『風と翼:RESET』脚本②

警視庁
警視総監「なにが警視庁大勝利だね!!」
怒られている八重警視。
八重「で・・・でも、五右衛門は犯行に失敗したわけで・・・」
警視総監「五右衛門のターゲットはそもそも聚楽第の売上金じゃない!」
八重「へ?」
警視総監「“聚楽第という存在そのもの”なんだ!なぜ、君にはそれがわからん!」
八重「・・・??」



石田内閣緊急閣僚会議
閣僚たちが総理の前で正座をしている。
石田内閣総理大臣がリモコンのボタンを押し、動画を閣僚に見せる。
石田総理「これが先日、石川五右衛門から送られてきた・・・」
動画は聚楽台の内部の様子だった。

石田総理「この箸でおねえちゃんのスカートをめくっているのは黒田孝高日銀総裁、となりで拍手しているのは竹中重治財務大臣、ここでイチボを焼いているのは前田利家幹事長かな・・・」
バツが悪そうな閣僚たち。
プルプル震える石田総理「どいつもこいつもバカ丸出しで鼻の下を伸ばしやがって・・・この動画が世に出たらどうなるかわかっているのか!!!!」

大谷官房長官「お言葉ですが、聚楽第プラチナ会員の総理が何を言っても説得力がありません。」
石田総理「私は、五右衛門が予告する日には来店しない!それくらいの危機管理能力はお前らにもあるだろ!!」

閣僚たち「し・・・しかし、聚楽第は政財界のごく一部の権力者しか存在を知らなかったわけですし・・・五右衛門も68年の3億円事件から何十年も姿を消していたわけで・・・なぜ突然現れたのか・・・」
閣僚たち「2代目かな?」
「それはありそうだね」
石田総理「んなことは、どうでもいい!!」
大谷長官「で?五右衛門の要求は?」
石田総理「内閣官房機密費から1000億円をケイマン諸島の口座に振り込まなければ、ツイッター、インスタグラム、ティックトック、アマゾンプライム等で世界同時配信をすると言っている・・・」
大谷長官「確かに、内閣官房機密費は使途を公表しなくていいわけですけど・・・というかなんで、そんなに内部情報に詳しいんだ??」

床を叩く石田総理「おのれ石川五右衛門・・・!なんて卑劣な奴なんだ・・・!」
大谷長官「で、どうしますか、総理。内閣官房機密費も公金ですからね。ここはいさぎよく全員で腹を切るのも・・・」
石田総理「ケイマン諸島に1000億でも1兆でも振込みなさい!!」



石川五右衛門の秘密基地――
パソコンやジャンクが並んだガレージの地下で若者たちが何やら集まっている。
メガネを外すウォンイク。
「キミに返すよ。しかし、あんな品性下劣な店に足を踏み入れただけでもボクにとっちゃ人生の汚点だね、格好の週刊誌ネタだよ、いやはや・・・」

メガネを受け取る肥満の少年、安藤夏博。
安藤「まさか、このメガネで店内を録画をしているとは気がつかなかったようですね」
ウォンイク「あの様子では、怪盗五右衛門が実は五人組だってことも気づかなかっただろうねえ・・・」
安藤「しかし、ハッキングしといてなんですけど、この国では本当にあんな接待が行われてるんですね・・・大丈夫なんでしょうか、僕たち・・・」

ショートカットの利発そうな美少女が部屋に入ってくる。
天井サラ「安藤くん、もしかしてビビっちゃったの?・・・な~に大丈夫よ、絶対に警察沙汰にはならないから。だって贈収賄でまとめて逮捕されちゃうもん。も~司法試験に合格した私を信じなさい!」
安藤の肩を思い切り叩く。
安藤「とはいえ、1000億円の要求はさすがに法外ですよ。いくらなんでも振り込まれ・・・」
パソコンのモニターに目をやる安藤。
安藤「ケイマン諸島の口座に1000億円振り込まれています・・・」
ヘラヘラしていたのが青ざめるサラ「どうしよう・・・」
ウォンイク「いたずらじゃ済まなくなってきたみたいだね、ベイビー・・・」
安藤「どうするんですか?このお金・・・」
サラ「本当に振り込むとは思ってなかったもんね・・・とりあえずリーダーに相談しようか・・・」
ウォンイク「ベイビーいやはや・・・」
サラ「そういや大道寺は?」
安藤「となりで五右衛門応援リツイートキャンペーンの選考してます。」

