『先送りできない日本』

 池上彰さん緊急出版!日本の伝統文化「先送り」を徹底追及!?(※この本の印税はすべて義援金となります!)

 だいたい第二次世界大戦の時も、リーダーが身を切って対処しなければならない問題を先送りにして戦争へなし崩し的に行っちゃったところあるもんな(特に海軍はやりたくなかった)。怖い怖い。
 あの頃も不況で震災があって世界的な恐慌だったんだよ。まさか今の日本がもう一度真珠湾を奇襲攻撃するとは思わないが、状況はすっごい似ている。

 話変わるけどいわゆる「国家論」って面白い。結局大きな物語たりえない気がして。みんなそれぞれ自分が理想とする国家を語っているだけで、大きなお世話ってなっちゃうところある。
 つまり一見「天下国家」という大きな物語を語っている人も、結局「小さな物語=セカイ系=イッツァスモールワールド」なわけだ。
 これは「サブカルに世界は描けるか?」って記事でも話題にしたけど、あの時はあくまでもサブカルの枠で論じたけど、最近はサブカルどころかそれが人間の想像力の限界なんじゃないかって気がする。

 これを痛感したのがTPP問題。本書で池上さんが展開した主張と『国防論』での小林よしのり先生の主張(『国防論』第15章 TPP参加は食糧安保を脅かす 247ページ)が180度違う!
 どっちも日本は内需国で(グローバル市場に早く特化した韓国に比べて人口が多い)、これからより激しい国際競争の時代がやってくるとしながらも、池上さんは今TPPに参加しないと国際社会から取り残されて、それこそ「ガラパゴス諸島」になっちゃうとし、小林さんは農作物というのは工業製品のように安定供給できるものじゃない。だからお金で買えない時に備えて、国が「これまでのように管理(※『先送りできない日本』第2章は必見!)」すべきというスタンスだ。
 
 おもしろいのは小林先生は大国が海外の土地を買い取って農作物を生産し、それを自国にUターンさせる「ランドラッシュ」を日本はできないとしているところだ。
 つまり人さまの土地をぶんどり(金で買ったとしても)現地の人を飢えさせて、自国の飽食文化を維持するなんて非道な真似日本にはできないだろうと言っている。やっぱりよしりんって日本人のモラルをなんだかんだ言って信頼しているのがうれしい。

 結局このランドラッシュっていうのは21世紀型の植民地政策に他ならない。金で買えば他国の資源を支配しちゃっていいのか?相も変わらず帝国主義、歴史は繰り返しているわけだ。
 ただもし仮に日本がランドラッシュやったら農業がなかなか根付かない発展途上国に進んだ農業技術を現地提供しそうだけどね。アメリカの様な強引な適地適作はしないだろう。

 で「農業の非合理の問題はTPPと切り離して考えろ!」ってよしりんは漫画の上の方で小さく言ってるんだけど(森ゆきえ先生のオマケ漫画手法w)確かにこれやりたいのは円安輸出時代を忘れられない経済界の人たちで、日本の農家の人はもちろん反対している。
 というか産業ごとにTPP参加不参加を表明できないのかね?経団連の野郎だけ参加して、第一次産業はある程度保護をするとかさ。

 しかし戦後の日本において農業票は大票田、コメの関税約800%は分かるけど、こんにゃく芋に1706%の関税をかけているなんて初めて知ったw
 これは歴代総理に群馬県出身者が多いため、群馬県の主要産業を過剰な関税障壁をかけて守ったそうな・・・こんな防波堤作るより沿岸部の原発守った方がよかったぜ。

 とはいえ実はこの関税障壁、必ずしもかけた国に有利に働くとは限らない。それがアメリカの自動車産業を破滅させたと言う事実もある。
 あまりに国が過剰に特定産業を甘やかすと競争力が低下、結局海外メーカーにやられてしまう。アメリカの鉄鋼業&自動車産業を破滅に追い込んだのは他ならない日本なのだ!
 アメリカは日本のメーカーに対して徹底的な防波堤を築こうとするが、それに夢中になり自動車産業の発展まで目がいかなかった。
 アメリカが防戦に徹しているうちに日本はさらに技術力を向上させ、最終的にはアメリカ国内に日本メーカーが工場建てちゃって内からやっつけてしまった。

