『80日間宇宙一周 Galaxy Minerva』脚本⑤

防音ブースの中でレコーディングをするアリエル。
ミキサー「じゃ、さっきよりもうちょい高めのキーでもう2パターンほどとってみようか」
ブースの中のアリエル。楽譜を確認する「わかりました。」

コントロールルーム
ライトの方を振り返るミキサー「彼女、ダンスやライブはてんでダメですが、歌はなかなかうまいですよ。華がある。」
ライト「ホンマ?」
コンピューターのモニターを差す。
ミキサー「これは彼女の声の波形なんですがね・・・この部分、人に安らぎを与えるゆらぎが発生しているんです」
ライト「へ~・・・」
作曲家「でも極度のあがり症で客の前でまともに歌えないんだよなあ・・・まあシングルだけはそこそこ売れるからオレとしてはいいんだけど。」
一生懸命歌っているアリエルを見つめるライト。



刑務所の面会室。
ゲオルグ警部の交渉で爆弾魔の仲間と面会するミグ。
ゲオルグ「5分間だ。」
ミグ「わかりました・・・」

ミグ「この星の刑務所にいたんだな・・・」
ロイ「やあ久しぶりだね。ミグ・チオルコフスキー!」
ミグ「お前の仲間のボマーが殺されたぞ。ロイ・ヒューズ・・・」
ロイ「アンディが?それは残念だ・・・僕の友人だったのに・・・」
ミグ「なぜ無関係のアイドルを狙う?」
ロイ「あいつらはアーティストじゃない。」
ミグ「ああ、お前らよりはまともだもんな。」
「連中・・・文明社会に対する批判も、自己の内面性における葛藤やアンビバレントな矛盾もない。
た~だ平和ボケした馬鹿な大衆に迎合して金を巻き上げているだけだ。約束しよう。
今もてはやされているジュリエッタだって3年もすればみんな忘れて他のアイドルに熱狂しているだろうさ。なぜだかわかるか?『イリアス』や『オデュッセイア』とやつらの違いは?」
頬杖をつくミグ「・・・・・・。」
ロイ「芸術か紛い物(シミュラークル)かどうかだ。」
ミグ「美術館や博物館に飾られるものだけが芸術ではないだろう・・・」
ロイ「そのとおり。だからぼくらは一瞬の美を追求したのさ。」
ミグ「それが無関係な人を巻き込む爆弾テロか。」
ロイ「感謝して欲しいくらいだよ。ボケた天王星人どもの目を覚ましたのはアイドルじゃない。
ぼくたちアーティストだ。フルクサスを唱えたかのジョージ・マチューナスは・・・」
面会室の防弾ガラスをパンチで突き破るゲオルグ「ごちゃごちゃうるせえんだよ!ぶち殺すぞコノヤロウ!!」
ションベンを漏らすロイ。
ゲオルグを取り押さえるミグ「ゲオルグ警部落ち着いて、血圧が・・・!」
ゲオルグ「よくわかんねえ長台詞言いやがって!てめえを殺すのに1ラウンドもいらねえ!1分だ!」
ロイ「ごめんなさい!許してください!」
ミグ(せっかくの取り調べがメチャクチャだ・・・)
ロイ「お、教えますよ。アイドルを狙っているやつ・・・」
ミグとゲオルグ「?」



レコーディングスタジオ
ブースから出てくるアリエル
ミキサー「お疲れ様でした~」
アリエル「大丈夫でしたか?」
作曲家「この美声がライブで出ればファンの度肝を抜けるんだけどねえ。」
アリエル「頑張ります。」
ミキサー「じゃ、マスタリング終わったら連絡しますんで。」
ライト「・・・なにそれ?」
アリエル「は、はい了解しました!」



レコーディングスタジオから出るライトとアリエル。
ライト「次はどこや?」
手帳を開くアリエル「ええと・・・次はボーカルのオーディションなんですが・・・けっこう時間があきますね」
ライト「じゃあ好きなところ連れてったるよ」
アリエル「いいんですか?やった~!」
ライト「まだそんな元気あるんやな・・・」



