『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本⑥

「第六章 約束」

白の王宮最上階
女王の間で一人座っている白の女王。
窓からの月明かりで照らされた白の女王はロングヘアーの美人でいつも哀しげな微笑みをしている。
こんこんと窓ガラスをたたく音がする。まどを開けるとアリスの巨大な顔がある。
微笑む白の女王「あら・・・これはまたとても大きなお嬢さんね・・・こんばんは」
アリス「はじめまして・・・窓から失礼します・・・」
白の女王「あなたはだあれ?」
アリス「アリスと言います。白の騎士さんがぜひ私をあなたに会わせたいと。」
白の女王「そう・・・こんな高いところにいてごめんなさいね・・・」
アリス「あの・・・女王様はそこにひとりぼっちでいてさみしくないんですか?」
白の女王「え・・・?」
アリス「そこだと誰もあなたに会えないし・・・おしゃべりもできないじゃないですか。」
白の女王「たしかにあなたの言う通りね・・・でも私は大丈夫。女王が敵国にやられるわけにはいきません・・・王国の為にも世界が果てるまで、ここで暮らし続けるつもり。」
アリス「そんな人生私には耐えられない・・・」
困った顔で微笑む白の女王「私はこの国の女王だから・・・仕方がないのよ。」
アリス「下に降りて戦争を終わらせようとはしないの?」
白の女王「私は争い事は嫌い・・・それに・・・私は臆病だから・・・」
アリス「でも・・・」
白の女王「アリス・・・あなたは勇敢だわ。白の騎士がわたしに合わせようとしたのも解ります。彼はわが国で唯一にして最も勇敢な兵士・・・彼は貴方のような戦士を求めていたのかもしれないわ。」
アリス「ええ。白の騎士さんは勇敢よ。ちょっと間抜けだけど、これじゃダメなんだって一生懸命頑張っている。だからあなたも・・・あなたの国のことはやっぱりあなたが何とかしなければいけないんじゃないの?」
白の女王「ええそうね・・・でも今はまだ動くべき時ではない・・・」
アリス「どうしてわかるの?」
白の女王「私が心から笑っていないからです・・・もし私が“喜び”を思い出せたならば・・・それは世界が平和を取り戻すことの前兆だわ」
アリス「??よくわからない」
白の女王「原因の後に結果が来るとは限らないの。時に因果律は逆転するのよ・・・だから私が偽りの微笑みをしている限り・・・世界は当分混沌としたままなの」
アリス「なんか落ち込んできちゃった・・・」
微笑む白の女王「気を悪くさせちゃったみたいね。ごめんなさい。」
アリス「一緒に戦ってくれない?」
白の女王「・・・今は力になれない・・・私は・・・臆病だから・・・」
背が縮んでいくアリス

元の大きさにもどる。城のふもとにいた白ウサギが駆け寄ってくる。
白ウサギ「どうだった!?アリス・・・」
首を振るアリス「だめ・・・頼りになりそうにないわ・・・あのひと・・・どことなく私のお姉さんに似てた・・・」
白ウサギ「そんな・・・白の王国がたちあがってくれないと、ぼくらの世界は赤の女王によってみんな平地にされてしまう・・・」
アリス「大丈夫。私が何とかする・・・」
白ウサギ「アリス…」

翌日。午前。晴れ。
アリス邸に馬車がやってくる
シャーロック・ホームズ「ここかいワトソンくん。」
馬車に駆け寄るパパ「いや~ようこそいらっしゃいました!」
馬車を降りるホームズ「え~あなたがヘンリー・リデルさん?んっふっふっふ・・・わたくしホームズ・・・私立探偵のシャーロック・ホームズと申します・・・え~こちらが助手で医者のワトソン先生。」
ワトソン「は、ワトソンです!」
ホームズ「えっへっへ・・・腰は低いんですが頼りにならない男でして・・・」
パパ「それではさっそく事の顛末の方を・・・」
ホームズ「え~結構です。馬車のなかで資料を読んで完全にインプットしました・・・さっそくですが昨日ガーデンパーティをやったという庭に案内していただけますでしょうか?」
パパ「はあ・・・こちらです・・・」
パパに耳打ちするレオポルド「ホームズ氏は少々変わりものなんです・・・」
パパ「はは・・・優秀な人はみんなそうだよ。」

白の王国の朝。
白の王国の国民はみんな荷物をまとめて、移動の準備をしている
アリス「なんでみんな引っ越しちゃうの?」
白ウサギ「どうやらここに赤の女王が攻めてくるらしくて、みんな逃げちゃうんだよ」
アリス「国を捨てちゃうの?白の女王様を置いて!?」
白ウサギ「うん・・・」
アリス「赤の軍隊もメチャクチャだけど、こっちも信じられないわね・・・あれ?白の騎士さんは?」
白ウサギ「それが・・・昨日の夜ハンプティ・ダンプティさんに詩を解説してもらった後、どこかにいっちゃって・・・」
アリス「またジャバウォックを倒しに行っちゃったのかしら?無茶しなきゃいいけど・・・」
白ウサギ「ぼくらはどうする・・・?」
アリス「私は逃げないわ・・・」

