『80日間宇宙一周 The Stargazer』脚本⑩

ミグをかばって撃たれるクリストファー。
マーガレット「クリス・・・!」
ライト「教授!」
一瞬の隙をついてギャングを攻撃するミグ。
後ろの手下を蹴飛ばし、銃を奪ってギャングを倒していく
石版を持って繭の奥へ逃げ出すマルドゥクと手下。
ミグ「待て・・・!」

追跡を諦め後ろを振り返るミグ。
血を流して横たわるクリス
ライト「しっかりしろ教授・・・!」
クリスに近づくミグ
ミグ「なんで私のために・・・」
クリス「決まってるだろ・・・あなたも・・・大切な家族だからだよ・・・」
涙目になるミグ。
マーガレット「まさかあなたが銃弾くらいで死なないわよね・・・?」
クリス「いや・・・今回はダメっぽい・・・死んじゃう・・・」
ライト「アホなこと言うなや!」
クリス「あ~・・・石版を戻すと得た知識を忘れてしまうのか・・・
・・・でも、ひとつだけわかったことがある」
ライトの頬に手をやるクリス
「20年もかかったが・・・私の宝物はこんなに近くにあったんだな」
ライト「え?」
微笑むクリス「私が求めるべき答えはこれだったんだよ・・・」
ライト「父さん・・・」



繭の奥には狭い通路があり、そこを超えるとミュセイオンの最深部に到達する。
太陽系が描かれた巨大な壁画がある広大な部屋にたどり着くマルドゥク。
壁画の下の台にはタブレットを立てるくぼみがある。
マルドゥク「スタータブレットの本当の使い方をクリストファーは知らねえ・・・
この世の真実を知るなんてほんの余興程度だ・・・」
石版をはめ込むマルドゥク
スタータブレットが起動し、壁画が光り出す。
スタータブレット「グラビティディフェンスシステム作動――」
生まれて初めて微笑むマルドゥク



ミュセイオン全体が大きく振動する。
ライト「何が起きとるんや・・・!?」
マーガレット「早くここから逃げましょう」
クリスに肩を貸すライト「父さん、立って・・・!」
クリス「あたた・・・もっと優しく・・・」
ライト「すまん!」
ミグの方を向くライト「ミグ行くで!」
ミグ「先に行っててくれ・・・私はあの男と決着をつける」
ライト「義理堅いのもええかげんにせえ!崩れるぞ!」
ミグ「ごめんな・・・約束は破れない性分なんだ。二人を頼んだぞ!」
まゆの奥へ駆け出すミグ。
ライト「ミグ!」



ミュセイオン最深部
コックピットのような玉座でスタータブレットを操作するマルドゥク。
玉座に座るマルドゥクにEM銃を突きつけるミグ「それを止めろマルドゥク」
マルドゥク「しつこいやつだ・・・てめえら白人はなんでも奪っていきやがる。
ここはオレたちの星だ。
これ以上よそ者に勝手な真似はさせねえ・・・」
ミグ「その石版は誰のものでもないだろ・・・」
マルドゥク「ふん、ならばお前にも王の力を見せてやる・・・壁画を見な・・・」
壁画に書かれているのは太陽系の軌道図だ。
そこにはメインベルトにあるすべての小惑星の位置が赤いランプで示されている。
マルドゥク「そうだ小惑星だ・・・メインベルトの小惑星は木星の重力によって安定した軌道を保っている・・・もしこの重力をここで操作できるとしたらどうだ?」
ミグ「なんだと・・・?」
マルドゥク「太陽系のどの惑星にも、好きにメインベルトの小惑星を落とすことができるってことだ・・・
直径1000キロのケレスをお前の星に落としてやったっていいんだぞ?」
ミグ「なんでそんなことを・・・」
マルドゥク「お前は4才の頃に、自分が住んでいる村を皆殺しにされたことはあるか?」
ミグ「なに・・・?」
マルドゥク「オレには生まれた時から国がなかった・・・オレはずっとひとりで生きてきた。
だが、この力さえあればオレこそが木星の・・・いや、宇宙の支配者だ・・・!
オレだけの王国を作ってやる・・・!」
ミグ「・・・石版を戻せマルドゥク!そんな方法では王国はできない!
わからないのか?
木星の重力を変えるということは木星の破壊を意味するということだぞ!」
マルドゥク「脅しても無駄だ。もう誰も止められねえ」

