『80日間宇宙一周 The Stargazer』脚本⑨

死の迷宮アメミット
レンガで組まれた地下通路が複雑に上下左右に入り組んでいる。
ランタンをかざして振り返るミグ「また分かれ道だぞ」
ライト「あいよ~」
分岐点を手帳にメモするライト
マーガレット「まったく古代人の趣味は理解できないわ・・・」
ミグ「なんでこんなものを・・・?」
マーガレット「紀元前にブリックロード4世っていう迷宮職人がいてね・・・王の愛人をこういった迷宮の中に隠していたってわけ。ここはその中でも最高傑作と言われているわ。」
ライト「男はスケベ心があればなんでもできるな・・・」
ライトを見つめる二人「・・・・・・。」
ライト「な、なんやねん・・・」

かがむライト「お、ミグ明かりをくれ」
ミグ「あ、はい。」
壁面をなでるライト
ミグ「なんだ?」
「チョークのあとや」
マーガレット「クリストファーの仕業ね」
ライト「これをたどっていけば教授に追いつくで」



迷宮を歩き続けるギャングたち
ギャング「ボス、また同じ道に戻ってきてます」
マルドゥク「なんだと・・・?
迷路っていうのは片方の壁さえ辿っていけば必ずぬけられるんだ。どんなバカでもな」
ギャング「しかしこの道に来るのは5回目です。見てください。ジウラがつけた印です。」
マルドゥク「オレがバカだって言いてえのか」
ギャング「いえ・・・しかし何かが変です」
道の奥から何かが近づいてくる。
マルドゥク「クリストファー・・・」



ライト「道が変わってる・・・」
マーガレット「なんですって?」
手帳を見せるライト
「見ろ、このエリアの分岐点はすべてカウントしたはずや。なのになんで何度も戻ってくるんや?
時間とともに迷路自体が変わってんねん。」
マーガレット「ちょっと待って頂戴。
紀元前に時間によってコースが変わっていく迷路を作る技術はないわ。そもそもどうやってコースを変えているのよ。」
ライト「オレに言われても・・・」
耳を澄ますミグ「二人とも静かに・・・!」
ライト「どうした?」
ミグ「悲鳴だ」



最後尾のギャングが何者かに襲われる。
ギャング「ぎゃあああああ」
闇の中でもがくギャング。
「なんだ!?」
ライフルに付いた照明を最後尾に向けるギャングたち。
ビームが巨大なアリたちを照らし出す。
ブルドッグアリをラグビーボール大に大きくした巨大なアリが最後尾のギャングにまとわりついて、その肉を引きちぎっている。
肉を掴んだアリは闇へ引き返していくが、さらにたくさんの兵隊アリが通路の奥からギャングたちに接近してくる。
マルドゥク「野郎ども撃ち殺せ!」
ギャングのライフルが火を噴く。
迷路の壁面を伝いライフルにも登ってくるアリ。
強力な顎でアサルトライフルすら分解していく。



迫り来るアリにEM銃を撃つミグ「おい!キリがないぞ!!」
ライト「陸のピラニアみたいなやつや!母さんバッグから殺虫スプレーを出してくれ!」
スプレーをライトに投げるマーガレット「こんなもの効くの?」
スプレーの表示を読むライト「本製品はアリ、ハチ、ムカデ、その他の不快害虫を効果的に防除することができます」
スプレーをよくふってからアリに吹き付けるライト。
スプレーがかかったアリは仰向けになって転がる。
ライト「あ、意外に効くで!!」
ミグの体に登ってくるアリ「きゃああああ!服の中に入るのだけはやめて!!」
ライト「ミグ動くな!」
ミグにまとわりつくアリにスプレーをかけるライト。
泣き出すミグ「痛い痛い痛い!噛まれた!!」
ライト「あかん数が多すぎる!」
ライトからスプレ-を奪い取るクリス。
ライト「教授!?」
クリス「違う、この星で殺虫剤はこう使うんだ」
殺虫スプレーに火をつけて火炎放射器にするクリス。
アリを一度に炙っていく。
火炎に恐れをなして撤退していくアリたち。
地面にへたり込むミグ「助かった・・・」
クリス「なにしてる?さあ、いくぞ。彼らを追いかけるんだ。」
ミグ「え・・・?」
気づくライト「そうか・・・」
ニヤリとするクリス「そうだ。見失う前に(ミグを立たせる)さあ・・・!」

