先週の土日に東京の大学へ人生初のスクーリングとやらに行ってきました。自分が通っている大学には大きく3つのコースがあって、1つめがレポートを書いて、それに合格したらさらに単位習得テストを受けるというコース、2つめがスクーリングに参加して、さらにレポートを提出するコース、最後がスクーリングだけで単位が取れるコース。
で、今回の物理学実験はスクーリングだけのコースだったんですよ。だから私も、テストやレポートがないってことは、講義を受けるだけでわりと簡単に取れるんだろうな、とか呑気にワクワクしてたんですが、そんなぬるい希望は見事に初速度V0で吹き飛ばされました。まさに理系の洗礼!
レポートめちゃくちゃ書くっていうね。しかもそのレポートもテキストや講義をまとめるとかそういうもんじゃないからね。ガチの実験報告だからね!
実験室にヒントの冊子と実験器具だけ置いてあって、あとはお前らがチームを作って考えろっていう、リアル脱出ゲーム的な展開で、なんか思ってたのと違う!っていう。
なんかこう、実験の授業のやり方とか、生徒に対しての安全指導とか、そういうの教えてもらえるのかなと思ってたら、先生のお話は最初の1コマだけで、あとの時限はバックヤードに撤収。まさに利根川先生。「これで説明の全てを終わらせていただきます。ファッキンブチ殺すぞゴミめら(※言ってません)」みたいな感じで、ほとんど放置w
しかも、その最初のお話の内容も、小保方さんの論文データ改ざん問題から始まり、そこから研究者としての心構えとか、実験や論文に対する取り組み方とか、総じて理系研究職を対象とした研修的な内容で色々とガチ。理系甘く見てた。
おまえたちは皆・・・大きく見誤っている・・・この世の実体が見えてない。甘えを捨てろ。おまえらの甘え・・・その最たるは、今、口々にがなりたてた、その質問だ。
質問すれば答えが返ってくるのが当たり前か・・・?バカがっ・・・!とんでもない誤解だ。自然界というものは、とどのつまり、肝心なことは、何一つ答えたりしない。斜面を転がる金属球、木から落下するリンゴ・・・連中は何か肝心なことに答えてきたか・・・?
ホールマスターは耳の痛い激を飛ばし壇を降りた。同時に勝負の時を刻む時計が、その数字を減らし始めた。
ということで今週中に実験レポートを5つ形にしないといけないんですよ。つーか、このスクーリングの参加者って、言うまでもなくみんな理系学部出身者で、要は、学部時代に自分の専攻分野の単位だけで高校の免許を取得していて、社会人になってからさらに中学の理科の免許(※物理化学生物地学の四天王すべてを攻略しないともらえない)が欲しかったり、あと一番多かったのが、教員免許は持ってないんだけど、高校には理系なら理科の教員免許持っていなくてもやれる実習助手っていうポジションがあるみたくて、それをやっている人が、やっぱり教員免許が欲しいと、今回のスクーリングを受けているというパターン。というか、そういう人がほとんどだった。
つまり芸術系の参加者は言うまでもなく私だけでいろいろ浮いていた。このひと間違って参加しちゃったんじゃないの?みたいな。
そんな感じで理系参加者を前提にしたスクーリングだから、ワードやエクセルの数式や関数、グラフを使いこなせるのは当たり前ってことで、話が進んでるんだよね。
よって、こんなたわいもないトレース実験(実際に実測データが教科書通りになっているかどうかを確認する実験)のレポートの6つや7つ2日程度で書けるだろっていう。
とはいえ、このノルマは、ほかの参加者もゲゲッて顔していたから、かなりシビアなレベルであることは確かなようだ。
ちなみに、実験の種類は8つくらいあって、その中から各班ごとに6つの実験課題が与えられて、それをチームで取り組むんだけれど、当然班ごとにやれる実験とやれない実験があって、私の班に出された実験課題は・・・
①金属の強度(ヤング率)を調べる実験
②オシロスコープの使い方及び原理とリサジュー図形
③力学的エネルギーの保存の法則の確認
④電磁誘導現象の実験
⑤振り子による重力加速度の測定
⑥金属の熱伝導率のマスターカーブを調べる実験
・・・というわけで、ペットボトルロケットの飛距離の測定という楽しい神々の遊びができなかった。あと一番楽しみにしてた電子顕微鏡いじりもオペレーターが手配できなかったとかなんとかで、いじらせてもらえなかった(甘えを捨てろ)。でも原理的なものは最初の講義でちょっと教えてくれた。
以下は最初のお話のメモです。
・日本は実験を軽視する傾向がある。小保方さんは実験ノートをろくにとっていなかった。しかし現在は特許よりも実験ノートが重視される時代である。
・実験結果をまとめるだけで、そこから議論や考察ができないということは、自分の知識の水準が低いということを露呈していることになる。
