R4年度海上保安学校採用試験(特別)について

全体的な感想
全体的にスタンダードで模試っぽい。事故れば満点を取ることも可能だが、平均点も高いのか、倍率の印象よりも一次試験の突破は難しいらしい。

データ
全40題 時間は120分
試験問題持ち帰り可能。
星の数は難易度。
☆:易しい。小中学生レベル。
☆☆:普通。高校生レベル。
☆☆☆:難しい。大学入試~大学生レベル。
※:判定不能。悪問や、出題ミスなど。


文章理解
テーマがバランスよく出題。どれも新書レベルで読みやすい。

1.現代文☆
内容把握。科学革命についての文章。
自然界の原理(どうなっているか)に哲学的な根拠(なぜそうなっているか)が不要になったといった論旨。

2.現代文☆
内容把握。芸術論で、内容がやや難解だが、不正解の選択肢が判りやすい。
リアルでは自己の利益のために相手を不幸に陥れるような人でも、虚構の世界では不幸なキャラクターに共感していたりするため、芸術は社会形成の学校のようなものであるという論旨。大切なことは漫画で教わった、みたいな。

3.現代文☆
内容把握。ビジネス論。最近にわかに使用されているカタカナ語「ナラティブ(話術)」の話。
こういう言葉っていったいどこの誰が流行らせているのだろうか。電通なのかリクルートなのか。「ぴえん超えてぱおん」的にどうでもいいけれど。

4.現代文☆
空欄補充。フッサールやゲーテル、カントールなど、論理の破綻の研究(本質的に解けない問題の存在)についての文章。個人的に、こういう分野はすごい好き。
カントールの検証でチューリングがコンピュータの研究をしたんだっけか。

5.古文☆☆
内容把握。出典は鎌倉時代に書かれた『宇治拾遺物語』。
内容を要約するとこんな感じになる。延喜の頃(平安時代中期)の京都に、実のならない柿の木があり、そこに仏様が現れるので、大混雑だった。本当に仏様が出現するのかと疑問に思った右大臣は、人々を追い払い、その木を2時間観察する。すると仏様だと思われていたものの正体はクソトビ(=今で言うノスリ)という鳥だった。
選択肢の判定がやや際どいので、内容をしっかり読み込む必要がある。

6.英文☆
キノボリカンガルーの生息地が減っているという内容。

7.英文☆
ジグソーパズルがストレス解消になるという内容(本文9段目)。

判断推理
一部珍しいタイプの問題(ミスター味っ子)があるが、基本的にとても易しい。

8.集合☆
情報量が多い鉄道の利用者数を攻める。
工場Aの鉄道利用者>工場Bの鉄道利用者
工場Aの鉄道利用者(40歳以上)<工場Bの鉄道利用者(40歳以上)
なので
工場Aの鉄道利用者(40歳未満)>工場Bの鉄道利用者(40歳未満)

9.位置☆☆
・男子3人、女子2人で、男女各1人がタブレットを持っている。
・タブレットを持つ2人の間には女子が一人だけいる。
・Aから1人おいて左には、タブレットを持つ女子がいる。
・女子であるBのすぐ右隣には男子がいる。
・Cから1人おいて右には、タブレットを持っていない女子がいる。
・男子であるEのすぐ左隣の学生はタブレットを持っている。

タブレットを持っている女子を基準に入れていくとよい。
成立するのは以下の場合だけ。
位置.jpg

10.勝敗☆☆
ミスター味っ子のような料理対決で3人の審査員の合計得点が等しくなってしまい、順位が付けられず、再評価をしたという、珍しい問題。
勝敗①.jpg
最初のルールは、1位6点、2位4点、3位2点の点数固定だったが、再評価の際は1点刻みで持ち点12点を自由に割り振れるようになっている(ただし順位は変更しない!)。

再評価の結果以下のことが分かっている。
①どの料理も3人がつけた得点は異なっていた。
②料理Aは3人の審査員はすべて奇数の得点をつけ、総得点は一桁だった。
③料理Bは3人の審査員はすべて偶数の得点をつけた。

勝敗②.jpg
ヒント②が強い。※すべて奇数の総得点が1桁になるのは5+3+1の9点だけ!