逃げ出したアリを追いかけていくライトたち。
マーガレット「なるほどアリたちは迷宮には迷わない・・・」
クリス「この迷路の作者だからな」
ミグ「え・・・?」
ライト「迷路の形を変えていたのはアリどもだったってことや」
アリを追いかけていくと、道が開け巨大なホールに到達する。
ライト「ここは・・・」
クリス「女王の間だ」

ホールはたくさんの通路のハブとなっており、働きアリが世話しなく通路とホールを行ったり来たりしている。ホールの中央には働きアリの何倍もある巨大な女王が全く動かずに餌を貪っている。
ホールではキノコが栽培されており、そのキノコが青白く発光するのでほんのりと明るい。
ホールの隅の高い塚の陰に隠れながら、働きアリの動きを目でたどるクリス。
土のペレットを直方体に成形していき迷路に運んでいくアリたち。
さらに頭上5メートルほどにある通路から出てきたアリはギャングのちぎれた一部を咥えている。
アリは女王のそばにいる別のアリにその肉片を渡し、そのアリは肉片を顎と消化液を使って器用に肉団子にしていく。
クリス「ギャングたちは上にいるらしいな」
ライト「何人かはミートボールに加工されたことはわかったな」
気分が悪くなって口を押さえるミグ「人生でこんな光景を見るとは思わなかった・・・」
背中をさするライト「大丈夫か・・・?」
ミグ「ミートボールスパゲッティ大好きだったのに・・・」
クリスに話しかけるマーガレット「あれを見て。あなたが好きなものじゃない?」
女王の方を指さす。
でっぷりと肥えた巨大な女王アリの後ろには巨大な扉がある。
クリス「アメミットの出口・・・すなわち・・・」
マーガレット「超古代都市コロナドへの入口・・・」

女王アリの方へ飛び出そうとするクリスを止めるライト。
ライト「ちょい待て!」
ギャングの死体を運んできたアリが出てきた通路から、今度は別のものを咥えたアリが女王の方へ近づいてくる。
ライト「なんやあれは・・・?」
双眼鏡を暗視モードにしてアリが咥えているものを確認するライト。
ライト「!!みんな伏せろ!!」

女王に時限爆弾を渡す働きアリ。
珍妙な貢物に首をかしげる女王。ホールの中央が爆発する。
女王の間は爆弾で吹っ飛んだアリの死骸でいっぱいになる。
ロープをつたって通路からホールへ降りてくるギャングたち。
女王のちぎれた頭を蹴飛ばすマルドゥク「これでいい・・・」

ギャングに気づかれないようにもの陰に隠れている4人。
30人以上いたギャングたちは6人しかいない。
クリス「向こうもだいぶ減ったな・・・」
ライト「あれだけ肉団子にされればそりゃ減ったやろ」

扉の前に立つマルドゥク
ギャングたちに扉を開かせる
ギャング「ダメですボス、開きません。なにか仕掛けがあるようです・・・」
手を振り上げるマルドゥク。扉から離れるギャングたち。
ロケットランチャーで扉を吹き飛ばすマルドゥク。
マルドゥク「これで開いた・・・」
扉から強烈な光が差し込む。

