『青春アタック』脚本㊱酒池肉林

殺し屋によってめちゃくちゃにされている「桃源楼」
パンダ拳と白鶴拳で、殺し屋と戦うブーちゃんの両親。
拳法の師範代である二人を相手に、互角の戦いをする殺し屋。
殺し屋「本土の達人はみんな殺しちゃったけど、こんな島国にこれほどの使い手がいたとは嬉しいわ・・・!」
店主「きさま・・・ファミレスの手のものか・・・!」
殺し屋「出店拡大のため・・・お命いただくわ・・・!」
殺し屋の手刀を脚で蹴り上げる女将さん「あんた、危ない・・・!蹴(しゅう)!!」
殺し屋「あら、やるじゃない・・・!
油でギトギトな汚い店舗・・・消し炭にしてくれるわ!」
火を噴く殺し屋。プロパンガスに引火し爆発する。
吹っ飛ぶ夫妻「ぎゃああああああ!」
殺し屋「おほほ・・・四川火炎拳の味はどうかしら・・・!」
黒焦げになる夫妻「ひ・・・卑怯な・・・!」
殺し屋「食材のアヒルを絞め殺すのに、卑怯もくそもないでしょう?」
店主「くっ・・・」
女将さん「あんた・・・!」
殺し屋「これで終わりよ・・・アニマル拳最後の伝承者高満凱(カオ・マンガイ)」
その時、殺し屋に寸胴が飛んでくる。
殺し屋は拳で寸胴を叩き落とすが、中に入っていた拉麺のスープが頭から降り注ぐ。
殺し屋「あちち・・・いったい誰よ・・・!」

振り返ると、修行から帰ってきたブーちゃんが怒りの形相で立っている。
店主「・・・智子・・・!修行から帰ってきたのか・・・!」
女将さん「あんた・・・お逃げ・・・!」
殺し屋「うふふ・・・噂の食い逃げ犯ね・・・
あんたが食べたステーキ肉のようにウエルダンに焼いてあげるわ・・・!」
火を噴く殺し屋。
しかし、体についたスープの背脂に引火して火だるまになってしまう。
殺し屋「アイヤー!!しまった・・・!」
床をごろごろ転がって火を消す殺し屋。
指をくいと曲げて殺し屋を挑発するブーちゃん。
殺し屋「お前を焼いても不味そうだな、ですって!!??
・・・殺してやるわ・・・!!」
殺人拳を繰り出す殺し屋。
怒りのブーちゃんと無数の突きの応酬をする。
殺し屋「ほわちゃちゃちゃちゃちゃ・・・・!!」
立ち上がる女将さん「あんた・・・智子に負けてられないよ!!」
店主「・・・おう!!」
3人がかりで殺し屋と戦う。
ブーちゃんにおたまとフライ返しでボコボコにしばかれる殺し屋。
殺し屋「いや~ん!なんなのこの家族・・・!」

老師「この勝負待った・・・!」
戦いをやめる4人。
老師「そなたら・・・仮にも料理人なら拳ではなく、料理で決着をつけたらどうじゃ・・・?
宮廷料理人、満漢全席の韓信よ・・・」
殺し屋「あら・・・あたしを知っているの?」
老師「わたしの記憶が確かならば・・・
そなたほどの料理人が、ファミレスの用心棒とは落ちぶれたもんじゃの・・・」
殺し屋「言ってくれるじゃない・・・あなた・・・何者なの?」
老師「ほっほっほ・・・ただの食道楽じゃよ・・・」
すると、老師の両サイドにいるボディガードが叫ぶ。
ネイチャー紫門「静まれい・・・!こちらにおわすお方をどなたと心得る!?
おそれ多くも、ミシュランガイドの主宰、世界的美食家の北大路袁杯(えんばい)先生であらせられるぞ・・・!!」
服田裏幸應「ご老公の御前である・・・!控えおろう・・・!!」
殺し屋「な・・・なんですって・・・!!」
老師「この勝負、このわしが預かる・・・!蘇るがいいアイアンシェフよ!!」



料理の鉄人のようなセットの「ロイヤルコスト」本部の玉座
老師「今回のテーマは中華の真髄・・・!アレ・キュイジーヌ!!」
黄色の料理服を着て、中華包丁を高速で振るい、食材を次々にみじん切りにしていく韓信。
「ラストエンペラーが食した満漢全席を今夜、完全再現してあげるわ・・・!」

一方の「桃源楼」店主は中華鍋を握ろうとするが、殺し屋との戦いの傷が深く、鍋を持ち上げられない。
女将さん「あんた・・・!」
店主「くっダメだ・・・やつに秘孔をつかれたらしい・・・!」
すると、ブーちゃんが代わりに中華鍋に油をひく。
店主「智子・・・まさかお前が・・・!」
女将さん「あんたが何を作れるんだい・・・!相手は宮廷料理人だよ・・・!」
ブーちゃんが無言で調理を始める。
店主「・・・そうか・・・お前がやるんだな・・・頼んだぞ、わが娘よ・・・!」

韓信「きさまが私の相手・・・?桃源楼もここまで落ちぶれたか・・・
私はね・・・料理を馬鹿にされるのが一番嫌いなの・・・」
ロイヤルコストの社長「素人のガキが・・・所詮は付け焼刃よ・・・」
韓信「平野社長・・・品川水族館と上野動物園には連絡を入れたの・・・?」
社長「もう、届いているわよ・・・」
すると、扉が開き、巨大な水槽と猛獣の檻が搬入される。
店主「・・・な!なんだあれは・・・!!」
韓信「なにって・・・食材に決まっているじゃない・・・」
老師「ほう・・・四八珍を集めたか・・・」

