『80日間宇宙一周 The Stargazer』脚本⑤

砂嵐が吹き荒れる砂漠のど真ん中に不時着しているリンドバーグ号
クリス「へくちん!・・・ったく誰か噂してるな~」
ロケットエンジンに詰まった砂をかき出しているライト
「教授、あんたも手伝えや!操縦桿奪って砂の中に突っ込んだのはお前やぞ!」
サングラスをかけて地図を広げるクリス「おかしいな・・・古地図によればアストライア大神殿はこのあたりの砂の中に埋まっているはずなんだけど・・・」
ライト「仮に埋まってても砂に突っ込むのはただの墜落やろ。」
クリス「だってお前がダムを爆破するのに反対するから・・・」
ライト「テロやないか。
もういい加減スタータブレットは諦めたらどうや・・・20年探しても見つからないってことはそもそもないんやって。どれほど周りに迷惑かければ気が済むねん。」
クリス「人間夢を諦めたら終わりよ。」
ライト「いや違うな。あんたは夢をあきらめないから終わってんねん。」
クリス「本当屁理屈は母さん似だな。
まあ心配するな。スタータブレットさえ見つかれば全部チャラになるって。
考えてみろ、この世のすべてが書かれてるんだぞ。ちょっとすごくね?
それは人類の叡智そのものだ。」
リンドバーグ号の巨大なエンジンブロックにスコップを突っ込むライト「また始まった・・・」
「ゼウスは超古代文明を探していた・・・それは土星のサタンのように死を恐れたからじゃない。
ゼウスは純粋に知りたかったのだ。
われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか・・・
そして果てしない旅の末ついにゼウスはそれを知った・・・私も知りたい。」
ライト「まずお前が考えるべきはオレがなんで生まれたかちゃうんか。」
クリス「それはあれですよ・・・有性生殖ですから、こ」
ライト「もういいもういい!そんな話聞きたくない!」
「キシャー」
ライト「手伝う気がないんならちょっと黙っててくれへんか?」
「キシャー」
ライト「気が散るねん!」
クリス「いや、私じゃない・・・」
砂丘の向こうを指さすクリス
双眼鏡をつかむライト「・・・どこや?」
クリス「見えなくなった」
双眼鏡で周りを確認するライト
砂嵐がやんで視界が開ける。
砂丘の先には傾いて砂漠に埋まった観客席が見える。
「おいよく周り見てみろ・・・あんたは神殿に突っ込んだんやない・・・
コロシアムや・・・」
直径3キロほどの円形闘技場の中心にリンドバーグ号があることがわかる。

「キシャー」
砂丘の向こうから聞こえる不気味な音が大きくなる
二人「・・・・・・。」
砂丘の向こうからカマドウマがぴょんと跳ねてくる。
息を吐くクリス「・・・ただのバッタだ」
そのカマドウマめがけて巨大なクモが突進し目にも止まらぬ速さでカマドウマを捕まえる。
大アゴにはさまれたカマドウマはもがくが、毒液を注入されて即座に風船のように膨らんで破裂する。吹き飛んだカマドウマの脚が二人の方へ飛んでくる。

ライト「うわ!クモの化物や!!」
クリス「ライト退治しろ!」
ライト「バカかスリッパでどうにかなるでかさちゃうぞ!」
カマドウマの体液をあっという間に吸ったハインラインスパイダーが二人の方へ近づいてくる。
クリス「武器武器!」
ライト「この前お前が全部使ったんやろ!」
二人の方にとんでもないスピードで突っ込んでくるハインラインスパイダー
クモをすんでのところでかわす親子。
クモはリンドバーグ号側面にぶつかり機体が大きく凹む。
ライト「にゃあああ!オレの船があああ!」
ライトのモノマネをするクリス「大丈夫大丈夫。また作ればええんや。」
ライト「あ~!もう我慢の限界や!!お前とはやってられるか~!」
クリス「なんだキミは父親に手を上げるのか!」
クリスに飛びかかるライト
ライト「うるさい!お前なんかオヤジちゃうわ!!この大冒険バカ!」
コロシアムの中で取っ組み合いの喧嘩をはじめる二人。
ライト「だいたいお前のせいで母さんが出てったんや!」
クリス「違うよ、私が出てったんだ!」
「なにがスタータブレットや、あんなもん、ただの古いまな板やんけ!」
「なんだと!?私を侮辱するのは構わないが、人類の叡智をまな板よわばりするのは許せん!
決闘だ!かかってこい!」
ぶっ飛ばされるクリス
「来年還暦の父を本当にぶったな、この野郎!」殴りかえすクリス
ライト「そんな強く殴ってないやろ!このバカ親父!」

ハインラインスパイダーが二人に向き直る。
クモの吹きつけた糸で二人一緒にぐるぐる巻きにされるライトとクリス
クリス「あらららら」
ライト「なんでお前とセットにされなあかんねん!」
クリス「・・・ごめんなライト、私父親らしいこと何もしてやれなかったけど・・・」
ライト「腹くくるの早!!」
長い脚で糸をたぐり寄せるハインラインスパイダー
ライト「くっ・・・!」
二人をアゴで挟む瞬間ハインラインスパイダーが二人を地面に落とす。
突然辺りを警戒するハインラインスパイダー
大地を揺らし、その場から立ち去っていく巨大なクモ。