マーガレット「貴重な遺跡になんてことを・・・」
ライト「あれがアリならトゥームレイダースは誰でもクリアできるな」

扉を抜けるマルドゥク。
目の前には考古学的にどの文明にも見られない形状の広大な遺跡が広がっている
いびつに湾曲した石壁には見たことのない文字が赤く光っている。
マルドゥク「二手に分かれてスタータブレットを探せ。お前はオレと来い。」
ギャング「分かりました」
コロナドの捜索を開始するギャングたち。



コロナドに入る4人。
クリス「ここが超古代都市コロナド・・・」
マーガレット「・・ご感想は?」
肩を震わせるクリス「本当にあった・・・」
ライト「よかったな・・・」
ミグ「おめでとうございます」
クリス「祝杯はまだだ・・・スタータブレットを見つけないと・・・」
マーガレット「ヒントを探しましょう」
石壁に近づくマーガレット
クリス「文字が読めるか?」
マーガレット「信じられない・・・
こんなの初めて見たわ・・・どの文化にも属さないタイプの文字よ。」
ライト「母さんにも読めない文字があったんやな」
マーガレット「当然よ。私が読めるのは人間の文字だけ」
ミグ「え・・・?」
マーガレット「この遺跡は人類が作ったものじゃないわ・・・」
クリス「てことはやはり神の・・・」
首を振るマーガレット「その結論はまだ早いんじゃない?」
ミグ「なんか怖くなってきた・・・」
ライト「ミグ・・・」
ミグ「こんなところに私たちがズカズカ足を踏み入れちゃっていいのかな・・・?」

躊躇なく建物に登って手招きしているクリス
「おい、キミらも早く来いよ!こっから辺りが見渡せるぞ!」
ライト「ミグ、もう手遅れや・・・」

見晴らしのいい高台に登る一行
眼下には高層ビルが並んでいる。
マーガレット「まるで夢を見ているようね・・・」
クリス「伝説によれば太陽神ライトニングは超古代都市コロナドを3日で創造し、その中央のミュセイオンに自身の叡智スタータブレットを置いた・・・」
ライト「ライトニング?」
ライトの頭を撫でるクリス「お前の名前はそれから取ったんだよ」
マーガレット「そしてライトニングはタブレットを11に分割し、それぞれの天使に配った。
天使は各惑星へと飛び・・・それぞれの星の人類に文明を授けた・・・」
ライト「数が合わへんぞ」
クリス「ああ、太陽と月が惑星としてカウントされるんだ・・・
さて・・・いよいよ神に会えるぞ・・・どうする?」
ライト「どうする・・・ちゅうてもなあ・・・とりあえず挨拶だけしてちゃちゃっと石版をもらってこうや」
クリス「お前、神様だぞ!?私には聞きたいことが数え切れないほどたくさんある・・・」
マーガレット「そんなに聞きたいなら、インタビューの順序をあらかじめ考えておいたらどうなの?」
クリス「すでに20年前から考えてあるよ。」
マーガレット「・・・呆れた。」
ライト「ミグはなにか聞きたい?」
ミグ「私はいいよ・・・」
クリス「もしかして冥王星の人たちは神とか信じてないとか?」
ミグ「いえ・・・じゃあひとつだけ・・・
感謝を伝えたいです。私を産んでくれてありがとう・・・私は今幸せですって。」
クリス「あなたは面白いことを言うね。それなら自分の親に言えば済むじゃないか」
ライト「おい・・・!」
ミグ「そうですね・・・私にとっては神に会うのも親に会うのも変わらないのかもしれませんね・・・」



