アウトレイジ

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆」

 かなり特殊なバイオレンスコメディ映画。

 ついに北野武監督の『アウトレイジ』をレイトショーで鑑賞してきました。本当は先週見る予定でしたが、話題作の『告白』を先に見てしまったので一週遅れの鑑賞でした。

 北野監督がインタビューで常に「怖さと笑いは紙一重」と言っていて、私はまったく意味が分からず「いや、怖さは怖さ、笑いは笑いじゃない・・・?」と首を傾げていたのですが、実際に映画を見て監督の言葉が解った。
 確かに紙一重。いや~ここまで笑うとは思わなかった。だって怖いやくざ映画だと思ってたから。人を笑わすのにこんな方法があったとは意外。でもやっぱりたけしさんの笑いですね。
 たとえば中華料理店のオヤジが麻薬を流してて、そいつをとっちめて薬を卸している元締めを吐かせるシーンがあるのですけど、もう耳にさいばし突き刺して、肉切り包丁で指をダンって切っちゃうんですけど、その切れた指が2本ほどお客さんの注文したタンメンに入っちゃってw、そのままタンメンがお客さんに運ばれてて、ニンテンドーDSに夢中なお客さんは指入りタンメンに気付かない・・・
 これはたけし的世界観を象徴するシーン。たけしさんの世界ではいわゆる「一般人」がとても命に無関心。
 すぐ傍でやくざが暴力行為をしていても、サラリーマンは顔色一つ変えずに飯を食っている。これって命の重さに麻痺している現代人を皮肉っているというのは、果たして深読みなのか。

 たけしさんは強いて言うなら明大の工学部にいた「科学畑」の人間。自分が交通事故で死にかけた時、たけしさんは神様みたいな存在が現れるかちょっと期待したらしい。
 しかし現実は残酷だった。そんなものは結局現れず、顔が二つ分に腫れてぐちゃぐちゃになった自分の肉体と「もう少し付き合うのかあ~・・・」と、意識を取り戻したらしい(『たけしの死ぬための生き方』より)。
 この経験は、結局現実は科学通りになっていたということをたけしさんに示したのかもしれない。悲しいけど現実において人の命など重いも軽いもない。地球の生物は皆平等に意味もなく生まれて意味もなく死ぬだけ。
 そんな人の“生”を突き放したニヒルな演出、生命観が、たけしさんの映画には確実に存在する。

 しかしそのニヒルさがニヒルで終わらない。そこに笑いを見出してしまうのがプロの芸人「ビートたけし」。
 笑いと言えば、大体トイレの個室にいる男を射殺するのに、やくざが洗面台に上がって上からピストルを撃つんですけど、ちゃんと靴を脱いでるんですよ。人殺しの最中なのに、こんな行儀の良いやくざはいないw。もうツボに入っちゃって・・・
 あとアフリカのどこかの国の在日大使。このキャラ大爆笑。ゾマホンさんといい(二代目そのまんま東)、ポヌさんといい、『BROTHER』といい、たけしさんは黒人が好きなんだと思う。

 現実はとても残酷だけど、でもその世界で必死に生きる人々は愛おしい。たけしさんはそんな風に思っている気がする。
 『アウトレイジ』に出てくる極悪人は、みんな自分の感覚や欲望に正直で「偽善」が一切ない。だから悪人のはずなのに・・・どこか愛らしさと哀愁を感じてしまう。
 とにかく、こんな映画はたけしさんしか撮れない。というか、よくこんな話思いつくよなあ。やくざ映画よほどたくさん見ているのかなぁ?それともやくざの知り合いでもいるのかな・・・?

 たけし映画初出演の俳優さんたちの演技はみんな秀逸。たけしさんが一番セリフとか下手なんだけどw、それがまたいい。あの人は演技がどうこう・・・のレベルじゃなくて存在感だけで凄味があるから。
 でも 北村総一朗さんに三浦友和さん、杉本哲太さん、小日向文世さんってみんな優しい人の良さそうな俳優さんばかりじゃないですか。なのに役に入るともう本物のやくざにしか見えない。こええ~!流石プロ。
 結局、強大な国家権力である警察(小日向さん)がいいとこどりなのは、やくざは警察のお目こぼしがないと成立しない現実?を投影しているからなのか。

 『告白』の経験から、今回は映像の撮り方にも注意して鑑賞したのですけど、たけしさんはやっぱり上手い。構図とかも。
 たけしさんは数学が得意だし、細かいところも凄い計算して作っている。なにしろ「映画因数分解理論(余計なシーンは共通因数でくくれるので省略すべき)」の提唱者ですからね!(※ただ私の評価基準に映像などの観点は基本的に無い。そこらへんは正直知識がないのでよく分からないから。私は主に物語で判断します)

 最後に一言。村瀬組長(石橋蓮司さん)可愛そすぎる~!!まさに踏んだり蹴ったり!そりゃねえぜ兄弟!!
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