『80日間宇宙一周 Galaxy Minerva』脚本⑥

天王星で最も遠い衛星ファーディナンド
地球連邦軍の前線基地の予備の滑走路にライブ会場が設営されている。
腕時計を心配そうに見つめるアリエルのマネージャー。
衛星ファーディナンドに着陸するリンドバーグ号。
リンドバーグ号に駆け寄るマネージャー。
「あ、アリエルこっちこっち!」
リンドバーグ号から降りるアリエル「マネージャーさん!」
マネージャー「こちらは?」
アリエル「私が一日お世話になったライトさんです。」
ライト「けっこうお世話しました。」
ライトに名刺を差し出すマネージャー「そうですか、うちのアイドルがお世話になりました。わたくしこういうものです・・・」
また名刺をもらうライト「どーも・・・」
マネージャー「あの、うちのアリエルがお世話になったお礼と言ってはなんですが、三日後土星で行われるジュリエッタの星間友好コンサートのチケットを受け取って頂けませんか?」
ライト「え!?マジ!」
マネージャー「ええ、二枚しかないのですが、どうぞ・・・」
アリエル「それプラチナチケットですよ!」
ライト「うわ~ありがとう・・・これアイツがすっごい喜ぶな・・・」
アリエル「ぜひお連れの方と見に行ってください」
ライト「で、今日のライブは?なんかジュリエッタ特別記念公演って書いてあるけど・・・アリエルのライブちゃうの?」
マネージャー「ええ、ジュリエッタはご存知のとおり多忙なので、うちの事務所で最もジュリエッタに似ている彼女にジュリエッタの格好をさせて、この星で戦う海兵隊さんにせめてジュリエッタの雰囲気だけでも味わわせてあげようと・・・」
ライト「そうなのか・・・」
アリエル「似てませんか?」
「いやそんなことはないけど・・・バレるんちゃうんか?」
マネージャー「いいんですよ。いくら脳みそ筋肉の海兵隊の人でもこんな星で本物のジュリエッタの慰問ライブがあるなんて誰も信じてないですから!はっはっは!」
ライト「な~る・・・」
マネージャー「では我々はライブの準備がありますのでこれで!楽しんでいってください!」
アリエル「ライトさんではまた!」
バックヤードにかけていくアリエルとマネージャー。

ライブ会場の席に座るライト。
周りに海兵隊のごつい兵隊たちが集まってくる、

海兵隊「おい、あのジュリエッタがこんな最前線の基地に慰問に来ると思うか?」
「確かに。だがジュリエッタの生まれ故郷がこの星だからな。可能性はなくはないぜ。」
「ったく天王星の連中が軍を持ってないから、家族残してはるばるこんな星までやってきたが、やっといいことがあったな。」
「あ~オレジュリエッタの大ファンなんだ。二週間前から楽しみで・・・」
「死んだ戦友にも見せてやりたかったな・・・」

気まずくなるライト
「こ・・・これはエライ事になるで・・・」

慰問ライブが開場する。
アリエルが歌を歌おうとした途端、大ブーイングとゴミが飛んでくる。
海兵隊「ふざけんな~!死ね~~!!」
アリエル「や・・・やめてください!」
海兵隊「そのレベルのモノマネならオレの方がもっとうまいぜ!!」
「だいたいてめえは客に笑われてるだけなんだよ、馬鹿にされてるってわからねえのか?」
アリエル「え・・・」
「才能ねえんだからとっとと辞めて俺の彼女になれって!」
「ギャハハ!二等兵のスコットが面倒見てやるってよ!」
アリエル「れ、恋愛は事務所から止められているのでご勘弁を・・・」
「だからやめろっつってんだよ!
お前みたいなのが一生やったってジュリエッタみたいなトップアイドルになれねえよ!」
酒を煽りながらステージに上がりアリエルに抱きつく海兵隊
アリエル「ひいい!ライトさん助けて!」
ライト「もうええやろ!」
「ライトさん・・・」
海兵隊「なんだてめえは!」
ライト「決まってるやろ。その子のファンや」
アリエル「ライトさん・・・」
ライト「マイナーなアイドルを応援するって結局魂胆はそれかい。ファンならマナーを守って応援するんちゃうんか!」
「なんだと・・・!」

会場内に警報が鳴り響く
士官がホイッスルを吹く「楽しい茶番はそこまでだ!土星の艦隊が接近!海兵隊ども直ちに出動!」
海兵隊「ウーアー!」

配置につくため駆け出す海兵隊員。踏みつけられるアリエルのチラシやブロマイド。
誰もいなくなる会場。
むなしくボーカルなしの曲がかかっている。

ステージの上で無言でへたり込むアリエル。
ライト「アリエル・・・大丈夫か?」
肩を震わせるアリエル「はっきり言われちゃった・・・一生やったってジュリエッタさんのようにはなれないって・・・
笑っちゃいますよね・・・それが小さい頃からの夢だったなんて・・・」
ライト「・・・・・・。」
「私がいけなかったんだ・・・海兵隊さんたちの期待を裏切るようなことをして・・・あの人たちはジュリエッタさんを見るのをずっと楽しみにしていたんだ・・・
私を見に来たんじゃない・・・誰も私の歌なんか・・・」