振動がさらに大きくなっていく。
地面は引き裂け、地中のガスと溶けた金属が見える。
マルドゥクの護衛のギャングが恐ろしくなって逃げ出す。
ミグ「この星は変わりつつあるんだマルドゥク!」
マルドゥク「うるせえ!」

その時ギャングが悲鳴を上げる。
ミグが振り返ると王の間の両側から二頭のケンタウロスが人間たちに向かって突進してくる。
ケンタウロスに向かって銃撃するギャング。
ケンタウロスは腕の大きな鎌でギャングを薙いでいく。
血しぶきが上がる。
マルドゥク「なるほど王の護衛ってわけか・・・」
二頭のケンタウロスにEM銃を向けるミグ
タブレットを操作するマルドゥク「そいつを始末しろ!」
ギャングを虐殺したケンタウロスは今度はミグに向かってくる。
ケンタウロスの攻撃を転がりながら避けるミグ。
EM銃を撃つがケンタウロスの硬い表皮には効かない。
笑うマルドゥク「死ねえ!」

ミグ「ケレリトゥス博士すまない・・・!」
コックピットのスタータブレットを撃つミグ。
スタータブレットが衝撃で台座から外れて、システムが消えてしまう。
マルドゥク「てめえ、なにしやがる・・・!」
ケンタウロスが向きを変えてマルドゥクの方へ向かってくる。
ミグ「お前に王の資格はない!」
ケンタウロスがマルドゥクの頭の上から鎌を振り下ろす。
マルドゥク「ぎゃあああああ!」
スタータブレットに鮮血が飛び散る。
超古代都市コロナドが崩れていく・・・



アストライア大神殿でミグが戻るのを待つライト。
ライト「ミグ!」
神殿からリンドバーグ号へ駆けてくるミグ「早く離陸しろ!木星が燃えていくぞ!」
スターライン運河の青い水が蒸気を出しながら熱いマグマに変わっていく。
離陸するリンドバーグ号。



木星の大地震が止まる。
リンドバーグ号のコックピットで流れる惑星連合放送のラジオニュース。

「本日未明に木星全土を襲ったマグニチュード10の超巨大地震ですが、これにより各地で甚大な被害が報告されています。これまでの死者は4万人以上――行方不明者は30万人に上る見通しです。」
「こちらはヒマリアの国境付近です。
対立していたヒマリアとアナンケの民がともに助け合い救助活動を行なっています。」
「アマルテア政府は隣国パシファエに5万トンの救援物資を送ると発表・・・」
「木星民族会議のンゴロ・アルベド議長は木星全土に緊急声明を出しました。」

アルベド議長「今こそ木星に生きるすべての民が団結するときなのです。
神はこの苦難を我々に等しく与えました。豊かな国にも貧しい国にも、強い国にも弱い国にも・・・今の木星にはかつてあった格差などありません。私は信じています。
必ずや木星がこの試練を乗り越えることを。」


リンドバーグ号の中ではマーガレットがクリストファーの看病をしている。
ライト「ミグ・・・結局あの板は何やったんや?お前はすべてを見たんやろ?」
ミグ「もしかしたら木星を太陽にする時限装置のようなものだったのかもしれない・・・
でも・・・よくわからない。神はなんでそんなものを造ったんだろう・・・」

ずっと黙ってやり取りを聞いていたが口を開くマーガレット
マーガレット「これは私の仮説に過ぎないけれど・・・
ひとつだけ確かなのは、あれは神の遺跡というようなものじゃないってこと。」
クリス「なんだって・・・?」
マーガレット「古代人がスタータブレットと呼んでいた、惑星内部の熱エネルギーを用いてオリハルコンの結晶を作る生物の・・・まあ鍾乳洞みたいなものね・・・
小惑星にあった星の欠片が成長したらああなるんじゃないかしら。」
クリス「生き物だったっていうのか!?」
マーガレット「人類の文明と類似点がないのも当然ね。そもそも人工物じゃないのだから
・・・あの石碑は鉱物と生物の中間にあたるような存在なのかもしれない。
私たちが文字だと思っていたものは単に彼らが作り出した模様だった可能性もあるわ。」
クリス「すべては人類の壮大な勘違いだったってことか・・・」
マーガレット「あら、そんながっかりすることはないわよクリス。
人は他人と宇宙を共有することはできない。でもほんの小さな誤解によって、神に祈り、他者を慈しむ感情が人間に生まれたのだとしたら、それは壮大な奇跡よ。」
ミグ「・・・奇跡。」
マーガレット「・・・こういう話があるわ。古代には沈黙交易という風習があったの。
異民族と言葉を交わさずに行う交易なのだけれど、考えてみれば言葉も通じない相手と取引をするなんて不思議な話よね。
私はこう思うの・・・それが未知の存在であれ・・・人間は交流することそれ自体に幸福を感じる動物なのだと。分かり合える合えないは問題じゃないの・・・それでも誰かと関わりたくなってしまうのよ。それが人間なの。」

