『ウルトラセブン研究読本』

 マロさん一押しの本。とにかく内容がすごく濃い。この本の影響で今ウルトラセブンにはまって全話DVD借りてきましたwウルトラセブンウィルス感染・・・!
 この本の詳細についてはマロさんのブログをあたってもらうとして、ここではウルトラセブンの考察なんかをちょっとだけ。

 そもそも私ってウルトラマンが好きって言いながら全話見ているのはそれこそウルトラマンだけなんですよ。本当にウルトラマン(だけ)が好き。
 だからウルトラセブンってちょっとしか見てなくて、まあ理由はウルトラマンと違って敵が宇宙人ばかりで怪獣がろくに出てこないじゃないですか。
 わずかに出てくる怪獣も宇宙人が連れてきた宇宙怪獣ばかりだから、形態につかみどころのないプログレ系ばっかりで・・・とにかく私は恐竜とか怪獣が好きだから人型の敵にあまり熱くなれないんですよね。おこちゃまだったんです。
 
 でもやっと28にしてウルトラセブンがわかる歳になったわけですよwウルトラシリーズの最高傑作と言われるだけはある。とんでもなくクオリティが高い。
 そもそもウルトラシリーズってウルトラマンとウルトラセブンで完結させる予定だったそうなんですよ。だからやり残すことがないようにしようと、すっごい内容を濃く作っている。
 もう脚本から演出、音楽、特撮技術まで全力勝負、完全燃焼のとんでもないエネルギーを費やしているのがわかる。

 隊長!こうなったら玉砕戦法しかありません!
 バカを言うなソガ!


 ダン隊員なんて月収3万円で朝(=深夜)から晩(=深夜)まで働かされ、フルハシ隊員はダイビングシーンで酸素ボンベの代わりに塗装した消火器しょって水に飛び込まされたり・・・まあ唯一やる気がないのはひし美ゆり子くらいでw

 とにかくみんなが本気で取り組んでいる。いや今の人だって本気で一生懸命作っているんだろうけれど、かつてのクリエイターは社会のためにコンテンツを作っていたんだよな。それがガイナックスあたりから自分たちが楽しむためにコンテンツを作りだした。
 今の若者は人のためにも自分のためにもそこまで頑張れない。人生をかけてなにかひとつのことに打ち込めない。玉砕できない。

 この頃の円谷プロってとにかく円谷英二のオヤジさんがいて「子どもに夢を」という強い思いが存在した。それを作り手たちが共有できていたというのもすごい。
 ただ皮肉かな、ウルトラシリーズ完結編として作られたウルトラセブンのヒットで世は怪獣ブームになっちゃって、以降のシリーズではウルトラシリーズは金になるぞとマーチャンダイジングの論理が振りかざされ、ウルトラセブンに命をかけた職人達のいくらかは現場を去ったらしいんだけれど・・・

 ETが流行ったとき地団駄踏みましたね。あんなETレベルの話なら快獣ブースカで何本も書いてる。シナリオレベルなら全くルーカスやスピルバーグに負けてない(市川森一)

 こんなことを言えるなんて本当かっこいい。実際ウルトラセブンの何本かはスピルバーグ監督、影響受けたんじゃないかってほど画面の絵作りが似ている。
 例えばガッツ星人のバリアーを張る円盤にジープの大舞台が立ち向かい全く歯が立たないシーンなどは『宇宙戦争』でほとんど同じシーンがある。

 演出や特撮技術だけじゃなくウルトラセブンは脚本が子供向けと思えないほどガチンコで、とんでもなく骨太なプロットが数え切れないほどある。
 これはもう企画部の金城さんや上原さんが自分たちで子供向けの王道(勧善懲悪)を覆しちゃったらしい。
 プロとしては禁じ手って感じがするけど、それだけ強く訴えたいものがあったんだよね。今のクリエイターにはそういった厄介な気骨がないし、受け手もそういったお説教臭いテーマを必要としていない気がするからどうしょうもないんだけれど。なんか今のコンテンツって「メタ」はあるけれど「メタファー」がないんだよね。

 何のための観測なの?それはいずれ自分たちが利用するためにやっていること

 ノンマルトは悪くない!人間がいけないんだ!ノンマルトは人間より強くないんだ!攻撃をやめてよ!