こたえ:料理Cの点数は15点(で優勝)。

11.順序☆☆
5人が喫茶店で待ち合わせた。
9:49に最初の人が到着。
その17分後の10:06に最後の人が到着。
つまり、17分間(=目盛り17の数直線)の中に5人をどう割り振るかという問題。

Dが4番目に到着したということが分かっているので、Dと11分差のEはDよりも11分早く到着していることが分かる(EがDよりも11分遅いとDを4番目にできない!)。

問題は5番目(最後)がAとBのどちらかになるが
Bを5番目にすると、一番早く来たEがBの16分前になってしまい、17分間が成立しない。

よって最後はAとなり、次のように確定ができる。
9:49にCが到着。
9:51にEが到着。
9:57にBが到着。
10:02にDが到着。
10:06にAが到着。

12.手順☆
・ドローンEは、ドローンCとDが同時に止まらない限り、飛行している。
・ドローンCは、ドローンAが止まっていると飛び、ドローンAが飛んでいると止まる。
・ドローンDは、Aが飛び、Bが止まっているときだけ飛ぶ。

ちょっとややこしそうだが、実はドローンEの状態だけを聞かれているので、条件が厳しいドローンEが止まる場合だけ調べて、あとは「飛行している」にすればよい。

ドローンEを止めるにはドローンCとDを同時に止めなければならないので・・・
Cを止めるためにAを飛ばし、Dを止めるためにBも飛ばす。
よってドローンEが止まるときは、AとBが飛んでいるときだけなので、こたえは③。

13.平面構成☆
4ピースしかないめちゃくちゃ易しいジグソーパズル。

14.立体の切断☆
正八面体の断面は、どんなに頑張っても四角形と六角形しかできない。
※意外と三角形はできない。

数的推理
15.確率☆
15枚のくじから2枚を引いてメロン(2/15)を当てる確率。
景品(フルーツ)はメロンを含む5種類もあるが、これはひっかけで使わない。
メロンだけに集中して余事象で求めてしまう。

メロンが当たらない確率(余事象)は
13/15 × 12/14 = 26/35

なのでメロンが当たる確率は
35/35 - 26/35 = 9/35

16.平面図形☆
2つの直角三角形を組みなおして1つの長方形にする。
すると、聞かれている面積は長方形の面積(6π)から、大きな半円(2π)と小さな半円(0.5π)の面積を引いた値になることが分かる。

17.魔法陣☆☆
魔法陣.jpg

18.二次不等式☆☆
解の公式を使うのがちょっと面倒。
(n-1)²が10(2n-3)よりも小さい。
n²-2n+1<20n-30
n²-22n+31<0
※解の公式を使って解く。
11-3√10 < n < 11+3√10・・・①

n²が10{2(n+1)-3}よりも大きい。
n²>20n-10
n²-20n+10>0
※解の公式を使って解く。
n<10-3√10 10+3√10<n・・・②

①と②を同時に満たす数は
10+3√10 < n < 11+3√10
√10は3よりも大きく4よりも小さいので
nは19より大きく20より小さい数よりは大きく・・・
nは20よりは大きく21より小さい数よりは小さい。
よってn=20

資料解釈
19.円グラフ☆
牛肉と豚肉の輸出額の合計値が異なるため、まずは輸入国別の占有率(%)から具体的な金額を出してしまう。
牛肉の輸出額の45%を占めるA国の輸出額は3000億×0.45=1350億など。

