情報職業論覚え書き④

参考文献:廣石良雄著『情報と職業』

IT技術者の倫理観
コンピュータネットワークが発達した今日では、情報(煙)の伝わり方には以下の4つのパターンがあることを認識し、ITに従事するプロとしての自覚を持って行動すべきである。

①火のあるところに煙は立つ
火(=事象)が本当か嘘か(元になる事象はあるが情報はねじ曲げられているのではないか)を見極めなければならない。
見極める方法には次の3つがある。

・発信源(URL、電話番号)が正規のものか、複数のルートで一致するか確認する。
・発信者が発信した情報に対してどの程度の責任を持つ立場(代表者、広報担当者)なのかを確認する。
・どこまでが発信者の言葉であり、どこまでが引用部分なのかが明確になっているかを確認する。その区別が不明確な情報は全てを信用すべきではない。

風評被害に関しては、別の火があたかも真実の火のように煙として伝えられた例である。風評被害を受けたものは、積極的に自分の正しい情報を発信するよう自衛策をとっている場合がある。
単に文字表現で「これが真実です」といっても正しい情報と受け入れることが難しく、映像や画像で情報をリアルタイムで伝えたり、食品関係ではトレーサビリティを付加し信頼性のある団体の証明書を添付したり、あるいは信用があるマスメディアを通じて広報を行ったりしている。
ただし、いずれも風評被害を防衛するには莫大な費用と労力がかかることをIT技術者は忘れてはならない。

②火のあるところに煙は立たぬ
大衆受けしないものは、煙(情報)はなかなか立たない。
マスメディアはニュースソースとして価値がないことでは報道しない。
IT技術者はふとしたきっかけでその火を見つけた場合は、火が本当か嘘かを見極め、自分が煙を発する(利用する)場合は、慎重に煙を発するべきである。
具体的には以下が挙げられる。
・自分が発信する場合、発信者としての自分の立場を明確にする。
・自分が発信する場合、元情報と自分が付加した情報を明確にする。
・自分が発信する場合、発信後の経過が必要であれば、実施する。

③火のないところに煙は立つ
これが一番やっかいなパターンで、コンピュータネットワークならではの現象である。いわゆるデマである。
IT技術者はデマを見極め、また、自らがデマを発してはならない。
ちなみにコンピュータネットワーク社会では、この手のデマは日常茶飯事である。

以下に事例を挙げる。
・LINEが有料化するというデマ。
・東日本大震災で病院の職員が患者を見捨てて逃げたというデマ。

④火のないところに煙は立たぬ
あたりまえのことであるが、火のないところに煙が立つことが多くなり、そのあたりまえも通用しなくなりつつある。

倫理観の喪失
簡便なSNSを通じて倫理観が損なわれている例が多い。
法律知識がなく保護者に守られている意識が強い年代に対しては、彼らだけの責任にせず、「こういうことはさすがに知っているだろう」という固定観念を捨て、「本当に何も知らない」という前提で、IT技術者というよりは一人の大人として、彼らにリスクを教えるべきであろう。
例えば、SNSをプライベートな空間だと思い、軽はずみな書き込みをすると、時に周囲の人を巻き込んでしまう事態になること、あるいは、逆にそれを知りながらも、自己顕示欲を満たすためにわざとSNSに書き込むと、時に刑事事件にまで発展することもあることをしっかりと教える必要がある。
恋人や仲のいい友達であっても、無防備な自分の映像や画像をとらせることを行ってはならない。仲違いしたことで、SNS上にその映像や画像を公開されてしまっては後の祭りである。
SNSは、実社会と同様の倫理観を持たねばならないこと、顔を実際に合わせていたときにSNSと同じ文言をその人に言うことができるのかを考えさせなければならない。

以下に事例を挙げる。
・コンビニ定員がアイスクリームケースの中に入り、その写真をフェイスブックに投稿し、炎上、当該コンビニはフランチャイズ契約を解約され休業した。

・高級ホテルのレストランでアルバイトをしていた大学生が、客として訪れていた有名人の情報をツイッターに流し、炎上、この大学生はツイッターのIDを削除したものの、過去にも同様のことをしていた事実が発覚し、更に炎上した。

