『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本⑤

「第五章 ジャバウォックの詩」

うす暗い森の中を客車を引いた蒸気機関車が進む。
汽車のライト以外は光るコケやキノコが暗い森をほんのり照らしているだけだ
白の騎士「あの馬のおかげで汽車に間に合ったな」
客車の窓の外を見るアリス「パパたち今頃なにしているのかしら・・・」
白の騎士「君には父君がいるのか」
アリス「それはもちろんよ・・・立派な人よ。それにママも・・・」
白ウサギ「アリスのお母さんはアリスに早く結婚してもらいたいみたいだけど・・・」
アリス「うん・・・それが悩みの種・・・なんで知ってるの?」
白ウサギ「ちょこちょこキミの庭に行っていたから・・・君らが言い争っているのが聞こえたんだ・・・」
アリス「私・・・大人になるのが怖いんだと思う・・・」
白ウサギ「・・・結婚したくないの?」
アリス「・・・そういうわけでは・・・お姉ちゃんは私にもきっとぴったりの王子様がいるって言うけれど・・・とにかくこの世界を何とかするのが先よね。」
白の騎士「大丈夫だ・・・君のことはこの私が守って見せる。そなたは安心して我が道を行くがいい」
アリス「ありがとう、白の騎士さん」

砂漠の薔薇が点在する砂漠にかこまれて、歯車や蒸気機関によって機械化された要塞のような都市が広がる。その中心部にある赤の王宮
赤の女王の玉座
赤の女王「何!?前線基地が陥落した!?」
赤の騎士「申し訳ございません、陛下・・・白の王国は恐ろしく巨大な化け物を手なづけたようです・・・・」
赤の女王「なんと・・・あの女がそのような大それたことをするとは・・・!して、その化け物の名は・・・!?」
赤の騎士「アリス・・・」
赤の女王「アリス!?なんとおそろしい響き・・・」
赤の騎士「陛下・・・白の王国が新たに強力な味方を手に入れた今、ここは勝負を長引かせては危険です・・・!一気に白の王国に総攻撃を仕掛けては・・・!」
赤の女王「あせるな。そのアリスの弱点を探ってからの方がよかろう・・・帽子屋!」
帽子屋「へいへい・・・」
赤の女王「お前アリスを知っているな?」
帽子屋「カラスとかきもの机は何が似ている?」
赤の女王「訊いているのはこっちだ!!」
帽子屋「ああ、そうでございやしたか・・・ええ、知っておりますよ」
赤の女王「奴の弱点はなんだ!?」
帽子屋「それは自明でございますよ・・・あんた様でございます」
赤の女王「私だと!?」
帽子屋「すこし難しいですか?」
剣を向ける赤の騎士「そう思うなら最初からわかりやすく言え!」
帽子屋「へへへ・・・そうでございますね・・・これでございます(時計を取り出す帽子屋)」
赤の女王「それは?」
帽子屋「日の解る時計、日計ですな。つまり“変化”でございますよ。アリスの弱点は変化なのです。
“変化”はお得意でございましょう?女王陛下は。」
顔を見合わせる赤の女王と騎士「?」
赤の騎士「この男すっかりいかれておるようですな。」
赤の女王「もうよい。さげよ」
衛兵に連れて行かれる帽子屋
赤の女王「変化・・・赤の騎士・・・!例のものは!?」
赤の騎士「じきに完成するようでございます・・・」
赤の女王「お前の言う通り、早めに仕掛けた方がいいかもしれぬ・・・」

日が暮れ、あたりは暗くなっている。
雪原にそびえる巨大な樹木。その樹木を改造し、森の隠れ家のようにしている白の王宮
巨大樹のそばにはキノコや切り株を改築した家が並んでいる
白の騎士「すっかり日が暮れてしまったな。これが白の王宮だ。」
アリス「すごい立派な樹ね・・・」
城の周りの兵たちを指さす白ウサギ「あれは?」
城のふもとでたくさんの兵士が如雨露で水をかけている
白の騎士「ああ・・・ああやって我が王宮を“建築”しているのだ」
アリス「建築というより栽培ね・・・」
白の騎士「なんでもよかろう、ああして常に城を高くすれば、赤の軍隊も早々最上階の玉座へはたどり着けん」
アリス「でもそれでは私たちも登れないわ」
白の騎士「・・・・・・。きみは賢いな」
白ウサギ「では、白の女王さまはもしかしてずっとあの木のてっぺんに・・・」
白の騎士「うむ。戦争が始まってこのかた我が陛下には指一本触れさせてはおらぬわ!ははは!」
アリス「なんてかわいそうなことを・・・」
白の騎士「しかしまいったな、陛下に接見させたかったのだが・・・」
アリス「それをいうなら“謁見”ね・・・いいわ。この国にはケーキはあるかしら?」
白の騎士「さて・・・」
白ウサギ「あ、あそこにお店がありますよ・・・「ないものはない」って書いてあります。」

