『鎌倉殿の13人』の面白さの秘密

 秘密ってほどのものでもないんだけど、この前ガイドブックの後半が出たので、それをさっそく購入し読んでたら、三谷さんが言うとおり頼朝が死んでからが本番なんだって分かって、それと同時に、あ、この大河ドラマが視聴者の感情を揺さぶる原因ってこれか?って気づいたんだけど。
 ちなみに、自分は平安後期~室町時代が一番日本史で好きで、細かな知識はともかく大体の流れはすでに知っているから(学校で教えてるくらいだし)、別にネタバレは気にしないんだよね。
 まあ、この記事は特にネタバレではないので、安心してくれ。

 最近、SNSとかで三谷さんって人間の怖さや闇を描くのがすごい!とか言われているけどさ、個人的にはそうじゃないと思うんだよね。基本的にハートウォーミングな人物造形をする人だし、多少人間に対する歪んだ見方はありそうだけど(それが発揮されたのが『ギャラクシー街道』)、あまり人間の悪意とかを描くのに興味がある人じゃないと思うんだよ。
 なので、三谷さんはいつもと同じようなキャラクターを当て書きしているだけで、そういった人間の怖さや闇は、別に三谷さんが思いついているのではなく、あくまでも史実がそうだからっていう。つまり、いつもの三谷コメディ(みんな武衛だ!)に、史実という縛りプレー(上総介殿御免!)があるおかげで、結果的にそのギャップが凄まじいものになってしまい、視聴者――特に鎌倉時代の知識がない人がショックを受けるという。

 これが、すべて三谷さんが考えていたら、三谷幸喜やべーな、闇落ちしたなって思うんだけど。多分実態はここら辺だと思う。まあ、三谷さんは歴史マニアだから、それも込みで楽しんで書いてそうだけどね。
 基本的に三谷さんは、登場人物をみんないい人に描いちゃってから、う~ん、なんとかこの史実のできごとにつじつまを合わせないと・・・ってやっているから、え?この人にそんな一面が!?ってなるのだと。
 これがもっと自然に悪意のある人間が描写できる脚本家だったら、ああ、こいつは誅殺をやりかねないわって、展開に説得力があるんだけど。よくも悪くもそれがないから、結果的にショッキングな展開になっちゃう。
 これは、『真田丸』にはあまりなかったんだけど(一族が史実でも割と仲が良かった)、『さ新選組!』の後半では多発したからね。
 で、今はまだ効果的に機能しているギャップだけど、後半はあまりにもそれがひどくなりすぎて、気にならないかちょっと不安。それくらい、後半戦の北条VS比企はすごい。ここまで対立するのは知らなかった。今は頼朝がいるから、表立った対立がないってだけなのね。

 あと、『ノーカントリー』の殺し屋みたいに評価されている梶原善さんだけど、あれも三谷さんが悪意のあるキャラを描けないから、暗殺を象徴するキャラを作って、デウスエキスマキナにしちゃっているだけだと思う。
 これは『真田丸』の「全力で押し通りまする」の人と一緒で、もしかしたら善児はあの人と同様に普通に生き残るかもしれない。善児自身が悪いというよりは命令する奴が悪いわけだし。
 戦争映画で戦車や核兵器そのものがひどい目にあうとか、完全に処分されるってことはないじゃん。結局はそれを利用する奴だろってなりそう。
 わかりやすい筋書きだと、最後に主人公の義時が善児が必要ないほどダークになっちゃって、用済みだってしちゃう展開だけど、なんか三谷さんっぽくないしな。
 むしろ、善児の方から「もう私がいなくても謀は進みますな」って引退しちゃうかもしれないしな。殺しが好きっていうよりは、仕事と割り切っている感じがするし、あの人。
 第20回の「(義経を)やっちまいましょうか?」も、「辛そうな表情しているけど、どうせやることはやるんだろ?」って、感じだったしね。とっととやることやって定時で帰ろうよっていう。
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