『80日間宇宙一周 Galaxy Minerva』脚本⑦

オセロ第一警察署
ファンの警官が書き出したジュリエッタの新曲「My little star」の歌詞を見るミグ。

守りたい 救いたい 私のたった一つの大切な星
力が欲しい 強さが欲しい 私を変えて
私は戦う 愛するこの星のために できることがある
マイリトルスター


ゲオルグ「こ・・・これは・・・まるで戦時中のプロパガンダじゃねえか・・・」
ミグ「・・・あなたがおっしゃっていた正義と同じですよ。」
ゲオルグ「オレはこういった文化が嫌いで知らなかったが・・・ジュリエッタはさりげなく天王星のナショナリズムを煽ってたってことか。」
頷くミグ
ゲオルグ「てことは、サーペンタリウスは天王星の芸能界と通じていたのか!?」
ミグ「そこまではわからない・・・所属事務所がもともと政治的にそう言うスタンスだったと言われればそれまでだし。」
警官「でもジュリ様が国家間の争いの火種になるような運動をするとは思えないなあ。」
ゲオルグ「その呼び方やめろ。」
「さーせん。」
ミグ「なぜ?」
警官「ジュリエッタさんは平和主義者でいろんな星に社会貢献しているんです。海王星の復興ライブも真っ先に行なったし、宇宙の恵まれない子供のために毎年巨額の財産を寄付してますし。」
ゲオルグ「ふん、成金はチャリティーが好きだからな。」
警官「それになにより、明後日ジュリエッタさんは土星で平和友好ライブをやりますよ。」
警官を揺さぶるゲオルグ「なんだと!?何処と言った!?」
警官「ど・・・土星・・・」
ゲオルグ「おい、ミグ!もし仮にだ、ジュリエッタの事務所が死の商人とつながっていたとして、ジュリエッタが勝手に土星との諍いをしずめようとしたら・・・ジュリエッタはどうなる?」
ミグ「どっちにとっても用済みだ。」
「おい!至急土星に行くぞ!!」



惑星連邦放送
土星。
惑星の周囲をぐるりと巡る巨大な環「万里の長城」
ジュリエッタ国際友好ライブの巨大な会場。
「パトラ・ジュリエッタの天王星土星の友好ライブがいよいよ土星時間本日午後から開演します!
このライブの模様は全宇宙で同時中継され、文字通り星の数の人間が宇宙の歌姫のパフォーマンスを堪能するわけです!
そしてなによりこれをご覧下さい!宇宙一の収容数を誇るサターン2型ホールが満席です!
土星政府によればこの劇場が満席になったことはいまだかつてないということ、歴史に残るライブになることは間違いありません!」
ものすごい観客の数。

ライブ会場の一般ゲート
土星の警備員「ダメダメダメチケットない人通れないアルヨ!」
警察手帳を見せるゲオルグ「バカやろう、オレは警察だ!ジュリエッタが暗殺されるかもしれんのだぞ!」
警備員「ニーハオ。」
ゲオルグ「おい、らちがあかねえぞ!」
ミグ「警備は徹底しているが・・・ジュリエッタの暗殺をもし土星政府が黙認していたら・・・」
ゲオルグ「ジュリエッタを守るものは何もねえ・・・!」

会場のゲートにやって来る「あ、ミグ!やっぱりあんたも土星に!」
ミグ「ライト!」
ライト「あのな・・・この前はすまんかったな。ちょっと言いすぎたわ。」
ミグ「いやもう気にしてないよ・・・それに私もいくらなんでもやりすぎた・・・
・・・あんな残酷なことはもう二度としない。約束する・・・」
ライト「・・・あ、そうや、実はお前にすっごいプレゼントがあるんや!」
「なんだ・・・?」
「じゃ~~ん!ジュリエッタのコンサートのプラチナチケットや~!」
ミグ「・・・・・・。」
ライト「いや、今度はマジで本物やぞ。どうや嬉しいか?」
ライトを抱きしめるミグ
ミグ「ライトでかした!!」
ライト「み・・・ミグ?」



ジュリエッタの控え室
社長「なぜ土星でのライブをわしに相談もせずに決めた!?」
気丈なジュリエッタ「無断でこのライブを開催したのは謝罪します。
しかしこの騒動は私が起こしたようなものです・・・ですから私自身が天王星と土星の友好関係を築き直さなければ・・・」
社長「しかし、トップアイドルのお前にもしものことがあったら・・・」
ジュリエッタ「私は歌で争いを煽りたくない。私は歌で宇宙を平和にしたいんです。失礼。」
部屋を出ていくジュリエッタ。

社長「たかが田舎娘がアーティストをきどりおって・・・」
奥の部屋から現れる殺し屋「なら殺したって未練はないだろ。ここ数年あんたの言うことなんてろくに聞いてないじゃないか。」
社長「・・・いくら生意気とは言え、看板アイドルのあいつを死なすのは惜しい。」
殺し屋「だが、こっちも土星の同志に金をもらっているんでね・・・きっちり仕事はさせてもらう。」
「分かった、勝手にしろ・・・おい、さんざんお前らに協力してきたんだ。わしに利はあるんだろうな?」
「ジュリエッタの追悼アルバムでも売ればいいだろ。」
殺し屋が部屋を出ていく。
マネージャー「どうするんですか、社長・・・本当にジュリエッタを見殺しにするんですか?」
社長「うるさい、手は打ってある・・・!」



