『80日間宇宙一周 Sea of hope』脚本④

夜。
海王星のたくさんの衛星が夜空に輝いている。

リンドバーグ号の寝室。
眠っているルヴェリエに毛布をかけてやるライト
小声のライト「ミグ見てみい、可愛い寝顔やな~」
「お前ってけっこう面倒見いいんだな・・・」
「そうか?」
「なあライト・・・ちょっといいかな。」

コックピット。
「どうした?寝れんの?今日の見張り役は火曜だからオレやで。」
「怖いんだ・・・」
「怖い?泣く子も黙る冥王星の軍人が?」
頷くミグ「・・・・・・」
「・・・・・・。
そうそう、あんたが冥王星人だっていうのはあの子にいつまで隠しておけばいいんや?」
「・・・・・・ルヴェリエ王子を見ていると・・・罪悪感で胸が押しつぶされそうなんだよ・・・
私はこの星の人たちに顔向けができない・・・」
「いやええけど・・・あの子は賢い。薄々感づいていると思うで」
「え・・・?」
「あんま気負うなよ。あんたはあの件に関しちゃ悪くないって。過去は過去や。
いくら自分を傷つけても、もう変えられないんやで。」
「・・・」
「・・・そうやなあ、一度あの王子と話してみたらどうや?
あの子は今、親御さんと離れ離れで不安やろ、あんたならその気持ちがわかるんちゃうかな。」
「私が・・・」
「頑張れミグ。」



夜の王宮。
懐中時計を見るピカール「日が変わってしまいましたよ。まったく強情な人たちだ。」
ピカールとチェスを打つ女王「あなたがたの主砲のエネルギーを増幅するのにあの鉱物が必要だと聞いて、あっさり私たちが教えると思いますか?それに・・・地球を滅ぼしても楽園は訪れませんわ。」
チェス盤を見つめるピカール「・・・らちがあきませんな。」
閣議室に入ってくるナッシュ「隕石の場所は海の墓場と言われる秘密の海域だ。」
デスピナに銃を突きつけるテロリスト「この女が吐きました。命乞いしながらペラペラと」
ピカール「くっくっく・・・で、その海の墓場とは?」
ナッシュ「どこだ?」
デスピナ「あ、あたしは知らない・・・本当よ!海の墓場はもともと宇宙海賊の秘密のたまり場だったのよ」
ナッシュ「ということは海賊しか知らないってことか・・・あんまりあの連中とは関わりたくないんだけどなあ」
ピカール「海賊ですか・・・ちょっと面倒なことになりましたね。」
ナッシュ「ああ。まず宇宙を放浪している海賊どもを探し出すのがな。」
デスピナ「話したんだから、私は返してよ!」
ナッシュ「返すかよ馬鹿。地下牢に戻せ」
デスピナ「あそこのベッドは固くていや~!枕の高さもあってないし!」
テロリスト「うるせえとっとと歩け!」
ナッシュ「どうするよ、先生。」
ピカール「ふむ・・・
女王陛下。私にはむしろ、隕石によって汚染されたこの星が20年間も国体を保てたのが不思議でならないのですがね。かつては鋼の女性と呼ばれたあなたのことだ。一体どんなウルトラCを使ったのですか?」
女王「政治の世界にそんな魔法はありません。」
ピカール「そうですか。ならばゆっくり考えてみることにしましょう。」
女王の前にビショップを動かすピカール「チェックメイト」
女王「わたしにクイーンをわざと取らせたのね・・・」
微笑むピカール