ウラヌスショッピングプレイス。
観覧車やジェットコースターに乗るライトとアリエル
風船を持って駆け回るアリエル「ああ、たのし~ステキ~♪」
「ちょっとおっちゃん疲れてもうた・・・休んでかまへん?」
ベンチに座るライト
「あ、すいません!なんか一人ではしゃいじゃって・・・じゃ、なにか飲みもの買ってきます!」
元気にワゴンにかけていくアリエル。
「若いつもりやったけど・・・10代の女の子ってやっぱエネルギーがちゃうなあ・・・
ミグはもっとのんびり屋だからなあ・・・」
ミグのことを思い出すライト。

「夢なんだ・・・地球に行くこと。」
「生まれた時から私の運命は決まっている・・・私もいずれ小惑星とともに宇宙で死ぬ。ならば生に執着することなどないじゃないか」
「この傷もう治らないんだ・・・気持ち悪いだろ?」
「お前こそ甘すぎるんだ。命懸けで戦ったことがないから・・・!」
「私は生きたい。」


ライト「そういやあいつ今頃何してるんやろ・・・無茶してなきゃいいけど・・・」
ジュースを持ってくるアリエル「はいどうぞ!」
ライト「あ、ありがとう」
ライトの横に座るアリエル。
アリエル「へへへデートみたいですね!」
「大人をからかうなって」
「でも私こういうことって初めてなんで楽しくて・・・」
「恋愛したことないの?」
「アイドルはそういうのNGじゃないですか。」
「まさか生まれた頃からアイドルやないやろ。」
「でも、私・・・物心がついた時からジュリエッタさんのようなアイドルになりたかったですから・・・」
「本当に子供の頃からの夢なんや。」
「だから今日のオーディションは絶対合格したいなあ。今日のに合格するとですね、あのジュリエッタさんのライブにサブボーカルとして出られるんですよ!」
「へ~!共演や!」
「はいっ!共演です!」

「・・・なあアリエル。アリエルはなんでアイドルになりたいん?」
「え?」
「いや一日中働き通しで・・・そこまで頑張れるには何か理由があるんちゃうのかなって・・・」
「そうですねえ・・・え~っと・・・そういえばなんでなんだろう?もう忘れちゃいました。」
「そうか・・・」
「ライトさんは?」
「オレ?」
「なんで発明家を目指されたんですか?」
「そやな・・・自分の作った宇宙船に好きな女の子を乗せたかったんだよなあ・・・」
「そ、その話詳しく!」
「なんで君にオレの初恋の話を公開せなあかんねん・・・」
「その手の話は10代の女子の大好物ですよライトさん!」
「そうやったのか・・・勉強になったな・・・さ、オーディションに行くで!」
「え~もう終わり!?」



オーディション会場
メガホンを持つライト「いいかアリエル。今日の柔軟を思い出せ!」
嫌な気分になるアリエル「え・・・?」
ライト「お前の体だってその気になればあそこまで曲がるんや!なんでもできる!行ってこい!」
アリエル「はい!」

試験場の部屋に入っていくアリエルを見送るライト。
部屋から出てくるアリエル。
半泣きのアリエル「全然ダメだった~・・・」
ライト「ガーン」

廊下でアリエルを慰めるライト
「ま、まあ次があるやん。」
えづくアリエル「このオーディションだけはもう二度とないですよ~オエ~」
背中をさするライト「なあ、ある人が言ってたで。生きてる限りは何度だってやり直せるって。」
涙を拭うアリエル。
「そ、そうですよね!死んだわけじゃないですもんね!」
ライト「そうや。気を取り直して次の仕事に行こう?な?」
アリエル「そうだ、今日最後の仕事はジュリエッタさんの故郷で慰問ライブなんだった・・・!これで挽回しなきゃ!」
「・・・それでこそいつものアリエルや!」
微笑むアリエル。



オセロ第一警察署
廊下を歩くゲオルグとミグ
ゲオルグ「まさかサーペンタリウスが天王星と土星双方をそそのかしていたとはな!!」
ミグ「連中としては天王星と土星が戦争を始めるのが一番いい。なぜなら武器が売れるから。」
ゲオルグ「土星には天王星に軍隊がないことを強調し、領土問題に踏み込ませる。」
ミグ「それだけじゃない。」
ゲオルグ「何?」
ミグ「アイドルを暗殺してファンの復讐心を煽ったんです。」
ゲオルグ「それで戦争が起きるかあ?」
ミグ「被害者の資料を見せていただけますか?」
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