・自然科学の研究手順は以下の4つ
①目的(アブダクション。見通しを立てる)
②方法(どうやれば調べられるか実験方法を考える)
③結果(実際に実験してデータを出す)
④考察(結果から規則性などを導き出す)
・学術論文は、以下の手順で作成される。
①問題意識の実証(データ取り)
②結果の考察(一番難しく長い苦しみが味わえる)
③論文に謝辞や参考文献を掲載(日本では謝辞をあまり書かない。またどこまでが自分で実証したデータで、どこからが他の研究データの引用なのかの脚注を小保方さんはおざなりにしてしまった)
④査読してもらう
⑤修正
⑥また査読
⑦学術雑誌に掲載(論文の反響であるインパクトファクターは日本の雑誌よりも欧米の雑誌の方が大きいので英語で論文は書けたほうが良い。物理学の業界では『フィジカル・レビュー』誌のインパクトファクターがとてもでかい)
・好きだから研究するという時代ではなく、異常に世間の反応を意識するような時代になってしまった(先生方の全盛期はもっと牧歌的というか趣味的だったらしい)。
・実験レポートの注意点
①グラフの縦軸と横軸に説明と単位を付ける。
②連続的な現象なのか、その時だけの現象なのかの区別がつくようにグラフの表現を変える。
③測定データと引用データで表示を変え、脚注に引用先を明記する。
・先生は材料屋で、ジェットエンジン用のチタン合金を開発していた。昔はニッケル基超耐熱合金という温度が上がると強度が増す合金を使っていたが、現在は軽いチタン合金を使っている。それを開発した(すげえ)。
ノギスの使い方
ノギスは旋盤やフライス盤加工で製品の長さを測る基本的な器具。ノギスにメモリをつけたポルトガルの数学者ペトルス・ノニウスさんに由来(ノニウス→ノギスになまった)。
ちなみに日本以外ではノギスを現在の形に完成させたフランス人にちなんでバーニャ・キャリパーという(バーニャカウダっぽい)。
ノギスはステンレス製で、ステンレスは鉄(主成分)+ニッケル(30%代)+クロムの合金である。この時混ぜるニッケルの割合が30%代だと熱で合金が伸び縮みしなくなるという。
ノギスの各部分は以下のような名前と役割がある。
・クチバシ:小さいハサミ状の部位。クチバシが外側に沿っていて内径を測ることができる。
・ジョウ:大きいハサミ状の部位。外径を測る時に使う。
・デプスバー:ノギス後方についた小さな定規状の部分でジョウを動かした分だけ伸びることで、長さを測ることができる。
・主尺:でかい定規。cm単位の長さはこっち側の目盛り(の副尺の0があるところ)を読む。
・副尺:小さい定規。mm以下の長さはこっち側の目盛り(の副尺と主尺の目盛が一致しているところ)を読む。
マイクロメーター
ノギスのジョウ同様、長さを測りたいものモノを挟み込む系の器具。
測定物をアンビルとスピンドルで挟んで、この時のスリーブ(定規的な部分。柄の前方にある)の目盛りを読む。
スピンドルは柄についているシンブルというマッドサンダー的な回転部を一回転まわすと0.5mm動く。このスピンドルを動かすことで測定物を挟むことができる。
電子顕微鏡(EM)
物体の内部を見る透過型(TEM=トランスミッション・エレクトロニック・マイクロスコープ)と、物体の表面を見る走査型(SEM=スキャニング・エレクトロニック・マイクロスコープ)の二種類がある。
人の目の分解能(二点を区別できる間隔の狭さの限界値)は0.1mmだが、SEMは30オングストローム、TEMはなんと1.4オングストロームもあり、原子や分子も見える。
日本のメーカーでは日立製作所や日本電子が強い。海外メーカーではフィリップス製がいいらしい。
電子顕微鏡はとにかく試料作りが大変で、さらに1ミリが100メートルで見える世界なので、ちょっとした振動が大震災になり、世間が寝静まった深夜2~3時しか使えない。
ちなみに電子顕微鏡で髪の毛を見ると、ストレスや副腎皮質ホルモンや麻薬や放射線の影響で髪の毛の表面のキューティクルがボロボロに剥がれてくることがわかる(アメリカの麻薬局で容疑者の髪の毛を採取することがあるのはこのため)。
そこで、サファリパークのライオンとシマウマのタテガミをもらって電子顕微鏡で見た場合、ライオンのキューティクルは美しく、シマウマのキューティクルはズタボロだった。
キリがないので今日はここまでで。生きてエスポワールから生還できれば、次回から実験レポートについての感想をまとめる予定です。特に力学的エネルギーの保存についてはかなり面白いことがわかったのでカミングスーン(計算あってるかわからないけれど)。
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