31.ダーウィニズムNEO! 

 さて突然変異体のオオシモフリエダシャクの大量発生は、進化のメカニズムを考える上でたいへん重要なポイントを教えてくれる。

 それはメンデルの遺伝のメカニズムは生物の個体に、ダーウィンの自然選択のメカニズムは生物集団(群)に働くということである。

 そして同じ種類の生物の群が共有する遺伝情報を遺伝子プールという。これは「個体の遺伝子」を「個人のホームページ」とするならば「インターネット全サイト」にあたるもので、群の中の遺伝子の流行である「頻度」が「遺伝子プール」のパターンを変え、種の漸進的な変化をもたらすのだ。

 そこで重要になってくるのが環境に対する個体の適応度だ。適応度とはその名の通り、その生物の環境に対する適応力の度合いを指す言葉なのだが、これを便宜上ランク付けして適応力が高い順に「A>B>C>D」とする。
 そしてとある環境に「適応力C」と「適応力D」を持つ同じ種類のキリンをそれぞれ同じ数だけ置く。
 するとDより首の長いCのキリンは、Dのキリンよりもその環境によりよく適応するので、群の中に占めるCの割合を次第に増やしていく。
 相対的に群の中に占めるDの数は減り、場合によって死に絶えたり、「もう誰とも闘いたくない・・・」と競争を回避し、Cのいない新しい環境へ出かけてしまうかもしれない。
 とはいえこの動物の遺伝子プールのパターンは変わった。「Cの個体数>Dの個体数」というように。これは自然選択が働いたということだ。

 さてここでDよりも適応力の強いCよりも適応力が強いBがCの個体の中から突然変異で現れたとする。この「キリンB」は、「Dよりも首の長いC」よりも少しだけ首が長かった。
 すると遺伝子プールの頻度がまた変わり、個体数は「Bの個体数>Cの個体数>Dの個体数」となる。
 そしてBよりもさらに適応力が強い、大変首の長いキリンAがBから突然変異で現れた。すると言わずもがなキリンの集団内で最も多数派になるのは「キリンA」だ。
 そしてこのサイクルが何万年もかけて繰り返されたとする。めんどくさいので今回は遺伝子プールの変移がたった3回だったが、これを250万回だとしてほしい。
 するとキリンAとキリンDの姿かたちはもはや別の種の動物と言ってもいいほど変わってしまっている。
 そして、この長い長い進化の繰り返しによってAとの競争に敗れたキリンB、C、Dはとっくに絶滅していた・・・
 私たちが現在首の長いキリンしか動物園で見られないのはこの為である。

 しかしである。皆さんはDの首の短いキリンの一部が、Cに勝てないから…と環境(バトルフィールド)を去ったのを覚えているだろうか?
 このキリンはCがいない楽園を見つけ「へっへ~首が短くたって全然食っていけるもんね~」と現在に至るまで自然選択の過酷な競争を逃れ続けてきた。
 これが現在生息する世界三大珍獣のひとつオカピである。首の短い原始的な形態を持つキリンであるオカピは、いわばDのままでも現代まで生き延びることができた幸運な「D’(ディーダッシュ)」なのだ。

 ちなみにかつての首の短い「キリンD」とはキリンとオカピの共通祖先「パレオトラグス」という1000万年前に生息していた絶滅動物だ。
 オカピはこのパレオトラグスとほとんど変わらないまま今日まで来てしまった稀有な例だと言えよう。よっ生きた化石!

 こうしてダーウィンの自然選択とメンデルの遺伝の法則は合体した。このような進化のモデルをネオ・ダーウィニズムもしくは進化の総合説と言う。
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