 自動車の他にも真空管、トランジスタと発展したコンピュータの開発競争でも日本はめちゃくちゃな耐久実験を行いアメリカを脅かした過去がある(※参考文献『電子立国日本の自叙伝』NHK出版)
 池上さんによれば、80年代になんと非合法な産業スパイ(IBMスパイ事件)もやったそうな。だから中国のこと叩けないんだ。それにまたスーパーコンピューター世界一に返り咲いたしな。2位じゃダメだったんだろうな。

 この痛快な経済戦争をTPPがらみでよしりんが取り上げないのはおかしい。勝ってる戦争はカッコいいぞ!と『戦争論』で言ったくらいなんだから、TPPになったらなったで反米どころじゃねえ、アメリカと全面戦争でぶっつぶしてやらあ!くらい言えばいいのだが・・・
 よしりんは毎回アメリカを批判しているけど、アメリカの物量的な強さを最も意識している気がするんだよな。アメリカは嫌いだけどその強さは認めているんだろうな。まあいいや。

 さて、アメリカはこの屈辱を今度はTPPで(牛肉やオレンジ以上に)はらそうとしているのかもしれない。なにせそもそもTPPはシンガポール、ニュージランド、チリ、ブルネイといったそこまで経済大国じゃない国々がみんなで力を合わせていこうと立ち上げた仲良しクラブ。
 そこにアメリカ(ジャイアン)が「おい、オレ達も環太平洋の国なんだから入れろ」と、乗り込んできて、どうせアメリカのことだから『アバター』のごとく主導権を握っちゃうつもりなのだろう。こういう奴いるよなw

 しかしよしりん曰くアメリカにとっての最大の狙いは、日本に農作物を売りつけることなのだ。いや農作物だけじゃない、公共事業や郵政事業、保険外診療にまで手を伸ばすつもりなのだ。
 で、そんなにモノやサービスを買ってくれるのはシンガポールやブルネイじゃない。まだ貯金箱になりそうな日本ってわけだ。じゃなきゃオバマさんは今後5年で輸出を2倍にします!なんて言わない。そんな金持ってるのは日本くらいだろうから。

 最後に「ぶれない政治家」について。最近の政局や政治報道、そして私たちの「批判」のレベルにすらなっていない叩き方って危険水域だと思う。率直に言ってバカすぎる。
 これは『先送りのできない日本』で池上さんも今の政治記者を叱っていた位。勉強不足である、と。

 確かに失言する政治家(今回は鉢呂さん)もまずいんだけど、ちょっとした言葉の上げ足とってその度に閣僚変えていたらきりがない。
 で、私対処法考えてみたんだけど、もうマスコミもバカだから国務大臣は記者会見を当分やらなきゃいいんじゃないかって気がする。それではチェック機能が!とか言うだろうけど、お前らその機能を今果たしてないよ。

 だから対マスコミ発表は内閣官房長官に一元化する。支持者しかいない政治パーティのノリでリップサービスして自爆する人が出ないためにも、一回報告書を官邸に上げてもらってみんなでチェックして、これなら失言なし!ってなったら官房長官が各省庁の意向を発表する。それでもいいんじゃないかなあ。

 で、な~んで今の私たちは政治家の言うことにいちいち一喜一憂してるんだって思うんだけど、これオレ漫画の読み過ぎだからだと思うんだよ。
 つまりリアルな人である政治家を漫画のキャラクターのように記号化しちゃって認識しちゃうから、ちょっと言うことがぶれたりすると許せないのだろう。
 何でその人がそういうことを言ったのか、そういったバックボーンを想像する力がない。映画や漫画、アニメといった映像メディアって私想像力の低下を招いたって思っているから。

 だいたい勉強すれば結論なんて変わっていくのが普通なんだ。結論とは真理でも本質でもない暫定的なものなんだ。重要なのはプロセスだろう。
 言うこと変わってもいいけどなんで変わっちゃったか納得のいく説明が上手くできる人がいいんじゃないのか。一回言ったことを何が何でも変えないって言うのは義理堅い感じもするけど頑固かもしれないし、ギャンブラーの破滅のパターンなんだ。
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