 ウルトラセブン!どうやら我々ポール星人の負けらしい。第3氷河時代は諦めることにする。しかし、我々が敗北したのはセブン、君に対してではない、地球人の忍耐だ!人間の持つ使命感だ!
 
 教えてやろう、我々は人類が互いにルールを守り、信頼しあって生きていることに目をつけたのだ。地球を壊滅させるのに暴力をふるう必要はない。人間同士の信頼感をなくせばよい。人間たちは互いに敵視し傷つけあい、やがて自滅していく。どうだ、いい考えだろう

 どーも人間は物覚えが悪くていかん。コーヒーの味が毎日違うんだからなあ

 アンヌの部屋からこの爆弾を地球の中心にぶちこむことはできたんだ。それをしなかったのは最後の最後まで、私たちの科学の力がこの事態を何とかしようと・・・

 それは、血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ…


 と、とんでもない名セリフがウルトラセブンには数え切れないほどある。もう全部が秀逸なメタファーなんだ。
 私は例え作り話でも「リアル」とまったく接点がない物って感動しないって思うんだけれど、ウルトラセブンってその点社会科学の文脈のSFとしてすごい優れていてマイケルサンデル毎週やってるようなもんなんだよね。
 自分が描きたかったものって結局こういうものだったんだなあってなんか変に納得したというか安心できました。自分のやりたいことって時代錯誤かもしれないけれど決して間違ってないぞって。

 おまけ

個人的に好きなエピソードベスト5

第一位『人間牧場』
 サイエンスのSFとしてもっとも密度が濃いなあって思ったのがこの回。宇宙からやって来た知的生命体が若い女性を宿主にして自分たちのエネルギーを回収するというプロットは『魔法少女まどか☆マギカ』を40年以上先取りしている(つーかパクられた!??)。あと放射線治療とかやってるしね。私はやっぱりアイディア性のあるお話が好きなんだなあって。
 またウルトラ警備隊がクライマックスで大活躍してセブンの窮地を救う回でもある。科特隊もそうだったけど、まだセブンまでは彼らの存在意義がちゃんとあったんだよね。ポール星人だってウルトラセブンに負けたんじゃなくて地球防衛軍の根性に負けたって言ってるしw

第二位『明日を捜せ』
 自分で「私は古い人間だ」と言うキリヤマ隊長の意外な一面が楽しめる回。つーかオフのキリヤマ隊長もダンディw背広が似合うんだ。
 市川森一さんはインタビューで「怪獣や宇宙人が出なくてもウルトラセブンは成立した。登場人物がしっかり描かれていたから。」と言っていて、確かに納得の回でした。
 ウルトラセブンではウルトラ警備隊の各隊員を一人ずつフォーカスした回があって射撃の名手ソガ隊員がライバルと戦う回や、草食系のアマギ隊員の淡い恋のおはなし、フルハシ隊員のお母さんが箱根へやってくる回なんかもウェルメイドで感動しちゃった。人間ドラマだってやれるんだっていうw

第三位『V3からきた男』
 私が最も大好きなキャラ、アウトローのクラタ隊長登場回。とにかくキリヤマ隊長との男の友情が熱い!キリヤマ隊長を演じた中山昭二さんって戦争で戦っているから「貴様」っていうセリフがすっごいしっくりくるんだよね。もうこんなセリフが様になる人なんて現代にいないよねwあと「生きてたらまた会おうぜ」選手権やったら絶対クラタ隊長の右に出る者はいないよねw
 誠実&ワイルド、アイス&ファイア・・・本当名コンビだと思う。

第四位『狙われた街』
 もう言わずもがなの名作。最後の最後でナレーションにグサリとやられる。放送時間的にもう話は終わったなって安心したところをこうだよw
 画面、演出、脚本、すべてが独創的で素晴らしい。私があれこれ語るのは蛇足。見てくださいw

第五位『超兵器R1号』
 こういう『ジュラシックパーク』みたいな展開の話大好きです。だからこの前書いた『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』と似ている。ぐ・・・偶然テーマがかぶったんだよ!


