『青春アタック』脚本①零丁孤苦

どこかの体育館でバレーボールの大会が行われている。
観客たちの大歓声。
選手「点差は開くばかりだわ・・・」
スコアボードのアップ。
キラキラ高校2点、大日本帝国高校126点
大日本帝国選手「ほほほ、まろの勝ちぞ・・・!」
キラキラ高校選手「もうだめだ~」
キラキラ高校エース「いや、試合はまだ始まったばかりよ!」
キラキラ高校選手「!・・・あなたは・・・伝説のバレーボーラーしろったま子さん!」
しろったま子「希望を捨てなければきっと勝てるわ!」
「しかし、この点差をどうすれば・・・」
しろったま子「ボールの中にC4爆薬を詰め込んで・・・」
そのボールで敵コートにアタックをするしろったま子「青春アタック!!」
大爆発
審判「かち!」
しろったま子「スーパーラッキー!」



商店街の電気店のディスプレイに飾ってあるテレビアニメに、ガラス越しでかぶりつく小学生くらいの少女。
髪はボサボサでハナを垂らしている。外は雨が降っていて、ボロボロのこうもり傘をさしている。
少女「かっけ~・・・!」
店内から迷惑そうに店主(あの子また来てるな・・・)
店主「ほら買わないなら帰った帰った!!」
少女「おっちゃん、どうやったらバレーボーラーになれんの??」
店主「は?・・・中学校に入学したら部活でやればいいんじゃない・・・?」
少女「・・・学校??学校ってどうやったら入学できんの?」」
店主「え・・・?キミ、いったい何歳・・・??」
少女「16さい。」

1998年――
バブル崩壊の影響で、日本の街並みはところどころに廃墟があり、がれきが広がっている。
シャッター街の地面に捨てられた新聞紙が揺れている。
「山岸証券破綻!日本経済は再起不能の見通し、富裕層の国外脱出相次ぐ。
政府は総理大臣以下、閣僚を国民から抽選で決める見通し――」

千葉県立織戸(おるど)高等学校
電気屋さんに書いてもらった地図を持っている少女「ここが学校かあ・・・!」
体育館をのぞく少女。
中では高校生たちが部活でバレーボールをやっている。
少女「すげ~!テレビまんがとおんなじだ・・・!」
?「あなたもバレーが好きなの・・・?」
少女が振り返ると、バレーボールを持った青い髪の長身の女子高生が立っている。
少女「!もしかして、おねえさんはバレーボーラー??」
少し気まずそうに女子高生「え?ええ・・・」
少女「すげえ!このボールにサインしてください!」
青い髪の女子高生「え・・・?それ私のボール・・・」

少女が体育館の外から覗いているのに気づく部員。
部員「キャプテン・・・!なんか子どもが覗いています・・・!」
キャプテン「迷子かな・・・?」
体育館に入ってこようとする少女「ね~あたしも混ぜて~」
体育館から出てくるキャプテン「ダメよお嬢ちゃん・・・ボールが当たったら怪我しちゃうわ」
少女「ボールによる爆死も覚悟の上です。」
キャプテン「一体どんなスポーツをしていると思っているのかしら・・・はっ」
少女の後ろの青い髪の高校生に気づくキャプテン。
キャプテン「・・・帰って・・・もうあなたとは関わりたくないわ・・・」
青い髪「ひとこと・・・謝りたくて・・・」
キャプテン「謝っても・・・ここにはもうあなたとバレーをしたい子なんていない・・・」
頭を下げる青い髪「お願い・・・!白亜高校にはバレー部員が私しかいないの・・・!どうか、合同チームとして・・・」
少女「はくあこうこう・・・?」
キャプテン「こっちは平和に楽しくバレーをしているの・・・強いチームを作って勝ちたいならよそでやってよ!」
青い髪「私は今年でもう卒業なの・・・!青春は一度きりでしょう?お願い・・・!今度は必ず全国で優勝できるわ・・・!」
キャプテン「ちょっと塩持ってきて!」
部員「はい・・・!」
キャプテン「あと、これも返すわ!」
全国制覇の旗を外に放り投げてくる。
雨で濡れた地面に倒れる旗。泥で汚れる。
青い髪「みんなの夢だったよね・・・」
キャプテン「いいや、あなたの夢よ」
体育館の窓を閉めてしまう部員たち。カーテンもとじられる。
旗をひろう少女「暴走族みたいでかっけ~!これもらっていい?」
青い髪「ええ・・・」
少女「おねえさん・・・泣いてるの?」
青い髪「このボールもあげるね・・・もう私には必要ないから・・・」
富んで喜ぶ少女「わ~い!ありがとう!」
青い髪「じゃあ・・・」
少女「まって!おれいになんかお返ししたいから、わたしの家に来てください!」
青い髪「・・・あなたには帰るおうちがあるのね・・・」
少女「おねえさんにはないの?」
青い髪「私には両親がいないから・・・だから、高校卒業後はもうバレーができないの・・・私はピーナッツ農園に売られるんだ・・・」
遠くで手招きする少女「私のワンルームマンションはこっちです!」
青い髪「・・・聞いてない・・・」



