23.ダーウィンとウォレス必然の一致

 ウォレスの手紙を読んだダーウィンはさすがに驚いた。

 ウォレスが考えたという進化のメカニズムはダーウィンが20年も前に考えた自然選択説と全く一緒だったからである。
 これはウォレスがダーウィンの進化論をパクッたわけでは決してない。それならば、ダーウィンに手紙など出さずにさっさと学会に自分だけの手柄として発表するはずだ。
 ウォレスがダーウィンから影響を受けたのは一つだけ。ビーグル号の航海だった。ダーウィンの冒険に憧れたウォレスは、東南アジアとオーストラリアを探検。
 オーストラリアの動物が独特で原始的なのは、オーストラリア大陸が早くから他の地域から独立し、生存競争が他よりも緩やかだったからではないか?と考えたのだ。

 片やダーウィンはガラパゴス、ウォレスはオーストラリアだが、この二人は同じ本から自然選択説の着想を得ているのは言うまでもない。2人ともマルサスの『人口論』を読んでいたのだ。
 つまり2人の進化のメカニズムの説明における奇跡の一致は、実は奇跡でも何でもなくマルサスによる必然の一致だったのだ。

 そして当時のヴィクトリア朝時代のイギリスでは、超有名な大人気学者ハーバート・スペンサーが、小泉総理ばりに「自由競争!」「優勝劣敗!」といった力強いスローガンを使って、資本主義や産業革命によって発生したとんでもない格差社会から大衆の目をそらそうとしていた。
 そもそも最初に「誤解を生む大失敗な言葉である!」といちゃもんつけた「進化」と言う言葉も、この人のオリジナルだ。そしてその言葉は当初生物学ではなく社会に用いられていた。
 我がイギリスの社会はよりよく進化するのだ!と。マルサスの冷酷非情な生存競争を説く『人口論』もそんな時代にマッチしていたのだ。
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