『80日間宇宙一周 The Stargazer』脚本⑥

グランド・イクリプスダム
ライト「楽しめるわけないやろ!」
クリス「でもめったにないぞ、ダイナマイトでダムごと爆死って経験は」
総延長2000キロもあるグランド・イクリプスダムの秘密のエリアにある何百年も使われていないクレストゲート(頂上水門)にダイナマイトごとくくりつけられているライトとクリス。
封印されたゲートには枯れたツタがからまり、マルチプルアーチは古代の要塞といったおもむきだ。
眼下に広がる黄金色の砂漠の海はゲートから何キロも下にある。
ライト「お前本当にぶっ飛ばしたるからな!」
ギャング「てめえら静かにしろ!」
ゲートに取り付けられた作業用の足場から二人の様子を見物するマルドゥク
「やらせておけ。死んだら親子ゲンカもできねえ・・・」
ギャングがマルドゥクのもとに二人の所持品を持ってくる
マルドゥク「さて・・・オレの小惑星から持ってったものを返してもらうぜ・・・」
クリス「やだ、エッチ!」
クリスのバックパックをひっくり返すマルドゥク
バッグの中から虫メガネや恐竜図鑑、星座早見盤やバナナが落ちてくる。
空になったバックパックの二重底から小惑星のかけらを奪い取るマルドゥク
マルドゥク「昔からあんたの隠し場所は変わってねえな・・・」
小惑星の結晶はオレンジ色に輝いている。
「これが“星の欠片”クリスタルオリハルコンか・・・20年かかってやっと手に入れた・・・」
クリス「場所を特定して掘り出したのは私だぞ」
「だが今はオレのものだ」
星の欠片を首にかけて立ち上がるマルドゥク
「世話になったな教授。
あんたが20年前学会で恥をかいたおかげでオレには夢が出来た。」
クリス「夢・・・?」
背を向けるマルドゥク「力だ」
クリス「あれ、行っちゃうの?」
マルドゥク「スターライン運河は頼むぜ。」
親子にくっつけられたダイナマイトの導火線に火がつけられる。
立ち去るギャングたち。

ダムに取り残されるふたり。
クモによって二人一緒に足の先までぐるぐる巻きにされ、ダイナマイトをくくりつけられた二人の体。
ライト「・・・おいどうするんや」
クリス「決まってるだろ。取られたものは取り返す」
ライト「同感や」
ギャングがいたステップから導火線の火がクレストゲートに近づいてくる。
クリス「キミは工科大学に行ってたよな」
ライト「中退したけどな」
「導火線の火って息で吹き消せるかな?」
「お誕生会ちゃうぞ、今の導火線は水でも消せないんや・・・
おいこの体勢のまま、あそこの日向に向きを変えれるか・・・?」
クリス「なんで?」
ライト「いいから!せ~ので右に飛ぶで」
クリス「わかった」
ライト「せ~の・・・ぎゃっ」
タイミングが合わず二人ともども転んで地面に顔をぶつけるライト
「お前どっち飛んどんねん!右って言ったやろ!」
「私にとっての右じゃないの!?」
「日向はこっちやんけ!ダムから落ちるとこやったわ!」
「わりわり!」
体をギリギリまでそらし日向に顔を向けるライト。灼熱の太陽がライトを照らす。
クリス「なにするんだ」
ライト「クモの糸って何でできてるか知ってるか?」
クリス「すまん、今週のむしむしQ見てなかった・・・」
ライト「スピドロイン・・・タンパク質なんや。つまり・・・」
フライトゴーグルのレンズが光を集め体に巻き付いた蜘蛛の糸を暖めていく。
腕の力で強引にクモの糸を引きちぎるライト「紫外線で劣化する。」
立ち上がるライト「助かったでレオナ・・・」
クリス「さすがマサチューセッツ工科大学!天才!」
ライト「いい息子を持ったやろ!」
クレストゲートに立ち、肩を組み太陽を見上げる二人「ニャハハハハハハ!」
ライトのフライトゴーグルが集めた光が地面の導火線に火をつける。

大爆発



ラクダのようなナナフシに乗ってダムから離れるギャング。
背後でダムが爆発し放水が始まる
双眼鏡でダムの決壊を確認するギャング「死にました」
マルドゥク「これでもう邪魔する奴はいない・・・」



トートの凱旋祭
中央の広場で人々がゼウスの帰還を祝福し踊っている。
子供たちと踊りながらミグにダンスの振り付けを教えるサーシャ
「そんな難しい振り付けじゃないわよ。
各振り付けはそれぞれの惑星に対応しているの。海王星はこう(片腕を上げる)、天王星は一回転してバックステップ・・・そして冥王星――あなたの星ね、それは体を右にひねってこう。
最初のステップは西からよ。」
サーシャの真似をして踊るミグ。
最初はたどたどしかったが徐々に踊りのコツを掴んでいく。
徐々に曲に合わせてペースアップしていく舞い。
サーシャ「上手よミグ・・・!」
ミグの美しい踊りに見とれて人が集まってくる。
ミグを見つめるケセド「美しい人だ・・・」
マーガレット「本当ね・・・私の子にはもったいないわ・・・」

