『80日間宇宙一周』制作裏話

 長かった~!!私が『80日間宇宙一周』の脚本を仕上げたのは2009年の1月。そして1月~3月までに47ページまで下書きをし、その後大学に復学・・・K氏の強い要望もあり再び下書きの続きを書いたのが2010年の4月に入ってからでした。
 そして今、とうとう133ページに及ぶ過去最長の短編漫画『80日間宇宙一周』の下書きが完了しました。

 これ出版社とかに出せるページ数ではないので(長すぎ!)、おそらくペン入れはしないと思います。あしからず。133枚もなぞってたら年が変わっちゃうよ。
 工場とかメカニックとかとにかくペン入れが面倒なものばかり出てくるし、鉛筆だからこそだせる濃淡の表現が結構好きなんです。鉛筆って、つけペンとスクリーントーンをいくら頑張っても出せないタッチの柔らかさがあります。

 で「全133ページ」は、これまで原稿に描いて一番長かった『innocent garden』を抜き記録更新。その上、田代漫画史上「最も人が死んだ漫画」としても記録更新(『ホットショット2』かよ)。おそらくこの死者200万人という記録は私死ぬまで抜けないと思います。なにしろもう宇宙戦争は書かないと思うので。
 
 これほどまで時間をかけて取り組んだ漫画は久々で(おそらく執筆期間は半年)、結構愛着があります。というわけで、ここからは『80日間宇宙一周』の制作裏話を。この漫画全く知らない人にとっちゃどうでもいい記事なんですけど・・・(本編は本サイトにあります)

 まず本作の世界設定から。この漫画の着想となったのは「冥王星準惑星降格」のニュースです。「水金地火木土天海冥」の太陽系の9個の惑星がひとつ減って8個に・・・
 もし冥王星人なるものがいたら抗議するんじゃないだろうか・・・?このアイディア(?)がこの漫画の始まりでした。
 あとは冥王星は太陽系で最も外側の軌道を回っているので、太陽系にやってくる隕石を撃退する番人のような星にしよう→ならばスターウォーズ計画のようにミサイルやレールガンを装備しているだろう→軍事国家だ!→軍国主義の国に生きる軍人の話・・・って感じで連想していきました。

 もう一つのポイントが時代設定。宇宙船などが出てくるSFなので未来っぽくなりがちですが、あまのじゃくな私は『ワイルドワイルドウェスト』のような「レトロフューチャーもの」を高校の頃から一度やりたかったので、ライトなどの服装は20世紀初頭のものに、乗っている宇宙船「ライトフライヤー号」は第一次世界大戦のプロペラ機のような感じにしました。ちなみに具体的なデザインの元ネタはドイツの「フォッカー」です。

 またこの漫画はそもそも少年誌を狙って考えたので、『ドラゴンボール』のようになにか目的があって世界中を旅する構造の漫画にしました。いわゆるロードムービーです。
 この漫画は宇宙の色々な星を旅して、太陽系の各惑星に暮らすそれぞれ違った文化と価値観を持つ人々と交流していく感じにしました。本当は木星や土星ってガスの塊なんですけどね。
 さらに、ワクワクする少年冒険ものの感じをより引き出すために、本作の固有名詞はジュール・ヴェルヌあたりから引用しているもの(ノーチラス号、メイルシュトローム砲など)が多いです。

 次にキャラクターについて。まずはミグ・チオルコフスキー。彼女の名前は世界最速の戦闘機「ミグ25」からとっています。名字のチオルコフスキーは「宇宙旅行の父」ともいわれる著名な科学者で、彼の考えた宇宙ロケットの公式は本作のホワイトボードにも書かれています。暇だったら探してみてやってください。
 当初彼女のデザイン画を見た友人は「この人男?」と性別が分からなかったようで、アクセントとなるリボンや、胸を大きくしたりして女性に見えるようにしました。
 一応この人のデザインは女優の「天海祐希」さんをイメージしています。女性キャスターで言うならクールな「中田 有紀」さんあたり。