雑貨屋オールドシープショップに入る
アリス「ごめんくださ~い・・・」
年老いた羊が編み物をやっている「もう店じまいだよ・・・」
アリス「あの・・・体が大きくなるケーキが欲しいんですけど・・・」
羊「なんだいそれ?」
アリス「ありませんか?」
羊「ないものはないんだ、この店には。どこかにあるさ・・・」
アリス「あなたはわからないの?」
羊「店の人間が店の品物を全て知っているわけはないだろう?わたしももう歳でね・・・勝手に探しな」
アリス「ありがとう。」
棚で卵を見つける白の騎士「こ・・・これは・・・!」
白ウサギ「なんですか?この卵?」
白の騎士「これはかのジャバウォックの伝説の詩の謎を解き明かすハンプティ・ダンプティでは・・・!これはいくらだね?」
あくびをする羊「一個5ペンス。二個で2ペンス」
白ウサギ「一個の方が高いんですか?」
白の騎士「買おう!」
アリス「そんな卵よりもケーキを探してよ!」
ハンプティ・ダンプティ(H.D)「そんな卵!?なんて失礼な娘だ!このわしを卵よわばりするとは!」
白の騎士「これは供のものが失礼を。彼女はまだこどもなので。」
H.D「それはそうだろう、で騎士殿?わしに何が聞きたい?」
白の騎士「ジャバウォックの詩という詩をご存知でしょうか?」
H.D「知らんな。だが任せなさい。わしはこれまでに発表された全ての詩が解る。みせてみなさい」
白の騎士はハンプティ・ダンプティに詩の書かれた巻物を見せる
アリス「なんなの、その詩?」
白の騎士「ジャバウォックを倒す方法が描かれた伝説の詩だ・・・」
アリス「あの森の大きな怪物ね」
白の騎士「さよう。あの怪物を倒すことが私の使命だ」
アリス「なんで・・・?」
白の騎士「それがわたしの定めだからさ・・・あれを倒せば赤の騎士ももう私を馬鹿にはできまい・・・!」
アリス「そうかしら」
H.D「ちょっと静かにせんか!」
アリス「はいはい、ごめんなさい。ウサギさんケーキを探してくれない?」
白ウサギ「うん・・・」

ジャバウォックの詩の巻物を広げるH.D「これは興味深い・・・なにか意味がありそうだな」
白の騎士「さすが・・・」
アリス「あの・・・逆さに持ってますよ・・・」
H.D「横からうるさい!ええとだな、これはつまり・・・動物図鑑だな」
白の騎士「動物図鑑?」
H.D「さよう。一段、二行目「すべらとうぶはこまかりあなきる」から行こうか・・・これは、「トウブ」という動物の生態を記しておる・・・これはアナグマの一種で尻尾はトカゲ。日時計の下が住みかで・・・」
白の騎士「あの・・・ジャバウォックについては・・・」
H.D「せかすな騎士殿。ええとジャバジャバジャバジャバ・・・ジャバウォック・・・ああここだ・・・「ジャバウォックに気をつけろ息子。油断するなバンダ―スナッチに、怒りクルクルジャブジャブ鳥・・・」まったく興味深い・・・」
白の騎士「バンダ―スナッチ?」
H.D「それにジャブジャブ鳥とある。お主見たことは?」
白の騎士「いえ・・・」
アリス「宿敵が増えちゃったわね・・・」
H.D「諸君、次が面白いぞ。「ヴォーパル剣を手にしたおのこ、思いにふけりてしばし立つ。かのジャバウォックまなこランラン、森より出でぬ。えいやあえいやあ・・・!」」
羊「あんたらうるさいね!」
H.D「すいません・・・」
白の騎士「ヴォーパルの剣・・・なるほど・・・だからあの弓で放った剣が効かなかったわけか・・・」
H.D「どうやらジャバウォックを倒すにはこの剣が必要のようだな。」
アリス「そういう問題ではなかったような・・・あ、あった(ケーキを見つける)。」
H.D「次。「ヴォーパルの刃、ぐっさり、するり、倒れし敵をば、斬り捨てて、首をとって誇りて戻らん。汝ほふりたるや、あのジャバウォック!我が腕に晴れめく息子!おおフラジャズの日かな、むせびくばかりのこの喜び・・・!」なるほど・・・これは・・・」
白の騎士「ど・・・どういう・・・!」
店の中で大きくなるアリスにつきとばされるハンプティダンプティ「うぎゃ!」
棚から落ちてぐしゃりと割れてしまう。
元の大きさにもどるアリス「うん。たしかにこのケーキね」
白の騎士「なるほど・・・ジャバウォック討伐のカギは「ヴォーパルの剣」か・・・たしかあの剣はどこかで・・・」
羊「ちょっとあんたたち!もう出てってちょうだい!」
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