ライトがアリエルに近づいてかがむ。
「なあ、アリエル・・・よかったら俺だけにその歌声聞かせてくれへんかな?
レコーディングスタジオのみんな言ってたで。あんたの歌声はもしかしたらジュリエッタを凌ぐかもしれんって・・・
人にはそれぞれ自分の道があるんや・・・あんたはジュリエッタやない。アリエル・スカイやろ。」
「ライトさん・・・」

ステージを降りて椅子を直して観客席の中央に座るライト
「さあ、聞かせてくれ!客はオレだけや、これなら緊張もせんやろ!」
立ち上がって客席に振り返るアリエル「・・・・・・。」
ライト「さあ!」
涙を拭くアリエル「ありがとう・・・」
マイクを持って歌いだすアリエル。
たった二人だけのコンサート。



オセロ第一警察署
オフィスに入って資料をめくるミグ。
ミグ「最初の被害者おてもやん、第二の被害者ローリング娘、そして第三の被害者ザ・パンチラーズ・・・」
ゲオルグ「ターゲットになったアイドルはどれも中堅若手・・・ファンの数も大したことはないよ。」
ミグ「これがもっと大きなテロのデモンストレーションだとしたら・・・」
ゲオルグ「おい、ちょっと待て・・・」
ミグ「パトラ・ジュリエッタってファンは一体何人いるんですか?」
ゲオルグ「おい!知ってる奴いるか!?」
警官「は、全宇宙に22億8260万人であります!」
ゲオルグ「なぜ貴様暗記してる!」
警官「いやその・・・妻がファンでして・・・」
ミグ「そんな超人気アイドルがサーペンタリウスに殺されたら?そしてそれを土星の過激派の仕業にしたてあげたら?」
警官「私、泣きながら土星に特攻します!」
ゲオルグ「こんなバカが22億人いたら、この星の再軍備は本当に実現しちまうぞ・・・!」
ミグ「・・・なぜジュリエッタはここまで天王星の世論を変えた・・・?偶然?」
ファンの警官の携帯電話の着信メロディが流れる

ジュリエッタ「♪守りたい、救いたい、私のたった一つの大切な星~」

ゲオルグ「バカやろう!その歌はムカつくからやめろって言ってるだろ!」
携帯を切る警官「すいません!」
ミグ「ちょっと待った!」
警官「?」
ミグ「キミ、その曲の歌詞全て覚えているか?」
警官「ええ・・・」
紙とペンをテーブルに置くミグ。
ミグ「ここに全部書き出してくれ。」



衛星ファーディナンド
二人きりのライブ会場。
コンサートで予定していた曲をすべて歌い上げるアリエル。
アリエル「・・・どうでした?」
ライト「・・・・・・。」
アリエル「な、なんかリアクションしてくださいよ・・・」
「あ、ごめん。見とれてたわ・・・鳥肌立ってもうた・・・」
「また、気を使うんですから・・・」
「いや、ほんまやて!アリエル、あんたは絶対すごいアイドルになる!」
「ありがとうございます・・・でも・・・私はこれを引退コンサートにします。」
マイクを置くアリエル
ライト「え・・・?」
アリエル「ライトさん・・・ありがとう・・・」
微笑みながら喋っていくうちに涙を流していくアリエル
「最後の最後に大切な人を歌で感動させることができた・・・私がずっと夢見ていたのはこれだったんです・・・」
「アリエル・・・」
「夢・・・叶っちゃいましたね・・・」
頭を下げるアリエル。
拍手をするライト。

次第にその拍手が大きくなっていく。
お辞儀をしたままのアリエル「・・・?」
顔を上げる。
海兵隊たちが戻ってきて拍手している。
「ブラボー!」
「馬鹿にして悪かった!感動しちゃったよ!」
「アリエル・スカイ!覚えたぜ!!」
「引退なんかするなよ!俺たちだけでもシングル買ってやるからさ」
「みなさん・・・」
携帯電話を切り、慌ててマネージャーがステージに駆けてくる「アリエル大変だ!」
「なんですか?」
「さっきキャリバン社長から電話があって・・・オーディション・・・合格したって・・・」
アリエル「えええ!!?」
マネージャー「ジュリエッタのライブに出れるんだよ!それもジュリエッタの相棒として!」
大歓声「うおおおおおおお!やったああああああ!!!」
ライト「見てる人は見てるんやなあ・・・」
アリエル「ライトさん・・・」
ライト「お前の夢や・・・」
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