『青春アタック』脚本㉛泰山鳴動

各校に届けられた、賞金付きのプラチナチケットはバトルロイヤル大会の戦局を大きく変えた・・・!
チームA「どうせ負けるなら戦って10万円とるぞー!」
チームB「10万円で残念会やってカニでも食べようね!」
積極的に試合をする参加チーム。
減っていくチーム数・・・

しかし、このプラチナチケット導入の恩恵を最も受けたのは、他でもない絶対王者聖ペンシルヴァニア大附属だった・・・!

東京都田園調布
ヴェルサイユ宮殿のようなロココ調の聖ペンシルヴァニア大附属高校の部室。
プラチナチケットを握る鮎原咲「・・・この手があったか・・・!」
二つ縛りの物静かな美少女がたまごっちをしている。
「どうしたの咲ちゃん・・・」
咲「・・・幹ねえ!うちの部で今すぐ使えるお金はいくら?」
咲の双子の姉、鮎原幹「金庫の中に6000万円・・・」
幹のたまごっちを取り上げる咲。
幹「ああっ私のアメリゴヴェスプっちが・・・!」
咲「大会が始まって、幹姉がやったことといえば、たまごっちを100周プレーしただけじゃない!」
幹「・・・多くの死を看取ってきました・・・」
咲「少なくとも3回はバレーをしないと負けちゃうのに、私たちは1枚もこのチケットを使えてないのよ・・・!」
幹「誰も戦ってくれないんだからしょうがないじゃない・・・絶対王者の宿命だね。」
咲「だから、私たちもこのプラチナチケットを独自につくるのよ・・・!」
幹「へ?」
咲「うちのメインバンクからはいくらまで引っ張れるの?」
幹「・・・さすがに1兆は厳しいと思うよ。」
咲「そんなにいらないわ!・・・私たちと戦って勝てたら大会とは別に、私たちからも6億円を支払うってすればどうかしら・・・?もう、私はバレーがしたくてたまらない・・・!」
幹「咲ちゃんあなたは本当に帝王学を学んだの?・・・そんなはした金で人の心は動かないわよ。」
咲「プラス・・・たまごっちの白もつける。」
幹「それは間違いないわね・・・」

こうして、聖ペンシルヴァニア大附属は独自にダイアモンドチケットを発行――
これにより、聖ペンシルヴァニア大附属を倒して優勝すると、賞金額が二倍になるという、とんでもない展開になったのである・・・!
このダブルアップチャンスを目指し、多くのチームが聖ペンシルヴァニアに挑み――



高体連本部ビル
狩野「・・・総裁。チーム数が激減しています・・・」
波紋戸「ほほほ・・・ついに覇王が動き出しましたか・・・
バトルロイヤルも後半戦のようだ・・・」
狩野(・・・海野さん・・・)



白亜高校
校門の前に止まっているスポーツバイク。

保健室
スポーツ誌記者のつよめ
「とうとう聖ペンシルヴァニアが動き出したわよ・・・」
ダイアモンドチケットを眺めるさくら「・・・金のある学校はいいわね・・・」
つよめ「これで、あんたの思惑通りにことが動くんじゃない?」
さくら「・・・いや・・・雑魚がいくら束になってかかっても、聖ペンシルヴァニアは消耗しないわ・・・
強豪校をぶつけないと・・・」
つよめ「いくつかみつくろってきました。」
資料を机に乗せる。
つよめ「・・・ええと、まず長野県の霧ヶ峰漸新高校・・・高校総体に20年連続・30回出場、春高バレーに15年連続・20回出場の実績を持つ強豪校・・・監督の寺島明日香監督は、人徳があり部員から慕われていて・・・」
さくら「あれは、敗軍の将。墓の中の白骨よ。」
つよめ「・・・じゃあ、ここは?大阪府の暁工業高校・・・部員も設備も一流で、雷都光監督は天才発明家でもあり通称優勝請負人・・・」
さくら「東京に大阪をぶつけるのはなあ・・・さすがに死人が出たらまずいわ」
つよめ「う~ん・・・ダメか」
さくら「ここは?京都府の減夢(へるむ)学園高校・・・部長の妖鳴由良(あやなきゆら)は、平安時代の陰陽師の末裔で・・・呪術や式神を使って相手を操ることができる。」
つよめ「・・・らしいけど、そこ初出場校よ。その情報もどこまで本当か・・・」
さくら「マッスルくん。」
山村「御意。」
山村が減夢高校の対戦履歴を調べる。
山村「おおっすごい・・・!初戦ではヤマタノオロチを召喚して圧勝しているぞ・・・!」
呆れるつよめ「そんなことしていいんかい・・・」
さくら「こいつらに聖ペンシルヴァニアを呪わせれば、けっこう相手のHPを削れそうね・・・
山村くん、この妖鳴って巫女さんに電話よ!」
山村「ああっダメだ・・・2回戦で上武高校の九頭りりあに騙されて負けている・・・!」
さくら「クソの役にも立たねーな・・・!
・・・前言撤回・・・寺島先輩とライトくんに電話を・・・5000万円くらい積んで土下座すれば聖ペンシルヴァニアとやってくれんだろ・・・」
つよめ「さくら・・・ここはどう?群馬県の詩留々高専。」
さくら「そんな強豪校あったっけ?」
つよめ「あんたは知らないだろうけど、数年前から少ない女子生徒をかき集めて女子バレー部を作って、総体で全国ベスト8、昨年度の春高でベスト3という、驚異的な成績を出しているの・・・多分、おたくの海野さんは知ってるんじゃないかな・・・」
資料を手に取るさくら「へ~・・・」



