ケッペンの気候区分について

参考文献:山本正三、内山幸久、犬井正、田林明、菊地俊夫、山本充著『自然環境と文化 世界の地理的展望』

ウラジミール・ペーター・ケッペンはドイツの気候学者で、植物は気温に極めて敏感で、移動が少ないことから、植生分布に基づいた世界の気候区分を、1923年に完成させた(論文としては1928年)。
ケッペンは、緯度が低い順に気候をA→B→C→D→Eの5段階に分け、そのうち樹木が生育する気候をACD、難しい気候をBEとした。

A熱帯気候
とても蒸し暑い。
もっとも寒い月の気温が18℃以上。つまり一年中暑い。
熱帯の土壌は1億8000万年前くらい昔から同じ場所にあったものが多く、ジュラ紀あたりから現代に至るまでつねに高温と多雨によって風化され続けられたため、地力が乏しい。
700mの深さまで風化されてしまった地域もあり、当然植物の根はそこまで届かない。
代表的な土壌はラトソルで石英以外の造岩鉱物は完全に分解、ミネラルも乏しく酸化鉄や酸化アルミニウムくらいしかない。ただ水はけ(排水性)はいい。
ラトソルの下にはプリンサイトという赤白の網状斑のある層があり、上部の土層が侵食され、これがむき出しになると、直射日光で硬質化し農耕が全く出来なくなってしまう。
このような貧弱な土壌にジャングルが乗っかっているのは、大量の落ち葉がシロアリや細菌によって急速に分解され、樹木の細かい根っこや菌類によって急速に吸収されるためで、その肥料はほとんど土壌にまで蓄えられない。
熱帯雨林が簡単にまるハゲにできるのはそのため。一度焼いてしまった森林の回復は極めて困難なのである。

熱帯気候は以下の三つに分けられる。

Af熱帯雨林気候
fはドイツ語で「湿潤な」という意味のフォイヒトから。
スコール(熱帯特有の夕立)などとにかく雨が降る。一年中降水量が多いため密林ができる。仕方ないのよ。そのへんが魔境ならではなのよ。
南米の25%以上はセルバ(ポルトガル語で大森林)で、アフリカの20%がジャングル。世界最大の熱帯雨林現存地域はダントツブラジルにあるといってもいい。熱帯雨林の生物量はなんと9億トンで、全世界の約半分に匹敵する。
単一の優勢種が生態系を独占することはなく、多様な生物種がとても複雑に共存している。
赤道直下に多い。赤道は空気が暖められて上昇気流が発生しやすいので気圧が下がり(赤道低圧帯)そのため降水量も多い。
ちなみに赤道は南米だとブラジルの上の方、アフリカだとほぼ真ん中を横切る。

Am熱帯モンスーン気候
mはドイツ語で「中間の」という意味のミッテルから。
熱帯雨林を時に凌ぐほどのえげつない雨が降るが、冬季には大陸側からの季節風モンスーンの影響で弱い乾季がある。
インド南西岸や、インドシナ半島沿岸部、アフリカギニア湾沿岸部、ブラジルのアマゾン川下流地域などに存在。熱帯雨林の沿岸部にチョコチョコあると考えていい。割と影が薄い。

Awサバナ気候
wは「冬」という意味のヴィンターから。冬に乾燥するということ。
アフリカの野生動物のドキュメンタリーなどでわかるように雨季と乾季が明確に分かれている。そのためシマウマやヌーは大移動する羽目になる。
ケニアでは春に大量の雨が降り(5月が最も降る)、夏休みや正月にはあまり降らず50mmを下回る。
サバナとは「疎林」の意味で、密林の対義語。背の高い草原にまばらに低木が存在する。
南米ではサバナを別の言葉(北部はリャノ、中央部はグランチャコ、中央部東はカンポセラード)で言い換えるが、同じもの。
中緯度高圧帯に存在。南米の40%弱がサバナである。
ユーラシア大陸や北米にはほとんどない。

B乾燥気候
全然雨が降らない。
とはいえ全ての乾燥気候が全く降らないってことはないので(雨季のあるステップなど)、乾燥限界降水量を計算して、その地域の降水量が乾燥限界を下回ったとき、乾燥気候に認定される。

夏季乾燥型地域の乾燥限界(mm)=平均気温×20
年中湿潤型地域の乾燥限界(mm)=20×(平均気温+7)
冬季乾燥型地域の乾燥限界(mm)=20×(平均気温+14)


誤差があるけれど乾燥地域はだいたい年間降水量が500mmを下回る。もちろんほぼ0もあり。気温の年較差、日較差が非常に大きく、夏は熱帯を凌ぐほど厚いが、冬は平均気温が20℃を下回りかなり涼しい。オーストラリアとアフリカに多い気候。