ぐるぐる巻きにされたまま置き去りにされる二人
ライト「教授・・・なんか助かったで・・・」
クリス「え?マジ!?よっしゃあああ第二章の始まりだぜ!」

糸で縛られたまま砂の上で横になる二人の前に誰かが近づく。
頭上を見上げるライト
ライト「・・・第二章が始まるかどうかはまだわからんで教授・・・」
マルドゥク「言っただろクリストファー、また会おうぜってな・・・」
マルドゥクの背後には武装したギャングたちとそのキャラバンが並んでいる。



トートの教会
子供たちに支援物資を配るボランティアの若い女性。
「ハイペリオン基金」と書かれたダンボール
そこからおもちゃや衣服を取り出して一人に一つずつ渡していくシスター「神のご加護を」
子供「ありがとう」
ミグの横を子供が駆けていく
ミグ「転ばないようにね」
子供「うん!」
サーシャ「そう、またライトとはぐれちゃったの・・・」
ミグ「ああ・・・」
サーシャ「言っとくけど今度は私じゃないわよ」
ミグ「分かってるよ・・・しかしこんなところで会うとはな・・・」
サーシャ「皮肉なもので、惑星連合の和平合意によって難民が大量に出てね。
私たちも駆り出されたってわけ」
サーシャは土星で着ていたような肌を覆うローブではなく、ブーツにソックス、ショートパンツにTシャツといった動きやすいアウトドアスタイルをしている。
ミグ「なんでまた・・・」
サーシャ「植民地というタガが外れたことで独立した少数民族が互いに争いだしたのよ。
かえって紛争が増えたから兵器や武器の需要はうなぎのぼり。
ミラージュで大儲けしたサーペンタリウスは笑いが止まらないでしょうね・・・」
「和平合意のきっかけはミラージュの暴走だったもんな・・・」
「でも惑星連合の和平合意は・・・セレマの民族宥和政策は決して間違っていないわ。
平和への道のりは茨の道だけれど・・・いつかきっと、必ず報われる。」
「そうだな・・・」
「あなたは私にこう言ったわね。許す強さがあれば人は分かり合えることもできるって」
「え?」
「この星には女を贈与しあう部族だっているし、戦った相手を食べてしまう部族だっている。
言葉も文化も大きく異なる民族が互いに相手を認め合うためには、あなたの言うとおり許す強さが必要だわ・・・」
ミグ「甘っちょろい理想論だったのかな・・・」
「いいえ。私はあなたの言葉に救われているのよ。
報復の連鎖を繰り返すこの星には神が必要なの。例えそれがどんな形であっても。」
ミグ「なあ、神は本当に存在すると思うか・・・?」
サーシャ「あなたその質問をこの私に言う?」
ミグ「すまない。でも、どうやら本当にいるらしいんだよ。なんか神は四角いらしくてさ・・・」
サーシャ「神はいるから信じるものじゃない。信じるからいるものなのよ。」
ミグ「もし神に会ったらキミはどうする?」
微笑むサーシャ「・・・毎日会ってる。」

教会に入ってきて首を振るケセド
ケセド「ダメだ将軍、砂漠の船は全便欠航だ。アレゴリー教授には宿で待機してもらった。」
ミグ「足止めか・・・」
サーシャ「当たり前じゃない。今日は凱旋祭だもの。仕事は休みよ」
ミグ「凱旋祭・・・?」
サーシャ「あらそれでこの街を訪れたんじゃないの?」



街中で民族衣装をまとったパレードが始まる。
カテドラルの鐘が鳴り、花びらが舞い上がる。
教会の奥の小さな部屋でサーシャによって民族衣装に着替えさせられるミグ
ミグのネクタイをほどくサーシャ「そんなかっこう暑苦しいでしょう。
こっちのほうがあなたにはずっと似合う。」
ミグ「いや私はいいって・・・ダムに行かなきゃいけないし・・・」
サーシャ「どのみち今日は砂漠にはいけないわ。覚悟を決めなさい。」
ミグの胸元から青い宝石のついたネックレスを見つけるサーシャ
「あら、これはなに?」
「ああ、それは海王星でライトにもらったんだ・・・」
「綺麗・・・まるで女神アストライアのオリハルコンみたい」
「アストライア・・・」
「彼女よ。」
礼拝堂にある女神の石像に目をやるミグ
サーシャ「まあ胸のオリハルコンは何年も前に盗掘されちゃったんだけど・・・」
女神が両手を広げ美しく舞っている。胸には宝石がついていたらしいがえぐり取られている。
その台座には文字が彫られている。
ミグ「女神は神殿の扉を開き王の帰還を待ち続けた・・・何年も何十年も・・・」
サーシャ「・・・それにライトはこう言ってたわよ。」
ミグ「え?」
宝石をミグの首にかけるサーシャ
「しかめっ面ばっかりしてないで、少しは人生を楽しめって」
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