『俺ルール!自閉は急に止まれない』

 著者は翻訳家のニキ・リンコさん。「自閉っ子の行動にはこんなに“浅いワケ”があるのです!深読みをやめれば、わかりあうヒントになる」の帯が秀逸w

 本書では「自閉っ子」と書いてあるけれど、ここで取り上げられているのは、自閉症の中でも知的な遅れを伴わないタイプ、いわゆるアスペルガーで、ニキさんも30代でアスペルガーだと診断され、この本はその実体験を綴ったもの。
 アスペさんの苦労や葛藤、認識傾向が、まるでさくらももこエッセイ的に、さっくり読めてしまうが、意外と自閉症の人の見えている世界を深く考察したチャプターもあって、勉強になる。脱力系の文章&イラストに騙されてはならない。
 小学校の頃に水やり係に任命されて、雨の日にも外で律儀に花に水をやっていたエピソードは、微笑ましいようにも思えるが、当事者にとっては深刻な問題なのかもしれない。とにかく、支持や命令を額面通りに受け取って例外に臨機応変に対応できないアスペルガーの大変さがわかる。
 しかも当人の気質は、決して真面目に仕事に取り組むタチじゃないっていう。気質(なまけもの)と障害の特性(マジメ)が一致していないという。これは辛いよな。

 こちとら、好きでりちぎに行動とってんじゃないやい。
 応用力がないおかげで、しかたなく、ハイパーりちぎな行動パターンに閉じ込められているだけなんだからね。
 それに、私はちょっともりちぎ者じゃないもん。(53ページ)


 しかし、これって周囲の人も大変だよな。ファジーじゃないことのほうが現実では少ないわけで、となれば、アスペさんがすべてのファジーに適応できないというわけでは決してないということになる。
 したがって、ニキさんは雨の日に水やりに行っちゃったけど、別のアスペさんは「水やりは基本的には毎日するんだけど、雨の日はしなくていいよ」ってあらかじめ指示したら「当たり前だろ、バカにしてんのか!」って怒り出す可能性もあるってわけだ(今のニキさんにそういう指示をしても失笑されるか、気を悪くされるだろう)。
 つまり、相手や事例によって、このファジーは大丈夫、このファジーは無理って違うわけで、これは正直かなりめんどくさい。まさに俺ルール!!
 だから、この人はアスペルガーだからと、一括りの対応はできないってことを肝に命じる必要がある。でも、これ対人コミュニケーションにおいてとっても重要なことなのかもしれないな。理解し合うということ。相手の俺ルールを。

 以下は興味深かった箇所。

 私はけっこういろんなことを知っていたと思う。自慢じゃないが、虫の名前と、会社のロゴなら、同級生に負けなかったはずだ。
 でも、「知ってること」と「知ってること」をつないでみることが少なかった。
 それで、応用がきかなかったんじゃなかろうか。(37ページ)


 きっと、自閉じゃないひとたちは、複雑な日常生活に能率よく対応するため、よく似たものどうしをざっくりとまとめたり、よく似たものをついでに思い出したりして、かしこく手抜きをしているんだろうと思う。(83ページ)

 本当はわかっていないのに、わかっていない状態をふつうだと思っているから、
 わかっていないことがわからなかった。
 これでは、「教えてください」とも言えない。
 (略)
 自分なりに考えて選んで、結果が思わしくなくても、
 「もっとじょうずな選択ができたのかも」という発想はわいてこなかった。
 自分なりに精いっぱい考えたんだから、これがベストの選択肢に決まっていると思っていた。
 「ベストの選択肢でもこの程度にしかならなかったってことは、選択肢のすべてがショボかったにちがいない」と思うか、
 「ベストの選択肢でもこの程度にしかならなかったってことは、私なんてどうせ、どんないいチャンスを与えられてもダメなのにちがいない」と思うか、
 解釈が両極端になってしまう。
 「本当はよくわからないまま選んでしまったのかもしれない」という可能性には、なかなか気がつかなった。(139ページ)


 そんな執着が生まれるのも、イチゴのいっこずつが「別のもの」に見えているからである。
 フランス料理のコースで、前菜のあとにいきなりデザートが出てきたら、だれだって怒ると思う。
 居酒屋で、ビールや枝豆のほかにいろいろおつまみを頼んで、おつまみがたくさん運ばれてきたのにビールがいつまでも来なかったら、やっぱり怒ると思う。
 イチゴは食べればどれもイチゴの味がするんだから、
 実質的には「前菜の次にデザート」「ビールが最後」みたいな損害は起こらない。
 それなのに、「順番がめちゃくちゃになった」かのように感じてしまう。(196ページ)


 現実では、そう簡単にはいかない。
 私の正面で同級生がふたり、けんかをしているとしよう。そこへ、後ろから別の同級生が近づいてきたとしよう。 
 後ろから来た同級生は、正面で進行しているけんかに関心があるかもしれないし、ないかもしれない。なんらかの反応をするかもしれないし、しないかもしれない。けんかしているふたりだって、もうひとりが来たことで、ふるまいを変えるかもしれないし、変えないかもしれない。
 これがけんかしているのが生身の同級生ではなく、テレビの中の艦隊士官とクリンゴン人であったならどうだろう?
 後ろから近づいてきたひとは、テレビの中のけんかの進行に影響を与える心配はない。「テレビの画面の外にいる」というだけで、「このけんかには没交渉の第三者である」ということが、たちどころに、かつ、確実にわかるのである。
 (略)
 テレビはわかりやすい。(242ページ)


 こんな感じで、アスペルガーの知識(だけ)オタクぶりや、常同性(同じパターンが繰り返されることを好む)、当事者意識のなさ(第三者的発言をしたがる)などの特徴が、的確かつ個性的な表現で、わかりやすく書かれている。
 そういや、東大生ってかなりの割合(4人にひとり)でアスペルガーが多いって話があるんだけど、どうだろう。とんでもない情報の丸暗記をしないと試験にパスできないわけだから、そういう人がたくさんいるっていうのはなんとなく納得はしちゃうよな。
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