乾燥気候は以下の二つに分けられる。

BW砂漠気候
Wはドイツ語で「砂漠」を意味するヴューステから。
年間降水量が乾燥限界の半分にも満たない。
砂漠によっては10年以上まったく雨が降っていない場所がある。
気温の日較差がめちゃくちゃ激しい。サハラ砂漠では夜になると氷点下になる場所がある。
風化が激しく、山地に大規模な扇状地が形成、浸食が進むと山地は縮小、山地前面にはぺディメントというゆるやかな斜面ができる。
しかし山地自身は浸食が進んでも勾配はあまり変化せず、アメリカのモニュメントバレーのような地層が水平に重なっている場所では、岩石が垂直に削られるためテーブル上の地形(でかいのがメサ、小さいのがビュート)ができる。
しかしオーストラリアやサハラ砂漠、カラハリ砂漠といった先カンブリア時代からの安定陸塊は非常に硬い岩石や古い火山以外はすべて浸食され、平地化されてしまっている。
低地には極めて勾配が小さな盆地がたくさんあり、その一番低い場所には大雨が降った際、水がたまる。これをプラヤといい、その表面にある塩類の地層は岩塩として砂漠の交易品となっている(砂漠の土壌は塩類集積が進みアルカリ性が強い)。
また、豪雨によってできた河谷の水がすべて乾燥するとワジという地形になる。ワジはかつては隊商路として利用された。
砂漠とは、「不毛、見捨てられた地」という意味のデザートを翻訳した言葉だが、漠(果てしない)砂と漢字では書く割に、砂の砂漠(エルグ)はあんまりない。北アメリカで1%、サハラ砂漠で20%以下、アラビア砂漠で30%、最も多い中国で45%。
石がゴロゴロしている荒野の方が砂漠(ハマダ=礫砂漠、岩石砂漠)としてはメジャーだといえる。つまり極めて乾燥していて水がなければ砂漠なわけで、全陸地面積の20%を占める。
オーストラリアの30%、アフリカの25%、ユーラシア大陸の10%が砂漠。

砂漠は以下の四つのタイプがある。
①亜熱帯砂漠(回帰線砂漠)
中緯度高圧帯にできる砂漠。下降気流によって乾燥した風が吹くので降水量が少なくなる。しかも亜熱帯は暑いので水分の蒸発量も大きい。
代表例はサハラ砂漠。

②内陸砂漠
海から遠い(隔海度が高い)ので乾燥する。
やや緯度が高くても存在する。タクラマカン砂漠やゴビ砂漠。

③冷涼海岸砂漠
普通海岸は湿度が高いのだが、沖合いに寒流が流れている場所は空気が冷やされて上昇気流が発生せず、そのため降雨が起きない。しかし他の砂漠に比べて適度に湿度がある。
チリのアカマタ砂漠、アフリカ西岸のナミブ砂漠。

④雨陰砂漠
高い山から乾燥した空気が吹きつけられること(フェーン現象)で乾燥する。
ロッキー山脈東(風下)のグレートプレーンズ、アンデス山脈東(風下)のアルゼンチンパタゴニア地方。

ちなみに砂漠と砂漠化は直接は関係のない現象。
砂漠化とは、乾燥・半乾燥地域において気候の変動や人間の活動によって土地がさらに乾燥し、生産力が低下し、砂漠のような状態になってしまうことで、サハラ砂漠のような、そもそも土地利用ができない場所では砂漠化は起こらない。

BSステップ気候
Sはドイツ語で「ステップ」を意味するステッペから。
年間降水量が乾燥限界に満たないが、それでも乾燥限界の半分以上はある場合は砂漠ではなくステップに分類される。年降水量は250~500mm。
ステップには短い雨季が存在するため、背丈の低い草原が広がっている。
ステップ地帯の土壌は栗色土で、灌漑で水をひけば農耕可能。
また降水量が多いステップの土壌は黒土で大変肥沃。ロシアやウクライナのチェルノーゼムや、アメリカのグレートプレーンズ、アルゼンチンラプラタ川流域のパンパなどに見られる。
雨温図の見た目は温帯冬季少雨気候に似ているが、温帯冬季少雨気候の降水量はステップの二倍以上ある。
世界各地にわりとバランスよく分布しているが、砂漠同様もっとも多いのがオーストラリアの25%、ついでアフリカの21%。