体育館
部員たちが練習をしている。
華白崎「基礎連を怠らない・・・!」
素直に従う小早川「はい・・・!」

海野「知ってますよ。主将は榛東スバルちゃんです。」
さくら「どんな人?わりとクズ?」
海野「・・・いやいや・・・体育会系の元気がいい女の子でしたよ。確か・・・もともとはバレーじゃなくてソフトボールをやってたんじゃなかったかな。冬なのに肌が真っ黒でビックリしましたけど・・・」
さくら「そのスバルちゃんのチームを、鮎原姉妹にぶつけたいんだけど、なんとかならんかね。」
海野「・・・スバルちゃんの携帯電話の番号は知っているので、連絡は取れますけど・・・
どう持ちかければいいかなあ・・・」
さくら「無理にその話を出さなくていいから、ちょっと接触してきてくれない?」
海野「それだけでいいんですか?それならお安い御用です。
大会で顔を合わせて、わりと意気投合したんですよ。」
モジモジしながら近づいてくる花原「海野さん、詩留々高専に行くの・・・?群馬県の?」
海野「うん。」
花原「・・・あの、古くはゼロ戦やペンシルロケットを生んだ航空宇宙の最高学府の?」
海野「・・・え?そ・・・そうなんだ・・・」
花原「・・・行きたい・・・」
海野「ええっ・・・?」
ひざまずく花原「安西先生・・・兵器が見たいです・・・」
海野「・・・うん・・・じゃあ一緒に行こうか・・・」



群馬県藤岡市
国立科学博物館の航空宇宙館のような詩留々高専の校舎。
校舎の裏にはラムダ式ロケットの打ち上げセクションが広がっている。

工作機械だらけのガレージに電話が鳴り響く。
詩留々高専の学生「・・・スバル!あんたの衛星電話じゃない?」
安全ゴーグルをつけて得体の知れないロボットをガス溶接している、筋肉質な少女。
スバル「・・・NASAなら納期には間に合うって言っておいて!!
今アセチレンガス使ってんだよ!!」
学生「違う!白亜高校の海野さん!!」
スバル「海野?・・・折り返しかけるって伝えといて!!」

汚れたつなぎを脱いで、汗を拭う榛東スバル。
「ふ~休憩すっか・・・」
スバルに缶コーヒーを差し出す、アルビノの少女。
スバル「おっサンキューな。りかぜちゃん。」
詩留々高専バレー部マネージャー網野りかぜは、ちおりのように小学生のような見た目。
「・・・白亜高に会うの・・・?」
缶コーヒーをグビグビ飲むスバル「連中の狙いはなんだと思う?」
りかぜ「わたしはエスパーじゃない。」
スバル「よせやい、似たような能力があるんだろ?」
りかぜ「・・・タイミング的には、聖ペンシルヴァニアの件かしら・・・」
スバル「うちもそう思う。ただ、試合の申し込み以外で、会いたい目的は何だ?
まさか世間話じゃねえだろ。」
りかぜ「・・・獲得賞金二倍の権利は譲るから、我々にペンシルヴァニアを倒して欲しいってところでしょうか。」
缶をゴミ箱に放り投げるスバル「それだな。」
りかぜ「・・・この大会でのパレート最適解は、戦わず戦況を眺めることです。
我々はすでにチケットを2枚消費している。最後の1枚を決勝で使えばそれでおしまい。」
スバル「ああ・・・しかし妙なのは、海野って女はそんな卑怯な手を打ってくるような子じゃねえってこった。バレーのテクニックは脅威だが、あいつは賢くない。駆け引きなんかできねえさ。」
りかぜ「裏で糸を引いているものがいるのね。」
立ち上がって作業着を羽織るスバル「よし・・・とりあえず会ってやるか・・・」
衛星電話を渡すりかぜ。

