化学概論覚え書き①

 みなさんお元気ですか。私はぼちぼちです。最も苦手意識があり、単位が取れるかどうか不安だったケミカル概論ですが、大学のテキストが専門書というか雑学本で、すごい面白くて(著者の科学技術や環境問題に対する思想も全く同感!)有意義な読書の秋を楽しんでいます。
 さて、読書といえば、文化祭の古本市でデューイとかイスラームとか朝鮮半島とか、ユダヤの歴史とか10冊くらい古本を買っちゃったので、それも読みたいところですが、今週末にバイオロジー概論の単位修得試験がやってくるのをすっかり忘れていて、受験票が届いてアタフタしています。まさにバイオハザードです。

参考文献:井上祥平著『はじめての化学―生活を支える基礎知識―』

 初めてのことだけど、参考文献についてちょっとだけ紹介。
 物質についての科学であるケミカルを、あくまでも身近な生活をささえる産業技術として分りやすく紹介。本書に取り上げられる内容は、衣服からはじまり、住居や容器、食品、医薬品、エネルギー、環境問題、はたまた情報技術!まで非常にレンジが広い。
 高校などの化学の教科書では、単純な構造の物質から複雑な構造の物質という順番で教えていくので、日常生活とのつながりがわかりにくく、睡眠学習突入だが、本書では第2章でいきなりナイロン糸から話が始まるので、ああ、あれね!と親近感が半端ない。
 そして私たちは一本の糸のことすらよく分かってなかったんだ・・・と目からウロコの連発。さらに難しい化学反応式や構造式はほとんど掘り下げず、まあ大体こんな感じとサラッと流しちゃうのも男らしくて良い。
 自然科学の単位ではトップクラスに面白かった本なのでオススメです!

藍染め
そもそも色とは可視光線の波長の長さによって決まるが、その波長は、物体色の場合、光が当たった物質が特定の波長の光を吸収し、それ以外の波長の光を反射することによって決められる。
衣服の材料として使われている絹や羊毛や木綿、ナイロンは、もともと無色かほとんど色のない物質なので、染料によって着色をする。

古来から、糸や布を染めるためには植物の色素が用いられてきたが、葉を鮮やかな緑色にする色素のクロロフィルは、すぐに分解して黄褐色になってしまうため染料にはならなかった。そこで、植物の染料として古くは奈良時代から用いられてきたのが藍である。
藍染の場合は、その染料の色素が藍色であり、このとき黄色の光を吸収し、藍色の光を反射するため、私たちの目には藍色に見える。

しかし、藍染めの染料の原料であるインド原産の植物、タデアイの葉は緑で藍色ではない。
実はタデアイの葉の中にあるインディカンという無色の水溶性の物質が加水分解されると、インドキシルというグルコースができ、そのインドキシルが酸化されることで、青色の色素のインディゴになる。
この一連の反応は、タデアイを刈り取りそれを刻んで、天日乾燥し葉のみを集めて、それに水をかけて発酵させることで進んでいく。こうして約100日ですくもという保存が効く藍の染料が出来上がる。

藍の成分のインディゴは不溶性だが、アルカリ還元状態(水素と化合すること)で水に溶けるインディゴロイコになるため、かつては葉の醗酵菌、今では還元剤を用いてインディゴを還元させている。
インディゴロイコはアルカリ性の水溶液によく溶ける黄色い物質である。このインディゴロイコが溶けた溶液に布や糸を浸したあと、それを引き上げ、空気に触れさせる(酸化させる)ことでインディゴに戻し、藍染めが行われる。
ちなみにロイコ化合物の「ロイコ」とは「白」という意味で、その還元型に無色が多いことに由来している。

現在では、インディゴも茜染めのアリザリンも簡単な原理で合成できる。二重結合と単結合が交互に長くつながった構造の分子を作ればいいので、アシッド・レッド1のような人工的な合成染料もたくさん生まれている。

