地上から空に向かって真っすぐ観測ロケットを打ち上げて、高度によって気温がどのように広がっているかを調べたものを「気温の鉛直分布」と言うそうです。
大気は今まで一層のモデルとして考えてきましたが、地層のように何枚かに分けることができます。でもやりすぎると複雑になっちゃうので、ここでは雲が出来る場所「対流圏(地面から上空13kmくらいまで)」とその上にある「成層圏」に分けて考えてきます。
観測データによると対流圏では、上に1km上がるごとに気温が6℃ずつ下がっていきます。富士山の上の方に雪があるのを考えれば、「高いところは寒い」って言うのはイメージしやすいと思います。
上空に行けばいくほど気圧が低くなるので、体積が膨張、熱エネルギーが分散します。これを「断熱膨張」と言います。
つまり東京ディズニーランドのような混雑している場所では暑苦しいけど、広い割に人が少ない、平日の葛西臨海公園ではそうでもないって感じだと思います(この例え葛西臨海公園に失礼ですね…)。
とにかく気圧の低下によって地面では23℃の気温が、対流圏のおわり「圏界面」ではマイナス6℃くらいまで下がっちゃいます。
しかし成層圏に突入すると、成層圏のはじめ~上空20kmまでは気温の変化がほとんどなくて等温で、20kmを超えると、逆に徐々に気温が高くなるのです。
これは一体どういうことか?ってことなんですけど、成層圏を暖めているのは、あの有名な「オゾン層(上空20km~50kmに存在)」だと考えられています。
オゾンというのは酸素原子が三つで出来ている気体で、紫外線をシャットアウトしてくれますが、猛烈に反応性が高く、極めて不安定な気体であると言えます。
だからオゾン層が壊れても、「よし、じゃあ直すべ」と、人間が実験室で手っ取り早く作るのは不可能で、光合成を行なうストロマトライトなどの生物の、何億年にも及ぶ地道な酸素の蓄積で形成されたとされています。
オゾンの材料は言うまでもなく気体の酸素ですが、酸素は、酸素原子二つが共有結合と言うくっつき方をして、一つの「分子」として存在しています。
この酸素分子に135㎚~240㎚の短い波長の紫外線がぶつかると、酸素の共有結合が外れて二つの酸素原子になります。
酸素原子というのは、「オレは誰ともつるまねえ」と単体でやっていける金属原子のような一匹オオカミではなく、とにかく一人ぼっちが嫌な現代っ子で、すぐに分子を作りたがります。
そこで寂しい酸素原子は、他の酸素分子と強引に合体、酸素原子三つのチームであるオゾンを作ります。しかし強引にできたチームオゾンの結束力は低く(=反応するエネルギーが高い)、すぐに元の酸素原子一つと酸素分子一つに戻ってしまいます。
しかしこの酸素原子と酸素分子の合併に、成層圏の上部において窒素のような第3者(第3体と言います)が絡むと、その合併はいくぶん強固なものになります。
オゾンの持つエネルギーを、第3体がうまく回収してくれるのでオゾンは安定して存在するのです。そのエネルギーの熱量は、オゾン一分子あたり24キロカロリーと言います。
しかし上手いこと合併したオゾンも、成層圏の下の方で320㎚以上の波長が相対的に長い紫外線が当たると、酸素原子と酸素分子に戻ってしまいます。
そこで出来た酸素原子は、今度はオゾンと反応、酸素原子は計4つになり、二つの酸素分子となります。ここで94キロカロリーの熱が発生します。
ここまでの話を整理すると・・・
1.成層圏の上部では、短い波長の紫外線によって酸素分子からオゾンが作られる。またその過程で24キロカロリーの熱が発生する。
2.成層圏の下部では、長い波長の紫外線によってオゾンが酸素分子に戻る。その時94キロカロリーの熱が発生する。
となります。こういったプロセスを「チャップマン機構」と言います。
つまりオゾン層において、プロセス1と2を繰り返していることで、合計118キロカロリーの熱が生み出されていて、それが成層圏を暖めている事になります。
- Calendar
<< April 2025 >> Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
- search this site.