会場内に入るライトとミグ
ミグ「警部たちは会場周辺を頼みます!」
ゲオルグ「分かった!気をつけろよ!」

会場エントランス
ライト「なんやて!?ジュリエッタの暗殺計画!?いくらなんでも無茶やろ。」
ミグ「ああ、あくまでも可能性だが・・・もしサーペンタリウスがジュリエッタを殺すなら今日ほどのチャンスはない・・・」
ライト「ジュリエッタ殺してどうなるっちゅうねん!」
ミグ「私がもし所ジョージさんを失ったら・・・どうなると思う?」
ライト「・・・なるほど。それは一大事や。」



バックステージの稽古場。
ジュリエッタのライブのダンサーやバンドが最後の打ち合わせをしている。
ダンサー「あ!ジュリエッタさん!」
アリエル「ウソ!?」
稽古場に入ってくるジュリエッタ「みんな今日はよろしくね・・・!」
一同「ハイ!!」
ジュリエッタ「あなたがサブボーカルのアリエル・スカイちゃんね・・・」
緊張するアリエル「は、はい!今日はよろしくお願いします!」
ジュリエッタ「なんて呼べばいい?スカっぺ?」
アリエル「あ・・・アリエルでいいッス・・・」
ジュリエッタ「本番まで1時間を切ったけど、軽くリハーサルをしましょう。特にアリエルはほぼ飛び入りだからね・・・」
アリエル「わ、わたしその、そこまで難しい振付は・・・」
ジュリエッタ「ダンスが苦手なのよね、大丈夫。社長とマネージャーがそこを考慮して振り付けを変えてくれたから。」
振り付けの段取りが書かれた紙を床に広げるジュリエッタ。
「あなたはほとんどこの位置から動かない。とにかく私が動くからあなたはバシバシその美しい歌声を宇宙中のファンに聴かせてやって。」
アリエル「美しい歌声ってそんな・・・」
ジュリエッタ「あなたのデモテープ聞いたよ。私は戦慄したね。とんでもないライバルが現れたって。」
アリエル「ジュリエッタさん・・・」
ジュリエッタ「なら敵になる前に手を組んじゃおうって、よろしくね。」
アリエル「はい・・・!」



開演前の会場。
ライト「こんな巨大なホールじゃどこに殺し屋がいてもわからんで!」
ミグ「もしジュリエッタの事務所が死の商人とつながっているのだとしたら・・・
ライト、事務所関係者を探すぞ!」
ライト「え?なんで?」
ミグ「もしライブ中に襲撃するなら、敵は振り付けの段取りを調べるはずだ!
そして最もジュリエッタを狙いやすいポイントで彼女を撃ち殺す!」
観客(いい加減前からどいてくれないかなあ・・・・)

場内警備員「ちょっとアンタラ、何シテルあるよ?」
ミグ「ライブのスタッフにはどこで会える!?」
警備員「NONOダメダメ、関係者以外立ち入り禁止ね。」
ライト「オレはアリエル・スカイのマネージャーや!」
警備員「ソナタもしかしてミスターライトか?」
「そうや!」
「ツイテマイレ。」

関係者専用通路を駆ける二人。
大歓声が聞こえる
ライト「あかんライブが始まったみたいや!」
ミグ「私は事務所関係者を探す!お前はジュリエッタを守れ!」
ライト「分かった!」



調整室に入るミグ。
たくさんのモニターがライブ会場の様子を様々な角度で映し出す。
マネージャー「なにしてるんですかあなた!ここは立ち入り禁止ですよ!
ライブはもう開演しているんです、出てってください!」
ミグ「今日のライブの曲目とその振り付けを教えろ!」
「はあ、あなたどういうファンですか!?
真似して踊りたいなら自分でDVDでも買って調べなさいよ!」
ミグ「そうじゃない!ジュリエッタが危ないんだ!」
マネージャー「この人頭がおかしい・・・警備員を至急。」
ミグ「あんたらのアイドル、ジュリエッタが殺されるかもしれないんだぞ!」
社長「はっはっは・・・面白いことを言う。会場の警備は完璧ですよ。
土星政府が威信をかけてジュリエッタを守ってくれてます。」

会場警備員の格好をした殺し屋が客席の間をぬってステージに近づく。



ステージの横で歌うジュリエッタを見て感動するアリエル
「すごい・・・これがずっと・・・ずっと憧れてきた宇宙一のアイドル・・・」

熱唱しながらステージを縦横無尽に駆け回るジュリエッタ。
ステージのジュリエッタにレーザーポインターの照準を合わせる殺し屋。

最初の曲が終わる。
笑顔でステージから消えるジュリエッタ。バックステージに戻ると慌てて衣装を着替える。
ジュリエッタ「いよいよ次の曲よ、アリエル!」
アリエル「あ、あうあうあう・・・あんなにお客さんが・・・私に出来るんでしょうか?」
ジュリエッタ「アリエル!リラックス。あなたはなんでアイドルを目指したの?
歌が好きだから?ダンスが好きだから?たくさんの人を喜ばせたいから?
このステージにはすべてがある。楽しもう!」
アリエル「ジュリエッタさん・・・」
ジュリエッタ「ジュリエッタでいい。私は精一杯あなたの引き立て役に回る。
宇宙を驚かせてやりなさい!」

二曲めの前奏が始まる。
ジュリエッタ「みんな行くよ!」

ステージにジュリエッタとアリエルが飛び出す。
会場のボルテージは最高潮。
ジュリエッタ「マイリトルスター!!」
「わあああああああ!」
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