プラスチック
金属やセラミクス(無機物を焼いたもの。陶磁器)に比べてプラスチックはずっと柔らかく、ポリエチレンのフィルムはどんな形状にも変えられる。
セラミクスで最も硬い水晶と、プラスチックのポリエチレンを化学的な構造で比較してみると、水晶(二酸化ケイ素SiO2)はケイ素原子と酸素原子の共有結合で出来ており、ひとつのケイ素原子を中心に四面体があり、その頂点には4個の酸素原子がある。
一方のポリエチレンでは、炭素原子と炭素原子、炭素原子と水素原子の共有結合で出来ていて、ひとつの炭素原子を中心に四面体があり、その頂点には二個の炭素原子と二個の水素原子がある。
このように、水晶とポリエチレンの化学的な構造は非常によく似ている。

しかし、水晶が、それを構成する酸素原子に二個の結合部があるために、全体として巨大な網目構造になり、小さい力では分子の形に変化が起こらないのに対して、ポリエチレンのフィルムでは、それを構成する水素原子にたったひとつの結合部しかないために、線状の分子の集合体になり、この分子の形はわずかな力で変えられるために、プラスチックは軟らかいのである。

ちなみに、プラスチックを燃やすとダイオキシンが出るのでヤバイというイメージがあるが、これは別にすべてのプラスチックではない。
ダイオキシン類には必ず塩素が含まれているため、塩素を含まないプラスチック(ポリエチレン、ポリスチレン)を燃やしてもダイオキシンは発生せず、一般化するのはとんでもない間違いである!・・・と井上祥平さんが言ってた。

3大栄養素の生理的燃焼値
3大栄養素とは人間が食べる食べ物の中でエネルギー源になる糖質、脂質、タンパク質の三つの栄養素のことで、このうち糖質と脂質は、すべて炭素と水素と酸素の三種類の元素で作られているため、どちらも最終生成物は二酸化炭素と水になり、発生するエネルギー量もほぼ等しい。
しかしタンパク質は、炭素、水素、酸素の他に窒素も含まれているので完全燃焼させると一酸化窒素や二酸化窒素が生じるのだが、生体内ではタンパク質は完全燃焼せず、尿素、尿酸、クレアチンなどの窒素化合物が作られ、最終的に尿として排出される。
つまり、タンパク質の場合は、物理的に完全燃焼させて発生するエネルギーよりも、生体内で酸化還元されて発生するエネルギーの方が小さくなる。
さらに、タンパク質に限らず、摂取した栄養素は100%消化吸収されるわけではないので、物理的な燃焼値を補正する必要がある。このとき算出された燃焼値を生理的燃焼値、もしくはアトウォーター係数という。
これによると

糖質は4キロカロリー/グラム
脂質は9キロカロリー/グラム
タンパク質は4キロカロリー/グラム

となる。
したがって、糖質25グラム、脂質30グラム、タンパク質20グラムからなる食品があった場合、そのエネルギー含量は、4×25+9×30+4×20=450キロカロリーとなる。

食品添加物
食品添加物にはいくつかの目的がある。

①食品の製造に必要なもの
②食品の栄養価を保つのに必要なもの
③食品の保護に必要なもの
④食品を魅力あるものにするため必要なもの

①の代表は乳化剤と增粘安定剤である。牛乳は水と乳脂肪が混ざったものだが、このように本来は混ざらない水と油を分離させずに保つのが乳化剤である。
增粘安定剤は食品を粘っこくしたりゼリーを作るときに用いられ、天然のペクチンや合成物のアルギン酸ナトリウム(どちらも炭水化物)がある。このように食品添加物がないと製造できない食品は多い。

②については、アミノ酸、ビタミン、ミネラルを添加した食品がたくさんあるが、その理由には、食品の製造や加工で失われた栄養分を補ったり、ゆっくり食事が取れない忙しい人の栄養バランスを保つため、などが挙げられる。飽食といわれる現在の食生活の裏側である。