スバル「・・・もしもし?白亜高校の海野さんですか?あ~久しぶり・・・!
いきなり電話が来たんで驚いちゃったよ!元気?うん、こっちは、ぼちぼち・・・
うん、全然来てくれて大丈夫だよ!飯でも行こうや。
な~に、言ってるんすか・・・!海野先輩のバレーを勉強させてもらいたいだけっすよ・・・ははは・・・」
りかぜが無言で、スバルが作っていたロボットを見つめている。

衛星電話を切るスバル。
スバル「明日早速来るそうだ。スケジュールを空けといてくれ。しかし、お人好しなやつだよ。
このうちが心を開いていると思ってやがる・・・
去年の大会で、うちらのチームを完膚なきまでに叩きのめしたのは誰だと思ってやがるんだ・・・なあ。」
ロボットはバレーボールの発射ロボットで、機体には「打倒海野美帆子」と刻印がされている。



詩留々高専の中にある航空宇宙博物館
館内の展示を目を輝かせながら眺める花原
「すげ~・・・!これが大鑑巨砲主義を終わらせた最強の戦闘機・・・」
ちおり「かっけー!」
スタッフIDカードを首にかけ白衣を着た学芸員が話かける。
「とんでもない。
・・・重装備と軽量化を両立させるため、開発者は防御力と耐久性を犠牲にした・・・
急降下すれば主翼は折れるし、エンジンの出力は連合軍のそれに大きく劣る・・・
一撃必殺の攻撃がかわされたらパイロットは死ぬしかない。
それでも、敵国はこの戦闘機を恐れた・・・
優秀な熟練パイロットの腕と・・・彼らの命を粗末に扱う非情な軍部に・・・
ようこそ、詩留々高専へ。
ここでキュレーターをしております。網野りかぜです。」
握手する花原「白亜高科学研究部の花原めぐなです。」
りかぜ「・・・ご高名はかねがね・・・」
花原「え?あたしを知ってるの?」
りかぜ「小学生の時から珍妙な発想で、理科研究を荒らしていた、あの花原さんでしょう?」
花原「・・・私としては真面目に研究していたつもりなんだけどな・・・」
ちおり「ねえ、なんで髪の毛が全部真っ白けなの?いろいろ苦労が多かったの??」
花原「お・・・おい・・・」
戦中の戦闘機を眺めるりかぜ
「・・・日本の科学技術は人命を軽視することで発展してきた・・・戦時中も・・・そして、今も。
・・・わたしは、遺伝子操作で作り出されたクローンなんです。」
花原「えっ、じゃああなたが噂の、超人類?」
ちおり「なあに?スーパーサイヤ人みたいなやつ?」
花原「どっかの研究機関が秘密裏に天才の遺伝子をパッチワークして人間を作ったって話は聞いたことあんのよ・・・群馬県だったんだ・・・」
りかぜ「・・・群馬県民は愚かよ。いくら新製品が好きだからといって神の真似事をするなんて・・・
生み出されるこっちはいい迷惑だわ・・・」
手を上げるちおり「分数の通分できますか・・・?」
りかぜ「フェルマーの最終定理も解けるよ。」
花原「ホントですか!?ポアンカレ予想は?」
りかぜ「・・・あと少しね。あれは問題へのアプローチの仕方にコツがあって、位相幾何学ではなく解析学を使うらしいの。」
花原「・・・ちおり。この人、マジでスーパーサイヤ人だぞ。」



詩留々高専応接室
スバルが来客に缶ジュースを出す。
スバル「いや~しかしすごいですよね・・・鮎原姉妹は。自腹で6億円払うって言うんだから。」
海野「本当だよね・・・やっぱりお金があるところは違うよね・・・」
スバル「海野さん、とっとと倒しちゃえばどうですか?賞金が12億円になりますよ?
残っている学校で鮎原と互角にやりあえるのは、もはや海野さんだけだと思いますがね。」
海野「そんな・・・スバルちゃんだって、バレー強いじゃん。」
スバル「私なんかまだまだっすよ・・・でも、いいんですか?
海野さんの高校3年間のライバルを、私みたいなよくわからない脇役が倒しちゃって・・・」
海野「あはは・・・」
スバル「・・・で、今日の用件は?」
海野「用件?いや、本当にただ遊びに来ただけで・・・」
スバル「んなわけないでしょう。敵チームへの視察?それとも・・・」
海野「・・・え?」
目つきが変わるスバル「我々を鮎原姉妹と戦わせて、どちらかをこの大会から敗退させたい・・・とか?」
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