いまさら『バカの壁』

 欲しい本が絶版ばっかりで残念。大学にいて、割引料金で買える内にいろいろ本を買いたかったのですが。特に国際命名規約の本は永久保存したかった。ネットか古本屋で探してみます。

 さて、大学の先生に勧められて、この前読んで結構ひどい目にあった『構造と力』や、中学校の頃流行って読んだけど、あまり脳に残らず一切革命が起こらなかった『脳内革命』など、ベストセラーになる本ってよくわからない内容のものが多いです。
 一言でいえば内容が胡散臭い。
 養老孟司さんの『バカの壁』もそんな感じで、私は「絶対こんな本読まないぞ」と思ってたんですが、親が流行に影響されて買ってきちゃったんで、もったいないから読んでみた、という思い出があります。あれ何年前でしたっけ?
 養老さんの文って、高校の現代文で頻出するのですが、とにかく読みづらい。ぱっと見話し言葉っぽい文体で分かりやすいのかな?って感じがするのですが、とにかく何が言いたいのか分かりにくいんです。誤読を誘う文章というか。
 だからなんでこの人の本がベストセラーになるのか、よく分からない。

 『バカの壁』に関して言えば、教育について書かれた後半は結構面白かった。分かりやすかったですし。問題は「バカの壁」という本論について書かれた前半。
 一回目では何が言いたいのかさっぱり分からなかった。んで何回か読みなおして「ああ、この人こういうことが言いたいんだろうな」ってなんとなく分かってくるのですけど、そんな文章、人に読ませるのなら、赤点だと思います。

 西部邁さんが、小林よしのり先生との対談で、この本を取り上げて駄目だししているのですが、私が思うに西部さんの批判もちょっとずれているという感じなんで(ちょっとお酒飲んでるから?)、知識人の人でも難しい本なのかな、と思いました。
 たとえば「情報は変わらないが、それを受け取る人間は変わってしまう」という部分。これは私そんなに違和感感じなかったんです。
 これは絵と画家を考えてみれば、解り易いです。画家はさらに技術が上達したり、興味や関心が別のものに移ったりと変化しますが、その画家が描いた作品は、もう画家の手を離れ変化はしません(物理的には劣化はしますが、内容は変化しません。手を加えない限り)。
 作家とその著書でもそうです。養老さんはそう言うことが言いたかったんじゃないかな、と思うのですが、西部さんは、人間は「ホモ・サピエンスという動物」ではなく「蓄積された情報の塊」と捉えている人なので、「情報は変わらないが、人間は変わる」がピンとこなかったようです。社会を論じる西部さんにとって「人間=情報」ですから。

 それともう一つ。「同じ人なんだから、その人の言うことは大体変わらないだろうという前提がいつの間にか形成されている」と言うところ。私は大いに納得します。
 こう自分勝手に他者のパーソナリティを単純化しないと、我々は他者を認識できないと思うんです。
 でも確かに西部さんの言うとおり、この理屈から「だから私たちは言葉や約束を軽んじるようになった」という結論を導くことは、ちょっとおかしいのかな、とも思います。
 どういう推論でそうなるんだろう。

 最後に「バカの壁」について。養老さんはイスラム原理主義などのテロ行為が「バカ」だと確実に思っています。
 どういうことかと言うと、養老さんが定義する「原理主義」とは、「他者や社会に関心が薄く、自分の主観を原理として振りかざす自分勝手なやり方」と要約することができます。
 だからイスラム"原理主義”者は、国際社会のことなどを考えず、自分たちを正当化することしか考えてない「バカの壁」に閉じこもった人間なんだ、と養老さんは批判したいのだと思うのです。
 これは言いたいことはわかるのですが、西部さんの指摘するとおり、そういうことを「原理」って言うんだっけ?って当惑しちゃいますよね。
 これは「養老的原理」とか、カギカッコとかつけてもらわないと、確実に誤読しますよ。
 「ハイゼンベルグ不確定性原理」などのように「原理」とは主観的なものでなく、もっと普遍性の高いもの、西部さん的に言うならば、人間集団を支える大切な根底なのであって、言葉の使い方が変ですよね。

 自分以外にも相手の言い分も認めましょう、という考え方を「二元論」っていうのもおかしいし。世界に私とあなたの二人しか存在しないのならいいけど、世界には60億人も他人がいるのだから、強いて言うなら「多元論」とか「相対主義」とか言ったほうがいいのでは?
 ・・・。あれ?結構読み直してみると、西部さんの指摘は的確ですね。
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