20.表☆
紙の出版と電子出版の比較。電子出版の75%がコミックであり、電子雑誌は5%にも満たないことが分かる。

自然科学
どれも易しい。※すべて中学生が解ける。

21.数学☆
平方根の大小関係。
A=5
B=√5+2
C=(√5+4)/2
√5≒2.2なので
C<B<A

22.物理☆
正しい合成抵抗の公式はどれかと言う問題。
直列回路:R合成=R1+R2・・・
並列回路:1/R合成=1/R1+1/R2・・・

23.化学☆
金属元素の知識問題。
①正しい。
②17族はアルカリ度類金属ではなく、ハロゲン。
③金属は木材よりも熱伝導性は高い。展性や延性も大きい。
④金属の表面は光をすべて吸収しない。
⑤ステンレスは銀と銅の合金ではなく、鉄とクロム。
 ジュラルミンは鉛と水銀の合金ではなく、アルミをベースに銅、マグネシウムなど。

24.生物☆
真核細胞の細胞小器官。
A:細胞膜の説明
B:液胞の説明
C:ミトコンドリアの説明

25.地学☆
気圧配置図。
天気図記号は●が雨。羽が風向を表している。

人文科学
海の警察という職業柄なのか、歴史はどれも地政学的、軍事的な内容。

26.世界史☆☆
第一次世界大戦前後の世界の情勢。
①ドイツは3B政策で西アジアに進出し、イギリスの3C政策と対立した。正しい。
②大津事件の内容は正しいが、第一次世界大戦の開戦理由ではない(そもそも日本は参戦してない)。開戦のきっかけはサラエボ事件。
③三国協商陣営と三国同盟陣営が真逆。
④イタリアは当初はドイツ側についていたが、未回収のイタリア問題の関係(オーストリアが嫌い)で三国協商側に寝返った。ブレスト=リトフスク条約をドイツと結んで単独講和をしたのはソ連(ソ連は領土の多くを失った)。
⑤ロシアの南下政策に苦しんでいたオスマン帝国は、イギリスではなくドイツとともにロシアと戦った。

27.世界史☆☆
第二次世界大戦後の世界の情勢。
A:中国共産党が中華人民共和国を、台湾に逃れた国民党が中華民国を建国。正しい。
B:第二次中東戦争(スエズ戦争)の説明。正しい。
C:南アのアパルトヘイトを撤廃したのはマンデラ大統領。ティトーはユーゴの指導者。
D:ポル=ポトはインドネシアではなくカンボジアの恐怖の独裁者。

28.日本史☆
幕末~明治初期。
①公武合体路線は大老の井伊直弼ではなく、その次の老中の安藤信正。
②王政復古の大号令の記述。正しい。
③西郷隆盛が興した士族反乱は戊辰戦争ではなく西南戦争。
④明六社の説明が蛮社の獄の説明になっている。明六社は明治6年に洋行帰りの学者によって結成された学術組織。文明開化を先導し、別に新政府に処分されてはいない。
⑤地租改正に反対する流れで自由民権運動が盛り上がったので、自由民権運動の申し子の板垣退助が地租改正を推し進めるわけがない(正しくは陸奥宗光)。

29.地理☆
自然地理学。世界の地形と気候。若干高校レベルだが、正解が選びやすい。
①五大湖はロッキー山脈からかなり離れている。アパラチア山脈の間違い。
②インダス川は東南アジアにはない。
③アルプス山脈は新期造山帯。地中海沿岸ではオリーブが栽培。正しい。
④ナミブ砂漠は中国ではなくアフリカ南西部にある。中国の南部は寒冷ではなく、むしろ温暖。
⑤パンパや金鉱山、火山災害があるのはブラジルではなくアルゼンチン。ブラジルに火山はない。

30.地理☆
人文地理学。人口と食料問題。
①世界で人口が最も多いのはアフリカではなくアジア。※よく狙われる。
②飢餓で苦しむ国がある一方、先進国ではフードロスが問題に。正しい。
③スプロール現象は発展途上国ではなく新興国でみられる。
④少子高齢化を示す人口ピラミッドの形は富士山型ではなくつぼ型。
⑤我が国の合計特殊出生率は人口の維持に必要な1.8を下回っている。

