プレーンズ2/ファイアー&レスキュー

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 今日お前が諦めたら、明日誰かが命を落とすことになる。

 今年は久々にピクサーの長編映画が公開されないんだけど、代わりにただでさえくそ暑い真夏に火炙りにされるような熱い映画をディズニートゥーンが繰り出してきたよ!!農薬の次は化学消火剤を散布だぜ!!
 プレーンズって毎度映画の始まり方がカッコイイんだけど(前回は戦闘機の航空無線)、今回は「みんなの命を救うために、命を懸けて戦う世界中の消防士たちにこの映画を捧げます」のナレーション。やばい!これはマイケル・ムーア監督の『シッコ』と同じ流れだ!泣かされるぞ・・・!
 ということでシリーズ初、レースではなくレスキューに焦点を当てた今作は、子ども向けながら最も内容がシビア。
 ただ単にかっこいい働く車が、スーパーマンのように困っている人たちを助けるんじゃなくて、それぞれに過去のある(!)ごく普通の車や航空機が厳しい訓練を受けてレスキューに転身してるんだ。まあサンダーバード2号みたいなのもあるけど。
 本来スーパーマン・・・英雄っていうのは、他の人よりも能力があるから英雄って呼ばれているわけじゃないわけで。漫画やアニメを見ていると肝心の核心部分を忘れちゃうけれど。英雄と呼ばれる人の何がすごいかっていうと、ただ一つ。犠牲心なわけだ。

 名前も知らない者のために命をかける。みんなが逃げ出した場所へ飛び込む。誰にでもできることじゃない。
 
 カーズシリーズの世界観として・・・というか『カーズ2』から強調された特徴なんだけど、キャラクターが普通に死んじゃうっていうのがある。
 『カーズ1』の老レーサードック・ハドソンが声をあてたポール・ニューマンさんが亡くなっちゃったことで、ドックというキャラも亡くなった設定にしたり、『プレーンズ』の老兵スキッパーが第二次世界大戦で部下を全員失っちゃったりと、私たちが生きる現実と同じく、死がしっかり描かれるのが子ども向けアニメにしては珍しいんだけど、その設定を最大限に生かして、緊迫したレスキューシーンを描いている。
 このシリーズのスタッフが毎回とんでもない取材(おそらく舞台のモチーフは最古の国立公園として知られる、イエローストーン国立公園なんだと思う)をしているのは、おなじみだけど、もう火災現場のシーンはすごいですよ。ここまで描くかってくらいリアル。
 
 つーか怖い。

 ちびっこは「ダスティ頑張れ~!」とか応援していたけど、私ちびってたよw煙とか延焼規模とかがすごくて、もうこれCGかってくらいで。んで、たいてい空撮に限定される実際の火災映像と違って、この映画って火災現場の内部も写すじゃん。もう永沢君じゃなくてもトラウマ必至ですよ!
 で、火災映像のリアルさと共に、恐怖と緊迫感を演出していたのが、さっきも言った「カーズシリーズは死んじゃう世界」っていう設定なんじゃないかなって。
 これがスラップスティックなギャグアニメ(カートゥーン)みたいにキャラクターが「あっち~!」って叫んで済んじゃう世界観なら、別にドキドキしないんだよね。
 ロジャーラビットがどんなにひどい目にあっても、あいつは頑丈で絶対に死なないって知ってるから、もうぶん殴られても、矢が刺さっても、フィルムを飛び出しても、笑えるんだけど、ロジャーラビットが最初の一発で死んで、二度と生き返らなかったらあれは地獄絵図ですよ。
 まあ、だからカーズって見た目は子ども向けなアニメなんだけど、中身はすっごいリアルなドキュメンタリーやってんだよね。この前のトム・クルーズの映画とは対極にあるよね。
 そしてカーズシリーズのもうひとつのお決まりとして、ノスタルジーっていうのがある。私も所詮30年そこそこ生きてないからアレだけど、古き良きアメリカを一貫して描き続けているのは今回も変わらない。なんというか、すごい保守的なアニメなんだよな。

 新品よりもずっといい。

 どんなに歳をとった人にも、歳をとった分の過去があって、それぞれに悩みを抱えて生きている。よく思春期の子ども(や、大きなお友達)は、辛く苦しいのは自分だけだって思って、世の中や他人を恨んじゃったりするけれど、実は自分が特別なものと感じていた辛さって、客観的に見れば世の中の誰もが抱えていたりする。
 まあ、その克服の仕方は人によって違うから、自分自身で向き合わなければならないんだけど、なんにせよ、どんな人も一生懸命生きているわけだ。すごい当たり前のことなんだけど、当たり前すぎてつい忘れてしまう。
 今回はレスキューヘリの隊長の過去がクローズアップされるんだけど、この設定(※元あぶ刑事)が、ね。また、いいんですよ。
 クリエイターの作るものって人を感動させるという意味では凄いけれど、結局のところ良くも悪くも虚構なんだよね。だから現実にすごい事件や災害が起きると、ひどく狼狽しちゃって変なボランティアとかに目覚めちゃう。
 クリエイティブな力って割と特殊な才能みたいなところもあるから、勘違いしちゃうこともあるんだろうけど(作家って子どもっぽいナルシスト多いからね)、いかんともしがたい現実を目の当たりにすると、やっぱり自分たちのやってることは現実には遠く及ばないってことを痛感しちゃうんだと思う。やなせたかし先生じゃないけど、虚構でお腹のすいている人を幸せにはできない。
 プレーンズのスタッフも実際のレスキュー隊を取材して、そんな風に思ったんじゃないか。そして実際の火災に対して実際に行動ができる彼らの勇気を賞賛した。
 だから、現実を仕事にする人と虚構を仕事にする人を作中でつなぐ存在があの隊長なんだと思う(虚構の象徴がレースで人を感動させるダスティかも)。実際はわからないけどね。私は、もう、絶対そうだ!って勝手に感動してたけどね(^_^;)
 
 昔は命を助ける芝居をしてたのに、今は本当に命を助けている。

 さて、前作はダスティの紙飛行機が入場特典としてついたんだけど、今回はカーズシリーズの玩具のチラシだった。映画館を出たあと街の反対側にあるトイザラスに向かったのは言うまでもないんだけど、カーズシリーズのトミカがなにげに充実していてすごい。プレーンズなんて各国代表まで作っている・・・
 しかし!私が大好きなジャストミート福沢が売ってない!タカラトミーの皆さんダレル・カートリップの商品化いつでも待ってます!(※実況勢を出してこそのカーズ)「イエイ!いやっほう!マックイーンの走りはまるでスタントカーのようだ!!」
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