とはいうものの、忘れちまったよそんな昔(07年)のことはよ。すごい記憶を搾り出すと、この漫画・・・タイトルから思いついたっていう珍しいパターンだったような気がする。自分で言うのもアレだけど、タイトルがいいよね。この漫画。
この当時・・・というか今もだけど、お受験が過熱してて、その背景にあるイデオロギーって優生学だよな、とか。
まあ、経団連とか財界の要請で、日本の公教育の目的(学習指導要領)もコロコロ変わっちゃうんだけど、結局一貫しているのは「企業の即戦力になるような人材を学校は作れ」ってことで、そうなると、この前の自民党の議員さんが、性的マイノリティの人を子ども作れないから生産性なしとか失言したのと一緒で、それは恐ろしい殺伐とした教育現場になるっていうのは、もう、『崩壊するアメリカの公教育』を直ちに読んでくれとしか言い様がないね(ちなみに、この漫画では07年の厚労大臣による「女性は産む機械」発言を取り上げているけど似たようなもんだろ)。
まあ、だから最近不祥事が多すぎだけど、文科省とか教育委員会とかを経て、学校現場に降りてくるまでに、財界の要請をうま~くいなしているというか、カルピスのように徐々に薄めていって静かな抵抗をしているっていうね。
というか、この漫画描いててなんか思っていたのはさ、まだ自分も若かったからっていうのがあるんだろうけど、学歴コンプレクスとかじゃなくてさ、学歴でも年収でもいいけど、そういう一元的な尺度だけで人間を評価するという感性の乏しさが嫌だったっていうのがあるよね。
SNSで繰り広げられる白黒思想も嫌いだし。世の中の問題ってもっと多面的で複雑だろっていうね。俳句の文脈で、議論やディベートをすんじゃねーよっていう。
さらに言えば、多様性を認めよう!とか、生きる力の育成!とか、アクティブラーニング!とか、そういう、思考の柔軟性だったり主体性を、政府が強制するのが、私はすっごい矛盾だと思うよ。精神の自由に抵触しかねないしね。
で、なんで戦時中でもないのに政府がそんなこと強制するはめになったんだっていうと、結局キャピタリズムを社会が無警戒に受け入れているからだと思う。市場主義を推し進めると個人主義が蔓延して、保守思想だか全体主義だかのイデオロギーで国家をまとめるしかないからね。
そういう、構造的なダブルスタンダードが露骨になっちゃっているから、主体的かつ対話的な深い学びをすればするほど、どう考えてもおかしいだろってストレスだけは溜まるのです。
まあだから、主体的に考えて、今の時代は主体性をなくしたほうがいいんだろうなって空気を読む人材育成なんだろうな。ひでー話だよ。
あれ、全然本編の裏話をしてないぞ。え~と、でも、こういう技術っていよいよ現実味を帯びてきたよね。
東京医大による受験の不正も、女性が出産をして医師をやめちゃうだろうからとかいう方便で、逆アファーマティブアクション(ってそれはただの差別か)をやってたわけで、機械に代わりに出産してもらえるなら、それはそれで助かるって言う忙しいキャリアウーマンもいるのかな。あとは不妊症の人には福音かも(世良先生は不妊症という設定だったけど重いのでやめた)。
さらには、遺伝子操作を商業的サービスとして提供する企業も現れたし。悪いけど、この漫画のビジネスが実際にあったら、けっこうな数の教育ママが飛びついちゃうんじゃないかなあ。つまり、これは遺伝病の出生前診断の延長線なだけで。
社会が高い学力の子どもに高い収入を与え続ける限り、もしその学力がテクノロジーで与えられるなら、やらないわけがないっていう。そうなるとさ、多分、こういうデザイナーズベビーは金持ちを対象にした高額なサービスになって、結局金のある奴が何世代にもわたって勝ち続けるという、恒例の格差の固定化になりそうだよな。
でもさ、仮にすべての子どもを優秀にしたら、本当に社会は進展するのかっていうと絶対しないよね。だって東大卒の官僚が集まっている中央省庁があの体たらくというか、もうどう考えても嘘ばっか言ってるわけじゃん。
つまり、合成の誤謬ってやつで、巨人軍とかもそうだけど、個人で優秀な人を単純に集めても組織としてのパフォーマンスが上がるとは限らないっていうね。アベンジャーズ(=仲が悪くいつまでたっても足並みの揃わない組織のこと)になるだけっていうね。
あとさ、オタクって『シン・ゴジラ』みたいな組織を理想化するけど、あんなん絶対うまくいかないからね。とどのつまり、『ギフテッド』でも書いたけど、人間という種族に生まれた以上は天才といってもたかが知れてるわけよ。数学がすごいって言っても、じゃあ人間全てにおいて優れているかっていうと違うわけじゃん。
結論を言えばね、理想っていうのは大切なんだけど、個人の範疇の中にとどめておけってことなんだ。理想や目標って自分自身を向上したりする上ではいいんだけど、他人や社会に対してもそれを強要しようとすると、結局それは無理だし、むしろ逆効果でもあるよっていう。
花輪くんじゃないけど、自分と出自が大きく異なる人(はまじ)たちと、どうやってコミットしていくか、それが社会だと大切で、かつ最も頭を使うことであって、IQは10違うと会話が成り立たないとか言って、自分と学力水準が近い人とばかりくっついていると、それがメンサみたいな集団であってもバカになっていくと思うんだよね。
『優等生学』制作裏話
2018-08-08 11:08:29 (6 years ago)
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