ダイレクトメールを涙ぐんで読むヤンキーの大道寺「東京都在住のM・Cさん、私は子どもの養育費とボケた父親の世話で家計が苦しく、我が子にランドセルも買ってあげられません、義賊の五右衛門さん、どうかお金を恵んでください・・・くぅ~泣かせるじゃねえか、1等の1000万円はこの人に決めたぜ・・・!」

部屋に入ってくるサラ「あんたバカ?職歴に丸の内の外資系企業勤務って書いてあるじゃない。そんな勝ち組がどうしてお金に困るのよ。絶対嘘だって・・・」
慌てて涙を拭う大道寺「なっ・・・!てめえ、ノックもせずに入ってくるんじゃねえ!!やんのか、コラ!」
サラ「もう応募総数が1000万人を超えているんだから、所得額に応じて当選額を公平に配分すればいいじゃない。安藤くんがそういうAI作ってくれたんでしょう?」
大道寺「お前は人の心がねえな。そんな機械的な作業のどこに感動があるかよ。」
サラ「ねえ、リーダーは?あんた一緒だったんじゃないの?」
大道寺「何か人に会うとか言ってたぜ。」
サラ「ふうん・・・」



石川五右衛門のニュース。
伝説の義賊石川五右衛門令和に復活!
SNSを駆使して全国の生活困窮者に現金給付。
実際に五右衛門から現金が振り込まれた町の人々の声です。
「コロナ禍で苦しい時に本当に救われました。これで会社をたたまずに済みます!」
「物価高を放置した挙句に、増税を考えている石田政権よりもずっと頼もしいです」

スタジオ
キャスター「五右衛門の意図は一体何なんでしょうか」
解説委員「現政権に対する批判のつもりでしょうが悪趣味が過ぎますね。今回の事件が五右衛門本人によるものなのか、それとも模倣犯なのかはわかりかねますが、かつての五右衛門と大きく異なる点は、SNSといった最新テクノロジーを駆使している点です。日本の警察組織はことサイバー犯罪に弱い。そのため、未だに足をつかめずにいるのでしょう。」
キャスター「資金源は何だと考えますか?」
解説委員「石川五右衛門は3億円事件をはじめ、かつて強奪した多くの財宝を今なお隠し持っていると思われます。それをヘリコプターマネーのようにばらまいているのでしょう。まったく許しがたい!私も応募したのに一銭も振り込まれません!」



夜。高層ビルの屋上。
高層ビルに備え付けられたマルチビジョンのへりに立っている翼。
「・・・って、何してるんですかカイトさん!」
マルチビジョンの五右衛門のニュースを指差して、こちらに振り返る翼。
カイト「あれは、金持ちは当たりにくくなってるんだよ」
スタバのシアトルラテを翼に渡すカイト。
「ひさしぶり、翼さん」
「高校卒業後は大学行って野球やるんじゃ・・・」
「分数の通分ができない僕の学力で大学に行けると思う?」
「え?い、いや・・・まあ。」
「でも、こっちもびっくりしちゃったよ、翼さんが警察官になっているなんて」
「いや、あれは頼まれてやっているだけで・・・私は図書館に内定が・・・」
「えっ?翼さんともあろう忍者が司書さん?」
「それはお互い様ですよ!カイトさんみたいな優秀なピッチャーが大泥棒やっているなんて・・・!どこで道を間違っちゃったんですか??」
「どこと言ったら、あなたに会ったときかな・・・」
「え?」
「翼さんとの冒険で僕は天職を見つけたと思ったよ。僕が就職すべきは野球選手なんかじゃなくて忍者だ。翼さんみたいに正義の忍びの道を究めたい。」
「う・・・そう言われると、スカウトした私にも責任が・・・
でも、あんなこと間違ってます・・・!今ならまだ間に合います、わたしと八重さんに謝りに行きましょう・・・」

