法律学概論覚え書き④

 今回は民法について。民法は総則、物権、債権、親族、相続の5つの編で構成されていて、前の3つが財産について、後ろの2つが家族について書かれている。

財産法
静的な所有権や動的な売買取引や権利の変動を定める。
一般市民の間の財産は民法、会社の商取引については商法が適用される。

財産法の基本原則
①人格の自由
すべての個人が完全な法主体性を持ち、法的には対等な立場で取引ができる。
②所有権の自由
所有権が封建的な拘束から解放され自由な取引の客体となる。財産権の保障。
③契約の自由
取引当事者が取引の手段として自由に契約を締結できる。
契約内容を決定する自由や、契約書をつくらず口頭の契約でもでもよいという契約の方式の自由も含まれる。
④過失責任の原則(過失責任主義)
故意または過失があるときにだけ、他人に対して損害賠償の責任を負う。不法行為や債務不履行など。逆に言えば、故意や過失がない限り自由に取引活動ができる。

権利能力
権利の主体になりうる能力のこと。すべての人は出生とともに完全な権利能力を持つ。
出生前の胎児でも相続権や損害賠償請求権が認められている。
しかし20歳未満の未成年者は合理的な取引をするだけの十分な判断能力を持たないので、単独での取引は有効ではないとされている。よって、親権者や未成年後見人の代理または同意が必要。

制限行為能力者
成年被後見人(精神上の障害で事理弁識能力がなく家庭裁判所で後見開始の審判を受けた人)、被保佐人(事理弁識能力を著しく不十分な人)、被補助人(事理弁識能力が不十分な人)は有効な取引ができる能力(行為能力)を欠くとされる。
事理弁識能力とは、物事の実態や考えられる結果などについて理解することができ、自分で有効な意思表示ができる能力のこと。

法人と会社
法人は個人と同様に権利主体として認められている。
営利法人としての各種会社と、一般社団法人、一般財団法人がある。
さらに公益の増進を適正に実施できるとして行政庁より認定された、公益社団法人、公益財団法人、NPO法人(特定非営利活動法人)、特別法による宗教法人、学校法人、社会福祉法人、医療法人などがある。

持分会社
少人数の特定の人々が出資する会社。以下三つある。
①合名会社
全員が無限責任社員。
②合資会社
無限責任社員(会社の債務全額に責任を負う)+有限責任社員(出資額の範囲だけ)
③合同会社
全員が有限責任社員。かつての有限会社。

株式会社
全員有限責任社員。定款自治は合同会社に比べて制限される。

所有と経営の分離
株式会社の所有は株主総会、経営(業務執行)は取締役会と資本と経営を分けること。

不動産
土地や建物など動かせないもの。登記制度あり。

動産
不動産以外の権利の客体全て。登記制度なし。

物権
不動産や動産を直接的に支配する権利。代表的なものは所有権。
所有権の自由は公共の福祉による社会的制約を受ける。権力濫用の禁止。

用益物権
不動産の利用を目的とする権利。山林や宅地の地上権、農地や牧野の永小作権、隣地利用のための地役権(特定の土地の便益のために他人の土地を利用する権利)、山野から共同に採草などをする入会権の四つがある。

担保物権
債権の担保の価値を把握する権利。留置権、先取特権、質権、抵当権の四つ。

占有権
実質上の権利がなくても事実上支配しているような時の権利。

物権法定主義
法律によらなければ新たな物権は創設できない。

債権
お金を借りた人に対して金銭の支払い、その他一定の行為を請求する権利。
金銭債権の他、物の引渡し請求権、賃貸借などものの使用を請求する権利などがある。
一般的に債務者と債権者とのあいだだけの関係になる。

有価証券
手形、小切手、株券等。その流通は強く保護されている。

契約
申し込みと承諾という二つの意思表示によって成立している。

典型契約
民法にまとめられた13種類の契約のこと。しかし契約自由の原則により、これらの典型契約に入らない無名契約も自由に締結することができる。

契約の無効
公序良俗に反する事項を目的にするとその契約は無効になる。人身売買や暴利契約など。
また、詐欺や脅迫によって行なった意思表示は無効とされる。さらに、心裡留保(冗談や嘘)、虚偽表示(財産の仮装譲渡のように当事者双方が真意のないことを知っている契約)、錯誤(思い違い)などは無効とされる。