白の王国に進軍する赤の軍隊
赤の騎士「進め!いまこそ白の王国をねだやしにするのだ!!」
その様子を見つめるチェシャ猫「おもしろくなってきやがった・・・」

白ウサギ「ひいい・・・来た…!」
おびえる白ウサギをなでるアリス「大丈夫・・・・・・」
赤の騎士「カノン砲前に…!照準合わせ・・・放て!!」
白の王国が砲撃され爆発する
樹木で出来ているのであっという間に燃えてしまう建物
白の王国になだれ込んでくる赤の兵
赤の騎士「敵は!?」
兵士「誰もいません!みんな逃げだしたようです!」
赤の騎士「王宮に女王はいるはずだ!王宮を探せ!」
建物の陰に隠れているアリスと白ウサギ
白ウサギ「あああ・・・大変だ・・・!」
アリス「大丈夫・・・あの木はとっても高いの。一日やそこらでたどり着けないわ・・・!みてて」
井戸で水を汲むアリス。水を如雨露に入れて、王宮にかける。むくむくと成長していく白の王宮。
白ウサギ「なるほど・・・」
アリス「あなたも手伝って!」

赤の騎士「ほう・・・なかなかずるがしこい真似をするじゃないか、アリス・・・」
白ウサギ「ひいい!見つかった・・・!ご・・・ごめんよアリス・・・ぼく一人ではとても戦えない・・・!」
逃げ出してしまう白ウサギ
アリス「ウサギさん!」
兵士「あのウサギをつかまえろ!」
赤の騎士「あんな雑魚構わぬ!捨ておけ!それよりもこの女だ。砦の借りをかえすのをずっと待ちわびていたんだよ・・・」
笑って剣を抜く赤の騎士「はじめから大人しくこちらの言いなりになっていれば、死なずに済んだものの・・・ほとほと馬鹿な女だ、お前は・・・」
アリス「わたしは誰のいいなりにもならない・・・私の運命は私が決める・・・!」
赤の騎士「ほう・・・怖くないのか?」
アリス「あなたなんて怖くない!!」
アリスの前に飛び出す白の騎士「その通りだアリス!」
アリス「白の騎士さん・・・!」
白の騎士「そなたは私が守ると約束したはずだ・・・!」
赤の騎士「くくく・・・またやりあおうというのか・・・貴様は私には勝てん・・・!」
白の騎士「その通りだ。」
赤の騎士「?」
白の騎士「お前には普通の剣が通用しないのだからな・・・!確かに私は貴様より弱かった!しかしそれはお前が強かったのではない!その剣が強かったからだ・・・!」
赤の騎士「ほう?」
白の騎士「お前のその剣こそ、我が白の王国から奪った伝説の剣ヴォーパルの剣だ・・・!!」
赤の騎士「くくく・・・よくぞ。その通りだ。この剣はケンカの仕方も分からない貴様らが持っていても仕方あるまい?私のような戦士が持ってこそその力を発揮するのだ・・・」
赤の騎士が白の騎士に切りかかる。赤の騎士の攻撃を受け止め、剣をはねのける白の騎士。
白の騎士「いいや、違うな・・・お前は臆病だ・・・なぜその剣を持っていながらジャバウォックを退治しない・・?」
赤の騎士「なんだと・・・?」
白の騎士「貴様は最強の剣を持ってしても、まだ敗れることを恐れているのだ!」
赤の騎士「たわけ!」
強烈な斬撃を加える赤の騎士。
倒れる白の騎士
アリス「白の騎士さん!」
赤の騎士「アリス!この男の首がはねられるところを見ておけ!」
白の騎士「私は勝利したぞ・・・!そんな剣が無くても、心に宿る勇気と絶対に諦めない強い意思で!」
赤の騎士「くはは!それが今生最後の言葉か!」
その刹那、恐ろしいうなり声が上がる。
地響きを上げて、白の王国にジャバウォックが突っ込んでくる。
赤の騎士「な・・・!なんだと・・・!!」
ジャバウォックの額には剣で切り付けられた傷が付いている。
白の騎士「よくぞ来てくれた、わが友!」
赤の騎士に襲い掛かるジャバウォック
赤の騎士「ひいいいいい!!くるなあああ!!!」
剣をふるう赤の騎士。しかしジャバウォックは赤の騎士の脚を咥えてふりまわす。
頸を振るい赤の騎士を放り投げてしまう。
兵士「ば・・・化けものだああ!!!」
赤の軍隊が攻撃を加える。
ジャバウォックは顎を開き、炎を吹いてカタパルトを吹っ飛ばしてしまう。
白の騎士を起こすアリス「やったね・・・」
白の騎士「私がジャバウォックに打ち勝てたのはキミのおかげだ・・・」
アリス「いいえ・・・あなたの力よ・・・」
何かに気付く白の騎士「ア・・・アリス・・・!あれを!!」
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