リアルトップガンメモ

 『トップガンマーヴェリック』が大ヒットしていますが、この前、リアルトップガンの人と話す機会があったので、公開できる範囲で書き残そうと思います。こんな機会なかなかないしね。
 ちなみに、スクランブル発進はロシア・ウクライナ危機が起きてから急増し、昨年は900回を超えたらしい。しかも、海のように民間の船を装ってスパイ工作船・・・とかではなく、ガッツリ戦闘機や爆撃機などの軍用機が挑発飛行しているので、かなり物々しいという。
 ここら辺のデータは航空自衛隊がネットで全て公開されています。こうやって見ると、ロシアと中国って正気かって感じがするけど、やっぱりなめられてるというか、信頼されているんだろうね。日本はなんだかんだで注意するだけで攻撃はしてこないぞっていう。自衛隊の皆さんには、まったく感謝しかない。

戦闘機パイロットについて
日本の自衛隊は航空自衛隊だけが戦闘機を持っている。
トップガンのように海軍(海上自衛隊)に戦闘機はないが、今後F35が海上自衛隊に導入される可能性がある。航空自衛隊預かりになるかどうかは決まっていない。

航空自衛隊のパイロットになる道は
①航空学校※全体の6割
②防衛大学校
③幹部候補生

の3つだが、このうち最も早い年齢でパイロットになれるのが①の航空学生で、入隊後約4年で事業用操縦士(国家資格)が取得できる。
操縦士の免許は自動車の運転免許のようなカードではなく、ただの紙切れで、取得者は自主的にパウチにしている。

パイロットは全員幹部となり、2年間の航空学生課程を卒業した時点で、3等空曹、入隊後6年で3等空尉(少尉)に昇任する。
※戦闘機操縦者は、犯罪でもやらない限り3等空佐(少佐)までは確約!

①戦闘機
②輸送機
③救難機
のパイロットを選ぶ場合、戦闘機のパイロットが最もつぶしがきく。
※戦闘機を辞めた後に、輸送機や救難機、民間機のパイロットになれるため(その逆はできない。例えば、輸送機のパイロットは戦闘機を操縦できない)。

航空学生の受験
倍率は20~30倍だが、実質は10倍ほど(本気で目指している人は少ないため)。ここ3~4年は受験者が少ないので、志望者にとっては超チャンス。『トップガン』の大ヒットで受験者が増えることを期待。
H27年度からは女性も戦闘機のパイロットになれる。
※H30年に初の女性戦闘機パイロット誕生。でも防衛大卒のウルトラエリート。

航空学校の受験のチャンスは3回で、18歳以上~21歳未満。
※海上自衛隊の自衛官だけは23歳未満までOK

一次試験
学力試験は択一式(国数英3科目と理社の1科目を選択)と記述式(数英)。
また、操縦適性検査(操縦に必要な判断力・正確性を筆記式で検査)。

二次試験
航空身体検査
※急減圧や高Gといった環境への適性がない人が戦闘機のパイロットになってしまうと命にかかわるので、これをクリアするのが厳しい。

急減圧:ほとんどないが、戦闘機が故障してコックピット内の圧力が保てない時。
高G:旋回時最大で9G(自分の体重が9倍になる)もかかる。
血液がすべて下に落ちてしまうため、失神する。下半身をかなり鍛えると、血液の落下を筋肉で食い止められ、失神しないらしい。

長距離視力の条件
裸眼で0.1、矯正視力で1.0以上が必要。
レーシック手術をした人は不合格なので注意。

口述試験
適性検査(知能検査・性格検査)

三次試験※1週間行なわれる
操縦適性検査:T-7というレシプロ機を実際に操縦。
コンピュータ検査:R4年度から追加。
心理面接検査・医学適性検査:操縦適性の合間に実施。心理適性検査はかなりラフなもの。

航空学生の生活
食事はおいしく、もつ煮などもが出る。
カリキュラムは2年間で、2年目の「野外総合訓練」が地獄のように辛いらしい(長期間のサバイバル)。
また、卒業間近の2月にある「断郊競技会」は装備をすべて身に付けて長距離を全力疾走するという過酷なものだが、この地獄はすぐに終わるため、やはり野外総合訓練がナンバーワンで辛いという。
ちなみに、1年目のスキー訓練は雪山に墜落したシチュエーションの訓練だが、スキーが得意だと普通に楽しいらしい。
また、2年目10月の硫黄島の研修では、硫黄島近辺に釣り人や漁船が来ないため(自衛隊員以外は立ち入り禁止)、常時爆釣モードだという。

飛行幹部候補生
航空学生の課程を修了(階級は空士長→3等空曹)すると、飛行幹部候補生になり、飛行機の操縦訓練が実践的になる。

①初級操縦課程
T-7で基本的な操縦技術を習得。

②基本操縦課程
ここからレシプロ機ではなく、T-4(ブルーインパルスで有名な戦闘機)を操縦。

③戦闘機操縦基礎課程
T-4の応用的な操縦技術を習得。

④戦闘機操縦基礎課程
実際のF-15またはF-2を使って戦闘技術を習得。
ここをクリアすると3等空尉となり、プロの戦闘機パイロットとして戦闘航空団に勤務できる。
ちなみに、戦闘機のパイロットは30~40代まででアスリートのように引退し、その後はパイロットの教官や幕僚となる。なので、トップガンのように還暦近い人が戦闘機に乗ることはないっぽい。

フライトペイ
パイロットは超高給取りだが、その理由の一つが、戦闘機に乗ることで危険手当が加算され給料が跳ね上がるため。
これは船でも同じなので、実は免許なしですぐに船に乗れる海上自衛隊の方が昇給は早い。
自分の給料は21歳(2等空曹)くらいで抜かれてしまいました。

※追記
学生におすすめされて、とうとう『トップガンマーヴェリック』をレイトショーで観てきました。2022年の映画とは思えないくらい、良くも悪くも90年代。めちゃくちゃベタ。
今の若い子がこの内容で感動してくれるのは、おじさんとしてはちょっと嬉しい。こういう映画って昔はたくさんあったよな。航空学生の志願者も増えるのではなかろうか。
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