コロナドの中央にある巨大な立方体の建物「ミュセイオン」
クリスが近づくとドアが自動で開く。
クリス「やっぱ神の作った街はすごいな~」
自動ドアの原理を調べるマーガレット「・・・・・・。」
ライト「母さん?行くで」
マーガレット「あ、はい」
建物の中に入る4人。
入口を抜けると下に下る幅の広い螺旋階段があり、さらにその奥は吹き抜けになった広大なスペースが広がっていることがわかる。
クリス「なんだ・・・ここは・・・」
ミュセイオンの中は誰も想像もしたことのないような異質な空間が広がっている。
蔦のようなものが蜘蛛の巣のように張り巡らされており、そのアレイは空間中央部の光り輝く巨大なまゆにつながっている。
蔦は一見乱雑に張られているように見えるが、近づいて観察すると樹形図のような規則性があることがわかる。
ライト「なんやこれ?」
クリス「系統樹だ・・・」
ミグ「生命の・・・?」
マーガレット「いえ・・・世界よ・・・」
螺旋階段とまゆをつなぐブリッジを歩くマーガレット。
ブリッジのそばに伸びる蔦に触れる。
マーガレットの体温に反応してかすかに動き、色を変えるつた。
「この粘菌のような巨大な単細胞生物に世界のすべてを演算をさせているのよ・・・
エネルギーの供給はきっとあの中央のまゆからね。
生物を使うとは、まったくたいしたものね・・・その発想はなかったわ・・・」
蔦をナイフで傷つけるクリス。中から血液のような液体が出てくる。
別の場所を傷つけると血液の色が違う。
ミグ「・・・データベースなんだ・・・これまで現れたすべての生き物の」
クリス「これがセフィロトの樹の正体・・・コロナドの叡智・・・」
マーガレット「まさか四方数kmにも及ぶ巨大な生物だったとは残念ね。
とてもじゃないけど博物館へ運び出せるようなものじゃないわクリス。」
ライト「ここ自体が博物館みたいなもんやもんな」
クリス「いや・・・これはスタータブレットじゃない。きっとあの繭の中だ。」
ライト「やっぱり行くんやな」
クリス「もちろん」



黄金色に輝く繭の中に入るクリス
クリスの目の前にはついに長いあいだ探し続けていたもの・・・
スタータブレットが中央で浮いている。 
クリス「あった・・・!」
スタータブレットを手に取るクリス
クリス「あった・・・!!」
クリスが持ったことでスタータブレットが反応し、マックの起動音を鳴らす。
タブレットの画面が付き、メニュー画面が表示される。
最初は画面の言語がわからなかったが、そのうちに形を変えて英語になっていく。
スタータブレット「表示言語を最適化しました。お調べになりたい情報をメニュー画面からどうぞ」
クリス「すげええええ!!!!!」
大はしゃぎでタッチパネルになっている画面をスクロールさせるクリス。
クリス「人はなんで生まれて、死んだらどうなるのか・・・なんでも書いてあるぞ・・・!
へ~宇宙が11次元ってそういうことだったのか!
すげえすげえすげえ!!!」
振り返るクリス
「おい、みんなちょっと来いよ!死ぬってどういうことかわかったよ?
実は私たちって死んだら・・・」
マルドゥク「どうなるんだ?」
クリス「あ・・・」
「そこまでだ、教授。その板をよこしな。その答え合わせをしたくなかったらな・・・」
ギャングにライトたちが捕まっている。

マルドゥク「言っとくが今回は毒なんて撃たねえぞ。一撃でこいつの脳みそぶちまけてやる」
クリス「ライト・・・」
ライト「教授・・・すまん」
マルドゥク「どうする?」
クリス「・・・分かった。スタータブレットはくれてやる。
だから他の人間は傷つけないと約束してくれ。私の・・・大切な家族なんだ」
マルドゥク「やっと大人になったな、教授・・・いいだろう」
マーガレット「クリストファー・・・」
ライト「そいつに石版をやったらあかん!」
クリス「いいんだライト・・・」

石版をマルドゥクに渡すクリス
マルドゥク「お利口だ」
石版を受け取るマルドゥク。
そしてミグに銃を向ける。
ミグ「え・・・?」
マルドゥク「だが、こいつはお前の家族じゃねえ」
クリス「・・・・・・!」
ライト「やめろ!」
引き金を引くマルドゥク。
銃声。
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