ミグ「・・・・・・。」
ライト「元気出せや父さん。宝はここにおるで。」
ライトに微笑むクリス「そうだな・・・スタータブレットはこれで諦める」
ライト「ああ、わからんままの方がええもんもあるって」
「そして新しい冒険の始まりだ・・・!私は次の宝を求めることにするよ!レッツトライ!」
三人「え?」
クリス「キミらに私たちの孫を産んでもらわないとね」
ライト「はあああ!?」
マーガレット「・・・そうね、あなたたち私たちよりもいい夫婦になるわ」
ライト「ちょっと待てって・・・!」
クリス「孫も冒険家にしようぜ」
マーガレット「クリスいい加減にしなさい。孫にはちゃんと大学に行かせるわ」
ライト「そういう冗談はやめろや!ミグは気位が高いんや!
・・・ごめんなミグ、気にせんでええから・・・」
涙を浮かべるミグ
ライト「ミグ・・・?」
ミグ「ご・・・ごめんね・・・なんか・・・久々に家族を思い出しちゃって・・・」
ライト「ミグ・・・」
夕日に向かって飛んでいくリンドバーグ号。



王は太陽の子
神に知恵という強大な力を授かり王国を築きし者
全知全能のその力は地を揺るがし、海を引き裂き、天空の星をも落とす
王は神にも等しい力を得た

しかし王の心は満たされなかった
満ちていくのは扉の外で祈り続ける女神への思い
王が探し続けていたものは、神の力ではなく
たった一人の愛する人だった

よって王は神の地を去り、その力を封印することに決めた
アストライアの大神殿と迷宮は、探求者に試練を与えるであろう
星の運河を辿り、星の欠片を手にした女神の舞によって真実の扉は開かれるのだ




秘密結社の円卓。
円卓には林檎に絡みつく蛇の紋章が掲げられている。
名だたる政治家や貴族、科学者などが円卓で顔を並べている。
「・・・いい知らせかね?」
スーツの男「ええ」
「だがキミの友人に投資しても宇宙戦争は起きなかったじゃないか。」
「同感だ。太陽系は和平への道を歩みだしている」
スーツの男「果たしてそうでしょうか?
大国が世界平和という理想に舵を切ったときに、切り捨てられるのは少数民族の現実です。
植民地というタガがなくなった今、木星は多くの武器を必要としています・・・
我々のビジネスに負けはない」
「だが、ミラージュ計画はどうなった?ノーチラス号は??強大な兵器で地球を破壊するという君の計画はどれも失敗続きだ」
「ああ、地球はなんともないぞ。欠けてもいない。」
スーツの男「地球を破壊するのはやめました・・・」
「なんだって?」
スーツの男「地球を破壊する程度ではまだ足りない・・・
我らが主が求めるのは宇宙すら破壊する兵器です」
ざわつく
「そんな兵器は存在する意味がないだろう。宇宙がなくなったら商売はできん。」
スーツの男「お忘れですか?我々の目的は金を儲けることではない。
主の意思を実行することです」
「・・・その兵器とは一体どういうものなのかね?」
「我々にもわかるように話してくれないか、ピカール卿」
微笑むピカール。



円卓の奥の空間に入るピカール。
空間は暗く、奥にいる何者かに話しかけるピカール。
ピカール「同志ザドキエルは再び長い眠りに・・・」
木星にあったものと同じ石版(iPad)と対峙するピカール
スタータブレット(・・・月へ行け。そして選択せよ。)
ピカール「はは」

つづく
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