バイオフィリア仮説について

 『進化心理学入門』といういい本があります。それを読んで思うのは、「集合的無意識(人間の思考の普遍的パターン)は存在する。そしてそれは、人類が進化の歴史において環境に適応するために獲得したもの」ということです。
 
 それは、ハーバート・リードが指摘したように「どこのマンダラも文化的交流がないのに似たような形に収斂する傾向がある」とか、佐倉統さんの言う「どの国の人もヘビを嫌う(私は嫌いじゃないですよ!今触れるか自信ないけど…)」という社会生物学的事実(?)から導き出されます。
 佐倉さんはこう著書で述べています。要約すれば…(本文の抜粋ではありません)
 
 「たとえば私たちは自然を愛します。そして自然を離れた都市生活において、庭や公園を作る場合は、平地でちょっと木や草が生えてて水がある…といった情景である場合が多く、過酷な環境(=砂漠や雪原、ごつごつした岩山)ではありません。
 これは私たち人類の生まれたアフリカの「サバンナ」の環境なのです。つまり人類は無意識にそのような自分たちが生まれ、進化してきた環境を好むのです」

 いろいろと突っ込みどころのある話ですが・・・たとえば自然が好きな人は、落ちたら死んじゃうような高い山に登るし、サバンナ以外のすごい過酷な環境でも、丸ごと自然を愛する傾向があります(ただ赤い竜の国「ウェールズ」や、雪ばかり降る「ロシア」は、他の民族が侵略する際には敬遠したということもありますが…)。

 これは佐倉さん自身ももちろん理解されていて、庭や公園の例は都市の限られたスペースで自然を模倣する際、結果的にああいうデザインになるかもしれない、と言っています。

 昨今加熱するエコブーム。問題は「なぜ環境を守る必要があるのか?」でなく「なぜ我々は自然環境や生物を愛し、守ろうとする気持ちが生まれるのか?」ということなのです。
 この気持ちは人類が進化の過程で獲得した心理的形質だとする説があります。それが「バイオフィリア仮説」です。

 少しガイア思想の批判で触れましたが、実は人間は「地球や他の生物を助けよう」と言うのは全くの建前かつおこがましい幻想で、本当は「自分たちが住みよい環境を維持しよう」と利己的に動いているのです。
 つまり「自然を愛する気持ち」と言う時の「自然」とは「人類の住みよい自然」と解釈すべきで、人間は自分たちに適した環境を好んでいるだけ、その結果が「地球を守るという名の環境保全」にすぎないと私はバイオフィリア仮説をこのように考えています。

 この前、環境テロリスト「シーシェパード」が捕鯨調査船とトラブルを起こしました。アメリカにおいて環境テロリストは恐ろしい存在で、マクドナルドを焼き討ちしたり、公園の森林を傷つけたりしています。
 捕鯨の是か非かは置いておきましょう。つまり佐倉さんが指摘したように、あれ(保護すべき対象)が人に近い「クジラ」でなく、人との類縁関係が遠い「ヤマトゴキブリ」なら、彼らはああいう行動を起こしたのでしょうか?(ちなみに佐倉さんは日本のトキについて突っ込みました)
 また、私が呆れたのがニュースで、ガラパゴス諸島が噴火した際、ヘリコプターでガラパゴスゾウガメを救出し、場所を移す作業を見たときです。あのような自然への余計なお世話的干渉もバイオフィリアの結果なのかもしれません。

 つまり、人類が「宇宙船地球号=地球の生物は皆尊い」と奇麗事を言っても、結局は人間の好みで恣意的に救うべき動物を選択し、ちょっかいを出しているのも、自然が好きな割には森林をつぶして都市化を進めるのも、人間のバイオフィリアが利己的なものだと考えればつじつまが合うのです。
 ちなみに、レッドデータアニマルは所謂絶滅する可能性のある動物を優先的に救おうとしていますが、そのように特定のレアな動物にだけ「えこひいき」するのはたいへん危険です。
 ガイア理論で述べたように、全ての生物は相互作用をしており、つながっているので例えばトラをえこひいきした時、その下層の消費者や生産者にどんな影響が出るか分かりません。
 実際世界最初の国立公園である「イエローストーン国立公園」では、そんな事をやってえらい目にあったという例があります。

 また自分たちからは遠い存在の昆虫類の(レアな)種を全て保護するのも実は不可能で、地球の生物種のほとんどは昆虫である上(種類がとんでもなく多い)、熱帯雨林では昆虫は猛烈な勢いで「種分化」を繰り返しているので、きりがありません。
 というか、一体彼らが何種類いるかも分からないし、絶対特定できないのです(常に滅んだり新種が生まれたりしているので)。
 地球環境は、ちょうど細胞膜のモザイクモデルのように流動的で常にゆらいでいます。時間を止めることが不可能である以上、実は環境の変化を止めて一定の状態にし続けることは夢物語なのです。
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