サーシャ(トートは超古代都市コロナドから帰還したゼウス一世が旅の疲れを癒したとされる街なのよ)
ミグ(なぜゼウスは神の力を捨ててまでコロナドから帰還したんだろう・・・?)
サーシャ(この町に伝わるアストライアの伝説はご存知?)
ミグ(いや・・・)
サーシャ(正義の女神アストライアは人間の王ゼウスに恋をしてしまったの。
アストライアは神の掟を破り、ゼウスと限られた時を愛し合った。
その後、アストライアを忘れることができなかったゼウスは、長い旅の末、人間と神の世界をつなぐ光の都コロナドを探し出した。しかし神々はコロナドに人間が立ち入ったことを許さなかった。
神の名を汚したアストライアはコロナドから追放され、その扉の外でゼウスの帰還を待ち続けた・・・
長い年月が流れ、ゼウスがコロナドから帰還した時、ゼウスは若さを保ち、アストライアは老いていた。
皮肉にもアストライアは人間に、ゼウスは神になっていた・・・)


踊り続けるミグ。
気がつくと街の全ての人が踊るミグを見つめている。

ミグ(ゼウスは老いたアストライアを愛してくれたのかな・・・)
サーシャ(言い伝えでは二人の結末は残っていないけれど・・・きっと・・・)


音楽が終わり、踊りきるミグ。
ミグに拍手が送られる。
ミグ「え・・・?」

その時、砂漠の海に大量の水が流れてくる。
枯れたスターライン運河は水で見る見るうちに満ちていく。
四方を水に囲まれていく港町トート。
住民「水だ!砂の海に水が満ちた・・・!」
「奇跡だ!」
「女神の舞いのおかげだ・・・!」
ミグを拝むお年寄り
ミグ「えええ!?」

「うわ水死体も流れてきた!」
「いや生きてるぞ!」
ミグ「えええええええ!!!???」



トートの教会。
応急キットをしまうサーシャ「とりあえず応急処置はしたけど・・・」
ミグ「ありがとう」
サーシャ「ライトに言っといて。これで借りは返したって」
無線機を置くケセド「私とシスターは外にいる」
ミグ「すまない大佐・・・」
サーシャ「いきましょう」
部屋から出ていく二人。
ベッドに横たわる傷ついたライト。
意識が回復しない。
「ライト・・・」
泣きながらライトの上半身を抱きかかえるミグ
「こんなことになるなら自分に素直になればよかった・・・!
私はあなたのことをあ・・・」
ライト「痛いよミグ・・・」
驚いてライトを離すミグ「うわまだ生きてた!」
ベッドに頭をぶつけるライト「ぎゃっ!」
ミグ「あ、ごめん!」

ライト「ミグ・・・ずっと言いたかったことがあるんや・・・ええかな・・・?」
ミグ「え?」
「母さんを守ってくれてありがとう・・・」
「・・・どういたしまして・・・」

ライト「それより教授は・・・?」
ライトのとなりでベッドに横たわっているクリス。
ショックを受けるライト「教授・・・」
ベッドから飛び起きる「ふあ~!よく寝た!はい、じゃあクリスの冒険第三章はじまるよ!」
ライト「寝てたんかい!」
服とフェドーラ帽を素早く身に付け部屋から出ていこうとするクリス。
手招きするクリス「さあみんな、表へ出な!(C)テリオスキッド」
だが部屋のドアの前にマーガレットが立ちふさがっている。
別れた妻に気づくクリス「あ・・・」
ライト「あ、これアカンやつや」
シーツをかぶってベッドに潜り込むライト
クリス「マーガレット・・・」
マーガレット「悪い子ねクリス」

夫婦喧嘩が始まる。
正座させられて一方的に叱られているクリス。
ベッドの中からミグに囁くライト「・・・ミグ止めてくれ・・・!」
ミグ「え?なんであたしが!?」
「オレが言ってもこいつら聞かへんねん」
恐る恐る二人に近づくミグ「と・・・とりあえず一回離れましょう
(私なんでこんなことしてんだろ・・・)」
手を振り上げるマーガレット「いや一発いかせてちょうだい
結婚してすぐに子供を私に押し付けて失踪した男よ。」
ミグ「暴力はいけません・・・!許す強さがあれば人は分かり合えることが・・・」
マーガレット「家族だからって分かり合えるわけじゃない!」
ひるむミグ。ライトの方を向いて涙目で首を振る(ムリだよ・・・)
マーガレット「まったく、こんな男と結婚するんじゃなかったわ。あなたが家族を省みたことがある?
子供のことを考えたことがあるの?」
クリス「あ・・・」
「いえ答えなくて結構。考えたことないわよね、あなたはいつも自分のことばかり」
「自分のために生きてたらこんなことしてないだろ、私は宝のために生きてるんだって。」
呆れてため息をつくマーガレット
「その夢が大切なのはあなただけよ。私たち家族の夢じゃない・・・
確かに、若い頃はあなたの野心的で勇敢なところに惹かれたけれど・・・
子供を出産して私は変わったの。母親になったのよ。
でもあなたは変わらなかった・・・
あなたはあのタブレットに取り付かれている。
この星のギャングと変わらないわ。」

ドアを開けるクリス「わかったよ・・・もうキミら家族には迷惑をかけない。
これからは私一人でやるよ」
マーガレット「勝手にしなさい。でも二度と私と息子に顔は見せないで。」
クリス「ああ・・・」
教会から出ていくクリス。
「おい、母さん!また教授が出てってまうで!」
「ほっときなさい・・・」
「せっかく家族一緒になれたのにええんか!?」
マーガレット「ほっときなさい!!」
ライト「・・・10年経ってもうちの家族は何も変わってへん・・・!」
部屋を飛び出すライト
ミグ「ライト・・・!」
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