「・・・警視庁ってどこにあるの?」
「ええと、千代田区だから・・・あそこかな?」
夜景を指さす翼。
「あっちは夜景がきれいだよね」
「?」
「僕の育った神奈川県はあっち」
三浦半島の方を指さすカイト。そこは闇に包まれていた。
「朝鮮出兵のせいで電気代は10倍。もう、この日本ではごく一部の政令指定都市しか電気の恩恵が受けられない・・・望月村は?」
「・・・記録的インフレでマッハで廃村になりました・・・」
「こんな状況絶対おかしいってみんな思っている・・・でも誰も立ちあがらない・・・誰かがやらなきゃいけないのに。」
「で・・・でも・・・」
「翼さんが逮捕しなきゃいけないのは、税金でホルモン焼いているおじさんたちなんじゃないの?」
「う・・・でも、私が心配しているのは・・・」
「だいじょうぶ、泥棒稼業は今回だけだから」
「・・・ほんとう?」
「うん。こっちも忍者をやってたことを買われて、昔の友達に頼まれちゃったんだよ・・・盗むのがいくら犯罪者のお金とは言え、泥棒は泥棒だもんね・・・」
「それならいいですけど・・・たった一回でも・・・」

その時、二人にくないが投げつけられる。
咄嗟に避ける二人。
翼「命を狙われるのが、この業界だから・・・!」
カイト「殺し屋か・・・!」
カイトをかばって殺し屋と闘う翼「今のうちに逃げてください!」
カイト「いや、二人でやっつけよう!」
その途端、殺し屋にオーバーヘッドキックを喰らうカイト。
ぶっ倒れるカイト「・・・無理かもしれない!」
細身の割に怪力で、二人を戦闘で圧倒する殺し屋。
カイト「くっ見かけによらずなんて馬鹿力だ・・・」
翼「くないに毒が塗ってあります!気をつけて!」
カイト「あ、だから体がしびれているのか・・・」
翼「カイトさん・・・!」
倒れるカイト。

翼に狙いを定める殺し屋「あなたは血の匂いがする・・・必死に殺気を消しているようだけど・・・」
翼「狙いは私ですか・・・」
殺し屋「平和な世の中に不要な驚異は排除する・・・」
西洋式の刃渡りが広いブレードを背中から出して斬りつけてくる殺し屋。
翼「!・・・疾い!」
忍刀の二刀流で応戦する翼。
翼「どこの流派かわからないけど、めちゃくちゃ強い・・・!殺す気で行かないと、こっちが本当に殺される・・・・!」
戦いをためらう翼が押されていく。殺し屋は本気で翼の首をとろうとする。
回し蹴りを避ける翼。ブーツにも毒の刃がついている。
刀で殺し屋の脚を切断し、そのブーツの刃で殺し屋の顔を突き刺す翼。
殺し屋の頭部から大量の血が吹き出す。
殺し屋「さすがね・・・こんな残酷なこと普通の司書にはできないわ・・・」
動揺する翼。
殺し屋は倒れて、ビルから落下していく。

翼「はあはあ・・・」
ふらふらしながらなんとか立ち上がるカイト「翼さん・・・」
翼「見てましたか?正義の忍びなんて現実にはいないんです・・・」
返り血を浴びる翼を呆然と見つめるカイト。
パトカーのサイレンが聞こえる。
「これで殺人罪で私もお尋ね者ですね・・・」
カイト「さ、さっきのは飛び降り自殺ってことにしようよ・・・」
涙ぐんで首を振る翼「カイトさんには野球をやってほしかった・・・」
ビルから飛び降り姿を消す翼。
カイト「翼さん・・・!」

ビルの屋上にかけてくるサラ
「カイト君!こんなところにいた・・・!」
「サラちゃん・・・」
「ちょっと、何があったの?怪我してるじゃない!」
「殺されかけた・・・」
「え?」
カイトに肩を貸すサラ。
カイト「翼さんにも襲いかかってきたということは、政府は聚楽第を知る人間は全て抹殺するつもりなんだ・・・」
マルチビジョンを振り返ると、聚楽第の様子が映し出されている。
カイト「これは殺しに来るわな・・・」
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