- tags
-
- 漫画 (363)
- 映画 (235)
- 脚本 (222)
- 雑記 (159)
- ゲーム (150)
- 本 (116)
- 教育 (107)
- 生物学 (105)
- 科学 (92)
- 社会学 (81)
- 歴史 (72)
- テレビ (70)
- 芸術 (61)
- 政治 (50)
- 進化論 (40)
- 数学 (40)
- 情報 (38)
- サイト・ブログ (37)
- 語学 (37)
- 映画論 (36)
- 資格試験 (33)
- 物理学 (33)
- 哲学 (32)
- 恐竜 (29)
- 文学 (26)
- 育児 (25)
- 化学 (25)
- 論文 (22)
- PIXAR (22)
- 心理学 (18)
- 地学 (16)
- 地理学 (15)
- 気象学 (15)
- 技術 (13)
- 経済学 (12)
- 医学 (11)
- 玩具 (9)
- 司書 (8)
- 法律学 (7)
- 対談 (5)
- スポーツ (4)
- 映画の評価について (1)
- プロフィール (1)
- archives
-
- 202504 (2)
- 202503 (2)
- 202502 (2)
- 202501 (1)
- 202412 (2)
- 202411 (6)
- 202410 (2)
- 202409 (4)
- 202408 (4)
- 202407 (7)
- 202406 (27)
- 202405 (11)
- 202404 (4)
- 202403 (23)
- 202402 (22)
- 202401 (15)
- 202312 (4)
- 202311 (7)
- 202310 (2)
- 202309 (8)
- 202308 (9)
- 202307 (8)
- 202306 (5)
- 202305 (15)
- 202304 (4)
- 202303 (4)
- 202302 (2)
- 202301 (4)
- 202212 (15)
- 202211 (7)
- 202210 (5)
- 202209 (4)
- 202208 (4)
- 202207 (7)
- 202206 (2)
- 202205 (5)
- 202204 (3)
- 202203 (2)
- 202202 (5)
- 202201 (6)
- 202112 (6)
- 202111 (4)
- 202110 (6)
- 202109 (7)
- 202108 (5)
- 202107 (8)
- 202106 (4)
- 202105 (8)
- 202104 (4)
- 202103 (6)
- 202102 (10)
- 202101 (3)
- 202012 (12)
- 202011 (3)
- 202010 (4)
- 202009 (5)
- 202008 (6)
- 202007 (4)
- 202006 (4)
- 202005 (4)
- 202004 (7)
- 202003 (5)
- 202002 (6)
- 202001 (8)
- 201912 (6)
- 201911 (5)
- 201910 (3)
- 201909 (4)
- 201908 (10)
- 201907 (3)
- 201906 (6)
- 201905 (10)
- 201904 (3)
- 201903 (7)
- 201902 (8)
- 201901 (5)
- 201812 (7)
- 201811 (12)
- 201810 (7)
- 201809 (5)
- 201808 (10)
- 201807 (5)
- 201806 (19)
- 201805 (14)
- 201804 (11)
- 201803 (15)
- 201802 (4)
- 201801 (6)
- 201712 (4)
- 201711 (3)
- 201710 (11)
- 201709 (9)
- 201708 (15)
- 201707 (7)
- 201706 (4)
- 201705 (5)
- 201704 (6)
- 201703 (7)
- 201702 (6)
- 201701 (3)
- 201612 (3)
- 201611 (7)
- 201610 (7)
- 201609 (2)
- 201608 (8)
- 201607 (8)
- 201606 (7)
- 201605 (3)
- 201604 (4)
- 201603 (8)
- 201602 (3)
- 201601 (2)
- 201512 (3)
- 201511 (3)
- 201510 (4)
- 201509 (4)
- 201508 (8)
- 201507 (17)
- 201506 (2)
- 201505 (5)
- 201504 (9)
- 201503 (20)
- 201502 (7)
- 201501 (4)
- 201412 (5)
- 201411 (3)
- 201410 (2)
- 201409 (3)
- 201408 (3)
- 201407 (3)
- 201406 (12)
- 201405 (6)
- 201404 (7)
- 201403 (5)
- 201402 (12)
- 201401 (9)
- 201312 (6)
- 201311 (9)
- 201310 (8)
- 201309 (6)
- 201308 (6)
- 201307 (6)
- 201306 (10)
- 201305 (10)
- 201304 (23)
- 201303 (17)
- 201302 (16)
- 201301 (5)
- 201212 (10)
- 201211 (4)
- 201210 (18)
- 201209 (4)
- 201208 (30)
- 201207 (7)
- 201206 (4)
- 201205 (6)
- 201204 (4)
- 201203 (4)
- 201202 (3)
- 201201 (3)
- 201112 (4)
- 201111 (7)
- 201110 (3)
- 201109 (9)
- 201108 (3)
- 201107 (7)
- 201106 (2)
- 201105 (11)
- 201104 (7)
- 201103 (14)
- 201102 (19)
- 201101 (27)
- 201012 (25)
- 201011 (70)
- 201010 (34)
- 201009 (30)
- 201008 (42)
- 201007 (44)
- 201006 (29)
- 201005 (37)
- 201004 (50)
- 201003 (44)
- 201002 (48)
- 201001 (38)
- 200912 (20)
- recent trackback
- others
-
- RSS2.0
- hosted by チカッパ!
- HEAVEN INSITE(本サイト)