31.国語☆
①勧誘―歓迎
②紛失―粉砕
③署名―由緒
④愉快―教諭
⑤倒立―圧倒的※正解

32.国語☆
ことわざ。正しい意味は以下の通り。
①藪をつついて蛇を出す:余計なことをやること。
②後は野となれ山となれ:目先のことはエ解決できれば後はどうでもいいということ。
③木を見て森を見ず:細かい点ばかり見て全体を見ないこと。※正しい
④雨降って地固まる:もめ事の後はかえって結束が強まること。
⑤三日見ぬ間の桜:世の中の移り変わりが激しいこと。

33.英語☆☆
taughtはteachの過去形。

34.英語☆☆
part in 〇〇 で「○○に関与する」
remind of ○○ で「○○を思い出させる」
busy with ○○ で「○○で忙しい」
よって3が正解。

社会科学
6問中2問が倫理という珍しいパターン。難易度は中学校の公民レベル。

35.政治☆
日本の政党政治。
①90年代の政党助成法の説明。正しい。
②我が国にロビイスト(圧力団体の利益を政治に反映させるために裏工作を専門とする人たち)はいない。族議員がそれを担っていたところがあった。
③財界の組織が政党内の派閥になるなど意味不明の文章。
④自分の思想に近い報道を取捨選択することをメディアリテラシーとは言わない。
⑤マニュフェストは政党に対して法的拘束力を持たない(持っていたらここまで破らない)。

36.政治☆
社会権に対する説明。
①社会権を初めて定めた憲法はドイツのワイマール憲法。
②正しい。
③普通教育を受けさせる義務は政府に対してではなく国民(親)。
④生存権のプログラム規定説は、生存権の保障は国の努力義務にすぎないとする考え方。
⑤日本国憲法に環境権などの新しい人権の明記はない。新しい人権の法的根拠は憲法13条の幸福追求権だとされる。

37.経済☆
①可処分所得とは、家計において食料と服に使われる所得ではない。別に趣味やレジャーでもいい。
②経営者と株主の記述が逆。
③企業の社会的責任CSRとISOがごっちゃになっている。ISO14001は環境に配慮した企業が認証させるが、この数字は通し番号で何かのスコアではない(ISOが1万4千点を超えると企業は社会的責任を果たしたとされるという記述は笑った)。
④価格の下方硬直性は価格が上がりにくくなるのではなく、下がりにくくなること。
⑤正しい。

38.社会☆
日本の社会保障制度。
①国民年金は戦前ではなく戦後スタート。61年に開始され、86年に強制になった。
②社会保障制度は保険料と税(公費)でまかなわれている。正しい。
③社会保険は雇用保険と年金保険以外にも、介護保険、医療保険、労災保険がある。
④公的扶助は医療や会議も含まれる。
⑤公衆衛生は、上下水道、ごみ、食品衛生、伝染病対策等、地域の医療や健康の維持向上のための制度なので、社会的弱者の自立支援は誤り。

39.倫理☆☆
心理学。教員採用試験っぽい内容。
①心理的離乳はルソーではなくホリングワース。※やや難しい選択肢
②発達課題はユングではなくハヴィガースト。
③マージナルマンはレヴィンが提唱。正しい。
④防衛機制はエリクソンではなくフロイト(の娘)。
⑤自己実現論はフロイトではなくマズロー。

40.倫理☆☆
ギリシア哲学。スタンダードな内容。
①万物の根源はエポケーではなくアルケー。エポケーは判断を保留すること。
②ソクラテスではなく弟子の弟子のアリストテレスの内容。
③プラトンは哲人政治を批判ではなく主張した。
④イデア論の説明なのでアリストテレスではなく師匠のプラトン。
⑤ストア派の説明。正しい。
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