幕張の臨海副都心開発工事現場――
バブルが崩壊したため工事が長期的に中断されている。
その現場にダンボールで作った掘っ建て小屋のようなものがある。
少女「狭くて汚いですが・・・」
青い髪「なんだってーーーー!!!?あなたはここに住んでいるっていうの!!???」
少女「ゴミ捨て場からいろいろ拾ってきて自作しました。」
青い髪「なんてことだ・・・世界で一番不幸なのは私かと思ってたけど、この平成日本に『宿無しハックの冒険』みたいな女の子がいるなんて・・・!」
少女「バレーボールってすごい高くて買えなかったの!うれし~しあわせ~」
青い髪「この漁業に使うあみは何・・・?もしかして・・・」
少女「バレーのネットだよ!ここで毎日練習してるんだ!このボールで・・・」
ボーリングの玉を持ち上げる少女
青い髪「ええええ!これでバレーボールをしていたっていうの!!??」
少女「それ、わたしの宝物だったんだけどお礼にあげる!本物はけっこう軽いんだな~」
青い髪「突き指が多発したでしょうに・・・ん??」
ボーリングの球に「きぼーをすてなければきっとかてる」とマジックで書いてあることに気づく。
少女「おねーさんいくよ!ト~~~~ス!!」
少女がバレーボールをトスすると、とんでもない高さで綺麗な放物線を描いていく。
青い髪「・・・!」
廃墟の曇空に消えていく白球。
見とれる青い髪(・・・なんて綺麗なトスなんだ・・・)
少女「おねーさん!そろそろ落ちてくるよ!」
ハッとする青い髪
空を切り裂いて落下してくるボール
慌ててレシーブをする。
青い髪「はい!」
青い髪の返したボールを、少女は受け取って嬉しそうに抱きしめる。
青い髪「・・・?」
少女「私のボールを初めて返してくれてありがとう!
いつもは次郎とやってるんだけど、次郎って腕の可動域が狭いんだ。」
青い髪「次郎・・・?」
ネットの向こうに壊れた交通整理の人形が立っている。
少女「おねえさんとバレーボールがやれて、あたし本当に幸せ!」
青い髪「わ・・・私なんかと・・・?」
少女「うん!」
青い髪「・・・ねえ・・・よかったら、私が転校した学校に来ないかな・・・?
白亜高校なら、どんな子どもでも入学させてくれる・・・」
少女「え?学校にいけるの!?」
青い髪「・・・あなたの名前を教えてくれない?」
少女「ちおりだよ!はいばらちおり!!」
青い髪「私は美帆・・・海野美帆子です・・・」
掘っ建て小屋にはためく「全国制覇」の旗。




私立白亜高校――
長い桜並木を登った丘の上に、その高校はある・・・
様々な事情で学校を追われた若者が最後に辿り着く、千葉県にある小さな私立高校・・・

坂道をかけていくちおり「うわ~い!これでわたしも高校生だ~!」
ちおりを微笑ましく見つめる海野「あの子いつも幸せそう・・・」
ちおり「♪いっちねんせ~になったら~」
坂道を降りていく他校の女子高生とすれ違う。
女子高生A「あ~学校だるいわー」
女子高生B「ちょっと見て、あの制服・・・白亜高校よ・・・!」
A「ダメよ、目を合わせちゃ・・・」
B「あんなFラン高校なんて通ったら人生終わりよね・・・」
A「しっ・・・!関わっちゃダメ・・・」
ちおり「・・・人生終わりなの?」
海野「そ・・・そんなことないから・・・!白亜高校はみんな優しいとっても素敵な高校だよ・・・!」

