかった。
院政期の文化
院政期には貴族文化に、新たに台頭した武士や庶民の文化が混ざり合った。
浄土教は全国的に普及、地方には阿弥陀堂が建設された。
また貴族や庶民の間で流行った田楽や猿楽もこの頃生まれている。
『大鏡』
~鏡シリーズ第1弾。「大根(今)水増し」の語呂合わせで覚える四鏡のひとつで、白河上皇の時代に書かれる。平安時代前期~中期までの藤原北家の栄華を、200歳近く長生きした二人のお爺ちゃんが若い侍に語る、対話形式の歴史物語。
同じく平安末期に書かれた『今鏡』は第2弾。平安中期~平安末期を今度は長寿のお婆さんが回想する。
『今昔物語集』:日本、インド、中国の説話(伝承された物語)集。
『将門記』:平将門の乱を描いた軍記物語。
『陸奥話記』:前九年の役を描いた軍記物語。
『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』:後白河法皇が民間の歌謡(今様)を学んで作った。
四大絵巻
『鳥獣戯画』:動物を擬人化した異色の作品。
『伴大納言絵巻』:応天門放火事件を描いた絵巻。
『信貴山縁起絵巻』:信貴山の修行僧、命蓮(みょうれん)の説話を描いた絵巻。
『源氏物語絵巻』:内大臣三条西実隆によって書かれ、いい収入になったらしい。
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