すると、巨大な水槽に飛び込む韓信。
水槽の中には凶暴なヒョウアザラシとホホジロザメが入っており、韓信に牙をむく。
ホホジロザメのロレンチーニ器官を思い切り殴る韓信。
ホホジロザメは一撃で絶命し、韓信に背びれをもぎ取られる。
返す刀で、ヒョウアザラシの首をひねる。
水槽から上がる韓信「まずは海八珍・・・!」
ついで、上野動物園が持ってきた猛獣の檻に入る。
サイとラクダとゾウがいるが、手刀でアフリカゾウの鼻を切断し、フタコブラクダのコブをもぎ取り、シロサイのペニスを引きちぎる。
韓信「山八珍・・・!!さあ、調理よ!!」

女将さん「あんた・・・!本当に当時の満漢全席を再現する気だよ・・・!」
店主「食材だけでいったい何億円かけているんだ・・・!」

一方のブーちゃんは、中華鍋に冷えたご飯をぶち込み、炒め出す。
女将さん「あんた・・・智子が・・・!」
店主「あれは・・・」
鼻で笑う社長「・・・満漢全席にただの炒飯で挑むつもり・・・?」
油断しない韓信(・・・手際がいいわね・・・老師が見込んだだけのことはあるか・・・)

中国銅鑼を叩くネイチャー紫門「そこまで!!」
韓信は、たった1時間で32品もの料理を完成させてしまう。
韓信「・・・駝峰、犀尾、象抜・・・現代では動物愛護団体に金を握らせない限り食せない、幻の逸品よ・・・袁杯先生、皇帝気分でお召し上がりください・・・」
老師「うむ・・・見事じゃ・・・」
料理を口にする老師「素晴らしい・・・贅の限りを尽くしたもてなし・・・心から感謝するぞ。」
社長「勝ったわね・・・」

服田裏幸應「続いて、桃源楼の料理です・・・!前へ・・・!」
老師の前に普通の街中華の岡持ちを置くブーちゃん。
老師「ほう・・・」
女将「あんた・・・あれって・・・」
岡持ちを開くブーちゃん。
店主「わしのカニチャーハンだ・・・」
れんげでチャーハンをすくう老師。
老師「・・・む?これはなんじゃ・・・」
チャーハンを口にする。
老師「う・・・美味い・・・!!この食感・・・上品な香り・・・チャーシューではない・・・
タケノコか・・・!味付けはオイスターソースと・・・鰹節じゃ・・・!
日本の懐石料理と、本格中華が奇跡の調和を生んでおる・・・!!
この勝負・・・桃源楼の勝利じゃ・・・!」
社長「ばかな・・・!」
手を取って喜ぶ夫婦「やったよあんた・・・!智子がやったんだ!!」
韓信「な・・・なんですって・・・!こんな貧乏臭い焼き飯が私の宮廷料理よりも上だって言うの!?」
老師「・・・お前さんは、王族に仕えた上流階級・・・飢えたことなどないじゃろう・・・
そなたの満漢全席は見事であったが・・・あれを口にできる人間はこの世に何人いるというのじゃ?」
韓信「・・・それは・・・」
老師「人にとって食とはただの生理活動ではない・・・
料理人の存在意義とは、食を通じて、多くの者を笑顔にし、生きる喜びを与えることじゃ・・・
その点において、この素朴なチャーハンはお主の宮廷料理に勝っておるのじゃ・・・」
韓信「・・・見損なわないで・・・!私だって、普段はゾウの鼻なんて調理しないわ・・・!」
老師「うむ・・・分かっておるぞ・・・
お前さんも、多くの者の幸せのために、ファミレスのフランチャイズチェーンに手を貸したのだろう?
しかし、実態はどうじゃ・・・セントラルキッチンから送られてきた冷凍食材をバイトが解凍するだけの料理に心はあるのか?それが、お前さんが多くの者に届けたかった味なのか?
そもそも・・・ロイヤルコストでお主が監修した料理を食べたことはあるのか・・・?」
首を横に振る韓信「ないわ・・・」
老師「ロイヤルコストの料理は見栄えだけはいいが・・・まるでボール紙をかじってるようじゃぞ・・・」
韓信「うそでしょう・・・?
社長・・・!あなた、私のレシピを勝手に変えたんじゃないでしょうね!」
社長「・・・しょうがないじゃない!あんたのレシピはコストがかかりすぎるのよ・・・!」
老師「よかったら、お主もこの炒飯を食べてみたらどうじゃ・・・
盛りつけは地味で、食器も既製品じゃが・・・この料理には子が親を思う心がある・・・」
チャーハンを口にする韓信。
目を閉じる。
韓信「私は大きな過ちを犯すところだったわ・・・
かけがえのない街中華をこの世から消すところだった・・・
子豚のブーちゃん・・・わたしの完敗よ・・・桃源楼はこの私が命をかけて守ることを約束するわ・・・」
社長「なんですって!!品川水族館と上野動物園にいくら払ったと思ってんのよ!
裏切るなんて許さない・・・!」
韓信「ホホジロザメの餌になりたくなかったら、今すぐ私の前から消えなさい・・・
そして・・・フランチャイズチェーンから今すぐ私の名前を消すのよ・・・」
韓信のオーラに負けて逃げ出す社長「・・・!」
老師「ほっほっほ・・・ブーちゃんか・・・よい名じゃ・・・
桃源楼店主よ・・・よい後継ができたの・・・」
目が潤む店主「智子・・・」
ブーちゃん「ブー!」

――こうして、高木智子は伝説の料理人ブーちゃんとなったのである・・・
――劇終――

伊勢崎華蔵寺公園
りかぜ「馬鹿な・・・なんて長い回想なの・・・!」
さくら「ブーちゃんの恐ろしさ・・・味わえたようね・・・」
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