好きな怪獣ベスト5も・・・どうでもいいだろうけど

第一位「核怪獣ギラドラス」
 どうやったらこんな造形思いつくんだってくらいかっこいい。後ろ脚がじつはないんだよね。だからゾウアザラシやトドといった海生哺乳類を思わせる。
 ちなみにギラドラスは『ウルトラセブン研究読本』でも表紙を飾った!つーかだから買ったっていうのもありますw

第二位「メカニズム怪獣リッガー」
 知名度、人気ともにウルトラセブンではワーストな怪獣だけれど、こういう首の長い恐竜タイプの怪獣ってウルトラシリーズの初期って必ずひとシリーズに一体いてそれがどれもかっこいいんだよ。また作中ではかなり強い。みんな忘れてるけどw
 成田亮さんから怪獣デザインを引き継いだ池谷仙克さんはこのリッガーをさらに発展させ『帰ってきたウルトラマン』の名作「キングザウルス三世」を生み出すわけで。ちなみに『ウルトラセブン研究読本』ではカプセル怪獣アギラは池谷さんがデザインしたって書いてあるけど池谷さんいわくアギラのデザインは成田さんの置き土産だったそうな。

第三位「宇宙蝦人間ビラ星人」
 これもすごいデザインだよね。第一回目のクール星人からそうだけど中に人入ってないもんね!!そこらへんからもウルトラセブンとの差別化を試みたのかな。
 ウルトラセブンの宇宙人って荒事は苦手だけど頭だけは切れるずる賢いタイプが結構いて、この手の侵略者は万策尽きるとセブンに円盤ごとあっさりぶっ殺される確率が高い(なんか可哀想。自業自得だけど)。
 ちなみに喋り方がまんま「ワレワレハウチュウジンダ」で大爆笑wさらにテレビで放送してるからねw

第四位「宇宙竜ナース」
 とぐろ巻いて円盤とか発想がすごい。ウルトラセブンってけっこうメカの敵が多いんだけどその中でもこれは異色作だと思う。人入ってないしね!(二回目)
 デザインは印象に残っているけどナース戦ってイマイチ印象に残ってないwあっさりやられちゃったような・・・ヘビのような長い胴体でウルトラセブンを絞め殺そうとしたら「フン」って感じでバラバラにされちゃてw

第五位「双頭怪獣パンドン」
 私は改造ではない方のが好き。『研究読本』の怪獣評論家は着ぐるみが「串カツみたいになっちゃった」って否定的だったけど私はこのなにがなんだからわからない頭の部分が結構好きですw結局パンドンって目はあるんだっけ?そういう好奇心をくすぐる形態だと思います。モグラの目みたいなもんだよね。あっても小さすぎてよくわからないっていうw

 モグラめ、元気か!?

 追記:一日経って気づいたんだけど好きな怪獣にエレキングを入れるのを忘れた!そしてなんで第三位にビラ星人なんかを入れてるんだろう・・・冷静になってみればそれほど好きじゃねえやこいつwウチワエビをモチーフにしたデザインはユニークで面白いけどね。でもこういったデザインの崩し方って私も中学生の頃オパビニア(『古代生物オパ』)で試みているんだよw
 で、エレキングだけど、あれ、色がいいよね。宇宙ホルスタインって感じでw実際ピット星人のポケットモンスターか家畜って感じだったし・・・また尻尾が普通の怪獣よりも長いのも特徴的。武器に使ってるんだなっていうのがわかる。
 しかしピット星人って軽い奴らだったよな。女子大生が「週末地球侵略行っちゃう?」みたいなノリで来てるもんね、それくらい宇宙人からしてみれば地球なんて道端に咲いた小さな花みたいなもんなんだろうね。
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