③は食品の流通・消費に関わることで、大量の食品をなるべく生に近い状態で、一定期間保存するために用いられている。
無添加で保存期間が少ない食品を長期間保存するためには、細菌の発生を抑えたり、油脂の酸化を防ぐことが必要だが、これを酸化防止剤や、保存料、殺菌剤、防カビ剤などの食品添加物が担っている。

④には、食品の味を魅力的なものにする甘味料や調味料と、食品の見かけをよくする着色料や漂白剤、発色剤の二種類がある。

以上が食品添加物の役割、メリットだが、当然デメリットも存在する。
ひとつめが、素材本来の香りや味ではなく、化学調味料の人工的な味に味覚が慣れてしまうこと。
ふたつめが、安全性である。食品添加物の使用については各国で制限がかけられているが、その基準も絶対に安全だとは限らない。
例えばハムやソーセージの発色をよくする亜硝酸塩(NaNO2)は、食物に含まれるアミンと反応して発ガン物質のニトロソアミンになるため、亜硝酸塩の使用基準と残存料は厳しく定められている、またニトロソアミンの生成を抑えるためにビタミンCが必ず同時に使われている。
しかし、体内の酵素反応でもニトロソアミンは発生し、さらに肝臓で分解されることも分かっているので、パッとしない色のハムやソーセージを食べるか、見栄えのいいハムやソーセージを食べるかは消費者個人の判断となってくる。

整腸剤
胃酸は塩化水素が主成分で、肌を火傷させたりコレラ菌を殺菌するほどの強酸性を示すが、胃の表面はアルカリ性の胃粘液に覆われているので、胃のペーハーは中性に保たれている。
しかし刺激物やストレスなどが原因で、胃酸の分泌量が増えすぎると、胃痛や胸焼けを感じてしまう。
この時、服用するのが、炭酸水素ナトリウムや水酸化マグネシウムなどのアルカリ性の物質が主成分の整腸剤で、過剰に分泌された酸を中和し、胃痛を和らげる。

炭酸水素ナトリウムの整腸剤は吸収性制酸薬に分類され、胃酸を急速に中和するが効果の持続時間は短い。
また、中和に使われなかった余りの成分が体内に吸収され、代謝性アルカローシス(血液や体液のペーハーバランスがアルカリ性に傾くこと)が起こる。
さらに、中和時に発生する二酸化炭素(げっぷ)によって胃が刺激されて二次的に胃酸が分泌されたり(リバウンド現象)、胃が膨張することによって胃潰瘍が悪化する可能性もある。
以下は炭酸水素ナトリウムの整腸剤を服用した時の化学反応式である。

NaHCO3(整腸剤)+ HCl(胃酸) → NaCl + H2O + CO2(げっぷ)

水酸化マグネシウムの整腸剤は非吸収性制酸薬に分類され、吸収性制酸薬と比べると効果は穏やかで、胃酸の分泌を中和しペプシンの作用を和らげ、胃の表面を保護する。
副作用としては、吸収阻害や便秘になる可能性がある。また体内に吸収されないので尿がアルカリ性になる。
以下は水酸化マグネシウムの整腸剤を服用した時の化学反応式である。

Mg(OH)2 (整腸剤)+ 2HCl(胃酸) → MgCl2 + 2H2O

ブレンステッド=ローリーの酸塩基理論では、酸性とは水素イオンを与える物質、アルカリ性とは水素イオンを受け取る物質であると定義されている。
つまり中和反応とは、酸からアルカリへ水素イオンの移動が起こることで溶液が中性となり、塩と水の生成物ができる反応を言う。