 で、性格は昔の日本にたくさんいたような「昭和ひとケタ型」。責任感が強く、権利よりも義務を重んじるミグは国家にとっては非常に使い勝手のいい軍人なのです。
 そんな彼女を成長?させるのがまったく正反対な自由人のライト。かのスティーブン・スピルバーグ監督は「ドラマとは二本の棒をこすり合わせるように、正反対の性格のキャラを出せば燃え上がる」というようなことを言っていましたが、私もそう思います。
 初期の設定では子供っぽい行動派のライトを、理詰めで言い負かすお姉さんという感じでしたが、実際書いてみたら終始ライトに押されっぱなしでした。
 ミグは今年で31歳ですが、このアラサーと言う設定は自分でもよかったと思います。上手いことミドルエイジクライシスが書けたかどうかは不安ですが・・・

 ミグと言えば、シーンのあちこちでつぶやく奇妙な歌詞の歌。これは最後で分かるのですが「所ジョージ」さんの名曲の数々です。一応知らない人の為に解説すると・・・隕石解体時・・・「農家の唄」、軍事工場の前・・・「チョコレートを買いに」、帰宅時デモに遭遇・・・「まったくやる気がございません」、駆逐艦メインリアクター・・「森田さん家に持ってった笹ガレイの干物」です。
 またノーチラス号の建造工場のプレートには「安全第二」という所さんのアルバムのタイトルが、ミグが呑んでいる缶ビールは所さんがCMした「ジョッキ生」、ライトの口癖「ニャハハ」と「ガーピー」は「デジタル所」さんの引用です。全部気付いた人は相当の所さん通です!他にも何かあったかもしれませんが、もう忘れちゃいました。
 ちなみに私が一番好きな所さんの歌は「雨上がり黒い路上」です。名曲!

 本作のもう一人の主役がライト・ケレリトゥスです。名前の由来はバレバレですね。ライト兄弟です。名字の「ケレリトゥス」は相対性理論の「E=M×Cの二乗」のCです。光速と言う意味のラテン語です。
 アメリカ生まれのライトは、自由と平等がモットーで人生をとことん楽しむタイプ。ミグのように国家のために自分の夢を諦める事が理解できません。
 彼にはモデルがいます。それは中学校の頃の友人のM氏です。破天荒かついつも笑顔。自由気ままな彼は、とにかく物理やメカに強く、東大生も輩出する進学校だったうちの高校でも物理が学年二位と驚異的な成績でした。
 M氏は頭が大変切れるのに、やることなすことおバカで私は本当にいろいろと笑わせてもらいました。この漫画は彼に捧げています。

 ミグの同僚バーニーは描いてて一番楽しかったデザインのキャラクター。小惑星解体部隊「ディープインパクト」のメカニック担当で、性格はぶっきらぼう。でも機械のように感情を出さず孤独に耐えるミグを、デニスと共に心配している数少ないミグの仲間。
 一方のデニスはディープインパクト最年長の参謀。彼女はミグを気にしながらも、女としてミグとは対極の人生を歩んでいます。夫の妻で、子の母親で、科学者で、そして星を守る戦士・・・
 この二人、出番は少ないもののけっこういい味出してくれました!

 研究のためならテロリストにも加担するファイヤーベントのような科学者トリエステ・ピカール卿は、深海潜水艇トリエステ号をつくったオーギュスト・ピカールから名前を頂きました。ピカールは「深海艇の人」と言うイメージがありますが、実は航空宇宙も研究しており、気球に乗って成層圏にも到達しているのです。海の底から、空の果て・・・これほど鉛直方向のギャップを冒険した科学者はこの人くらいなのではないでしょうか?
 しかし研究のためならどんな勢力にも加担するという彼の性格は、ヴェルナー・フォン・ブラウンをモデルにしています。「自分の作った技術を国家や軍がどう使おうとオレの知ったこっちゃない」という彼のテーゼは賛否両論ありますが、なんか小気味いいですよね。
 技術に非があるのではない。問題なのはそれを使う人間だ・・・この問題って現代の日本人のほとんどが、原子力や化石燃料といった科学技術の恩恵を受けて生活しているだけに難しいです。
 この手の問題が本作で少しでも問題定義できてよかった。これぞSFの醍醐味。

 いや~しかし終わった・・・とりあえず明日あたりにスキャナーでPCに取り込むから、K氏、もう少し待っててね。
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