法律行為
当事者の意思表示に法的効果が与えられ、権利や義務が変動する行為を指す。
一方からの意思表示で成立する単独行為(契約取り消しなど)と、多数の意思表示によって成立する合同行為(会社の設立など)がある。

登記の対抗要件
先に買った人よりも先に登記した人がその土地の所有者として認められる。

物権変動の公示の原則
登記など第三者が認識できる形式による権利の公示に一定の権力を与えること。

公信の原則
公示された所有者が実は嘘で、それを信用して取引をした人が所有者から権利を取得できないとなると、取引の安全性は大きく損なわれるため、公示の内容が実際の権利関係と一致しなくても、公示通りの権利を取得できるという原則(逆に言えば、本当の権利者の利益は犠牲になる)。
不動産:認められていない
動産:認められている
有価証券:動産に上に強く認められている

同時履行の抗弁権
売り手と買い手の当事者間の公平のために、物の引渡しと代金支払いは同時に履行するよう要求できる権利。映画とかで「金はやる、だが人質と同時だ!」みたいなやつだと思う。
違うか。

不動産賃借権の物権化
特別法によって強化された賃借権は自由に譲渡はできないもののほぼ物権に近いものになったので、こう呼ばれている。利用者の地位の安定を公共の福祉に適合するものと考え、所有者の権利を制限したと言える。

消費貸借契約
借り手が自分の金銭を消費して同額の金銭を返すこと。担保が伴うことが多い。借り手がお金を返せない時に代わりににその借金を支払うハメになる保証人は人的担保である。
不動産などの抵当権は、抵当権者が登記をするだけで、借主はその不動産をそのまま利用することができて便利。お金返せないと差し押さえられるけど。

無過失責任
自動車や原子力発電など危険性の高い事業は、加害者側に故意(わざと)や過失(不注意)がなくても被害者へ損害の埋め合わせをしなければならない。
民法では不法行為責任の成立要件は、故意・過失、責任能力、違法性および因果関係となっているが、例えばメーカー側が無過失でも消費者の損害賠償の責任を負う製造物責任法は過失責任主義に当たらない。
これにより商品の欠陥によって被害を受けた消費者は、商品の欠陥を挙げるだけで救済され、メーカーの過失を証明する必要がなくなった。

家族法
身分法とも呼ばれる。財産法が経済的利害によって結合したゲゼルシャフトを扱うのに対して、家族法は利害の打算によらないゲマインシャフトを扱う。
家族関係においてはどちらが勝つかといった訴訟ではなく、調停や審判によって問題を解決することが多い。
国が一定の理念のもとに家族生活を規律しようとするので、原則強行法規。
家族に関する法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に基づいて制定されなければならない。

婚姻
法律上の正式な結婚のこと。
「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」
男は18歳、女は16歳から結婚できるが、未成年の婚姻は父母の少なくとも一方の同意が必要とされている。
成年は自由に結婚できるが、重婚や近親婚は禁止されている。

法律婚主義
婚姻は戸籍法による婚姻届をすることによって、法律場正式な効力が発生するという考え方。

事実婚主義
結婚式などによって社会的に夫婦と認められていれば、法律上も婚姻の効力があるとする考え方。

内縁
婚姻届はないが社会的に夫婦と認められている男女。大正時代初めに、内縁を不当に破棄すると婚姻予約不履行による慰謝料を請求できるようになった。

夫婦
婚姻届に記載したところに従って夫または妻の氏を称する。
夫婦については親の戸籍とは別に新戸籍を編成する。その際、氏を変えない方が戸籍筆頭者となる。

夫婦別産制
結婚する前、もしくはあとに得た自分名義の財産は、夫婦共有の財産ってことにならない。
法定財産制による。共同生活の費用は、各自の資産・収入に応じて分担する。

離婚
夫婦の合意で離婚届を出せば協議離婚ができる。日本の離婚の9割がこれ。
合意が成立しない場合は裁判離婚になる。
夫婦の一方が反対している場合に離婚を認めるには、一定の離婚原因がないといけない。
その原因を具体的自由のみにするのが絶対的離婚原因主義で、一般条項的な離婚原因を認めるのが相対的離婚原因主義。