ペニシリン
ペニシリンはフレミングによって世界で初めて発見された抗生物質の一種で、風邪をこじらせた際などに、飲み薬として処方されたり、点滴と一緒に投与される。抗生物質は微生物が作り出し、ほかの微生物の生育を阻害する物質のことである。
ペニシリンはアオカビの一種ペニシリウム・クリソゲナムが作り出し、ブドウ球菌などの病原菌の細胞壁を作るのに必要な酵素を阻害して殺してしまう。高等動物の細胞にはこのような酵素はないので人間に対しては毒性はない。
ペニシリンは細菌(病原微生物)による感染症に対して素晴らしい効果を発揮してきたが、長いあいだ使っているうちにペニシリンに抵抗できる耐性菌が現れた。
これに対して、化学的な合成によってペニシリンの分子構造を一部変えたものが半合成ペニシリンである。
例えばメチシリンは天然のペニシリンをもとに作られた半合成ペニシリンである。
しかし、メチシリンにも耐性のある黄色ブドウ球菌(MRSA)が現れ、病原菌と抗生物質の戦いはいたちごっこになっている。
ペニシリンには、フレミングのようにアオカビ培養液から精製した天然ペニシリン、アオカビの培養液に別の原料を人為的に加えて、それをアオカビに合成させたものを精製した生合成ペニシリン、天然ペニシリンや生合成ペニシリンをもとに化学的な構造を変化させた半合成ペニシリン、すべてを化学的に合成した全合成ペニシリンがあり、同じ抗生物質を長期間使わないようにして耐性菌の出現を回避することが必要である。

半導体
現代の電子機器の核となる物質がシリコンの結晶などの半導体である。シリコンの構造はダイヤモンドと同じく、シリコン同士の共有結合(電子を共有する結合)でできた巨大な網の目である。
しかしシリコンの結合は、ダイヤモンド(炭素)の結合よりも少し弱く、結晶の一部は結合が切れている。この部分では電子は動けるので、シリコンは導体でも絶縁体でもない、ある程度の導電性を示す。もう少し正確に言うと、結合の切れた部分が隣へ隣へと移ることで結果的に電子が移動する。
半導体の興味深く、重要な点は微量な不純物を加えることで導電性が大幅に変えられるということである。もともとはシリコンの導電性を調べている時に再現性が乏しく、それが微量の不純物によるものであることがわかったのだが、今ではあえて不純物を加えている。

シリコンに加える不純物は周期表の族番号でシリコン(14族)の左隣り(13族)か、右隣り(15族)の元素である。
13族の元素(例えばインジウム)はシリコンよりも結合に関係する電子の数(電子価)がひとつ少なく、14族の元素(例えばアンチモン)はシリコンよりも電子価がひとつ多い。
したがってシリコンの中にアンチモンを加えると、その場所では電子がひとつ余ることになる。これが自由電子となり電気が流れやすくなる。
逆に、インジウムを加えると、その場所では電子がひとつ不足することになる。このような場所は正孔と呼ばれる。正孔はいわば電子が抜けた穴で、そのために電子が入りやすい。
正孔の隣りの原子にあった電子が正孔に移動すると、隣りの原子の場所が正孔となるため、正孔の移動は、電子の移動であると考えられる。
こうして半導体は伝導性を上げることができる。

ちなみに、正孔を持つ半導体をp型半導体(ポジティブ型半導体)、電子を余計に持つ半導体をn型半導体(ネガティブ型半導体)という。この二種類の半導体を組み合わせて、電子機器に必要な素子、ダイオード(交流を直流に変換する際、電流を一方通行にする素子)やトランジスタ(回路のオンオフを切り替える素子)が作られる。
ラジオやテレビでは、音や光を変換した信号を電波として発信し、ここから必要な信号を選んで(同調)、元の信号を取り出し(検波)、増幅して、音や光の形に戻しているが、このとき、検波や増幅のような働きをするのが半導体である。
ダイオードでは微弱な電流で大きな電気回路のスイッチを入れることで、電気信号を増幅している。

半導体に使うシリコンは高純度である必要があり、不純物を加える前に不純物があってはならないので、原材料のケイ砂(石英=二酸化ケイ素)を炭素で還元して、純度98~99%のシリコンを作る。
また、シリコンから不純物を取り除くことは固体の状態では難しいため、還元したシリコンを塩化水素と反応させて液体のトリクロロシランにしたあと、これを蒸留させることで不純物を取り除き、最後に水素と反応させ高純度のシリコンが手に入る。
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