C温帯気候
最も住みやすいマイルドな気候。
森林や混合林、草原が広がる。土壌はプレーリー土や褐色森林土。
最も寒い月の平均気温が-3℃以上18℃未満。

温帯気候は以下の四つに分けられる。

Cs地中海性気候
sはドイツ語で「夏」を意味するゾンマーから。
その名の通り地中海の気候。ヨーロッパ以外にも北米、南米の西海岸、アフリカ、オーストラリアの南海岸に点在。緯度が30~40度あたり。
夏に乾燥し、冬に湿潤。暖かい赤道低圧帯が季節によって移動するため夏に乾燥する。
雨温図で夏にほとんど雨が降らなくなるのはこれくらいなので見つけやすい。
乾季にブドウやオレンジ、オリーブなど、冬に麦を育てる地中海式農業を行なう。

Cw温帯冬季少雨気候(温帯夏雨気候)
夏に降水が多く、最も雨が降る月の降水量が、最も雨が降らない月の降水量の10倍。
夏の気温はかなり高く30℃を超えることもある。また夏には300mmもの雨を降らすが、夏以外雨はほとんど降らない。すごい極端。
意外とアフリカの割合が多く、アフリカの13%が該当する。

Cfa温暖湿潤気候
日本やアメリカ合衆国東海岸。
Cfは降水量が多いが、Cfaは夏の気温が高く蒸し暑くなる。
一年中雨が降っているが、とりわけ夏から秋が多い。
また気温の年較差が温帯で最も大きく、四季がはっきりしている。

Cfb西岸海洋性気候
一年中吹く偏西風や北大西洋海流の影響で、夏でも涼しく、冬は暖かい。
一年中降水量が50mm前後で変化しない。
イギリスや西ヨーロッパが該当するが、これらの国は衣替えの概念が存在しないことがある。ほかにもカナダ西岸、チリ南部、オーストラリア東南部、ニュージーランドなど。

D冷温帯気候(亜寒帯気候、冷帯気候)
最も寒い月の平均気温が-3℃未満で、最も暖かい月の平均気温が10℃以上。
北米の半分、ユーラシア大陸の25%が冷帯。ほかの地域にはほとんど存在しない。
土壌はポドゾルというやせた土で、水溶性の塩基性物質が雨によって下層部に流れ出たため強い酸性を示し保水力が極めて悪い。色は灰白色(ポドゾルはロシア語で「灰のような土」という意味)。農業をする場合は石灰をまいて中和するとともに、有機&無機肥料の投入が欠かせない。
タイガという針葉樹林帯が広がり、針葉樹の葉は硬く、防水性のある分厚いクチクラ層に覆われているため、寒さが厳しく降水量の少ない地域でも優勢となっている。

冷温帯気候は以下の二つに分けられる。

Dw亜寒帯冬季少雨気候(冷帯夏雨気候)
夏の最多月降水量が、冬の最小月降水量の10倍以上。つまり乾季が存在する。
夏は何気に気温が高く日中40℃に達する場所もある。この短い夏にカやアブが大量発生し、家畜や人間に襲い掛かる。年較差のギャップが最も激しい。
シベリアの東部。

Df亜寒帯湿潤気候(冷帯多雨気候
Dw以外。著しい乾季が存在しない。一年中雨か雪。
冷帯気候はほとんどこれ。年較差も大きいが、亜寒帯冬季少雨気候には及ばない。

E寒帯気候
とても寒い。
もっとも暖かい月の最高気温が10℃未満。つまり夏だろうが一年中寒い。
寒帯気候は以下の二つに分けられる。

ETツンドラ気候
最も暖かい月の気温が0℃以上。
短い夏でも気温が10℃に届かず、ぎりぎりコケのような地衣類が生息。
植物の残骸も分解しきらないので、そのまま堆積して泥炭になったりする。
シベリアやカナダの北部、グリーンランド南部。
土壌は永久凍土で、水はけは最悪で強酸性。

EF氷雪気候
FはフロストのF。最も暖かい月(夏)の気温でも0℃未満。
氷が溶けないので植物が存在できない。雨もほとんど降らない。
南極のほとんど。

間帯土壌
気候に関係なく分布する土壌のこと。
石灰岩が風化したテラロッサ。バラ色でオリーブ栽培に適する。
玄武岩などが風化したテラローシャ。暗紫色でブラジルのコーヒー農場の土壌はこれ。
玄武岩が風化したレグール土。黒色で綿花の栽培に適する。インドのデカン高原。

まとめ
ユーラシア大陸:25%が亜寒帯。

アフリカ:25%が砂漠。20%がそれぞれステップ、サバナ、ジャングル(乾燥帯+熱帯)

北米:半分弱が亜寒帯。

南米:36%がサバナ。25%がセルバ(つまり半分以上が熱帯)

オーストラリア:30%が砂漠。25%がステップ(つまり約半分が乾燥)
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