夜明け。海上のリンドバーグ号。
甲板で洗濯物を干すエプロン姿のルヴェリエ。
ルヴェリエ「おはようございます」
ミグ「あ、おはようございます。ゆっくりお休みになれましたか?」
「おかげさまで・・・」
「洗濯ならわたくしがやります、どうか殿下は・・・」
「じゃ、ふたりでやりましょう。」
二人で選択物を干す。
ミグ「あの・・・ひとつ聞いてもいいでしょうか?」
ルヴェリエ「ええ・・・それに、もうその敬語は勘弁してくださいよ。」
「しかし・・・わたくし柔らかい言葉遣いが・・・苦手でして・・・」
「ようし、ライトさんに教えてもらった最終手段だ。伍長よ。これは命令である。」
「・・・・・・。ごほん、失礼。海王星に衝突した隕石のことを聞きたいんだけど・・・いいかな?」
微笑むルヴェリエ「はい。」
ミグ「海王星人は隕石のことをどう思っているのかなあ?」
真剣な顔になるルヴェリエ「憎んでいますよ。」
「・・・そうだよな・・・」
「でも・・・ぼくは正直わからないんです」
「・・・・・・。」
「当時のこと。生まれていませんでしたから。
ぼくは昔の海王星を知らない。だから衝突を目の当たりにした人たちの心の苦しみを本当に理解することはできません。」
「・・・」
「皇太子の兄はかつては明るく前向きな性格だったそうですが、隕石によってすっかり変わってしまいました。いや兄だけじゃない。母も大臣たちも・・・保身にきゅうきゅうとしていて民のことまで思いやれる余裕がないんです。自分たちの心を壊さないようにするので精一杯だから。」
「ルヴェリエ王子・・・」
「ずっと思っていた。ぼくはこの星のために何ができるんだろうって・・・」
「できますよ。王子はお若い。辛い過去がないからこそ前向きにやれることがある。」
「ミグさんは・・・?」
「私は・・・私は自分の過去に決着をつけるためにこの星にやってきたのかもしれない。」
「自分の過去・・・?」
ミグの顔に朝日が当たる「ずっと見て見ぬふりをしていて・・・時には自暴自棄にもなったけれど・・・私はもう過去からは逃げない。諦めない。」
「ミグさん・・・」

海の向こうに島のような影が見えてくる。
尾翼の上に登って双眼鏡をひつかむライト「オーイこっちきてみ~。なんか見えたで~」
ミグ「あれは?」
ルヴェリエ「海上キャラバンだ・・・!」
ライト「え?あれ島ちゃうんか?」
「ええ、行商の船をたくさんくくりつけて人工島のようになっているんです。」
「へ~面白そうやなあ。行ってみるか。」
「本当ですか!?一度行ってみたかったんです・・・!わあ~」
ライト「よしおっちゃんがなんでも買ったる。」
ルヴェリエ「悪いですよ」
ミグ「子供のうちは甘えておくものだよ。遠慮することはない」
「わあい、やった~!」

海上キャラバンはまるでベネチアのようになっている。船と船の隙間をゴンドラが行き交う。
船を降りてキャラバン内を歩く一行。
「は~まるで街やなあ。」
バザーに並ぶ屋台の一つを指差すルヴェリエ
「これはなんですか?空の雲をちぎったみたいですけど・・・綺麗だなあ」
「ああ、わたあめや。つまりはキャンディーやな。」
「え?あれは食べ物なんですか!?」
「甘くてうまいで~食ってみたいか?」
「はい・・・!」
「おっちゃん、この綿菓子いくらや」
おっちゃん「毎度!220ポンドだね」
「高っ!!」
「なにしろ輸入品だからね」
ミグ「食料も全部輸入しているのか?」
おっちゃん「まあモノによるな。砂糖が高いんだよ。」
ルヴェリエ「あ・・・じゃあいいです・・・」
「遠慮するなて!おやじ、三つくれ。」
「700ポンドです」
「高くなっとるやんけ!」
「嗜好品には特別税が加算されるんだよ」
ルヴェリエ「やっぱりいいです・・・」
「わ~ったナンボでもはろうてやるわ!」

綿菓子を食べながら屋台の間を歩く三人。
「おいし~でも溶けてあっという間ですね」
「そうか、じゃオレのもやるわ」
「あ、じゃあ私のも」
「え・・・?」
「食っとけ食っとけ。」
「これってとっとけないんでしょうか?・・・こんな綺麗なお菓子があるなんて母さんに見せてやりたいなあ・・・」
二人「・・・・・・。」

