アーロと少年

 「面白い度☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 怖くないと言ったか。怖いから戦ったんだ。

 ピクサーは『モンスターズ・ユニバーシティ』の次の2014年に作品を発表できなかったんだけど(プレーンズは別枠)、本来はこの映画(ザ・グッドダイナソー)が公開される予定だったらしい。
 去年は某映画によっていろいろと凹んでいたんだけど、この映画でちょっと中和できたなら、公開時期が遅れてもよかったかな、と。
 古代の動物が人間の子どもと旅をするっていうことで、『アイスエイジ』と設定が似ててどうなるんだろ、と思ってたけど、まさかの大草原の小さな家。
 カウボーイティラノサウルスがかっこいい。走り方も馬のだく足みたいなんだもんw意外とそれが違和感無かったっていうね。
 ピクサーってロジカルな脚本で勝負する印象があるけど、今回はもう、実写と見まごうばかりの美しく雄大な大自然の描写に圧倒される“画”で見せる映画。多分脚本のテキスト量としてはピクサーで最も少ないんじゃないか。言葉はいらねえんだみたいな。

 で、メリダの時も思ったけど、ピクサーってミドルエイジクライシスに悩む大人が主人公のことが多いけど、メリダやアーロみたいな子どもを主人公にする場合は、ロジックを捨てて女性的な感性で映画を組み立てているよね。
 メリダの時は中世だったけど、今回は先史時代ってこともあってシンプルな作風がうまくマッチしていたんじゃないかなあ。
 それにアパトサウルスやティラノサウルスは広大なアメリカの荒野から見つかっているわけで、絶滅をまぬがれて文明を作っていたという設定でもニューヨークで金融をやっている恐竜っていうのはちょっと違和感があるしね(^_^;)だからこその農業・牧畜文明だという。

アーロ
小さくてひ弱なアパトサウルスの少年。恐竜なのに臆病、しかもカミナリ竜なのに雷が怖いっていう。リトルフットとかディズニーのダイナソーとうまくかぶらないようにしたんだろうな・・・
顔のデザインがカーズのメーターに似ているという指摘があったが、父親は更に似ていたという(マキバオーにも)。つーかパパはプロポーションがアパトサウルスっていうよりはカマラサウルスとかのマクロナリアっぽかった。

スポット
人間の子ども。この映画では恐竜は言葉をしゃべるが、彼は唸ったり吠えることしかできない。
とはいえ狼少年的な境遇だから言葉が喋れないって感じがする。最後の人間のファミリーは普通に会話してそうだったしな。
イヌをイメージしてキャラを造形したらしいが、大きなカナブンを主人に持ってくるところなどはちょっとネコっぽかった。いらねえよっていう。

フォレスト・ウッドブッシュ
スティラコサウルスに似た角竜。サルトル的な斜視。ディスイズ“夢なんて諦めよう”という、夢なんて諦めさせてくれる動物(他いろいろ)を角の上に乗せている。

ブッチ
ブル・Tレックス。松重豊さんの声がドハマり。メチャ渋い。本国では西部劇の大御所が声を当てているに違いない。
こういう恐竜がしゃべる映画だと、大型肉食恐竜って主人公らを食べようとする悪役になりがちだけど(リトルフットのシャープトゥースとか)、彼らもカウボーイ文明を築いているので草食恐竜と割と共存しているという。ステゴサウルスとはうまくやれてないらしいけど。
中生代って確かに割と哺乳類も大型の奴いたんだけど(レペノマムスとか)バッファローなどの新生代以降の哺乳動物も共存しているからね。
こういうのって恐竜が滅んでこその動物だと思うからちょっと違和感はあるけどね、まあ人間がいるならいるわな。

バブハ
牛泥棒。なにげに結構強い羽毛恐竜。別名ランドール・ザンダップ・ラプトル。嘘。

イナズマドカン
おそらくニクトサウルス。なんにせよ翼竜。やなやつ。
この映画では小型で知恵の回るタイプの動物が凶暴で怖い。
恐怖心を欠落させ、雷のお告げで弱い動物を餌食にする彼は、アーロが乗り越える恐怖の象徴なんだろう。まさか雷雲自体を倒すわけにはいかないしね。

 しかし、こうやって振り返ると、この映画ってキャラが少ないよね。背景は超写実的で広大だけど、そこに暮らす生き物は簡略化されていてわずかっていう、対比。
 これってほとんど荒野のアメリカ大陸に生きるアメリカ人の自然観なのかもしれないよね。自分たちは、この大陸にとっては所詮はよそ者っていう。日本みたいに狭いところに鮨詰めになって暮らす私たちには、ちょっとさみしいな、厳しいなっていう。
 ただ、自然災害の受け止め方とかは通じるものがあるのかもしれないな。日本では3月11日の翌日公開っていうのも何かあるよね。

 怖さを受け入れろ。自然と一緒だ。逃げも逆らいもせず、乗り越えていくんだ。
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