カルテット!人生のオペラハウス

 「面白い度☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 お客が来るなんて素敵ね。あなたには来るの?

 vicさんお勧め映画。なんとダスティン・ホフマン監督wいやに上映回数多いなあと思ったら、なんと今日が公開初日だった。6人しか客がいなかったけど・・・でも公開初日に映画を観るってなにげに『アリス・イン・ワンダーランド』以来かもしれない。
 映画館のサイトに予告編動画があって、あの『ジュラシック・パーク』を抜いた個人的殿堂入り映画『オーケストラ!』と同じ匂いを感じて、発作的に見に行ったんだけど、日本版予告はコメディ映画っぽく宣伝しているけれど、そこまでコメディ色は強くない。
 どっちかというとドキュメンタリー的というか、美しい英国の田園風景と、引退した音楽家が住む老人ホーム「ビーチャムハウス」の穏やかな日常を、スタティックに描いた作品。

 そういえば何年か前に『けいおん!』が流行った時、私はツイッターか何かで「これ、この4人の老後描いたら面白そうなのに」って言ったことがある。
 つまり、あの作品って若者の日常を描きながら、いやに年寄りくさいというか、ほのぼのとしてて、舞台は女子高よりも老人ホームの方が合うんじゃないの?って思ってたから、自分だったら60年後のけいおん!をやるよなあって。けいろう!みたいな。
 そしたら、この映画ってまさにそんな感じなんだよw4人のお年寄りがただ純粋に音楽を楽しむためにカルテットを歌うお話。
 しかもこの4人のキャラが結構日常系アニメにありそうな感じで、面白い。生真面目で保守的なレジー、レジーの元妻で、気が強くプライドの高い浮気性のジーン、残り僅かな男性ホルモンを絞り出し老後のエロライフを楽しむウィルフ、そしてドジっ子で天然ボケの(というか本当にボケている)チャーミングなシシー。
 『セックスアンドザシティ』もそうだったけど、4人の法則って絶対あるよねw

 さっきスタティックとか言ったけど、歳はくってもこのホームにいるのは元はプロの音楽家ばかり。つまりみんな我が強いというか・・・濃いw
 職人タイプもいれば、芸術家タイプの人もいる。レジーなんかはビートルズですら内心「あんなの音楽じゃねえ」とか思っているんだけど、若者にオペラを講義する際にはちゃんと彼らが好きなヒッポホップも勉強しているのが面白い(ネットで)。

 オペラとは最初はキミらのような人が行なった。やがてオペラは着飾った金持ちに骨を抜かれ現在の形になった。
 オペラとはここにいる誰もが抱く感情の激しいほとばしりだ。


 そういえばオーケストラなんかもよくよく考えれば大衆文化なんだよね。ガチなセレブは自室でお抱えの楽団による演奏を楽しむはずだから。
 
 しかしレジー以上にプロ意識が強く、気高いのがジーン。この人を見ていると、なんか『菊次郎とさき』で晩年の菊次郎が自分の仕事に納得がいかずペンキ屋をパッたりやめてしまったことを思い出す。
 人の仕事にも自分の仕事にも厳しいからこそ、今の自分が許せない、認められない。菊さんは引退宣言したら本当にまったく塗装業をやめちゃったんだけど、芸術に愛着があるクリエイターはなかなかそうは割り切れないんじゃないだろうか。ジーン程の名声のあるオペラ歌手なら特に。
 スポーツ選手なんかだと、残酷すぎるほど明確に成績や評価の基準があるし、なにより体力的なピークがあるから引き際っていうのが分かりやすいけど、芸術家なんかは善し悪しに明確な基準がないから、なんか引き際がわからなくてズルズル続けちゃう恐ろしさがある。
 まあどっちもどっちって感じだけど、スポーツにしろ文化芸術にしろ、ピークが過ぎてもそれでも続けたいという意思があるのは、私は別にみっともなくないと思う。
 現役時代、ものすごい成績を残している人ほど、過去の栄光と折り合いをつけるのが難しいんだろうけれど、それは社会や他人の判断基準に引きづられているだけなんだよね。

 芸術とは無限の孤独であり、些細な批評の手が届かないものである。

 もちろんプロとして、お客さんを楽しませるための最低限のクオリティというものはあるのだろうけど、それでも他者の評価を過剰に気にして何もできないよりはマシだと思う。
 自分はそもそもなんで音楽をやっているのか。理由もなくただ歌うことが好きだったんじゃないのか。それとも歌で人を楽しませるのが生きがいなのか・・・
 この問題は創作活動を続けていくモチベーションを維持するうえで避けては通れない問題かもしれない。コンサマトリーかインストゥルメンタルか。
 私は、漫画家になるよりもまずは漫画を楽しく描き続けることを目的として優先させたから、こんなことになっちゃったけど、そこらへんは人それぞれ。ただ漫画を描くのが好きだったのに、プロの漫画家を目指すあまり、漫画を描くこと自体をやめちゃった人はたくさん知ってる。
 一方、島本先生みたいに自分の趣味と仕事をうま~くコミットできる人もいる。それもまた才能だ。
 
 そういえば、この前、全国レベルの運動部の子に「なんで美術の授業なんてやるんですか?」と聞かれたことがあったけど(数学でもよく子供に言われる質問w)、それはどんな文化でも言えることだ。人間の活動に意味などないのだから。
 きっとこの子だって、意味や理由、効果を考えてから理屈で納得して、そのスポーツを始めたわけじゃないはず。なんか純粋にやってて楽しいから続けているんじゃないのかな。
 私がおそらく一生アメフトみたいな激しい競技をやらないのと一緒で、この子も学校を卒業したら美術は二度とやらないかもしれない。でもスポーツ選手を引退して、時間を持て余して暇だった時に「なんか絵でも描いてみるか」って思う時があるかもしれない。それだけで、なんか人生がちょっとだけ豊かになったという感じはしないのかな。

 歌うことよりも人生を選んだ。両方は手に入らない。

 本当にそうなのかな。レジーにとっては歌うことが人生そのものだったんだよ、きっと。
 そんな自分の人生にとって大切なものと出会うキッカケや選択肢を増やすために、学校にはいろんな授業があるのかもしれないよ。

 だから美術もやってあげてよ。
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