有責主義
相手に責任がある場合にのみ離婚を認める考え方。

破綻主義
相手に責任がなくても、婚姻関係が破綻すれば離婚を認める考え方。
自分の責任で破綻を招いた有責配偶者からの離婚請求は認められなかったが、現在では判例が変更され認められるようになっている。しかし責任のない他方の配偶者をどう保護するのかが問題になっている。

財産分与請求
夫婦両者の協力によって得た財産の分割、有責配偶者に対する慰謝料、離婚後の扶養料などが請求できる。

親権
離婚の際には、どちらか一方に親権を定めなければならない。
また法律上の保護者である親権者とは別に、実際の養育にあたる子の監護者を定めることができる。養育費は親権者、監護者に関係なく、父母がその資力に応じて負担する。

嫡出子
正式な夫婦の間に生まれた子ども。しかし妻の生んだ子が必ず夫の子であるとは言えないので、妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子と推定している。
さらに妻が離婚成立の日から200日後、または夫の死亡若しくは離婚による婚姻解消の日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定している。
この嫡出推定を否認できるのは夫だけで、この出生を知った時から1年以内に嫡出否認の訴えを起こさなければ、否認できなくなる。

非嫡出子
婚姻関係のない男女の間に生まれた子ども。いわゆる私生児のこと。
民法では、親からの扶養については嫡出子との区別をしていないが、相続については非嫡出子は嫡出子の半分しかもらえない。
非嫡出子は親子関係が明確でない場合が多いので、父または母の認知届によって法律上の親子関係が生じる。とはいえ母子関係は分娩の事実から明確なので、認知を要しない。
父親が親子の認知(任意認知)をしてくれない場合は、子どもの方から認知の訴えを起こすことができる(強制認知)。

養子
養子になれば、養親の氏を称し、嫡出子と同様な扶養と相続の関係が生じる。
日本では成年養子も認められ、未成年養子よりもその数は多い。
未成年者を養子にする場合は家庭裁判所の許可を受ける必要がある。15歳未満の場合は、養子の法定代理人である親権者または後見人が養子に代わって養子縁組の承諾をする。
養子と養親がうまくいかなくなった場合は裁判離縁や協議離縁が認められる。

親権と後見
法律上の未成年の保護者は、第一に親権者(父母)、第二に未成年後見人。
父母共同親権に基づいて、父母が共同で親権を行うが、父母が離婚した場合、非嫡出子の場合には、どちらか一方だけが親権者になる。
親権者である父母がいなくなった場合は、家庭裁判所で未成年後見人を選んでもらう。未成年後見人は家庭裁判所が監督する。

扶養義務
民法では夫婦や親子の他、祖父母や孫という直系血族、兄弟姉妹の間には、法律上の扶養義務を定めている。さらに特別な事情がある場合は3親等(曽祖父、曾祖母、ひ孫、甥っ子、姪っ子など)以内の親族間にも家庭裁判所で扶養義務を負わせることができる。
扶養義務のどこまでを親族の責任(私的扶養)、国の責任(公的扶助)にするかという問題があるが、日本では私的扶養の責任範囲をかなり広く認めている。
最低生活をこえる扶養や、余裕のない者が自分の生活を削ってまで扶養したりする義務は含まれない。
しかし夫婦や親子には一般の扶養義務(生活扶助義務)より強い生活保持義務があると考えられる。
また、直系血族感と同居の親族間には互いに助け合う互助義務があるとされている。

相続制度
遺産の相続制度も私有財産権の保障の延長として強い法的保護を受ける。

遺言自由の原則
遺言によって自分の遺産を自由に処分できる。
遺言のない場合には法律で定められた割合の相続分に従って、相続人に遺産が継承される。
相続人にとって遺産は一種の不労所得であり、それを社会に還元すべきという考え方があり、高い相続税をかけられたりしている。

諸子均分相続
子、父母、兄弟姉妹といった同順位者は均等に遺産が相続されること。
長男がほかの兄弟よりも遺産を多く相続することはない。

代襲相続
遺産を受け取るはずの子が既に亡くなっていた場合は、その子の子ども、つまり孫が代わりに遺産を相続するということ。
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