ミグ「王子、手をつなごうか。」
「え・・・?」
ミグ「今は楽しもうよ、ね?」

バザーの客に紛れて三人を見つける海賊。
りんご飴を持ってお祭りのプリキュアのお面をかぶる海賊「お頭、いました。」
ロジャー「でかした新人。」

小物屋
ルヴェリエ「ミグさん、このネックレス似合いますよ」
喜ぶミグ「え?本当?ちょっと私には可愛すぎやしないかなあ・・・」
「綺麗ですって、ね?ライトさん」
「う~ん、オレはお前にはこの宝石のブローチが似合う気がするけどなあ」
「それはさすがにミグさんの歳じゃ厳しいですって・・・ハッ!」
「ガ~ン・・・」
「ミグそんな泣くなよ、子供が言ったことやないか~」
「泣いてないよ馬鹿・・・!」

「じゃあ飯でも食ってくか!」
(まだちょっと凹んでるミグ)
レストラン喫茶に入る三人。
オカマのママ「いらっしゃ~い!な・ん・に・ん?」
ライト「三人。禁煙席で。」
ママ「あら~ご家族~?ぼく、いいわね~」
ライト「家族ってわけやないんやけど・・・」
ルヴェリエとミグ「はい、家族です。」
ママ「これがメニューね。おすすめはBランチ。安心で美味しい魚介類が地球から入ったわよん。」
ミグ「地球・・・?」
ママ「ええ。昔はシーフードと言ったら海王星だったんだけどね。地球の魚介類はけっこうあっさりしていてヘルシーよ。ソテーして白ワインソースて食べるのが地球風。トマトと一緒にパスタに絡めてもいいわね。」
「ほ~イタリアンやな!」
「あら兄さん地球の方?」
「そうや」
ライトの体をペタペタ触るママ「やだ~♡ちょっといい体してるじゃな~い!」
「なんやねんな・・・」
「あたしも地球に行ったことあるのよ~そこで料理の修行してこの星に戻って店を構えたの。」
ライト「じゃ、じゃあBランチを三つでええか?」
ルヴェリエ「はい」
ミグ「異議なし。」
ママ「Bランチ3!じゃ、ちょっと待っててね。兄さん愛してる!」
ミグ「モテモテだなライト・・・」
ライト「なにニヤついてんねん。めっちゃオカマやないかい。」

料理を運んでくるママ「おまたせ~」
ミグ「これが地球の料理・・・」
ルヴェリエ「すっごい美味しそうですね!」
ママ「あ・り・が・と♪
兄さんのにはいろいろサービスしておいたから・・・ウフ」
ライト「やめろや気色悪い。」

ルヴェリエ「うわ~本当に美味しい!味付けが海王星とだいぶ違うんですね。」
ライト「オリーブオイルやからな・・・どうしたミグ?口に合わんか・・・」
窓の外をじっと見つめるミグ「なあ・・・外のあれって・・・」
窓の外で海賊船にリンドバーグ号が引きずられていく。
「!!あ!!俺の船!!」

店を飛び出すライト
ロジャー「は~はっは!今度海賊に喧嘩を売る時はよ~く考えな~!!」
海賊「あばあばあばよ~!ヒャッハーー!!」
リンドバーグ号を船内に格納し波止場を出航する海賊船

ライト「あいつらオレらの船を盗んで行きよった~~!!」
ミグ「やっぱり!!」
ルヴェリエ「どうしましょう!?」
ママ「あら飛行艇なら店の裏にあるわよ。」
ライト「マジで!?ママ、貸してくれへんか!?」
ママ「お安い御用よ、じゃあチューして♡」
「えええ!?」
ミグ「ライト一刻の猶予もないぞ!」
ルヴェリエ「ライトさん、ここは心を殺してください!」
ライト「わ~った!どこにすりゃいいんや、ほっぺか!?」
ママ「・・・左乳首(ポッ)」

フライパンで殴られてピクピクしてるママ。
ライト「ついていけへんわ。追っかけるで~!」
レストランの飛空艇に乗り込んでりエンジンをかけるライト。
離陸する飛空艇。

ライト「さすが海王星人、飛空艇は生活の必需品なんやな」
ルヴェリエ「あの人大丈夫でしょうか・・・」
ミグ(料理半分も残しちゃった・・・)
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