白亜高校の門の前にたどり着く二人。
私立高校とは思えない、刑務所のような異様な校舎。
ちおり「すげ~!プリズンブレイクみたいだ!!」



生徒面談室
どう見てもカタギじゃない強面の教師がちおりの入学相談をしている。
自由帳に書かれたちおりの履歴書を見るヤクザ「おめえさんが、海野部長が連れてきたお嬢さんかい・・・」
ちおり「うん、そうだよ・・・」
ヤクザ「言葉もしゃべれるし、ひらがなも書けるなら・・・入学試験は合格だ・・・」
ちおり「学校入れる?」
ヤクザ「ああ・・・お嬢ちゃんの学力なら高校2年から飛び級スタートだ。」
ちおり「わ~い!」
ヤクザ「福沢諭吉いわく・・・天は人の上に人をつくらず・・・しかし、人の下に中卒を作った・・・高卒の資格がなけりゃあ、この国では人権はない・・・
おじさんのように裏社会で生きていくしかねえんだ・・・」
ちおり「勉強になります。」
ヤクザ「しかし、学校生活は甘くねえぞ・・・強敵7の段と、分数の計算で、毎年多くの学生が留年をしている・・・高卒の称号が欲しいなら腹を決めな・・・」
ちおり「わかった!じゃあ気が向いたら、これからも遊びに来るね!」
ヤクザ「え・・・いや・・・基本的に毎朝8時には登校してください・・・」

部屋を出て行くちおり。
?「あれが、今度の新入生?原始人みたいなやつですね。」
ヤクザ「ああ・・・来てたか・・・花原・・・」
ミニスカートにルーズソックスのコギャルが入ってくる。かなり背が高い。
花原「京冨野のダンナ・・・わたしに何の用です・・・?」
ヤクザ「あのお嬢ちゃん・・・見かけよりも学がある・・・おめえのクラスに入れることにする・・・」
花原「わたしのサイエンスクラスもなめられたものね・・・
あの子に変数分離形の微分方程式が計算できるのかしら・・・?」
ヤクザ「油断しないほうがいい・・・すでに2の段ができる・・・」
花原「ほう・・・で・・・もしモノにならなかったら、私のモルモットにしていいんですよね・・・?」
ヤクザ「ふ・・・相変わらず狂ってやがる・・・」



廊下。
ちおりが白亜高校のおニューの制服を着ている。
海野「え?4組に入れたの?理系進学クラスよ!すごい!!」
ちおり「うん。で、そのあと服を全部脱がされてプールで消毒されて・・・制服を着せてくれたよ!」
海野「入学おめでとう生原さん・・・」
ちおり「じゃあ、新しい服も貰えたしわたしもう帰るね!」
ちおりの首根っこを捕まえる花原「もう退学するつもりか。ここをどこだと思ってるのよ・・・」
海野「花原さん・・・」
花原「花原教授と呼んで欲しいわね。
海野部長も物好きですね・・・そういや古巣でバレーをやってくるのでは?」
ちおり「わたしバレーがやりたい!」
花原「その前に授業の時間よ・・・」
ちおり「授業?」
花原「あなたはこれからお勉強をするの。」
4組の時間割を渡す花原。
ちおり「線形代数学B、不確定性原理概論、分析有機化学、生物形態形成論Aに岩石鉱物学・・・ぜんぶ先生が「花原めぐな」ってなってる・・・」
海野(この子けっこう漢字読めるな・・・)
花原「そうよ、このクラスの教師はこの私。うちはお金がないから私のような優秀な生徒が教員を兼ねているのよ・・・
中学生の理科研究で原子炉を作ってIAEAに厳重注意を受けた私のガチ講座にあなたはついていけるかしら?おほほほ!!」
ちおり「・・・なんで普通の高校行けなかったの・・・?」
花原「ほ・・・」
海野「生原さん!それは禁句・・・」
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