・誰もやらないことをして目立ちたかったという大学生三人がテーマパークで迷惑行為を繰り返した。夢を与えるテーマパークの性格上、刑事罰には慎重論もあったが、威力業務妨害などの容疑で彼らは書類送検された。
悪のりの発端は、テーマパークの新アトラクションで骨折したと、サッカーで骨折したX線写真を添付して嘘を書き込んだことだった。

・タレントの女子高生が元交際相手に刺され亡くなった。二人はSNS(フェイスブック)を通じて出会い、交際が始まるが、別れ話がもつれたことで女子高生へのストーカーに発展、加害者は被害者の裸の画像などをネット上に流出させるリベンジポルノを行った。この事件を受けて14年にはリベンジポルノ防止法が国会で成立した。

情報社会の法制度
文部科学省では、情報産業に関わる以下のような法規を学生に理解させることとしている。確かに中学生の技術の教科書レベルでもかなりガッツリページを割いています。

著作権
人間の思想または感情を創作的に表現したものを保護するための法律。
文芸、学術、美術、音楽の創作的な表現物に対しての著作者の権利である。
届け出は不要という無方式主義をとっており、著作物の見た目を保護しているため、利用目的が商業的だろうがなかろうが、真似したものであろうがなかろうが、上手い下手にかかわらず、見た目が同じならば著作権を侵害したことになる。

著作物の定義
思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、または音楽の範囲に属するものをいう。
そのため、言語、規約、アルゴリズム、アイディア、法令、時事の報道、あるいは事実の伝達にすぎない雑報のように誰が作っても同じようなものができる場合は除外されるが、時事の報道であっても、記者が創造的内容を使った文章は著作権法の対象となる。

著作権の内容
著作権は、著作者人格権と著作者財産権とに大きく分けられる。
一般的に著作権というと著作者財産権を指していることが多い。
著作人格権は、公表権、氏名表示権、同一性保持権であり、著作者財産権は複製権、上演権および演奏権、上映権、公衆送信権、翻訳権および翻案権などがある。
著作者人格権は他人に譲渡することはできないが、著作者財産権はそれを譲渡することができる。
また、著作者人格権の権利は永久であるが、著作者財産権は著作者の死後50年、法人は公表後50年、映画は公表後70年の権利である。
権利者でないものが無断で複製し無償で頒布した場合は複製権侵害となる。
すでに公表された著作物に対して営利目的でなければ上演、演奏、上映などは無断で行っていて著作権侵害とはならない。

産業財産権
以下の①~④をいい、特許庁が所管している。

①特許権
特許法によって発明を保護するものである。特許権が認められる条件は、産業利用性、新規性、進歩性(容易に考え出される発明ではないこと)があることである。
特許出願の前にアイディアをインターネットで公表すると新規性が否定されて特許登録できない。特許権の存続期間は出願後20年である。

②実用新案権
保護の対象は、物品の形状、構造または組み合わせに係る考案であり、特許権よりも高度な事案でなくてもよい。認められる条件は、有用性、新規性、進歩性である。
存続期間は2005年から変更され、出願後10年となった。

③意匠権
保護の対象は、物品の形状、模様もしくは色彩、またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものである。
存続期間は出願後20年で、認められる条件は、物品性、形態性、美感性、工業上利用性、新規性、創作非容易性(容易に思いつかないこと)である。

④商標権
会社名、商品名、ロゴなど商用に使われる文字や図形の組み合わせをいう。日本では登録によって権利が発生する。
では、登録していない商標はどう使ってもいいのかというと、人気のある商品のパクリを販売して他者の営業行為を妨害できる可能性があるため。不正競争防止法によって違反行為となる。
14年には日本でも企業イメージを表すカラーリングや音も保護対象になった。

労働基準法
労働者が企業に雇用される場合、雇用契約が結ばれ、この契約に定めない労働条件は就業規則による場合が多い。その就業規則に記載すべきことを定めているのが労働基準法第89条である。
また、労働基準法には様々な労働条件の基準が定められており、労働基準法を下回る条件での就業規則の条項は当然無効である。
企業で作成された就業規則は労働基準監督署に届けられ、チェックが行われる。
就業規則には、IT技術者のみならず、労働者が守らなければならない規則も当然定められている。
特に情報モラルに関しては、企業内の機密情報を社外に漏洩させないという従来の規則に加え、次のような項目が近年就業規則に設けられるようになった。
・業務外でのインターネット使用禁止
・私用での電子メールの使用禁止
・情報セキュリティの遵守(別途、情報セキュリティに関する規程を定め就業規則からリンクさせる場合もある)

