24.『種の起源』緊急出版!

 とはいえ、焦ったのはダーウィンだ。このままでは自分が20年前に思いつき、20年間こつこつ積み上げた学説をウォレスの手柄にされてしまう・・・!どうしよう?
 そこでダーウィンは頼れる先輩ライエルに手紙を書いた。

「ライエル先生へ。先生はいつも「キミはのんびり屋で、そんなにマイペースだと人に先を越されちゃうぞ」と忠告してくれましたが、とうとうそれが現実のものになりました。
私はこれほど驚くべき偶然の一致を見たことがありません。なんとウォレス君の論文は私の論文といくつかの章のタイトルまで一緒だったのです!」


 かねてからダーウィンの自然選択説のアイディアを聞いていたライエルと、ダーウィンの友だちの植物学者フッカーは「おいおい、やばいだろダーウィン!俺たちが何とかしてやるから、お前はとりあえず論文をまとめちゃえ!」とダーウィンとウォレスの先取権問題(学説は早く発表した者の功績になる)を調整してくれた。
 結局「自然選択説」はダーウィンとウォレスの共同論文と言う形で1858年リンネ学会で発表されることになった。

 とはいえ、自然選択説と聞いて今日の私たちがウォレスではなく、ダーウィンを思い出すのには大きなわけがある。
 それは、自然選択説をまとめた書籍(=『種の起源』)の執筆権をウォレスが憧れの先輩ダーウィンに譲ったからだ。1870年ウォレスはこう振り返っている。

「自分自身の力量をよく知っている私は、『種の起源』を書く仕事が、自分の手に負えるものではないことを知っている。ダーウィンさんはおそらく今生きている全ての学者の中で、その仕事をするのに最もふさわしい人だ。」

 ・・・というわけで、激しい先取権競争で生き馬の目を抜くような科学界では稀な美談もあって、ダーウィンは書きかけの草稿を強引にまとめて、『種の起源』の500ページだけのパイロット版を1859年に出版した。
 結局この時出したパイロット版が、わたしたちがよく知る『種の起源』である。

 そして即日完売した『種の起源』は学界に大きな嵐を巻き起こす(やっぱり)・・・
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