労働者派遣法
職業安定法第44条で労働者供給を行う行為は禁止している。
しかし、人手不足の解消もあり、労働者供給事業とは区別した派遣事業を認める動きが強まり86年に制定された法律。
派遣事業は、指揮命令は派遣先が行うが、派遣元が雇用主であり、労働者ではなく労働のサービスを派遣先に提供するという解釈のもと行われている。
したがって、派遣先は、直接従業員の採用を決めたり、解雇したりすることはできない。
したがって、以下のようなケースは派遣事業と認められない。
・請負とするが、発注者が受注者の労働者に指示・教育・勤務時間管理などを行う。
・現場責任者がいるが、発注者の指示を伝達しているだけ。
・多重に労働者派遣が行われており使用責任が不明。
・受注者が労働者を個人事業主扱いにするが実態は発注者の指示を受けている。

男女雇用機会均等法
労働基準法第4条では、「使用者は労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的扱いをしてはならない」としているが、長い間、女性を理由とした待遇の差異があったため、賃金は押さえられていた。
女性は、男性と比較して、募集および採用の不均衡、配置、昇進、降格および職業訓練、労働者の職種および雇用形態の変更、退職の推奨、定年および解雇並びに労働契約の更新などにおいて、待遇が良くなかった。
これを改善するために86年に施行された法律。

不正アクセス禁止法
パスワード保護を破る、漏らすといった行為を禁止するもので、アクセス制御されているコンピュータに対し、アクセス管理者の許可を得ずに不正アクセスする行為を禁止する法律である。
不正アクセスをせずとも、パスワードなどの識別記号を正当な理由がなく提供するような不正アクセスを助長する行為、あるいは不正アクセス目的で他人のパスワードなどを不正取得、不正保管することも、禁止の対象としている。

個人情報保護法
ネットワークの普及で個人情報(氏名、生年月日など特定の個人を識別できる情報)の漏えいや紛失の危険性が高まったこと、ビジネスにおいて個人情報を扱う場面が多くなったこと、個人が個人情報に対してコントロールできるようになったことで、個人情報保護が求められるようになった。
個人情報保護法は03年5月に制定され、05年4月に全面施行された。

製造物責任法
民法第709条では、「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とされているが、故意(わざと)はともかく過失(不注意)を証明することは容易ではない(冷蔵庫が突然発火した場合、購入者は冷蔵庫の製造過程や構造を調べなければならないから)。
これを受けて95年に施行された、購入者が過失を証明しなくても製造物責任製造者を訴えることができる法律。
ここでいう製造物とは、PL法第2条で「製造または加工された動産」と定義されているため、サービス、不動産、未加工のものはあてはまらない。
同じくコンピュータプログラムのような無体物も対象外となるが、欠陥のあるプログラムを組み込んだハードウェアの使用によって損害が生じた場合は、動産であるハードウェアに欠陥があるとしてPL法の対象となる。

名誉権
人(法人を含む)の名誉権を守るために名誉毀損罪と侮辱罪の規定が刑法に定められている。
名誉毀損罪は事実を示してそれが事実であろうがなかろうが、公然と人の社会的評価を低下させる罪である。
公共の関心事、公益目的、真実、この3つの条件全てが該当するならば名誉毀損罪とはならない。言論の自由が保障される。
同様に人格を尊重する権利としてプライバシー権がある。
特に明文化された法律はないが、私生活上のことをみだりに公開されない権利であり、肖像権も含まれる。
肖像権は自分の容姿をみだりに公開されない権利である。デジタル機器の発達によりインターネットで容易に公開できるようになったため、意識しなければならない権利である。
プライバシー侵害となるのは、例えば私生活上の事実らしいことで、一般的に公開されたくなく、一般に知られておらず、公表することによって不快、不安になるものとされている。
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